マイク比較

はじめに

音を言葉で語ることは非常に難しいとこだと思います。まずは、今回の特集の音声ファイルを聞いていただくのが一番ですが、聞いていただきたいポイントと、どのような理由により音に違いが出るかをご説明したいと思います。

まずは、マイクの種類。コンデンサー、ダイナミック、リボンと3種類のマイクが有ります。これらは、どのように空気振動を電気信号に変化するかの違いとなります。代表的な2種類(コンデンサーとダイナミック)の説明を簡単に。

代表的なマイクの種類 - コンデンサーとダイナミック

コンデンサーマイクはマイラーフィルムと呼ばれる薄い膜により振動を拾いま す。マイラーフィルムが振動するときに生じる微弱な電気信号をマイクの内部のアンプにより増幅して出力しています。この内部のアンプの駆動方法がトランジスターか真空管かで細かくは種類が分かれます。

コンデンサーマイクは、内部で増幅をしないとならないくらいの微弱な信号しか振動板で発生させることが出来ません。しかし、この方式のマイクが多数発売されているこの方式の特徴は、非常に薄く軽い振動板を使用することによりレスポンスのよい、広帯域の振動を拾うことが可能、さらにアンプを内蔵していることにより、ここでの補正や特徴付けが可能となっています。

一方、ダイナミックマイクのマイクは、コイルと磁石に依る電磁誘導により振動を電気信号に変換します。乱暴な言い方をしてしまえばスピーカーと同じ方法により逆スピーカーとも言うべき方法で電気信号を取り出します。コイルを動かすムービングコイル方式が主流です。特徴はなんといっても振動を受け止める素子に質量が有ることに依る大音圧への対応とエッジの強すぎない物理的なブレーキによるダンピングの効いたサウンドが特徴となります。

コンデンサーマイクの構造の種類

次は、一番多くの種類のマイクが発売されているコンデンサーマイクを掘り下げたいと思います。コンデンサーマイクにも大きく2種類の構造的な違いがありラージダイヤフラムとスモールダイヤフラムのマイクが存在します。

これは、単純にダイヤフラムのサイズが違うということなのですが、この違いによりサウンドには大きな変化が生まれます。先ほどの説明にもあったようにコンデンサーマイクのダイヤフラムは数ミクロンの薄い膜を使用します。

これが、空気振動により震えることにより電気信号を生じるのですが、空気振動を受け止め自身が震えた後に振動を止める為の仕掛けは無く、自身の張力により徐々に振動が収まります。そのため大きなラージダイヤフラムを採用したマイクは、その大きさにより、ダンピングは遅い傾向があります。

しかし、その大きさ故に低域に特徴が出やすく、ソロマイクに向いた、ニュアンス重視のサウンドを得ることが出来ます。逆にスモールダイヤフラムは、素早いダンピングにより切れの良いサウンドとフラットな特性を持つマイクが多く存在します。

ヴォーカル用マイクを選ぶポイント

ボーカルの様な繊細なニュアンスを捉える必要のある場面ではコンデンサー、特にラージダイヤフラムの物が多用されているのは、上記の様な構造的な違いによる部分も多いことがお分かりいただけたかと思います。

サウンドの比較において、一番重要なのは、やはり音源とのマッチングですが、これに関しては、一番良いのは実際に使ってみるとこだと思います。複雑な倍音構成を持つアコースティックな音源を捉える為には、その楽器の何を残したいか、何を聞かせたいか、基音を強く出しメロディーラインを印象づけたいのか、倍音を多く含んだきらびやかなサウンドがいいのか、色々なファクターが有り、それらがうまくバランスされたサウンドが良い音ということになると思います。

また、同じマイクでもセッティング次第で様々なサウンドを捉えることが出来ますので、まずは、出来るだけ平均点の高いオールマイティーなマイクを使用し、セッティングで音を作ることをお進めします。その先に、様々な個性的なサウンドを持ったマイクで、それでしか録ることの出来ないサウンドを目指すのがよいでしょう。

ここでは、オールマイティーで最初の一本としてお勧めできるマイクを、ボーカル録音中心とした想定で、比較試聴していきたいと思います。

音楽的にチューニングされたNeumann / U87ai

U87ai

再生にはFlash Playerが必要です

再生にはFlash Playerが必要です

日本では録音用マイクといったら、まずはこれを外すことは出来ないでしょう。Neumannのメーカーとしての特徴でもありますが、非常に音楽的なチューニングがされているマイクです。倍音のバランス、基音の芯の太さ、絶妙なスピード感によりどのような楽器にもマッチする懐の深さがあります。

改良を重ねて、現在発売されているモデルではデジタルレコーディングに対応した高域の伸びとしっかりとした輪郭を手に入れています。試聴用ファイルで基音が奏でるメロディーラインの聞こえ方、高域の伸びを他のマイクと比較していただければと思います。また、ニュアンスに関しても、全てが、音楽的に好意的に聞こえるのがお分かりいただけるかと思います。

スムーズなサウンド持ち味のBlue / Bottle

Bottle

再生にはFlash Playerが必要です

再生にはFlash Playerが必要です

その巨体から、図太いサウンドを想像される方も多いかと思いますが、非常にスムースなサウンドが持ち味となります。真空管のマイクでは有りますが、しっかりとした設計により、優れたS/Nと高い音圧レベルへの対応も有り、非常に使いやすい一本となっています。

真空管の持つシルキーなサウンドが、試聴用ファイルでも確認いただけるかと思います。決してブーミーではないけれども存在感のある低域、スムースで、シルキーな高域と魅力にあふれたサウンドを奏でます。

オールマイティーViolet Design / The Globe Standard

The Globe Standard

再生にはFlash Playerが必要です

再生にはFlash Playerが必要です

ボーカル用として開発されたとのことですが、この基音の存在感は、さまざまな音源に対し好意的なサウンドを奏でます。アンサンブルの中でこの存在感は、使い勝手に優れたオールマイティーなマイクといっても良いでしょう。

こういったマイクは、多少オフにセッティングをしても十分な存在感を示し、埋もれないメロディーラインを捉えることが可能となります。その存在感は、十分に試聴用ファイルでも確認いただくことができると思います。とはいえども、最新設計のこのマイク、高域に関してもフラットに伸び、自然な抜けを持っています。こういった傾向を持つビンテージのマイクが高域が足りない傾向に有るのとはひと味違ったサウンドとなります。

スピード感と存在感BRAUNER / Pahnthera

Phanthera

再生にはFlash Playerが必要です

再生にはFlash Playerが必要です

ドイツのメーカーBRAUNERのWARMラインとして発売されたこのマイク。BRAUNERの持つ、スピード感のあるクリアなサウンドそのままに、艶のある中低域を手に入れ圧倒的な存在感を示すサウンドを奏でます。

音に存在感を付け加える方法論として、近接効果に代表される、低域の膨らみを利用する、豊かな倍音とナチュアルなコンプレッション、歪みを付け加える真空管という素子を利用する、というのが一般的ですが、このマイクは、それら今迄の方法論で生まれるサウンドのニュアンスを理解した上で、音の立ち上がりのスピードを速くすることにより音が、一歩も二歩も前にくる存在感あふれたサウンドを捉えることが出来ます。試聴用ファイルでは、最大の魅力であるそのスピード感とそれにより引き出されている存在感を確認下さい。


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