ハードウェアコントローラーとソフトウェアが融合したハイブリットマシンの先駆けとしてリリースされたNative InstrumentsのMASCHINE。これまで多くのソフトウェアアップデートにより機能が追加され、より多くのビートメイカーに支持され多くのスタジオにMASCHINEコントローラーが設置されている写真を見かけます。
そんなMASCHINEですが、つい先日最新アップデートであるVer.2.2がリリースされました。今回はVer2.2で追加された、3つの新機能とMASCHINEの魅力を改めてご紹介しようと思います。
●1.スケール・コードエンジンの追加
今回のアップデートの大きな追加機能としてはスケールエンジンの追加があげられます。この機能はメジャースケールやマイナースケールなど、各スケールを構成する音階がMASCHINEの16個のパッドに割り当てられ、それぞれのパッドを演奏するだけでそれっぽい演奏が可能になります。
やり方としては演奏したいパッド、ここではパッド1にMASSIVEのBASSを割り当てたパッドが選択された状態でパッド横のPAD MODEボタンを押します。そうするとディスプレイが切り替わり一番左側のノブをまわすとスケールを選ぶ事ができます。
色が濃いパッドはスケールのルート音となり、ここではCのマイナーコードなので「C,D,E♭,F,G,A♭,B♭」の音階がパッドに割り当てられます。パッド上がスケールの構成音のみになるので、直感的にフレーズを打ち込んでも違和感無くフレーズを組み立てられます。
スケールの中にはメジャーやマイナーの他に、ブルースやジプシーなど様々な音楽ジャンルに対応したスケールが予め用意されているので、応用は効くかと思います。
ちなみに、パッドに割り当てられている構成音はMASCHINEコントローラーのディスプレイに表示されているので、どのサウンドがパッドに割り当てられているか一目で確認することができます。この辺りはディスプレイが大きなMASCHINE STUDIOだと非常に役立つところですね。
また今回のアップデートにはコード機能も追加されています。コード入力には”Harmonizar”モードと”Chord set”モードがあり、”Harmonizar”モードはその名の通りMajorコードやMinorコード、Sus 4、Major 7などの7thなど各コードがパッドに割り当てられます。
“Chord set”モードは予めメジャー/マイナーなどスケールごとのコードが数種類用意されており、歌ものを打ち込むのであれば”Chord set”モードを使うと一曲書けるかもしれませんね。
このスケール・コードエンジンは私のようなピアノが弾けないユーザーには非常に役立つ機能のひとつで、正にメロディや和音をパッドで叩く、NIの制作の提案を感じますね。
●2.アルペジエーターの追加
MASCHINEにはNOTE REPEATが用意されており、AKAIのMPCのような打ち込み方法が出来ましたが、今回のアップデートによりアルペジエーターが追加されました。これにより躍動感のあるベースやメロディのフレーズをMASCHINEで簡単に打ち込めるようになりました。
使い方としてはNOTE REPEATボタンを押した後にディスプレイ上の”ARP”ボタンを押すと準備は完了。アルペジエーターによく見かけるTYPE・RATE・OCTAVESを調整しながらフレーズを作っていきましょう。また、作ったフレーズはMASCHINEのシーケンサー上にフレーズのまま打ち込まれるので、打ち込み後に一部だけ編集することも可能です。
ちなみに、個人的に気に入ったのが8個のパラメータの中にDYNAMICパラメーターとGATEパラメーターが用意されていること。普通のシンセのアルペジエーター欄には付いていない2つのパラメーターですが、この2つを応用すればパッドを押しているだけでフレーズの躍動感やキャラクターを変える事も出来ます。一度触ってみて頂ければ、便利さが分かるかと思いますよ!
●3.タッチセンサー式ノブのアンロック(MASCHINE STUDIOのみ)
MASCHINE STUDIOのファームウェアアップデートにより、ディスプレイ下部の8個のノブがタッチセンシティブ対応ノブに生まれ変わります。そのままのノブでもストレスは感じませんが、触ると反応してくれるタッチセンシティブノブは使っていて快適です。MASCHINE STUDIOをお持ちの方は、是非アップデートしておきましょう!!
●リズムだけではなく、メロディもMASCHINEで
さて、新しい機能を3つご紹介してみましたが、スケール・コードエンジンとアルペジエーターを組み合わせて使う事によって、MASCHINEでメロディやフレーズを簡単に生成することが可能になりました。この2つの機能を独立して使ってもアリではありますが、組み合わせることにより更に新しいフレーズを作る事が可能になります。
たとえば、パッド側でコード演奏モードにしておいてアルペジエーターを走らせれば、そのコードのアルペジオが演奏されます。パッドをひとつ押さえるだけで和音のアルペジオが走るので、もう片方の手ではアルペジエーターの設定値をいじるもよし、シンセのフィルターをいじるもよし…よりパフォーマンスに向いた使い方が出来る訳です。
私がMASCHINEでトラック制作をするのであれば、まず8GBあるMASCHINE Libraryを使ってリズムトラックを作り、FN8やMASSIVEをアルペジエーターで動かして上モノを作り、Ableton LiveなどのDAWに流し込んでいくと思います。
これらの作業が新機能の追加により、よりMASCHINEコントローラーとにらめっこしながら制作に集中する事ができるようになり、これは、NIがMASCHINEリリース時に提案していた、ハイブリッド構想をより進歩させた流れなのでは無いでしょうか。
しかし、そんなMASCHINEにも気になる点があります。両手で弾くようなフレーズをピアノやエレピで打ち込もうとすると、16個のパッドでは演奏が難しいんですよね。MASCHINEのフレーズ作成機能を16個パッド以外でもやりたい…そんな方の為にNIのKOMPLETE KONTROLが出てきたのではないでしょうか。MASCHINEとKOMPLETEの融合とは、こういったことだったのかと感じます。
今回のアップデートを振り返ると、個人的にはVer.1.8でMASCHINE内部でAUやVSTが使えるようになった頃と同じくらい、大きなアップデートなのだと感じます。是非、この機会にあなたのスタジオへ最先端のビートメイキングマシン、MASCHINEを導入してみてはいかがでしょうか?
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