緊急特別企画!音素材から任意の定位、周波数の音をピックアップできる新世代のエディットソフトRoland R-MIXと、ライブ感覚で楽曲制作を可能にするDAW Ableton Live8を使い、ボーカルハウスのリミックスに挑戦してみました!
【2012.08.13:追記】
Roland R-MIXのデモ版がRoland Webサイトで公開されています!
再生/録音時間の制限やプロジェクトの保存ができないなどいくつか制限がありますが、R-MIXの機能に触れ、音楽的な可能性を体感するには十分なものです!ぜひダウンロードして、使ってみてください!
Ustreamやニコニコ動画など、今では誰でも手軽に音楽配信ができるようになりました。さらにPCDJの普及も手伝って、インターネット上ではほぼ毎日のように仮想のDJイベントが開催されています。私もそのリスナーの一人であり、DJの一人でもあるのですが、世界中の様々なDJのプレイを聴いていてハッと驚かされるのが、DJが自作したであろうネタもののマッシュアップやリミックスの数々。
リミックスの手法は人それぞれで、そもそも「何をもってリミックスとするか」ということ自体にクリエイターの個性が反映されます。なので今回はできるだけ分かりやすい形で、(私自身のDJでも使いやすい)ボーカルハウスのリミックスに挑戦したいと思います!
では早速いってみましょう。まずはネタ選びから。あれもこれもと考えていたのですが、最近ハマっているソウル系の女性ボーカルに決定!生のソウルフルなバンドの演奏で、4つ打ちドラム&パーカッション&ギター&ベース&オルガンという構成の曲ですが、このままだと私のDJスタイルとしてはドラムが弱いので、フロア仕様のシンプルな4つ打ちトラックにしてみたいと思います!
ボーカルをフィーチャーしたトラックにするため、まずはこのボーカルを「リミックス素材」として用意します。そのために今回選んだのがRoland R-MIX!
R-MIXは、音楽を周波数、定位、音量の3つのパラメーターで分析し、それをグラフィカルに表示させ、任意の楽器音を選択して音量バランスを変える、消す、残す、エフェクトをかけるなどの加工ができる、これまでに無かったエディットソフトです。
R-MIXはスタンドアローンで動作します。上の画像の、R-MIXの真ん中上半分が元曲を2次元で表示したもので、縦軸は周波数、横軸は定位、そして色が音量を表しています(小:青<白<黄色<赤:大)。実際に音を聴きながら目でも確認して、ボーカルパートだけを抜き出します。
四角く囲んだ部分が抜き出したボーカルです。
続いてトラックを組み立てていきますが、今回はリミックス企画ということで、DAWはリアルタイムでのアレンジやライブパフォーマンスなどの操作感が群を抜いて優秀で、クラブ系やリミックスものに最も強いとされるAbleton Live8をチョイスしました。
まず、ドラムはNative Instruments MASCHINE MIKROを使ってバシバシと打ち込んでいきます。ハット、スネア、キックの順番で打ち込んでいきます(私の場合、この順番で打ち込んでいく方がグルーブが出しやすいので)。今回は歌を活かすためにシンプルな縦ノリの4つ打ちにします。この手のリミックスには、細かすぎるパーカッションや金物を入れない方が良いかもしれません。心の赴くままにパッドを叩き、ベーシックなドラムトラックが完成しました。ドラムやパーカッションはやっぱりパッドを叩きながら打ち込むのが楽しいですね。
ちなみにこの記事を作成現在、このMASCHINE MIKROを含めたNative Instrumentの人気3製品が 数量限定最大¥23,000オフのセール中です。MASCHINE MIKROはたった¥24,800なので、持っていない人はぜひ。特にトラックメイカーにはおすすめです!
Live8のワープ機能を使ってボーカルネタのBPMをトラックに合わせて一緒に鳴らして確認します。(しばし目をつぶって意識を音だけに傾けます…)
よし、かっこいい!良い感じです。でもDJで使う曲としてはまだドラムのノリが足りません。そこで考えたあげく再度R-MIXの出番です!(せっかく便利なものがあるんだからめいいっぱい使いましょう)
元の楽曲の中からハイハットやパーカッションの残像の部分を抜き出し、それをLive8に取り込んでスライス!バラバラになったハイハット類をLive8の「グルーブプリセット」を使って後ろのめりなグルーブに変え、ゴーストループとしてドラムトラックに重ねて鳴らす事にしました。聞こえるか聞こえないかという些細なところなのですが、この「裏のグルーブ」もしくは「陰のグルーブ」があるだけで、ドラム1本でも十分曲として通用するものになります。
これでボーカル、ドラムは揃いました。個人的には「ストイックなクラブトラックならこれだけでも十分だ!」と言いたいところなのですが、せっかくなのでベース、歪んだきらびやかなピアノ、軽いシンセを入れてピアノハウス風にしたいと思います。トラック全体のグルーブをシンプルな縦ノリにしたおかげで、アレンジも楽ちんにできます。
さあ、これで材料が一通り揃いました。あとは料理していくだけなんですが、ここからがLive8の本領発揮です。トラックを構成する各トラックをセッションビューモードで表示し、Live8専用コントローラー Akai Professional APC40を使ってリアルタイムに展開を作っていきます。
一般的にダンスもののようなループが主体の曲は、コピー&ペーストで時間軸にそって展開を作ってしまうとどうしても同じ調子の繰り返しになってしまって、退屈な曲になりがちです。その退屈さを埋めるために派手な効果音や楽器を重ねるようなことを繰り返していると、最終的には「踊る」という目的を忘れた「よく分からない4つ打ち風のなにか」が出来上がってしまいます。
そこでLive8とAPC40の最強コンビを使ってリアルタイムで曲を展開させることで、小節数にこだわらない、フロアを熱狂させる熱いダンスミュージックを構築します。ここの部分だけは冷静さを必要としません!明け方4時〜5時のピークタイムをイメージしながら、各トラックの抜き差しやハメ系のフィルター、空間系エフェクトを直感的に大胆にコントロールしていきます!もちろんこのプレイ内容はLive8でメモリーできるので、何度も繰り返して再現ができますし、ちょっと直したいところがあれば修正をすることもできます。恐れることはありません!
ようやく完成!今回は元曲のサビ部分だけを使った短いデモトラック作りにチャレンジしましたが、たった1時間でDJとして使えるところまで作ることができました。ここで一応簡易的なミックスを施し、さらに展開を作って、最終的にミックスを行うわけですが、トラックを作るときは「作りたい!」と思い立ってからこの形にするまでが勝負ですよね。その時頭の中に思い描いた音をできるだけ短時間で形にするために今回選んだのが、Roland R-MIXとAbleton Live8だった訳ですが、このチョイスは大成功でした。
まずはR-MIX。リミックスの最も重要な「ボーカルネタ」と、グルーブを出すための「ゴーストループ」の抜き出しに使いました。ボーカルネタに関しては、これまでフィルターやEQ、位相系エフェクターを駆使して、必死になって抜き出していたボーカルを、視覚的にあっという間に抜き取ることができました。それも元になる楽曲を何度もリアルタイムで聴きながら作業できたので、素早いエディットができました。
しかしここで言っておきたいことが、R-MIXを使っても100%ピュアなボーカルを抜き取ることは難しいということ。今回ネタ元となった曲は、バンドの様々な楽器のオーケストレーションが複雑に絡み合っている曲だったので、ボーカルと同じ帯域、定位で存在している楽器は多少残ってしまいました。例えばスネアやギターなどです。しかし実際のところ、今回作ったようなクラブトラックものだとそういった些細なことはほぼ問題になりません。逆に消し去ることができなかった楽器の断片がグルーブを出す要因の一つとなって、トラック全体をうまくまとめあげるパーツとなり機能してくれました。十分実用範囲内、もしくはそれ以上の使い勝手です!それからこれは新発見だったのですが、R-MIXを使っているうちに、「Youtubeのあの動画からあの声を抜き取って効果音にしたらどうだろう?」とか「作った2ミックスのトラックをR-MIXに入れて加工してみたら…?」などいろんなアイディアも湧いてきました。そういう意味で、R-MIXはインスピレーションを刺激してくれるソフトウェアでもあると思います。
Live8に関しては「直感的に手早く作れる」という長所を最大限に活かすためにAPC40とのセットで使いましたが、これが功を奏して、初期衝動のパッションを維持したままトラックを作ることができました。また、グルーブをループさせながらリアルタイムでライブ演奏し展開を作っていくという楽曲構築の手法は、クラブトラックを作る際にはもってこいです。既に世界中に熱心なファンを持っているLive8ですが、あらためてその存在価値と魅力を認識しました。
Roland R-MIXとAbleton Live8は、最も素早く理想的なクオリティで、自由度の高いリミックスが作れるベストなツールだと言えます。すでにリミックスやマッシュアップ作品を作っている人も、これからリミックスを作ろうと思っている人も、R-MIXとLive8でチャレンジしてみませんか。
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