皆さんこんにちは!ギャラクシー卓志です。今回は、意外に問い合わせの多いアナログレコードのサンプリング方法について、書いてみたいと思います。
リスニングオーディオの世界では、「アナログは金食い虫」と言われるほど、非常に高価な機器が数多く販売されていますが、今回はそのようなハイエンドオーディオ製品の紹介ではなく、普段は音楽制作がメインで鑑賞用にあるいはDJ用にTechnics SL1200などを持っているといったようなユーザーを想定し、程々の出費で効率良くより高品位にアナログレコードを取り込む方法を探っていきましょう!
以下の3つが音質の改善が見込める重要なポイントとなります。
・カートリッジ
・フォノイコライザー
・オーディオインターフェース
順番に見ていきましょう。
カートリッジ
音質の変化や向上が見込めるパーツとして広く認知されているカートリッジ。90年代以降にアナログレコードに触れ始めた人は、SHUREのM44GやOrtofon Concordeシリーズなどを使っている方も多いのではないでしょうか。
これらはいわゆるMMカートリッジといって、扱いの比較的易しいものです。マイクロフォンで例えるなら、ダイナミックマイクに相当します。スクラッチなどハードな使用に耐えるので、DJの現場などではMMカートリッジを用いるのが常識です。音質的にもLow〜Middleにかけ膨らみのあるファットな音が出るのでマッチしていると言えます。
これに対してより高価、高品位なMCカートリッジというものがあります。これはMMよりも出力が低く(機種にもよりますが、およそ10分の1程度)、MC入力を備えたフォノアンプかステップアップトランスが必要になります。マイクロフォンで例えるなら、コンデンサーマイクに相当します。数万円から50万円以上の価格のものもあり、プレイヤーやアームなどにこだわり始めると際限ありません。
コストパフォーマンスに優れ、入手も比較的簡単な製品は?と聞かれたらまずMMカートリッジなら「SHURE M44G」ですね。「え、普通じゃん?」という声が聞こえてきそうですが、高価なカートリッジをいろいろ試した後、M44Gを戻ってくるユーザーもいるくらいです。実は素晴らしいコストパフォーマンスを誇るんですよね。
ジャンルにもよりますが、たとえばジャズ、ロック、ポップスなどであれば、SHURE M44Gを今一度、お試してください。純正交換針のN44Gや、サードパティ製の交換針も容易に入手できます!
現行品ではありませんが、MMカートリッジのレジェンドSHURE V15 Type IIIもあります。こちらは中古市場で調達するしかありませんが、流通量も多いので比較的入手は容易です。ただ純正の交換針がないので、Jicoなどが出しているサードパーティ製の交換針が使用できます。
MCに対応する機材がない、ただ手をかけずにいい音・味わいで取り込みたいという方にはおすすめです。上記はType IIIの動画ですが、MMらしい中低域の押し出し感がありつつ、適正針圧1gのカートリッジから紡ぎ出される、繊細な音の描写が特徴的です。
またMCカートリッジなら、「Denon DL103」でしょうか。これはもともと放送用にNHKと共同で開発されたもので、比較試聴の際にリファレンスにされる、音質に変なクセのない非常にバランスの取れた永遠の定番モデルです。こちらも、いろいろと高価なMCカートリッジを試した挙句、一巡して戻ってくるユーザーが多いです。
また同機は放送用として開発されただけあって、トレース能力が非常に優れており、アナログレコードにありがちな針飛びを最小限に抑えることができます。たとえばアーカイブ用にデータ化する目的であれば、これは強力なメリットとなります。MCカートリッジは自分で針交換ができませんが、このDL102はメーカーにカートリッジ本体を送ることで針交換対応が可能です。
せっかくですので、DJ世代の方もぜひMCカートリッジ導入を検討してみてはいかがでしょうか?(くれぐれも頭出しのためにこすらないでくださいね)
フォノイコライザー
皆様の中には、DJミキサー内蔵のフォノイコライザー(フォノアンプ)を使用しているのではないでしょうか?DJをするときには設置のDJをそのまま使うしかないのですが、実はここは音質のボトルネックになってきます。
安価な製品だとミキサー部で音質の劣化が激しく起こりますが、高品位にデジタル化するならば極力使用を避けた方がよいでしょう。可能な範囲において、フォノイコライザー単体機を用意することをおすすめします。
場合によっては、カートリッジを変えるより音が変わります。特別な理由がなければ、DJミキサーは通さずに、単体機でラインレベルまで上げた信号を、オーディオインターフェースで受けてあげるとよいでしょう。
ミドルレンジ以下でのおすすめは、ロングセラー「Ortofon EQA-333」や、かつてコンパクトタイプの人気機種EA-5などを出していたPhasemation(PhaseTech) の「EA-200」、またもう少しコストを抑えたいという方には、audio-technicaの「AT-PEQ20」などしょうか。いずれも10万円以内で手の届く価格のものです。
紹介した3機種はいずれもMM/MC両ポジションに対応しているので、MM/MCどちらでお好みに合わせて使用可能です。またケーブルも音質に影響を与えます。たとえば、Oyaide d+RCA Class Bシリーズなどは、価格もお手頃でおすすめです。RCAタイプは、ステレオペアなのも嬉しいところです。
オーディオインターフェース
オーディオインターフェースのラインナップは、Rock oNユーザーの皆様でしたら、もうすでにいろいろご存知かもしれませんね。2in/2out程度のチャンネル数の少ないものであれば、RME Babyface(RCAピンのブレークアウトケーブルもありレコードの取り込み用には最適)やApogee Duet for iPad & Mac、またもう少しコストをかけるとすればLynx HILOやPrismSound Lyra、Antelope Eclipseなどでしょうか。音の通り道となる非常に重要な機材ですので、予算や普段の使用用途に合わせてなるべく納得の行く、高品位なものを導入してください。
アナログレコードは、80年代初頭までは製作工程のすべてがアナログなので、是非ともベストな状態(192kHzなどのPCMハイサンプリングレートやDSDなど)で取り込みたいですね。
まとめ
以上が効果的にアナログレコードを高品位にサンプリングする3つのポイントとなります。もちろんプレイヤーやアーム、ケーブルや電源などこだわりだすと天井のない世界が待ち受けています。制作用の機材を流用して、なるべく余計な出費をせずにサウンドクオリティの向上を目指しましょう。
余談ですが、アナログレコードは、50年代以降にそれまでのSPに代わってLPが登場し、当初はモノラル、50年代後半から60年代前半にかけてステレオが登場、次第に定着していき、円熟期の70年代を経て、80年代に入るとデジタルマスターが採用され始めます(最初のCD発売が1982年)。年代によって、盤の素材や溝の幅の違い、ステレオかモノラルか(一部擬似ステレオなんてものもあります)、音圧や音質の違いがありますので、音量レベルやノイズにはそのタイトルごとに臨機応変に対応するとよいと思います。
もし取り込んだデータを加工・編集したい場合は、iZotopeのRX4のようなレストレーションツールや、iZotope Ozone6、Slate Digital FG-X、Braiworx社製品などのようなマスタリング系プラグインを利用すると便利ですね。それでは今回はこの辺で!
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