VHDで倍音、音色をコントロールする
こんにちわ。ダビッドソン阪田です。みなさん良いお正月を過ごされましたでしょうか?
新年最初のスタッフブログです。本年もRock oNスタッフが濃いエッジの聴いた情報をどんどん発信していきますよ。
さて、今回はこれまでとはちょっと方針をかえて、「倍音とはなにか?」といった目線で書いてみたいと思います
あらゆる音色は倍音の構成で作られている
チャルメラの音階で、いわゆる「ドレミ〜レド。ドレミレドレ〜」なんていう音階があります。皆さんイメージされるような音は、いわゆるチャルメラという楽器で甲高いちょっとソリッドで耳を突く音色ですよね。
ところで、このメロディをピアノやギターで弾いてみると必ず音色が違いますよね。「ドレミ〜レド。」のメロディーは同じなのになぜでしょう?当たり前すぎてこんなこと考えた事もなかったですか?
すべての音色はシンセサイザーでもおなじみのサイン波の足し算によって構成されています。それら倍音の足し算が違うからこそ同じメロディでも異なった波形が生成され、違った音色となるわけです。
倍音の積み重ねで波形は変わる
音には基本となる周波数の他に2倍、3倍更に上の倍音と整数倍の振動がいくつも生じています。
それらの積み重ね方によって大きく音色が変化していくわけですが、わかりやすいところで言うとシンセサイザーのノコギリ派は2次以上の整数倍音をタップリと含んだ波形で、基本のサイン波に比べて非常に派手な音色となります。
次にシンセサイザーの矩形波、長方形のSquare波ですが、これは偶数倍音を一切含まず奇数倍音のみをタップリと積み重ねた結果の音色となります。また、楽器の特性から言うと管楽器において、開管であるフルートなどは主に2次倍音で構成され、閉管であるクラリネットは3次倍音で構成されます。
機材の設計を知ることによって音色を操る
Rock oNの機材紹介などでお馴染みのフレーズで真空管機材には第2倍音が多く含まれ、トランジスタ機材には第3倍音が多く含まれるとよく書いたりしますが、これらには特徴的な倍音以外の倍音は含まれます。ただ倍音の特性とキャラクターを予めイメージしておくと、機材の設計などを紐解くことにより、求める音色を素早く手に入れたり、予測に近い結果を出す近道となります。
これはアウトボードのみならず、プラグインにおいてもどの機材をモチーフにしているのかとか、プラグイン設計の狙いなどを事前に情報を仕入れておくことにより、録りやミックスに対し最適な結果を出す近道となります。
最高の音の寄せ集めだけでは達成できないMIXの奥深さ
音色が倍音の積み重ねで構成されるということは個々の音色が他の音色に影響を及ぼすということは容易に想像がつきます。
単体でトラックを確認すると最高の音なのに、どうもミックスがしっくり混ざらないということは多々あると思います。
そこでボリュームやEQやコンプを使いそれぞれが干渉しないように、または相互作用によって音色の関係が更に昇華させる狙いでMIXを作っていくわけです。
私自身のMIXの経験からしてボリュームやEQやコンプをいくら使ってもどうも馴染まず、なんとかしようとすると音を非常に細くせざるを得ないほどのトラックをとってしまったことが有ります。
反省としてはMIXのイメージを充分に録音するバンドとすり合わせができなかった事がありますが、試行錯誤の上で何とか納得のできる混ざり方をしてくれました。
この時に大活躍したのが倍音コントロール系のプラグインです。AVIDには標準で「Lo-Fi」というプラグインや、追加プラグインである「Smack!」といったプラグインが倍音調整がしやすく未だに重宝してます。
マイクプリだけではないトーンコントローラとしてのVHD活用法
以前といっても大分昔の話ですが、私はあるサンバチームの録音を任されたことが有りました。
ほとんどすべてのパートが打楽器で構成され、アレンジ的にアコギとメロディーが混在する楽曲は取る方からすると正に倍音との戦いでした。
それほど大きなスタジオでもなく、やむをえずオーバーダビングもしました。ただ、収録を進めていく中でこんな不安にも襲われました。
「果たしてMIXでまとめきれるだろうか?」
転換もほぼワンオペでやっており、時間もタイトで音ぎめにも確実な素早さが求められました。ただレベルを取るだけでは絶対にMIXは崩壊する。
とそんな確信がスタート段階ではありました。そこで私のとった作戦は、録りの段階で倍音をコントロールしながら整理して取っていくことです。
基本となるリズムにはじっくりと時間を掛け、レベル、トーンを厳密に調整し土台を造りました。基本となるのはブラジルの楽器、スルド(大太鼓)とカイシャ(スネアのようなもの)です。
そこで大活躍したのがSSLのVHD PREでした。EQでは追い込めないちょっとしたトーンの絡みをあっという間に直感的にコントロールすることができ、おおよそ整理できた形で次のオーバーダビングにも進めます。そこからもタンボリンやカイシャ、パンデーロなど、倍音地獄な楽器が次々と控えていますが、原音に2次倍音(2nd)から3次倍音(3rd)を連続可変で加えるバリアブル・ハーモニック・ドライブというSSL独自の回路、VHDを活用することにより、自然に積み重ねていくことも出来ました。また、MIXにおいても-20dBのPadを活用することにより、トーンコントローラとしての活用も試みました。
あまりこういった音楽のジャンルにはSSLの名前は上がらないと思いますが、レコーディングを効率化する目的に採用されたSSLのVHD PREの活用は結果として成功を収めました。
録りにおけるトーンコントロールにおいてもMIXにおいても申し分のないスペックを持ったSSLのVHD機能とそのコストパフォーマンスは登場以来、地味におすすめできる良プロダクトです。
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