3rd Day Report / WAVES
ピッチ修正という王道に真っ向から挑んだ、意欲作"TUNE"発表。
今年に入ってから、プロセシング・アクセラレータ"APA32/44M"、PRS Guitarsと共同開発したDIとギター・エフェクト&アンプ・プラグインを組み合わせた"GTR"と、積極的に新製品を発表してきたWavesですが、このAESでも驚きの新製品を用意していました。


■ TUNE
DAWの黎明期、コンピュータを使ったレコーディング・システムに懐疑的なエンジニアでも、ピッチ修正だけはプラグインにかなうものはないので、3348などからPro Toolsにボーカル・トラックを送って修正作業をしていた人がいる、という話を聞きました。 今回Wavesが発表したTUNEは、そんなピッチ修正という王道に真っ向から挑んだ意欲作です。


まずユニークなのが、単純なプラグインではなく、ReWireを使っているところ。それは、スタート/エンド・ポイントを選んで繰り返し再生しながら、最適な音程表現が得られるまで追い込んでいく作業を、ホストのロケーター、トランスポート画面とプラグイン画面を行ったり来たりせず、TUNEの画面上で行うことに集中して作業できるように、という配慮のようです。TUNEはReWireのホストとのシンク機能をフルに活用しているので、TUNEのロケーターを使って再生するだけで、DAWのセッションの再生/ストップをコントロールできるので、ReWireアプリケーションとホスト、といった区別はほとんど意識に上ることがないでしょう。

使用方法はとても簡単で、修正したい箇所を選んで、ルートとスケールでキーを選ぶだけ。白鍵/黒鍵の区別が一目瞭然のピアノロールに、元のピッチと修正後のピッチが現れるので、比較試聴し、OKなら採用するだけです。もちろんオート設定が気に入らなければ、Speed(修正の始まるタイミング)、Note Transition(音程間の移動時のスムーズさ)、Ratio(修正の強度)といったツマミで修正具合を調整することができるだけでなく、ヴィブラートを抑えたり、強調したり、といったこともできます。

TUNEは、音程ごとに波形をブロック化してくれるので、音程認識が半音単位でずれていた、という場合は、そのブロックを上下にドラッグするだけで求める音程にも移動可能。元のボーカルラインの3度上に別のラインを作りたい、という場合も簡単です。しかも、一世を風靡したオート・チューニング・プラグインとは異なり、フォルマントも維持する設計なので、数度移動しても鼻をつまんだような音になる心配もないようです。会場では、実際に3度以上移調するデモを見せてもらいましたが、単に元の声のキャラクターが維持されるだけでなく、移調後の音への変化がとても滑らかなのには、驚かされました。


■ DeBreath ボーカル・トラックでは避けられない、息継ぎ音の部分を検出して、抑えることができるプラグイン。息継ぎ音の全くないボーカル・トラックというのも不自然ですが、「Breath」ボタンで検出された息継ぎ部分の音だけを抜き出して試聴しながら、どれくらい残すかをフェーダーで調整できるので、とても便利です。デモをしてくれた人の話では、アメリカでは、数人のラッパーやコーラスが絡みあったR&B、ヒップホップ系のセッションの息継ぎ部分をフェードやオートメーションで修正する作業だけで1日を費やすこともある、ということなので、このプラグインで節約できる時間は半端ではなさそうですね。

元エンジニアによって設立され、いまも現場で録音、ミックス作業にかかわるエンジニアが重要なポジションにいるWavesは、プラグイン界の老舗、大会社といったイメージとは異なり、意外なほど現場感覚が反映されているようですね。

TUNE、DeBreathは、Renaissance Channel、Renaissance DeEsser、Doublerとバンドルされたネイティブ・バンドル「Vocal Bundle」として141,750円(本体価格135,000)で発売予定。

「Vocal Bundle」は、他のWavesプラグイン同様Pro Tools、Cubase SX、Nuendo、Logicなどで使える仕様なので、ボーカルを扱う人は、しばらくWaves情報から目を離せませんね...