Synthogy / Ivory
最強のアップライト・ピアノ音源が、Ivoryから。
ロックオンで最も人気のあるピアノ音源となっているIvoryで有名なSynthogyは、最新のIvory Upright Pianosを中心にデモを展開していました。
ヤマハ、スタインウェイ、ベーゼンドルファー(Ivory)から、10フィートのファツィオリ(Italian Grand)まで、これまでのタイトルが大型のコンサート・グランドを音源化したものだったので、次はどのブランドのグランド・ピアノをリリースするのかと思っていたら、新作は4種類のアップライト・ピアノを収録したタイトルでした(合計50GB)。
- Modern Upright – Yamaha® U5 Upright
- Vintage Upright – 1914 A.M. Hume Upright
- Honky Tonk, Barroom Upright – 1915 Packard upright
- Tack Piano – 1900年代初頭のハンマーフェルトに鋲をさしこんだピアノ
ブースに勢揃いしていたSynthogyスタッフ(サウンド担当のジョー・イエラルディ、エンジン担当のジョージ・テイラーからセールス担当のクリスチャン・マーティアノまで、全員Kurzweil出身!)に、「なんでアップライトを?」と質問したところ、答えは明快で「Ivoryユーザーの作曲家、アーティストから最もリクエストが多かったのが、アップライトだったから」ということです。
ビートルズ、ローリング・ストーンズから、コールドプレイ、PJハーヴィまで、大型のコンサート・グランドを調達する予算に困っていないのに、あえてアップライト・ピアノを使ってレコーディングするアーティストが多いように、バンドの中で必要とされるサイズ感、弾き語りで必要とされる親密さなど、アップライト・ピアノが必要とされるシチュエーションは、意外に多いようです。
また、演奏者ではなく聴衆側に向かって最適な音が鳴るよう設計されたグランド・ピアノとは異なり、アップライト・ピアノは演奏者のポジションが最高のリスニング・ポイントとなるので、日常の練習、作曲時に演奏するには、グランド・ピアノよりしっくりくることが多いのではないか、とも語っていました。
実際に、KAWAIの88鍵盤MIDIキーボードに座ってヘッドフォンで演奏してみると、その親密さは尋常ではありませんでした。Ivoryおなじみの「ハンマー・ノイズ」パラメーターを若干上げてみると、目の前で「コトン、コトン」と動く木のハンマーとフェルトの感触まで実感できるので、演奏する喜びを感じることができます。ヴェロシティ・レイヤーが10段階あるパッチでも、ピアニッシモからフォルテまで自然に反応するので、作曲時からミックス時まで使いやすい音源になりそうです。
特に、Yamaha® U5を収録した「Modern Upright」パッチは、日本のユーザーには「自分が育ってきたのはこの音だ!」と手を打ちたくなる人も多いでしょう。ただ、まじめに自宅のピアノをメンテナンスしてこなかった人は、「たしかに家のピアノも、調律してもらった直後はこんな音だったよな」と、反省させられるかもしれませんが…
「Yamahaに知人がいるため、最高のピアノを入手することができた」というU5にくらべ、他のピアノの選別には苦労したそうです。特に最適な「ピンテージ・アップライト」をみつけるのは大変だったようで、「ピアノ・テック、調律師、販売店、クレイグス・リスト(売ります・買いますクラシファイド)など、あらゆるルートを利用した。この、1914 A.M. Humeに出会うまで、200台は試したかな」ということです。
また、ホンキィ・トンク/バールーム・ピアノも、求めるサウンドのピアノを探していたら、米国の人気TV番組「Cheers」のロケ現場となっているボストンの「Cheers Bar」に行き着いたということなので、NAMMショーでは「おお、あの音か!」と大好評だったようです。たしかに、シンセ・プリセットによくある「単にデチューンさせました」という音とは一線を画する、雰囲気抜群の音になっています。
ソウル、ケルト音楽、ニール・ヤングからソニック・ユースまで愛用者の多いタック・ピアノ(ハンマーフェルトに鋲をさしこんだピアノ)も、「弦を叩く」感じに慣れた身体には新鮮な、「弦をはじく」感じが指に伝わる秀逸なできばえです。
…と、私たちがSynthogyブースに長居をしていると、スティービー・ワンダーが現れました。楽器から自分なりの奏法をあみだすのが得意なスティービー・ワンダーらしく、ホンキィ・トンク/バールーム・ピアノの音に触発されていろいろなフレーズを繰り出している間にブースには人だかりができ、ブース周辺は興奮に包まれました。
スティービー・ワンダーは、Kurzweilの高価なフラッグシップ機「K250」の数少ない愛用者の一人だったので、Synthogyのスタッフとは旧知の仲なのですが、スタッフに「こんな音は無いか?」とリクエストを入れながら試奏してたようです。その中で、「まさに、2週間前のレコーディングでタック・ピアノが必要だったんだよ。その時にこれがあったらなぁ。でも、ツアーではこれを使わせてもらうかもしれないよ」と語っていたそうなので、今後の演奏で耳にすることになるかもしれません。
SpectrasonicsがTrilogyを始めて公開した時など、これまでのNAMMでも、スティービー・ワンダーが試奏しながら音楽を生み出す瞬間は何度か目にしてきましたが、「スティービー・ワンダーがNAMMで長時間試奏した製品は、ヒットする」というジンクスもあるので、このIvory Upright Pianosも大ヒット製品になりそうです。
なお、Ivory Upright Pianosは、単なるIvory拡張音源ではなく、スタンドアローン/AU/RTAS/VSTプラグインのIvoryエンジンが同梱されているので、Ivoryをお持ちでないかたも「始めてのIvoryシリーズ」としてお使いいただけます。
問題
取材中、Synthogyブースに現れたビッグネームミュージシャンは?
(1) スティービー・レイ・ボーン
(2) ワンダーミンツ
(3) スティービー・ワンダー
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