3rd Day Report / Spectrasonic
Stylus RMX拡張音源多数登場 !
2004年のNAMM & AESショーで大きな話題となった後、国内でも年末ギリギリにリリースされたStylus RMX。いつも、一つの製品に1年以上、じっくりと時間をかけるSpectrasonicsなので、今年のNAMMショーでは大きな新製品の発表はあり ませんでしたが、Stylus RMXの拡張音源「SAGE Expander」シリーズと、Stylus RMX ver. 1.2で追加された点を中心にデモを行っていました。 6タイトル発売になる「SAGE Expander」シリーズの中で、特に耳を引くのは、Retro Funk、Back Beatといった「生ドラム」を中心にしたライブラリーでした。

Stylus RMXのコア・ライブラリーの中心となっている、サウンドデザイン力満開のビートも良いのですが、時には生ドラムよるベーシックなトラックも欲しくなる ものですよね。Sealのアルバム(トレバーホーンのプロデュース力の凄みが光る名盤が多い!)でも欠かせないドラマーとなっているエイブラハム・ラボ リエルJr.によるプレイを納めたBack Beat、レイドバックしたフィーリングが抜群のRetro Funkといった生ドラムループは、カオスデザイナーとの相性も抜群でした。ループ全体にカオスデザイナーをかけた時は、「こうやって、やみくもに、常 にフィルだか即興だかわからないプレイをし続けるドラマーっているよねー」とウインクして笑いをかっていましたが、その後、エディットグループで4分音 符を固定したまま他のビートだけにカオスデザイナーをかけていくと、ビートの頭をタイトに支えつつ、裏拍では常に微妙な即興を混ぜてくれるドラマーのよ うに鳴っていました。 その他「Liquid Groove」という、ひんやりとしたエフェクトの施されたパーカッション&ドラムループ集もデモしていましたが、最近のStingのアルバムそのまま の音なので、驚かされました。ここ数枚のStingのアルバム・ブックレットのSpecial Thanks欄には、かならずSpectrasonicsやEric Persingの名前がクレジットされていたのには、こんな訳があったのですね.... Stylus RMX本体のアップグレードver. 1.2では、ラジオディレイ、スプリングリバーブといったローファイ系エフェクトの他、滑らかで密度の濃いリバーブや、各エフェクトのプリセットが大量 に追加された他、Pro Tools v6.7マルチアウトへの対応など細かいアップデートがなされているようです。Stylus RMX登録ユーザーは無償アップグレード可能ということなので、ユーザーの方はRMXコミュニティページを確認してみてください。 ところで、意外なほど使えるStylus RMXの内蔵エフェクターですが、どうもその開発には、価格を超えた音楽的なプラグインで有名なNomad Factoryが協力しているようです。Stylus RMXのビンテージリミッター等の音が好きな人は、Nomad Factory製品もチェックしてみると良いでしょう。

----- ILIO SAGE Expander Spectrasonicsの隣のILIOブースでは、ILIO社によるSAGE Expanderが発表されていました。 ILIOブランドといっても、中身はEric Persingがプロデュースしている「Ethno Techno」(バシリージョンソンによるパーカッション・ループ集)の他、コンテンポラリーなブレークビーツ・サウンドが米国のCM、TV音楽で使わ れまくった「Skippy's Noizebox」、「Skippy's Big Bad Beats」などを、SkippyことJohn Lehmkuhl本人がデモしていました。 さすが、クリエイターのSkippy、各鍵盤に異なるループをアサインしてリアルタイムでミックス・プレイできるGroove Menuを用意して、即興でビートを組み合わせつつ、MIDI Learn機能でアサインされたKontrol 49のツマミでカオス、LFO、フィルターなどをガンガンに動かしていくデモは、本当にカッコ良いものでした。 なお、ILIO製のSAGE Expanderには、Phat Fingersから抜粋されたファンキーなギター・カッティング、トランスフュージョンから抜粋されたスウィープ・サウンドなどがボーナスで入っている のですが、そうしたドラム以外の「ピッチ」のある楽器音をStylus RMXでミックスする様子は、新鮮でした。ギター・カッティングにカオス・デザイナーをかけようとした時は、「それは、無理があるでしょう」と思いまし たが、結果は、本当に即興でフレーズを微妙に変化させているギタリストのように鳴ったのには驚きました。ひょっとしたら、ここに、 Spectrasonicsが次の世に問う新製品のヒントがあるのかもしれません。 思えば、REXファイルも読み込めるStylus RMX。家に帰ったら、ドラムンベースネタのエレピ、ベースなどを納めたAMGのCDをコンバートして遊んでみようと思います。