• 2013.09.19

“Meaningful Differentiation” という言葉に込められたLine 6の製品を貫く革新性。マーカス・ライル氏インタビュー


Line 6の共同設立者、CSO (最高戦略責任者) であるマーカス・ライル氏がRock oNに来店!! Rock oN店長の白井はギタリストであり、長年のLine 6ユーザーであることから、興味津々のなか、インタビューさせて頂く機会を得ました!!

オーバーハイム、A-DATなど、沢山のエポックメイキングな製品を生み出してきた経歴

Rock oN白井(以下 Rock oN):Rock oNにお越し下さりありがとうございます!!
まず、マーカスさんのバックグラウンドについてお伺いできますか?
マーカス・ライル氏(以下、マーカス):ロングバージョンで行きますか?それともショートバージョン?(笑) OK、じゃあ始めましょう(笑)。
まず、私は7歳でピアノを始めたんですが、同時に父親がエンジニアだったこともあって、子供の頃からテクノロジーにも興味を持っていました。家にあったApple II(アップルが1977年に発表したコンピュータ)に触れたり、シンセサイザーをばらしては組み立てたり、そんなことをしながらテクノロジーへの興味を育んでいきました。16歳でテストを受け、高校の過程を終了し(日本で言う飛び級)大学へ進みました。

「音楽」と「テクノロジー」に関して貪欲に学びたい気持ちを持ってましたが、通っていた高校には集中して学べる環境がなく、私は「次へ進みたい!」と考えたんです。16歳の段階ではまだ「ロックスターになりたい!」という気持ちも思ってましたよ。

19歳の時にトーマス・エルロイ・オーバーハイム氏に出会って、Oberheim Electronicsで仕事を得ることができたんです。当時のOberheimはまだ小さな会社でオーバーハイム氏とジム・クーパー(後にJL Cooper社を設立)の2人のエンジニアしかいなかったんです。私はまだエレクトロニクスの学位を持っていませんでしたが、テクノロジーを理解すると同時に、Oberheim製品の実際のユーザーとしての立場を兼ね備えていた私に、オーバーハイム氏は興味を持ってくれたんです。

入社後すぐにアセンブラ・プログラミングの勉強をして、初めて手がけたのがポリフォニックMIDIシーケンサーのOberheim DSXで、ハード、ソフト双方の設計をしました。

その後、新しく加わったフランス人エンジニアのミシェル・ドゥワディークと一緒にOB8、Xpander、Martix-12といった製品を手がけました。その後、1985年にミシェルと独立し、妻とも共にFast Forward Designsを立ち上げました。

Fast Forward Designsでは、エンジニアリングのコンサルティングを行いました。最初の顧客はドイツのDynacord社でドラムマシンを手がけ、86年からはALESIS社において40以上の製品に携わり、代表的な製品として、ADATやQuadraSynthなどがあります。

その後、10年に渡りDigidesign、Studerといった沢山のメーカーの製品に携わりました。

社名「Line 6」の命名経緯にはユニークなストーリーが!

Rock oN:LINE6の設立の契機は?
マーカス:90年代になるとテクノロジーもどんどん進化し、シンセサイザーやキーボード、またはスタジオ機材を中心に新たな製品が沢山登場しましたが、一方、ギターに関するプロダクトは遅れをとってるんじゃないかと考えたんです。
そこで、ギタリストにとってエキサイティングな製品を作りたいと思い、1996年にLine 6をスタートさせました。
Rock oN:なぜLINE6という名前に?

マーカス:>これには面白いストーリーがあるんですよ。顧客から発注されたコンサルティング業務を行うと同時に、社外には秘密裏にして、社内でギター・アンプのモデリング開発を進めていたんですが、そのためにギター・アンプの音を測定するためにオフィス内でギターを大音量で鳴らさなければなりませんでした。

当時、会社には5つの電話回線があったんですが、外部の人が会社にやってきた場合、ギターの音が社内で鳴り響いてるのを聞かれたらまずいので、インターカム越しに社内に「6番に電話だ。」と伝えることがギターの演奏をストップさせる合図だったんです。ジョークを絡めた合言葉として使ってたんですが、後に社名としてLine 6にしたんです。(笑)

社名の条件として、(1) 2音節であること。(2) SONY、Roland、APPLEのように具体的な事象を説明せず顧客に想像の余地を与えるものであること。の2つがあったんですが、これにLine 6は合致したんです。

Line 6歴代製品の革新性を引き継ぐM20dの新しさ “Meaningful Differentiation”

Rock oN:>それは面白いエピソードですね!では、現行製品であるミキシング・システム StageScape M20dについてお伺いできますか?

マーカス:M20dは、初めてのライブパフォーマンス用に特化したミキサーであり、エンジニアに向けてではなく、ミュージシャンに向けて設計した新しいアプローチを持つ製品です。

顧客満足度の調査においても、M20dは高い評価を獲得しています。この製品は専任のサウンドエンジニアに任せることなく、最終的な音までに責任を持たなければならない立場にあるミュージシャンが主な購買層だと言えます。PA機器の操作は論理的で、いわば左脳的な作業ですが、その作業に時間を割くことなく素早く優れたサウンドを作り上げ、音楽を演奏するクリエイティブな、いわゆる右脳的な作業に集中することを可能にします。

アメリカでは教会や学校、小さなクラブなどにも導入され、機材に詳しくない人でも簡単に素早く優れたサウンドを得る事ができるということで高く評価されています。通常のミキサーなら、ボーカルに立てたマイクとキックドラムに立てたマイクでは、同じチャンネル・ストリップを使ってそれぞれ違った設定をしなければならないわけですが、M20dなら画面上でボーカルやキックドラムのアイコンを選べば、それぞれに対応したシグナルパスが呼び出され、即座に適した調整が行われ、サウンド作りが行われます。

経験あるミュージシャンやエンジニアから「普段使い慣れた通常のミキサー操作体系にも対応して欲しい。」という要望もありますが、例えば、ポールマッカートニーのバンドで活躍するキーボーディストの ポール’ウィックス’ウィケンズは、彼のステージ機材をM20dに集約し自分でミックスしてPAに渡す使い方をしています。もちろん彼は一流のミュージシャンなので通常のミキサーの操作を熟知していますが、ミュージシャンに向けてアプローチするM20dの新しさを大きく評価してくれていますよ。

私たちは製品を生み出すにあたり、社内で”Meaningful Differentiation”という言葉を使います。ミュージシャンにとって”meaningful”=「有益で意味あるもの」を作り出すための差別化。これは、私たちがこれまでに手がけてきたエポックメイキングな製品の中に脈々と残して来た思想であり、このDNAはM20dにも引き継がれています。

M20dのソフトウェアですが、今年始めにv1.1のアップデートを行いましたが、近いうちに次のアップデートを予定してるので、さらなる機能アップを期待してください。

[eStoreClipA mdin=’22744′]渋谷店では展示機も用意していますので、試奏可能です![/eStoreClipA]
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そして翌日の9/14(土)、信濃町Mac Studioで開催されたイベント「WHAT’S NEXT ミュージシャンズ・カンファレンス IN TOKYO」では、マーカス・ライル氏による「素晴らしいライブサウンドを実現する方法-Live Sound Doesn’t Have To Suck」と題されたセミナーが開催。この模様も引き続きレポートします。

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信濃町Mac Studioのメインルーム(1st)で行われたデモンストレーション、「素晴らしいライブサウンドを実現する方法-Live Sound Doesn’t Have To Suck」ではマーカス・ライル氏により、Line 6のプロダクトを使用して素早く簡単に理想的なサウンドを実現する方法について述べられました。

「ライヴにおいて最も重要な事はオーディエンスとコネクトすること」という言葉が非常に印象的でした。そのコネクトを実現するためには素晴らしいライヴサウンドをオーディエンスに届ける事が最優先なのは間違いないでしょう。

従来は理想的なライヴサウンドを実現するために素晴らしい腕を持ったエンジニア、ハイエンドな機材が必要であり、それがあってこそミュージシャンはパフォーマンス、クリエイションに集中できるました。

しかしそんな環境を得られるのは一部の人たちだけであり、多くのミュージシャンは自分自身でエンジニア、ローディー、テクニシャンを兼任し、音楽になかなか集中できない現実がありました。小規模な人数、予算でどうやってより良いサウンドを出せるのか。これこそがLine 6のチャレンジでした。

まずは800W、2Wayのバイアンプスピーカー、StageSouce L2tを使ったボーカリスト兼ギタリストによるライヴをデモ。このL2tは単なるスピーカーではなく、ミキサー、リバーブ、3バンドEQ、ハウリングを防止するフィードバック・サプレッションなどを装備し、これ一台で全てまかなえる仕様。

さらに、L2tには「Acoustic Modeling」という機能も搭載されています。アコースティック・ギターを使った演奏を行う場合、レコーディングであればマイクを立てて集音しますが、ライブではマイクとの位置関係に注意しなければならず、ハウリングなどの問題もあります。そこで、ピエゾ・ピックアップを搭載したエレアコ・ギターが使われます。

ピエゾ・ピックアップは弦の振動だけが拾われ、ボディの鳴りは拾えないため、空気感が無く薄っぺらいサウンドになるという問題があります。その場合に「Acoustic Modeling」機能を使うと、モデリングによりボディの鳴りを追加できるため、よりリアルなサウンドを使うことが可能となります。

音が良くなればパフォーマンスも良くなるのはミュージシャンなら誰でも実感するところでしょう。L2tはシンプルなアコースティックとボーカルでのライヴをカフェや小さなクラブで行うのに最適ですね。

次に革新的なミキサーとして華々しいデビューを飾ったStageScape M20d。ボーカルとギターだけのシンプルな構成ならL2t一台で十分ですが、バンドになれば当然ミキサーが必要になります。

今までのミキサーは入力がヴォーカルでもドラムのキックでも、基本的にチャンネルの仕様は同じであり、入力ソースに対して最適なセッティングにするにはエンジニアとしての高度なスキルが必要でした。例えばドラムのキック一つ取ってもまずはマイクのチョイス、インプットトリムの設定、ヘッドルームの確保などが必要になりますし、EQを設定するにもBoom(胴鳴り)は80Hz、Smack(ビーターの打音)は3kHz、Snap(金属的な打音)は6kHz、そしてScoop(共振)は400Hzと、求めるトーンを周波数と関連付けて覚えておくことが要求されます。

M20dならそのような複雑な設定を気にすることなく、キックドラムの画像を選択すればすぐに最適なセッティングになる上、先ほどのBoomやSmack、Snap、Scoopといった文字が書かれたインターフェース上で指を動かすだけで、自分の耳を使って簡単に設定を行えます。こうして各楽器のセッティングも一瞬で済んでしまい、ミュージシャンはパフォーマンスに集中できるわけです。

実際にM20d、L2t、L3t、デジタルワイヤレスマイクのXD-V75、さらにギターにはアンプを使用せずRelay G50経由で2人のギタリストがPOD HD500、POD HD ProをラインでM20dに送った状態でのライヴをエモ系ロックバンド、fadeが実演してくれました。

ギターアンプは非常に指向性が強いため、アンプの前のオーディエンスには良く聴こえても、反対側にいる人には当然届きません。ミキサーに直接挿せればPAスピーカーの左右から同じバランスで鳴らす事ができ、会場全体に行き渡らせることが可能。実際のサウンドも大音量でありながらクリアで分離が良く聴きやすい音でした。

しかしやはりアンプから聴こえる「生」のサウンドも欲しいのは事実。アンプも一緒に鳴らしてうまくバランスを取れば本当に理想のサウンドを実現できるポテンシャルを感じました。

さらにM20dではSDカード一つでそのままダイレクトに24bit/48kHzでマルチトラックレコーディングが可能。スプリッターもインターフェイスもPCも必要ありません。WavデータはそのままDAWにインポートすればエディット、ミックスもできるので短時間でライヴ音源の制作が出来てしまいます。

Line 6のライヴプロダクトは今まで手が届かなかったクオリティを簡単に実現してしまう、しかもそれをより多くのミュージシャンがアクセスしやすい形に実現している点は特筆すべきでしょう。筆者の現役時代(一応ギタリストでした)にあったらどんなに良かったか、と思わずにいられません。

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