Since1962 アメリカンロックの歴史が刻まれた名門スタジオ
とあるRock関係の本にツェッペリンの<天国への階段>を録音したスタジオはLAのSUNSET SOUND、と明記してあった事だけをきっかけに今回インタビューを申し込みしました。
結果は以下のレポートとなりますが、最初に今回SUNSET SOUNDをくまなくご案内頂いたGeneral ManagerのCraig Hubler氏に感謝の念を。
SUNSET SOUNDは全部でStudio1〜3までの3つの部屋を有しています。今回私達が訪れたタイミングではStudio2でJohn Legendが録音中とのことでしたので、今回のレポートではそのStudio2以外をメインにレポートをお届けさせて頂きます。
SUNSET SOUNDがオフィシャルにスタジオとして稼働を開始したのは1962年になります。初代のオーナーはSalvador Tutti Camarata氏でその1962年以前は同じ場所で主にディズニー映画の音入れを行っていたとのことです。おおよそ1958年〜1961年の期間とのことで、モノラル録音の時代に初めてセパレートされたブースを用いたとのこと。
さて1962年のオープン時はStudio1のみで運営、その後Studio2、Studio3と併設されたため、お互いのスタジオ間が完全に分離した形式になっています。これは意図したことでは無いのかもしれませが、結果アーティストのプライバシーの保護に一役買う結果に繋がったそうです。
で、その部分に一番惹かれたのがプリンス(!!)で名盤1999やPurple RaineはStudio3で制作されたそうです。ちなみにそれぞれのスタジオの正式名称は前述のStudio1〜3ですが、例えばプリンスがワーナー時代の諸作品を作成していた期間はStudio3をプリンス部屋、1970年代初頭にこれまたRockの超名盤The Rollin Stonesの<ベガバン>、<メインストリートのならず者>を録音していたStudio2はStones部屋等その部屋をその時期使用しているアーティストの名前で呼ぶことが多いそうです。
余談ついでにですが、こちらのStudio3を気に入ったプリンスはミネソタの自宅にコピーしたスタジオを制作したそうです。。。ビッグ・アーティストはする事が違いますね!?
ここで今少しSUNSET SOUNDの深い歴史に触れてみましょう。SUNSET SOUNDのロビーには処狭しとミリオン受賞の額が飾られているのですが、その中にドアーズとバッファロー・スプリングフィールドの1960年台中期〜後期のレコーディング風景の写真があります。(ただ割りと雑に写真は貼られています。。。)
結局ほぼ全てのドアーズの作品はここSUNSET SOUNDで録音されました。それ自体は事前情報でも知っていたのであまり驚きは無かったのですが、バッファロー・スプリングフィールドのレコーディング風景の写真には正直驚きました!!当然ながら若き日のNeil YoungとSteven Stillsが!!是非SUNSET SOUNDに行く機会がありましたら、見て下さい。かなりレアなショットです。
余談ですが、前回お伝えしたFrank Zappaの1969年の名盤<Hot Rats>も一部こちらのSUNSET SOUNDで録音されいます!!かなりざっくりとした言い方ではありますが、1960年代はDoorsがStudio1を、70年代はStudio2をStonesが、80年代はStudio3をPrinceが主に使用していたと言えます。(ちなみに日本人アーティストも1980〜90年代には訪れていただそうです。)
各スタジオの機材をチェック!
ではここで各スタジオの機材を見てみましょう。
Studio1
1984年にカスタムビルドされた完全自社製のコンソールです。フェダーの上にAPI EQ 550が埋め込まれているのがご覧いただけますでしょうか?
フェダーはNEVE製で、なんとも不思議な後継ですね。Mic Preは自社でデザインしたモデルだそうです。往年の機械が並ぶ中、もちろんProToolsも稼働しております。ProToolsと並べて配置されたStuderのオープンリールは現在でも稼働しておりますが、マルチレコーダーとしての用途よりも、音色付けのための「エフェクター」としての役割が主だそうです。
広いメインブースももちろん当時のまま。古くはディズニー映画から50年以上もの間、様々なアーティストの音楽を、この部屋は聞いてきたということですね。
Stusio2
オールドNEVEが入るスタジオ2。前述でもあったように、John Legendが録音中との事でしたここもぜひ見学したかったところです。(右手に見えるのがStudio2への入り口)
Studio3
一番遮音性が高いスタジオが、こちらのStudio 3〜通称プリンス部屋ですが、なんと、こちらの部屋は1977年に作られてから、一度も改装されていないそうです。作られてから35年以上もの間、その音色が変わらず様々なアーティストに愛され続け、プリンスもそのうちの一人だったと思うと感激です。
何気に驚いたのが、このスタジオのCUE BOX。何と市販の小型ミキサーを改造し、底面にELCOを取り付けられた形状をしておりました。マルチケーブルをそのまま接続という設計だそうです。ブースの端に固められたミキサー達に思わず二度見をしてしまいました。
こちらもマシンルームにあったStuderですが、こちらも音色付けのエフェクターとして稼働している様です。ここまで各部屋にオープンリールがあって、それがまだ動作するという事実に驚きですが、その使われ方にも驚きでした。
メンテ部屋〜THE SHOPと看板が掲げられたメンテナンスルーム。
とても広いのが第一印象でしたが、部屋の各所に作業しやすいように配置された計器や工具に「いいなぁ・・・。」とぽつり。壁にも所狭しとゴールデンディスクとゴールデンオープンリールも!
この部屋が、各スタジオの機材を支え、これたの名誉の数々を生んだと思うと感動も一入です。ふとテーブルに置かれたVPR500モジュールを発見。なんとこちらは、スタジオ設立50周年を祈念して発売されたMic PREモジュールだそうです。これらも実際に売り物だそうですよ。
人気の秘密 〜多くのミリオン輩出、常に最高のコンディション
スタジオ見学中に、Craig Hubler氏にスタジオ経営の秘訣を伺ったところ、やはりこの部屋を使用したユーザーがヒットを生み出した事に対して口コミが広まっていっている事が、このスタジオの稼働率の秘密だそうです。ここSUNSET SOUNDで制作された作品の多くがミリオン受賞などの栄光に輝いている訳ですが、口コミでの影響はインターネット社会の現在でも健在だそうです。もちろん、スタジオの状態をいつでも最高の状態にしておくことも大事だとおっしゃっておりました。
さてみなさんSUNSET SOUNDはいかがででょうか?私は1970年代生まれですが、割りと古めのRockが好きなので、その名盤が録音された同じ場所に立てた事にもの凄い感動を覚えました。特にStudio1の説明の際にGeneral ManagerのCraig Hubler氏から「ここではDooresの他にJanis Joplinも録音していたよ。」の一言に正直目眩が。。。う〜ん、今回NAMMレポートがメインではありますが、その滞在中のハイライトがここにあったことを正直にお伝えさせて頂きます。
◉SUNSET SOUND
www.sunsetsound.com