昨日の製品レポートに引き続き、本日はRMEを使った「MADIが可能にするコンパクトで高品質なレコーディングシステム」の導入事例を具体的にご紹介!
今回セミナーをしていただきました長江 和哉氏は、名古屋芸術大学 音楽学部 音楽文化創造学科の講師で、昨年1年間海外研究員としてベルリンでクラシックの録音を研究されていらっしゃいました。そこでMADIと出会い、今ではすべてMADIのシステムでレコーディングシステムを構築されているそうです。
今回は、ドイツでの経験や国内でのレコーディング実験、機器やシステムのご説明をいただきました。
ドイツではトーンマイスター(Tonmiester)という教育が64年前から行われているそうです。ドイツ語でTonは音の意、Miesterはドイツの資格制度、つまり録音・音響の専門資格のことです。(英 Sound Engineer)
トーンマイスターは、レコーディングエンジニア、バランスエンジニアであり、音楽を録音する際の芸術的な部分と技術的な部分の両方の役割を果たします。
そのためには音楽的な理解が必要で、創造的な作業が出来るように音楽を聞き分ける能力と技術的な知識が必要です。
その仕事は音楽や映像メディアの録音制作、コンサートの音響などであり、その役割は演奏家と聞き手をつなぐことにあります。実際の現場でどんな音が鳴っているか、どのようなマイクをどんなセッティングで設置するか、どんな音で録音したいのか、などをディレクションします。
このトーンマイスター教育は5年間かけて学ぶそうです。このトーンマイスターが活躍するベルリンフィルハーモニーは世界に先駆けて、コンサートをネット配信するなど、録音中継の分野でも最先端をいっています。
また、音が変化する要因についても正しい理解があることも必要で、音声がデジタルになってしまえば、音の変化はほぼないという認識です。
MADIが可能にするコンパクトで高音質なレコーディングについて
トーンマイスターのほとんどはフリーランサーで、自身が機材を所有しています。
録音は、コンサートホールや、教会、アートスペースなどで、セッションレコーディングや、ライブレコーディングの形態で行われます。
また、ほとんどの録音では、録音データのバックアップ(二重化)について考慮する必要があり、写真のような単体レコーダーを用意するか、オーディオインターフェイスからUSBデバイスにバックアップしたり、PCを2台用意したりして対応しています。
ベルリンフィルハーモニーなどのコンサートホールでは、各スタジオに光MADIトランク回線(オレンジ色ケーブル)が設置されており、信号の劣化がなくマイク回線を分岐、転送できるようになっていました。
また、CD/DVD、テレビ中継、ラジオ中継と、3つの中継収録がある際は、マシンルームでマイクからADされたMADI信号を分岐し、このMADI パッチベイを経由して、通常のコントロールルームの他、テレビ用の屋外の中継車、ラジオ用の別棟の小ホールのコントロールルームに、回線を送ることができ、それぞれの媒体にふさわしいミキシングや収録ができるように配慮されていました。
これをアナログ回線ですべて展開するとなると、膨大な長さのマルチケーブルが必要となり、設置・確認・調整など実際に音がつながるまでに膨大な時間と労力が必要となります。
実際の録音事例
ハイルブロンでの室内楽オーケストラレコーディングを録音した際のシステムです。ステージ上にMicstasyが設置されています。室内楽のため、スポットマイクを多用するよりもなるべくメインマイクで沢山稼ぐように調整されました。
マイクからHAまでの距離を極力短くしたほうがいいということで、ピアノの下に配置されています。(Micstasyの間に挟まれている1Uのユニットはトークバック用DAコンバーターだそうです。)
コントロールルームではMADIからADATへの変換としてADI-648を用意し、FirefaceUFXを経由インプットされています。
また、この現場ではRME MIDI Remoteを使用しており、MADIケーブルの中にMIDI信号を吹かし送信して、MicstasyのHA ゲインをリモートコントロールしていたそうです。
この機能があると、いちいち実機を操作しなくてもよくなりますので、万が一レコーディング本番中にゲインを操作したい場合にも手元からのコントロールが可能になります。とても便利な機能ですね。またこれらの経験をふまえて長江氏が導入したのがこちらだそうです。
図面ではMADI FXがそれぞれThunderboltのボックスに表記されていますが、2システムを一つのケースに入れて、天板をパンチメタルにして放熱率も高めました。
また、MADIはOpticalCON レセプタクルを使用して現場での安全性をより高めています。
アナログマルチをMADIに替えることで安全性に加え軽量化が図れるのが最大の理由ではないでしょうか。HAやインターフェイスもよりコンパクトになります。
なによりMADIのドラムリールの重さも上記のように段違いです。これで、ハイサンプリングも対応しているのですから、MADIを使わない理由は見当たりませんね。
また、長江氏は国内でもこのシステムで録音されています。今年の6月には岐阜 飛騨芸術堂にて飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラコンサートでもMADIシステムが使用されました。
このセッションでは、Micstasyと新製品であるOctaMic XTCの比較録音もされました。
メインマイク出力をパラ分岐し、MicstasyとOctamic XTCに入力してMADI経由で録音された音源を実際聞いてみましたが、音の違いがわからないほど、クオリティの高い音質でした。
建物自体が五角形で有名な軽井沢 大賀ホールで行われたヴァイオリン・リサイタルでは、楽屋にコントロールルームを設けたシステムで録音されました。
ワンボックスカーをコントロールルームに
クラシック以外にも、Jazzボーカリストであるチコ本田氏のライブレコーディングでも録音しており、やはりピアノの下にMicstasyを設置し、本番中は黒布をかぶせていたそうです。
このセッションでは、外に停めたワンボックスカー(手前は歩道です)の中をコントロールルームにし、電源・MADI・トークバック回線を引いています。この設置はMADIの様に軽量化したシステムでないと実現できないですね。
このように、コンパクトで高品位なレコーディングシステムを可能にするMADI優位性のをもう一度まとめてみましょう。
1.省力化
運搬効率の向上と仕込み時間の短縮、バックアップシステム構築の容易さ、48kHz/64chをケーブル1本で伝送
2.高音質
マイクレベル転送距離の短縮化、最大2kmまで転送可能なデジタル信号による変化しない信号
3.MIDI Over MADIによるHAリモート
64chのオーディオをケーブル1本で伝送するだけではなく、同時にMIDI制御信号も送ることができ、MicstasyなどのHAゲインコントロールも可能
MADI規格はAESで企画化されたデジタルオーディオの伝送方式で、ノンパテントです。将来、今以上にMADI機器が各社から発売されることは間違いありません。
今でもMADIでレコーディングシステムを組むことは容易ですが、今後はさらに各機器の選択肢が増える訳です。今回の事例でも、クラシックの分野でのMADIがもたらす優位性は明らかとなりました。
MADI For Everyone
ライブ/コンサート市場はCD販売の現象と反比例して公演数/動員数とも成長を続け、音楽の収益源の柱となりつつあります。世界中のどこかで毎日毎晩すばらしい演奏が行われていますが、収録には膨大な機材と人手が必要なため、ごく一部の著名アーティストの演奏だけがライブアルバムとして提供されてきました。
しかし制作コストは下がっても諸般の事情により商業出版が困難なコンテンツは世に出るすべがありません。高品質で収録できる環境が整っても、出口がないために日の目を見ることがなかったコンテンツに光を、ということでRMEからPremium Recordingsというレーベルが発表されました。
RMEの機材を使用して録音された優れた作品を広く世に提供するために設立されました。
RMEの機材の特徴である、色づけのない透明無垢なサウンドを、演奏会場の雰囲気さえも余すことなく取り込んだ作品をチョイスされています。取れ立ての音を産地直送さながらに、余分な加工をせずにユーザーの再生環境へ届けることをポリシーとしました。
本日講演されましたなかから、飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラのコンサートが第一弾として11月1日にリリースされます。
クラシック、ジャズ、ロック等ジャンルを問わず、空気感を正確に切り取った優れた録音製品を録音段階から96kHz/24bit以上の真のハイレゾ・コンテンツを紹介されます。音の入り口から出口まで、RMEのデバイスによる最良のソリューションが提供されるRME Oremium Recordingsのコンテンツをぜひ、お手に取ってみてはいかがでしょうか。
for Everywhere. for Everyone.
MADIがLiveレコーディングをもっと身近にする
現在AVBやDanteといったネットワークオーディオの潮流も話題になっていますが、MADIと同じくその根幹にあるのはどちらも『複雑かつ大規模な信号処理をシンプル&イージーに実現する』事に尽きます。今回発表されたMADIface USBなどを筆頭にLIVEコンソールとノートPCを繋ぐ最小かつ信頼性の高いレコーディングシステムの構築はネットワークオーディオ機器とともに一つのトレンドとなっています。
さらに今後USB3.0の卓上インターフェースであるMADIface XT1台さえあれば、最小の個人制作/録音/編集システムから、コンソールと連動した大規模ホール録音まで、驚くほどシームレスな汎用性を併せ持つレコーディング環境も実現します。
RMEが放つ最新MADIプロダクト達は現行MADI機器と単価比較すれば一見コストは高いかもしれませんが、その活用規模が大きくなるほど従来システム比較で低コスト、かつ極めてコンパクト&シンプルに大規模システムをハンドリングが可能。システムの柔軟性とシンプルさこそSynthax Japanが提唱する『MADI Everywhere』を表現するものです。
近い将来、多チャンネルのハンドリングを意識する事無く、気軽にノートパソコン1台でLIVEレコーディングを行う風景を頻繁に目にするかもしれません。MADI Everywhere。MADI for Everyone。そのそばにRMEの姿がある未来はすぐそこです。
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