2009.01.17

Waves

Alicia KeysやMary J. Bligeら多くの大物アーティストを手がけるトップ・エンジニア:トニー・マセラッティのミックス術がプラグインとして登場!!!

 

dsc07773

 このところ以前にも増して勢いのあるWaves。言わずと知れたNo.1プラグイン・デベロッパーです。そんなWavesは今回、「Waves Signature Series」という新しいバンドル・ラインを発表していました。「Waves Signature Series」は、特定のソースに適したプロセッシング・フロー(シグナル処理の流れ)をそのままプラグイン化した製品で、著名なエンジニアやプロデューサーとのコラボレーションで開発されます。例えば、ニューヨークのあるエンジニアは、ベースのトラックに1176LNとAPIのEQ、そしてフランジャー・プリセットのSPX90を必ずインサートしますが、「Waves Signature Series」はその処理を丸ごと「ベース用プロセッサー」として1つのプラグインに収めてしまおうという試みなのです。これまでありそうで無かった、全く新しいタイプのプラグインですね。

 その第一弾としてリリースされるのが、「The Tony Maserati Collection」。Mary J. BligeやBeyonce、Alicia Keysら数多くの大物を手がける、現代のR&Bのプロダクションを代表するエンジニア、トニー・マセラッティとのコラボレーションによって開発されたプラグイン・コレクションです。「The Tony Maserati Collection」は、以下の6種類のプラグインで構成されます。

large_maserati_vocals

 1)Maserati VX1(ボーカル・トラック用プロセッサー)

large_maserati_drums

 2)Maserati DRM(ドラム・トラック用プロセッサー)

large_maserati_acoustic

 3)Maserati ACG(アコースティック・ギター・トラック用プロセッサー)

large_maserati_harmonics

 4)Maserati HMX(ハーモニック・ジェネレーター)

large_maserati_bass

 5)Maserati B72(ベース・トラック用プロセッサー)

large_maserati_guitar

 6)Maserati GTi(ギター・トラック用プロセッサー)

 このようにボーカル、ギター、ベース、ドラムと、楽曲の基本となるトラックのプロセッサーはすべて網羅されています。

 例えば、Maserati VX1はEQ、ダイナミクス、ディレイ、リバーブの組み合わせで成り立っており、ボーカル・タイプに合わせて3種類のアルゴリズムを切り替えることが可能。その中の1つ、“Contour 3”というアルゴリズムには“Air”というパラメーターが用意されており、ボーカルにシルキーな“艶”を付加することができます。R&Bのトラック制作をしている人にとっては、このMaserati VX1だけでも“買い”なのではないでしょうか。WavesのWebサイトに掲げられている「ヒット・サウンドが欲しければ、The Tony Maserati Collectionで素早くトラッキングを行ってください」というキャッチ・コピーにも思わず頷いてしまいます。

WAVES_M_ST

 また、ドラム・トラック用のMaserati DRMも強力。キック/スネア(トップ)/スネア(ボトム)/ハイハット/タム/オーバーヘッド/ルームという7種類のアルゴリズムをソースに合わせて選択したら、あとはSensitivityやThump(低域の周波数)、Trebleといったいくつかのパラメーターを(適当に)調整するだけで、カッコいいドラム・サウンドがすぐに出来上がってしまいます。うーむ……これは想像以上にヤバい製品かもしれません!

dsc07838

 今回、NAMMの会場にはトニー・マセラッティ氏本人がやって来ていて、幸運にもじっくりとお話する機会に恵まれました。マセラッティ氏にその開発プロセスについて伺ったところ、まずは処理前のソース(裸のトラック)と処理後のソース(ファイナル・ミックスを終えたトラック)をWavesに送り、それをプログラマーがQ-Cloneなどを使って解析、あとはそこからいろいろと調整していく……というのが基本的な流れとのことでした。マセラッティ氏、意外にもアウトボードをメチャクチャ多用しているそうで、最終的なミックスもPro Tools|HDからApogeeのDAを通ってChandlerのMini Rack Mixerで行っているとのこと。Lexicon PCM70やヤマハREV1といった古いアウトボードも手放せないモノが多いらしく、そういった多くの機材で味付けされた処理が「The Tony Maserati Collection」に凝縮されているというわけですね。

 非常に魅力的な新製品である「The Tony Maserati Collection」。R&B/ヒップホップのトラック制作に関わる人はもちろん、Pro Toolsで音楽制作を行うすべての人必携のプラグイン・スウィートと言えるかもしれません。エンジニア修行している人は、ミックスの勉強にもなると思います。

 唯一、残念なのはネイティブ版(RTAS/Audio Suite/VST/Audio Units)のみのリリースで、TDM版が提供されないということ。これについては、将来的な対応予定を含めて現在Wavesに確認中です。

 それではトニー・マセラッティ氏本人のデモンストレーションをご覧ください!


1 Star2 Stars3 Stars4 Stars5 Stars

現在、5点満点中、4.2点です。
この記事に対して、30名の方が採点に参加してくれています

Loading ... Loading ...

Winter NAMM Showは、数ある音楽機材のイベントの中でも、世界中のデベロッパーから新製品、新技術が発表される世界最大規模の祭典です。現地のレポート・スタッフ他、このサイトをご覧いただいている皆さんが楽しめるようなコメントをお待ちしております! (スタッフへの励ましのお言葉もお待ちしています!)

2009.2.2、コメントの受け付けは終了致しました。感想、ご意見をお寄せ下さった皆様、ありがとうございました!

  1. いいですね、このプラグイン。
    でも64bitに対応するのはいつなのでしょう??

    Comment by 久保田 昌寿 — 2009 年 1 月 17 日 @ 10:47 PM

  2. 基本を網羅したWavesは新しい流れになってきていますね。
    The Tony Maserati Collection
    ルックスはなんだか暖かい音を出してくれそうですね,
    実際の音はどうなんでしょうか?

    Comment by nobe — 2009 年 1 月 17 日 @ 11:26 PM