1. 『The Modular Strikes Back』スタート!!
  2. DAWとモジュラーシンセの連携・前半
  3. DAWとモジュラーシンセの連携・後半
  4. シグナル・フローについて
  5. フィルター(VCF)について
  6. VCAについて
  7. LFOについて
  8. 2015年オシレーター・ベスト5
  9. BetaStep Pro実戦紹介!
  10. BetaStep Pro実戦紹介!Part2
  11. modularプリセット"Drums -Dist Kick"
  12. NAMM注目のモジュラーシンセを紹介!
  13. Make Noise「Maths」紹介!
  14. Tiptop Audioシリーズ紹介!
  15. Tiptop Audio 紹介! Pat2
  16. シグナルのまとめ方
  17. モジュラーシンセスターターキット『RolandSYSTEM-500 Complete Set』紹介!
  18. モジュラーシンセスターターキット{RolandSYSTEM-500 Complete Set』紹介!その2
  19. Moog Mother-32 紹介!
  20. Moog Mother-32 紹介! 後編
  21. LFOでモジュレーションをかける 解説編
  22. LFOでモジュレーションをかける 実践編
  23. これぞモジュラーシンセならではの音作り!
  24. 続・これぞモジュラーシンセならではの音作り!
  25. Mutable InstrumentsのBraidsを紹介!
  26. iOS用 moog/Model 15 Appを紹介!
  27. モジュラーシステムを組み合わせる
  28. Make Noise社Erbe-Verbを紹介!!
  29. チップチューン特化モジュール。Mutable Instruments/Edges
  30. ありそうで意外とないルーパー系モジュール、4ms/Dula Looping Delay(DLD)紹介!
  31. ディレイ系モジュール、Intellijel社のCylonix Rainmaker紹介!
  32. ケース選びは1Uモジュール選びから!
  33. LAモジュラー必需品!Make Noise/Pressure Points 紹介!
  34. 世界で唯一のカルテシアンシーケンサー!Make Noise/René紹介!
  35. シンプルなのに複雑!?Evaton Technologies/CLX
  36. カオスなリズムを刻め!Mutable Instruments/Grids
  37. ステップ打ちで簡単楽しい〜!Mutable Instruments/Yarns紹介!
  38. 文にするにはちょっと複雑?WMD/Geiger Counter紹介!
  39. 予測不能の金属的サウンド!Mutable Instruments/Rings紹介!
  40. 変わり種モジュール - Music Thing Modular Mikrophonie Contact Mic Module!!
  41. ウッディーパネルが際立つサンプラー、Bastl Instruments/grandPAを紹介!
  42. グローバルスタンダードともいえる、Tiptop Audio/Z-DSPを紹介!
  43. シンプルなサンプラー、QU-Bit/Waveを紹介!
  44. オシレーターシンクとは
  45. オシレーターシンクとは・2
  46. モジュラーシンセとDAWを連携/Main Stage3
  47. モジュラーシンセとDAWを連携/Main Stage3 その2
  48. オシレーター、Make Noises社 tEL HARMONIC紹介!
  49. 続・tEL HARMONIC紹介!
  50. 予約完売のレアモジュール『O’Tool Plus』ご紹介!
  51. コラム初登場メーカー | Steady State FateよりGATESTORMを紹介!
  52. コラム初登場メーカー | Steady State FateよりGATESTORMを紹介!(2)
  53. Mutable Instruments / Cloudsご紹介!
  54. なくてもいいは、あれば楽しい!Mutable Instruments/Warps紹介!
  55. 新進気鋭な新参メーカーRabid ElephantからKNOBSを紹介!
  56. ココイチ気になる製品をご紹介!"rossum electro-music/Control Forge" &"The Harvestman/Stillson Hammer mkII"
  57. Mutable Instruments / Cloudsご紹介!
  58. ありそうでなかったコンプ・モジュール"Intellijel Designs / Jellysquasherご紹介!"
  59. 簡単リズムシャッフル"ProModular / CLOQ" ご紹介!
  60. かつてない程、簡単操作!"1010 Music / Bitbox" ご紹介!
  61. 徹底解説!"Moog / Mother32"とDAWの連携術!
  62. 徹底解説!"Moog / Mother32"をパッチしよう!
  63. 徹底解説!"Moog / Mother32"実践パッチ第2週目!
  64. 徹底解説!"Moog / Mother32"実践パッチ第3週目!
  65. 徹底解説!"Moog / Mother32"実践パッチ第4週目!
  66. これぞまさにSoundComputer!Orthogonal Devices社 / ER-301
  67. 往年の名器、Roland社 / Music Composer MC-4
  68. パソコンとの同期演奏が可能なシンクボックス、Roland社 / SBX-1
  69. フィルターはクセがあるぐらいが丁度いい?intellijel社 / Korgasmatron II・Doepfer社 / A-124 VCF-5
  70. 厚みや抜け感を簡単コントロール!”Doepfer / A-115 Audio Divider & A-163 Voltage Controlled Divider”
  71. 極性の向きにはご注意を!モジュラーシンセ電源のお話
  72. フィルターの効きが素晴らしい!AJH SYNTH社のTransistor Ladder Filterご紹介!
  73. 最近購入のミキサーをご紹介!2hp / Mix & SSF/MIXMODE
  74. 地味だけど便利なモジュール!アッテネーター解説!
  75. パフォーマーには必須なモジュール!”スイッチ”解説
  76. Make Noise社より新サンプラーが登場!"Morphagene"紹介
  77. ポータブルキーボードを再定義する多機能性!"Arturia / KEYSTEP"紹介
  78. 波形の形はこれで決まる!VCA解説!
  79. ユーロラックサイズ初、お勧め空間系のエフェクター"Erica Synths社 / Black Hole DSP"ご紹介!
  80. 不安定なピッチをささっと調整!Quantizer紹介!
  81. コードを鳴らせるドデカモジュールALM Busy Circuits社/Akemie’s Castleご紹介!
  82. 最大16ch出力を実現!"nw2s社/IO"ご紹介
  83. DAWに取り込んだシグナルをApple Loopsとして保管の仕方
  84. モジュラーシンセ、始めたいけど何から買う?
  85. オススメは1ROWから!Roland Euro Rack Case / SYR-E84
  86. 遊べる組み合わせを考える。メインオシレーター"Mutable社Braids"解説
  87. 素直な音で最初におすすめ!"Mutable社のVeils"解説!
  88. Roland MC-4でCV/GATEをコントロール!東京遠征で使用する機材を一挙にご紹介!
  89. DIN SYNC同期でタイトなリズムを刻む!
  90. エンベロープ・ジェネレーターはADSRタイプがオススメ!Roland/540
  91. 一押しフィルター"Intellijel / Korgasmatron II"紹介!このフィルター○むんです!
  92. 1ROWのモジュールシステム、まとめ的なお話
  93. 12db or 24dbどちらがお好み?ローパスフィルターの話
  94. シンプルなオススメフィルターモジュールを紹介!
  95. アドバンスドなエグイフィルターご紹介!
  96. 非現実的パーカッションサウンドを打ち鳴らす!"Intellijel / Plonk"ご紹介!
  97. 空間/MOD/残響系エフェクトが凝縮!"Radikal Technologies / EFFEXX RT-1701"ご紹介!
  98. その場でレコーディング!?Alyseum / RECORD ご紹介!
【1】「『The Modular Strikes Back』スタート!!」

ロックオンカンパニーのWEBマガジンでLA Graffitiという連載も続けているんですが、急遽モジュラーシンセのコラムを書く事になりました。しばらくお付き合いのほどよろ しくお願いします。

Doepfer/A-100BS-2

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コラムのタイトルに何故「Strikes Back」を使ってるかというと、Star Warsも近々公開だから便乗すっか〜的なノリは勿論だけど、実に15年ぶりに僕自身もまたモジュラーシンセを使い始めたからなんですよ。 15年前、特に日本で手に入る製品は、DoepferかAnalogue Systemsの製品しかなくて、実際、僕のシステムはDoepferのA-100 BS-2というセットを基本にして、Analogue SystemsのThe Sorcerorというキーボード付きのラックにセットしたものでした。 当時どうしてモジュラーシンセを使っていたかというと、少しユニークな音、または極端にチープな音をアレンジの中に取り込みたい場合にとても便利だったからなんです。

Analogue Systems/The Sorceror

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それに僕のようにアナログシンセの基本を身体で覚えてる人には、Native InstrumentsのReaktor(このシンセはオブジェクト指向だけど概念的にはモジュラーシンセだね)をマウス使ってパラメーターの1つ1つをエディトしていくよりも モジュラーシンセでツマミを触っていった方が手っ取り早かったんですよ。しかし、当時モジュールの種類や日本で手に入るメーカーの数も少なくて、オシレーターもフィルターもそれほど数がなくて、段々飽きてきて一度手放してしまいました。

それから15年、特にここ数年すごい勢いでモジューラーシンセが盛り返してきて、世界には今Eurorack規格のモジュールがなんと1000以上あるそうです。15年前にはとても想像できなかったバリエーションの数!昔はなかったデジタルサーキットを搭載したモジュー ルもたくさん出てきたし、アイディア次第で本当に色んな事ができるようになった。それがまたモジュラーシンセを使い始めようかなと思った理由なんです。

今僕はLAに住んでいますが、LAのモジュラーシンセのイベントだとモジュラーシンセだけでパフォーマンスするのが流行っています。それはそれでカッコイイんですが、いきなりそこ目指すのは初心者には結構ハードル高いんです。それに今この原稿を読んでいる諸 氏も普段は僕と同じようにCubaseやLogic X等のDAWを使って音楽を制作している人がほとんどだと思います。ですから、このセミナーはそういうDAWの拡張としてモジュラーシンセを導入する場合を軸に次週から話を始めたいと思います。シンセの基本的な音作りをこ のスペースで最初から解説して行くと毎回それで終わってしまうので、そこは各自で自習しておいてください。当たり前ですが、モジュラーシンセは普通のシンセと違ってパッチしないと音が出ませんからね!

今週のキーワードを二つ CV&GATE

1)CV Control Voltageの略で音程をボルテージでコントロールします。A4=440hzは4.0Vになります。A3=3.0V、A2=2.0V、A1=1.0V、

2)GATE 音程に対して音が出ている長さ。モジュールによっては何かをトリガーする意味もあるので、Trigと表示されてる場合もあります。


瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【2】DAWとモジュラーシンセの連携・前半

Native Sessionsの様子

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11月5日に、東京より一足先にLAでもNative Instruments主催のReaktor6のためのNative Sessionsが開催されました。この写真はSahy UhnsのReaktorを使ったソロパフォーマンスの様子です。ゲストスピーカーとして映画「Mad Max:Fury Road」のサウンドトラックにも参加しているJunkie XLが登場したりもしました。会場は撮影スタジオだったんですが、立ち見が出るほどの超満員でしたよ!


Reaktorが今年6にバージョンアップして見た目もよりモジュラーシンセに近づきましたね。モジュラーシンセを理解する上ではReaktorで遊んでみるのは良い事だと思いますよ。ただこのセミナーで紹介するモジュラーシステムとReaktorは近いようで実は両者を楽器として見た場合にはかなり違うと言えます。

例えば先ほど紹介した、Sahy Uhnsのセッティングを僕がいきなり預かっても僕なりの表現をする事はかなり難しいんです。何故ならパフォーマンス用のMIDIコントローラー群のどのフェーダーに何がアサインされているかは僕は全く把握できないからです。

でも、モジュラーシンセであれば、他人のシステムがどんなに巨大でも、その場でパッチをしていけば自分なりのアプローチをする事が可能です。そういう意味ではピアノがステージの上に置いてあれば誰でも何かを表現できるのと同じように(例え指一本だけ使ったとしてもね!)、モジュラーシンセもパッチケーブルさえあれば自分の楽器として何かを表現する事が可能なんです。

さて、前回書いたように今週と来週はDAWとモジュラーシンセの連携を考えてみましょう。DAWで扱ってるMIDIデータでモジュラーシンセをコントロールできれば可能性は広がりますよね?まずはUSB接続のモジュールから。


Doepfer/A-190-3

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Doepfer A-190-3
東京だとこれが一番手に入りやすいかな?モジュラーシンセの老舗、ドイツのDoepfer A-190-3 または A-190-4。DAW側はUSBインターフェースとして認識するのでセッティングは簡単なはず。



Doepfer/Dark Link

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Doepfer Dark Link
Moduleサイズではないけどこんなインターフェースもあります。



Doepfer/Dark Energy2

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Doepfer Dark Energy2
実はこれもUSBからのデータをCV/GATEに変換してくれます。これはこれで小さいモジュールシステムでもあるので、入門としてはいいかも。



Kenton/USB-SOLO

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Kenton USB-SOLO
Kentonも日本で手に入りやすい製品ですね。僕もかなり前から使っていました。Modular System以外の規格(例えばKORG/MONOPOLY等)にも適応可能でCV/GATE以外にもRoland TR-808やTB-303等のSYNC同期にも使えます。



Expert Sleepers/FH1

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Expert Sleepers FH1
世界中で(?)ソールドアウトが続いて入手困難なイギリスのExpert Sleepers社のFH1。今日現在LAで在庫を持っているお店はないし、先週行ったNY/ブルックリンのお店も、どこも在庫がありませんでした。DAWから接続するには僕が最近Creator×Productで紹介したiConnectMIDI4+が必要となります(USBの向きが反対なので)。このリンク先のビデオの様にコンピュータを介さずにピッチ情報をCVとして、トリガー情報をゲートしてモジュラーシステムに送る事もできます。こちらはCV/GATE以外にも例えばMIDI側のベロシティーを送ったりもできるのでより複雑なコントロールが可能になります。

「Creator×Product」瀬川英史氏ページはこちら>>

FH1公式サイトはこちら>>

FH1参考動画はこちら>>


他にも幾つか製品が存在するかもしれませんが、以上のどれかがあるとDAW側からモジュラーシンセをコントロールできます。来週はExpert Sleepersがリリースしている、ソフトウエアとDAWで使っているI/Oの空きチャンネルを利用してCV/GATEをモジュールに送るSilent Wayを紹介します。以前ロックオンのメールマガジンのモーリー・ロバートソンさんのコラムでも既に紹介されています。そちらも要チェキ!

Silent Way公式サイトはこちら>>

今週のキーワードを二つ 「Trigger」、「ADSR」

「Trigger」
1)Trigger GATEとの違いはGATEは音の長さをコントロールするのに対して、何かを文字通りトリガーするための信号。鍵盤付きのシンセサイザーを演奏している時ってピッチデータだけを鍵盤で指定しているイメージがあると思いますが、実は鍵盤を叩く度にこのTrigger信号が次のADSRに送られているんです。

「ADSR」
2)ADSR 所謂エンベロープ。Attack-Decay-Sustain-Releaseの頭文字を取ったもの。フィルターの開閉やGATE信号が終了した後のリリースの長さ等を調整します。それ意外にもオシレーターにアサインするとLFOでは不可能なピッチの変化をプログラムしたりできます。

瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【3】DAWとモジュラーシンセの連携・後半

連載三回目ですが、そろそろモジュラーシンセを始めてみようかな〜と思い始めてる方もいるかなと思います。

どんなモジュールを買い揃えていくかももちろん大事なんですが、モジュール以外に必ず必要なのがケースです。特にお薦めがあるわけではないですが、意外にあっという間にモジュールが増えて行くと思うので、大きめのケースの方がいいと思います。僕は今は4msのケースを使っています。

「4ms Company」公式サイトこちら>>

このケースを選んだ理由は拡張性ですね。最初のうちはモジュールが多いと複雑で難しそうに見えると思いますが、実はモジュールがたくさんあればあるほど、音作りは簡単になります。何故かというと(連載が進むと段々分かってくると思いますが)、例えばADSRエンベロープが1つしかないと、オシレーター(ピッチの変化)、フィルター(音色の変化)、アンプ(音量の変化)のどれか1つにしかパッチできません。

スタックケーブル

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スタックケーブル(写真)を使えば同じADSRの変化を複数のモジュールに対してパラレルで使えない事もないのですが、ADSRが複数あれば、アイディアを止める事なくどんどんパッチしていけますからね。それと同様にオシレーターもあれとこれ、LFOも二つ、そんでもってフィルターも2系統欲しいな、、、という感じでモジュラーは増えて行きがちです。ですから最初のケースはあまり小さくない方がいいと思います。

さて今回は前回の終わりで触れた、Expert Sleepersがリリースしている、ソフトウエアとDAWを使ってI/Oの空きチャンネルを利用し、CV/GATEをモジュールに送るSilent Wayを紹介します。デモ版がダウンロードできるので購入の前に自分の環境で試してみる事ができますよ。デモ版は下記リンク先から Silent Wayを探して、自分の環境に合うプラグインを選んで下さい。Expert Sleepersのサイトには現在Ableton Liveを使ったラウティングのYoutubeのリンクがあります。 それから、こちらにLogicを使った例もあります。 これらのビデオとプラグインをダウンロードした際に付いてくるPDFのマニュアルを参照して下さい。前回と今回で紹介したうちのいずれかの機材や方法で皆さんが使っているDAWとモジュラーシンセを組み合わせる事ができると思います。

Silent Way公式サイトはこちら>>

Silent Wayデモ版配布サイトはこちら>>

Ableton Liveを使用した動画はこちら>>

Logicを使用した動画はこちら>>

DAWで打ち込んだMIDIデータでモジュラーシンセを鳴らすのは手軽で良い方法ですが、僕の経験上ではMIDIを使わずにCV/GATEだけを扱うシーケンサーを使ってフレーズを作った方がリズムがタイトになるように感じます。それとハードウエアのステップシーケンサーを使ってパターンを作っていくとDAWで鍵盤を弾くのとは別のインスピレーションを得る事ができるように思います。モジュラーシンセのラックには入りませんが、例えばKORG社のSQ-1を使う方法もあります。SQ-1を使えばDAWのテンポをクロック情報として、モジュールに送る事もできるので、全てのモジュールをラックに入れる事にこだわりがなければこれも良い選択肢かもしれません。ちなみに僕はintellijel社のMetropolisとMakenoise社のReneを使っています。Reneは先日ラックの組み直しをしている時に電源の向きを間違って接続してしまいダイオードがバーストして現在入院中(涙)。皆さんも電源の向きは気を付けて下さいね!)。

intellijel/Metropolis

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Makenoise/Rene

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KORG/SQ-1製品ページはこちら>>

intellijel/Metropolis製品ページはこちら>>

Makenoise/Rene製品ページはこちら>>

今週のキーワードを二つ 「LFO」、「CLOCK」

「LFO」
1)LFOは、Low Frequency Oscillatorの略です。波を作ってるんですね。これをオシレーターに接続するとビブラートに、フィルターに使えば、周期的な音色変化に、アンプに使えばビブラートを生成する事ができます。

「CLOCK」
2)CLOCKは一般的にはごく短いGATEだと思ってもらえば良くて、テンポと同じように等間隔のタイミングを生成します。モジュールが段々増えてくると、複数のシーケンサーやシグナル・フローの変化を同期させたくなる場合が出てきます。そういう場合の親クロックになるのが、クロックディストリビューターと呼ばれるモジュールです。

瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【第4回】「シグナル・フローについて」

さて、今週から音を出すためのシグナル・フローについて説明します。一般的なシンセと違って、とにかくこの信号の流れを理解していないと1音たりとも鳴らないというのがモジュラーシンセの面倒かつ楽しい所なんです。ロックオンの店頭に行っても何がどう繋がっているか分からないと、ただモジュール眺めて帰るだけになりますからね!

では普通のシンセと外観を比べる所から始めましょう。レイアウトの分かりやすさでローランド社のJP-08とDOEPFERのベーシックモデルとしてセットで販売されているA-100 BS-2-P9(以下A-100)を比べてみます。いわゆるシンセサイザーの最小最短のシグナルフローは以下のようになります。

  • VCO(ピッチが決まって)
  • VCF(音色が決まって)
  • VCA(どんな音量の変化で鳴る)

DOEPER/A-100 BS-2-P9

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この流れの前後左右に別の要素がちょこちょこ入って来る、、、メーカーが違えど基本はどこも同じですね。今週はこの3つの要素のうちオシレーターだけを考えましょう。どちらのシンセもVCOという名前が見えますよね?VCOというのは”ボルテージ・コントロールド・オシレーター”の略です。電圧によってピッチをコントロールしてるわけです。JP-08では右上に二つ、A-100では左上にA-110という同じオシレーターが二つあります。JP-08の方は二つのオシレーターのキャラが若干違いますが、それは設計者の意図や、音色のバリエーションのためにそういう仕様になっているんですね。JP-08ではどちらのオシレーターも波形を1つずつ選べるようになっています。

一方、A-100の場合は全く同じオシレーターが二つあります。波形を選ぶセレクターはありませんが、その変わりモジュールの一番下に波形毎にアウトプットがあります。A-110はトリガーされると、この4つのアウトから全部同時に信号が出力されるんです。もっと正確に書くとトリガーされないとずっと音が出っぱなしになってるんですけどね(笑)。さすがに出っぱなしは音楽的に困るので(?)、必要な時に必要な音程で鳴るようにトリガーしたりピッチをコントロールして使うんです。A-100くらいモジュールがあると、A-110から2種類の波形を上段のA-138というミキサーに送ってブレンドしたり、フィルターやADSRも2系統あるので、別々に音作りして下段にあるA-138でブレンドしたり〜と行ったパッチが可能ですね!

というわけで、モジュラーシンセではJP-08のように波形をセレクターで選ぶのではなくオシレーターから必要な波形のアウトを次のモジュールへ繋ぐ〜という流れになります。もう気がついていると思いますが、自分のシステムに別の会社のオシレーター・モジュールを足して行く事でバリエーションが無限に増えて行くんです。

STUDIO ELECTRONICS/BM-Ocillation-Module

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例えばSTUDIO ELECTRONICSのBM-Ocillation-Moduleを選ぶと、このモジュールから各波形をパラでも出せるし、モジュールの中でミックスして次へ送る事もできますね。オシレーターの選びの目安としては、SAW波形(ノコギリ波ね!)とパルス波を持っていないオシレーターはまずありません。各メーカーによって多少違いはありますが、個人的には三角波(トライアングル)を持っているか否か、またその三角波のサウンドの違いの方が大きいように感じています。もし複数オシレーターを揃えたいならそういうポイントにも注意してみて下さい。いくつかオシレーター・モジュールをブラウズしていると「FM」という入力やパラメーターが目に入ってきますが、これはゆくゆく説明します。これはネットで検索すればすぐに出てきますが、倍音加算式という考え方の時に必要になってきますが、まずは減算式を先にマスターするのが基本です。

今週のキーワードを一つ 「パッチケーブル」

スタックト・ケーブル

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「パッチケーブル」

1)これなしでは1音たりとも音が鳴りません!パッチケーブルが何本必要か?これなかなか難しい問題なんですが(笑)、アメリカではモジュール1つに対してパッチケーブル3本、、、なんて言われていますが、モジュール10個に対して30本は若干多いような気もします。とりあえず20本手元にあれば大丈夫だと思います。本数と同時に長さのバリエーションも考慮して下さい。自分のモジュールケースの端から端まで届くケーブルが最低3本はあった方がいいし、手持ちのモジュールが少ない時はスタックト・ケーブルという簡易パラケーブルがあると、ADSRの設定を2つのモジュールで使い回したり等できるので重宝しますよ。

瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【第5回】「フィルター(VCF)について」

先週はオシレーター(VCO)、つまり波形とピッチに関するモジュールの話でした。今週は一般的にその次に繋ぐフィルター(VCF)に進みます。

DOEPFER/A-120 & A-106-6
(赤枠)

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シンセサイザーのツマミの中でも一番劇的に音色が変わるのは何と言ってもやっぱりフィルター。ちなみに、フィルターを飛ばしてVCOの後にVCAへ繋いでも、勿論音は出ます。しかし、VCOの素の音、つまり倍音が全部鳴っている状態なので音楽的には非常に扱いにくい音ですね。フィルターはその倍音を削っていって音を作り込んでいく部分なので、一般的に減算方式〜と呼ばれるんですね。

一番メジャーな二つのフィルターと言えば、LPF(ローパスフィルター)とHPF(ハイパスフィルター)がありますね。LPFは低い方の音(Low)を次にパスするフィルターなのでローパスフィルターと呼ばれます。シンプルなアナログシンセのフィルターはほぼ100パーセントこのローパスフィルターです。つまり、モジュールを買い揃えて行く際に何が何でもLPFから買わなければいけません!

先週に続いて、今週もDOEPFER A-100を眺めてみましょう。上段中央にフィルターが二つありますね。まずはA-120。これは一番典型的なフィルターモジュールですね。所謂Moogタイプと呼ばれる-24dbのLPFですね。この-24dbと-12dbの2種類がフィルターの代表的な存在。違いをEQでイメージするとこんな感じ(EQのスナップショットを二つ)。ハイを落としていくカーブが-24dbの方が極端なんですね。

-12dbの代表選手はオーバーハイム系ですね。シンセベースのようなアタックを付けたり、TB-303のようなレゾナンスと組み合わせて、ウニョウニョさせるには-24dbを、パッドのような音色には-12dbを使うと覚えて下さい。A-120も勿論そうですが、フィルターモジュールにはほぼ全機種フィルターとレゾナンスをLFO等でコントロールするためのCV入力が付いていますね。周期的にムニョ〜ンムニョ〜ンと変化させたりする時に使います。

A-100に搭載されているもう1つのVCF、A-106-6。これはなかなか面白いフィルターで、まさに二つ目のフィルターのチョイスとしてはグッドですね!ローパス以外にハイパスフィルター(あえてローを削る)や、バンドパスといって特定の周波数だけ通過させるフィルター等切り替えであれこれ使えます。

Intellijel/korgasmatron ii

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ちなみに僕の現在のお気に入りはIntellijelのkorgasmatron iiです。このモジュールはフィルターを二つ持っていてタスキがけ的な事をしたり、ディストーションほどじゃないけどDriveのツマミで少し歪ませた感じに音を太くする事ができます。最初からこの手の何でもフィルターを買うのも悪くはないですが、やはりシンプルな上記のA-120のようにシンプルなフィルターが1つは持っていた方が、最初はフィルターの使い方が覚えやすいし、なにかと重宝しますよ。


さて、フィルター選びのポイントはレゾナンスです。レゾナンスは上で説明したフィルターのカーブが落ち始める周波数帯がありますよね?そこを持ち上げて音色にクセを付けているんです。所謂ミヨ〜ンという音はフィルターとレゾナンスの組み合わせで作るサウンドですね。さらに、このレゾナンスをどんどん上げて行くと発信するタイプのものがあります。オシレーターからパッチしたノイズの音などを使ってパーカッション的なサウンドを作る場合は、この発信するレゾナンスが必要です。複数フィルターを買うならどちらかは発信するレゾナンスを持つモジュールを選択した方が後々絶対いいですよ!

今週のキーワードならぬワンポイント

  フィルターはシンセのキャラクターを決める最も重要なモジュールでもあります。数値が同じでも実際はかなりサウンドが違うので、是非店頭で実際の出音を聞きながら選んで下さい。初心者モジュラーはロックオンのスタッフに音が出るようにパッチしてもらって、フィルターを比べてみてね!

これまでのコラムはこちらから>>

瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【第6回】「VCAについて」

さて残る基本モジュールはVCA(並びにADSR、エンヴェロープ)ですね。ここからがいよいよモジュラーシンセっぽくなってきます。急に面倒な事態に突入するのでがんばってついて来て下さい!

オーディオ出力する最終段階でVCAを使います。これは鍵盤付きシンセ、またはモジュラーシンセを問わず全てのシンセに共通しています。鍵盤付きシンセしか触った事がない読者はVCAのモジュールとADSRのモジュールが別々で販売されている事が少々分かりにくいかもしれませんね。

鍵盤付きシンセでも内部の配線はモジュラーシンセと同じ仕組みになっているのですが、ADSRを独立してパッチする事はできないので、VCAとADSRはセットになっているように見えます。しかし、モジュラーシンセではADSRをどこへでもパッチできるんです。

鍵盤付きシンセではアンプリファイアとフィルターの変化量をADSRで設定しますよね?モジュールとして使う場合は、ADSRの変化量をピッチにアサインしたりして、その気になれば色んなパラメーターを変化させるために使えるんです。

最近は1つのモジュールにADSRが二つ搭載されているものも増えてきましたよね?フィルターもいずれ増えるでしょうし、ADSRモジュールは少なくとも2つ以上は手元にあった方がいいと思います。

特にフィルターをコントロールする際のディケイの絞り込み方のフィーリングは各社微妙に違いが出ます。ノブタイプとスライダータイプでもフィーリングに違いがあります。あれこれ試してみて下さい。

さて冒頭で書いた「面倒な事態」に突入します。ここで説明のためにちょうど良いiPadのappを見つけたので紹介します。

Pulse Code, Inc. のその名もずばり「Modular Synthesizer」。

皆さんもiPadに入れておけば外出先などでパッチの練習になると思いますよ。それとこのアプリのプリセットは良く出来ているので、色んな音色がどういう風にパッチされているのかを確認できる良い教材でもあります。

以下は最もシンプルな1VCOのシンセで音を出すパッチの手順を説明します。パッチの「読み方」ですが、基本は以下の4つの経路を辿ればどんなモジュールでも理解できます。

慣れて来ると、同時にパパっとパッチできるようになりますが、それまでは信号のフローを役割順に追って行くようにするといいと思います。

1)まずは、音程。音を鳴らす為にCV/GATEアウトが付いた鍵盤を叩いたとします。CVは先週までに説明したようにピッチの情報ですから、VCOのIN/OCTへパッチします。ピッチに関してのパッチはこれだけです!

2)次にGATE。鍵盤からのGATE情報は二つのEG(Envelope Generatorの略)へパッチします。実際はスタックケーブルを使ってパラっても良いですよ。

3)それから各モジュールをコントロールするためのCV。この場合は二つのEG(ADSR)でフィルターとVCAをコントロールしています。

4)そしてオーディオ信号が、オシレーター→フィルター、フィルター→VCA、VCA→アウトプット、へと流れています。このパッチを最初にしてしまうと音が出っぱなしになるから注意してね!

5)完成!こんなシンプルなパッチでもケーブルが8本必要です。そんなに面倒な事態じゃなかった?

どんなに複雑なモジュールでも音を出す基本はこれです。後はLFOでビブラートを付けるとか、同じくLFOで周期的にフィルターを変0化させるとか、オシレーターにノイズを使うとか、この基本のパッチに足して行くという流れになりますね。

モジュラーシンセを自由に使えるうようになれば鍵盤付きのシンセのエディットも格段に簡単に感じるようになりますよ!

モジュラーシンセが鳴るまでのプロセス

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Mutiple(一部)

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今週のワンポイント

  上で紹介したアプリではCVとGATEのアウトが最初から4つ用意されていますが、実際はモジュラー用語で「Multiple」と呼ばれる信号をパラ出ししてくれるモジュールを使うのが一般的です。

二股くらいならスタックケーブルでなんとかなりますが、3つ以上に分岐するのはこのマルチプルを使うのが便利です。

ちなみに僕のモジュールにはこれが入っています。一番下のボタンで1→3、または1→6の切り替えができるので便利です。

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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【第7回】「LFOについて」

先週はシンプルな基本パッチを説明しました。次に足すとしたらやっぱりLFOですね。

LFOは「Low Frequency Oscillator」の略で、実は大きくはこのモジュールもオシレーター、つまりは発信器の一種でして、実際にこのモジュールをアンプに繋げば音が出たりはするんだけど、一般的なLFOモジュールは1V/OCTのインがないので、ピッチをコントロールする事はできません。

LFOの接続先と代表的な3つの用途は以下の通り。

1)オシレーターにパッチして、ピッチを揺らしてビブラートとして使う。

2)フィルターにパッチして、周期的にフィルターのカットオフを変化させる。

3)VCAにパッチして、トレモロ(用語的にビブラートと混同しがちですが、こちらはピッチはゆれません。ギターアンプに付いてるトレモロと同じです)

LFOモジュールはここ10年で劇的にバリエーションが増えたものの1つ。各社から本当に様々なバリエーションが発売されています。

僕が最初にモジューラーシンセを使っていた15年前はそれほどバリエーションがなかったと思いますね。一番劇的に変わったのはLFOのスピード。実はNative Instrumentsが2007年にMassiveというソフトシンセをリリースして以降、他社もそれに追従して(?)最近のLFOのフリーケンシーが劇的に早くなっているんです。最近のLFOモジュールもまた然りですね。それによってモジュラーシンセでもEDM等で耳にする新しいデジタル的なサウンド作り出す事ができるようになったんです。

ちょっと話が脱線しますけど、Massiveも実は各種コントロールを色んな所にパッチできるので、ある意味発想はモジュラーシンセっぽい部分があるんです。そういう目でもう一度Massiveを見直してみて下さい。より理解が深まるかもしれませんよ。

Mutable Instruments/Tides

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さてモジュールの話に戻りますが、今では外部クロックとLFOの周期をシンクできるモジュールも珍しくなくなりました。極端な例だと、僕が持っているMutable Instrumentsの「Tides」(写真)というモジュールは珍しくピッチをコントロールできるタイプのLFOで(人によってはエンベロープジェネレーターと紹介されてもいます)、波形のカーブに微妙にクセを付ける事ができます。周波数のレンジも10Khz(普通は5khzくらいが多いですね)までとメチャクチャ速いです。できる事が多すぎて僕も未だにちゃんと把握できていません。

Mutable Instruments/Tides公式ページへ>>

Doepfer/A-145 & A-146

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Roland/
SYSTEM-500 540 Modular 2ENV-LFO

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でも最初に買う1つめのLFOはもっとシンプルな、Doepferの A-145やA-146、もしくは僕もまだ実機を触れていないのすが、今最も熱い!ローランドのモジュール SYSTEM-500 540 Modular 2ENV-LFOもなかなか良さそうです!なんとADSRも一緒にセットされているし、お薦めのポイントはこのモジュールはDelayを持っているということ。これがあれば、ビブラートのかかり始めを少しおくらせて音楽的な演出をする事ができますからね。それと前述したクロックとの同期もできるので、最初に買うLFOとしては100点満点だと思います。

最後に先週のパッチに、LFOを追加してビブラートをかけるパッチを紹介します。

ビブラートをかけるためにLFOのアウトをオシレーターのCVへパッチ。

先週のパッチにビブラートのためのLFOを追加した全てのパッチワーク。

今週のワンポイント「LFOモジュールの選び方」

LFO選びのポイントはモジュラーシンセで何をしたいかによると思うのですが、もしライブパフォーマンスが目的であればやはり最初はシンプルなLFOをシステムに組み入れた方がいいと思います。上記のTidesだと一目見ただけでは設定がどうなってるのか把握しにくいんです。

リアルタイムでパッチを変えながらパフォーマンスする際は視認できるというのは大事な要素ですからね。もしくは自宅やスタジオでじっくり音作りしたいのなら、TidesのようなLFOを”オシレーター”として捉えて、時間をかけて取り組むのもいいかも知れません。

この2年でオシレーターとLFOの境目は本当に曖昧になってきました。「複雑系LFO」に関しては各社ウエブサイトやYoutubeなのでじっくり検討してから選びましょう。

さて残る基本モジュールはVCA(並びにADSR、エンヴェロープ)ですね。ここからがいよいよモジュラーシンセっぽくなってきます。急に面倒な事態に突入するのでがんばってついて来て下さい!

オーディオ出力する最終段階でVCAを使います。これは鍵盤付きシンセ、またはモジュラーシンセを問わず全てのシンセに共通しています。鍵盤付きシンセしか触った事がない読者はVCAのモジュールとADSRのモジュールが別々で販売されている事が少々分かりにくいかもしれませんね。

鍵盤付きシンセでも内部の配線はモジュラーシンセと同じ仕組みになっているのですが、ADSRを独立してパッチする事はできないので、VCAとADSRはセットになっているように見えます。しかし、モジュラーシンセではADSRをどこへでもパッチできるんです。

鍵盤付きシンセではアンプリファイアとフィルターの変化量をADSRで設定しますよね?モジュールとして使う場合は、ADSRの変化量をピッチにアサインしたりして、その気になれば色んなパラメーターを変化させるために使えるんです。

最近は1つのモジュールにADSRが二つ搭載されているものも増えてきましたよね?フィルターもいずれ増えるでしょうし、ADSRモジュールは少なくとも2つ以上は手元にあった方がいいと思います。

特にフィルターをコントロールする際のディケイの絞り込み方のフィーリングは各社微妙に違いが出ます。ノブタイプとスライダータイプでもフィーリングに違いがあります。あれこれ試してみて下さい。

さて冒頭で書いた「面倒な事態」に突入します。ここで説明のためにちょうど良いiPadのappを見つけたので紹介します。

Pulse Code, Inc. のその名もずばり「Modular Synthesizer」。

皆さんもiPadに入れておけば外出先などでパッチの練習になると思いますよ。それとこのアプリのプリセットは良く出来ているので、色んな音色がどういう風にパッチされているのかを確認できる良い教材でもあります。

以下は最もシンプルな1VCOのシンセで音を出すパッチの手順を説明します。パッチの「読み方」ですが、基本は以下の4つの経路を辿ればどんなモジュールでも理解できます。

慣れて来ると、同時にパパっとパッチできるようになりますが、それまでは信号のフローを役割順に追って行くようにするといいと思います。

1)まずは、音程。音を鳴らす為にCV/GATEアウトが付いた鍵盤を叩いたとします。CVは先週までに説明したようにピッチの情報ですから、VCOのIN/OCTへパッチします。ピッチに関してのパッチはこれだけです!

2)次にGATE。鍵盤からのGATE情報は二つのEG(Envelope Generatorの略)へパッチします。実際はスタックケーブルを使ってパラっても良いですよ。

3)それから各モジュールをコントロールするためのCV。この場合は二つのEG(ADSR)でフィルターとVCAをコントロールしています。

4)そしてオーディオ信号が、オシレーター→フィルター、フィルター→VCA、VCA→アウトプット、へと流れています。このパッチを最初にしてしまうと音が出っぱなしになるから注意してね!

5)完成!こんなシンプルなパッチでもケーブルが8本必要です。そんなに面倒な事態じゃなかった?

どんなに複雑なモジュールでも音を出す基本はこれです。後はLFOでビブラートを付けるとか、同じくLFOで周期的にフィルターを変0化させるとか、オシレーターにノイズを使うとか、この基本のパッチに足して行くという流れになりますね。

モジュラーシンセを自由に使えるうようになれば鍵盤付きのシンセのエディットも格段に簡単に感じるようになりますよ!

モジュラーシンセが鳴るまでのプロセス

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Mutiple(一部)

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今週のワンポイント

  上で紹介したアプリではCVとGATEのアウトが最初から4つ用意されていますが、実際はモジュラー用語で「Multiple」と呼ばれる信号をパラ出ししてくれるモジュールを使うのが一般的です。

二股くらいならスタックケーブルでなんとかなりますが、3つ以上に分岐するのはこのマルチプルを使うのが便利です。

ちなみに僕のモジュールにはこれが入っています。一番下のボタンで1→3、または1→6の切り替えができるので便利です。

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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【第8回】「2015年オシレーター・ベスト5」

クリスマスプレゼントに欲しかったモジュールをサンタさんからもらいました!的な読者も日本中1人や2人いるかもしれませんね?もしくはお年玉で年明けお年玉ゲットしたら、どのモジュールを買うか悩んでいる人はもっと多いよね?

そんなわけで、2015年モジュールベスト10みたいな海外の記事も目に入ってくる年の瀬ですが、今週はオシレーターに的を絞って個人的に買って良かったもの、または年明けにすぐにゲットしたいものベスト5をお送りします!(ベストと書いてありますが、どれも甲乙付けがたいほど魅力的です)

Best Oscillator of 2015 Round-up!

No.5 Mutable Instruments社 「Braids」

Mutable Instruments/Braids

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これは自分で買ったモジュールで一番満足してるものの1つです。デジタルのオシレーターですが、ウェーブテーブル式の波形からスーパーソー、FM、ノイズ、パーカッション、まで38通りのオシレーターの中から1つ選び、それをTimberとColorのノブを使ってものすごい数のバリエーションを作っていく事ができます。

特に人の声の母音的な発音ができる”VOWL”他のオシレーター系モジュールではなかなか見かけないとてもユニークなサウンドです。TimberとColorは外部からLFO出力をCV受けして変化させる事ができます。Mutable社の製品にしては分かりやすいモジュールでもあります(笑)。

公式サイトはこちらから>>

参考動画はこちらから>>


No.4 STUDIO ELECTRONICS社 「BM-Ocillation Module」

STUDIO ELECTRONICS/BM-Ocillation Module

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すごい基本的なオシレーターなんだけど、安定性が高い一品。モジュールラックの空きスペースがあまりないので厳選したアナログ系のオシレーターが欲しい、、、そんな人にお薦めですね。アナログ系のオシレーターをあれこれ買い漁るならこれを1つ買うのもありだと思います。ブリブリ鳴ります!

e-Storeページはこちらから>>

参考動画はこちらから>>


No.3 Mutable Instruments社 「Elements」

Mutable Instruments/Elements

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これはある意味飛び道具的なオシレーターで万人向けではないかも知れないけど、すでに一通りのアナログ系オシレーターが出揃ったとも言える現在、今後のモジュールの動向を占う事ができるような1つ。

Mutable社のサイトでは「modal synthesis」と謳ってますけど、物理モデリングと言い直した方が文章では伝わりやすいかなと思います。弓で弦を弾く(BOW)、叩く(STRIKE)、吹く(BLOW)、のみつの波形(モデリング)を他パラメーターでエディットして行くんです。個人的にはかなり惹かれている一台。

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No.2 Make Noise社「Mysteron」

Make Noise/Mysteron

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Make Noiseからもどれか1つ選びたいのは当然なのですが、このメーカーの製品はどれもクセが強く、本当にニッチな所を突いてくるし、さらにマニュアルなしでは完全に理解できないややこしさも多少あるんですが、その変わりこのメーカーのモジュールはどれも他社には絶対にマネできないサウンドだという強みがあります。

これも最近のオシレーターの流行の1つのモデリング系です。より一層文章で説明するのは難しいのでビデオを観て下さい(汗)。初心者にはお薦めできませんが、モジュールが一通り揃った上級者向けだと思います。

公式サイトはこちらから>>

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No.1 Mutable Instruments社 「Clouds」

Mutable Instruments/Clouds

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今年の一番はやっぱりこれかな。これを今年の一番に選んでいるいモジュラー系サイトをいくつか見かけました。僕が来年最初に買いたいオシレーターです。オシレーターと言い切れるか微妙なモジュールですけどね。

所謂グラニューラプロセッサー、最大8秒までサンプリングできるんですね。初心者には何が面白いのか分かりにくいかも知れませんが、僕がモジューラーシンセを使っている理由の1つは鍵盤付きのシンセやソフトシンセでできないサウンドをクリエイトするためなのでそういう観点からこれを選びました。

「グラニューラシンセシス」とは雑誌やウエブで用語として見かけた事があると思いますが、簡単に説明するとサンプリングした波形を短くチョップして波形として再生しつつ、発音し始めるアドレスを変化させたりするプロセスです。別のモジュールで再生したサウンドを、このCloudsにサンプリングして、さらにリアルタイムでサウンドをいじり倒すという事ができます。他のモジュールとの組み合わせでモジュラーシンセにしかない遊び方ができると思います。

公式サイトはこちらから>>

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以上個人的な興味で5つ選んでみました。やっぱりオシレーターはサウンドの要なので、普遍的なアナログ波形のモジュールの次はこの辺のモジュールを狙ってみて下さい!

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【第9回】「BetaStep Pro実戦紹介!」

新年開けましておめでとうございます。1月中旬にロサンゼルスではロックオンカンパニーのレポートでもおなじみのNAMMショーがあります。

昨年もモジュラーシンセのコーナーはすごい人で、お目当てのモジュールを試すのに列にならんで待たなければいけないという状態でした。何度かこのコーナーでも書きましたが、最近のモジュールはマニュアル読まないと理解できないような製品が増えたので、結果的に各マニュファクチャーへの質問も長引いて自然と列が長くなると、そういう感じなんです、、、

でも目につきやすい新モジュールも直接触って確かめたい所ですが、VCAモジュールやミキサーモジュールと言った最終的な音の出口を担うモジュールは機能よりも音の太さを大事にしたいところ。「出音の太さ」に関してはやっぱり実際に聞いてみないと分からないですからね。通販でなんでも買える時代ですが、その辺を確かめたいので今年もNAMMに行くわけです。

さて昨年の終わりに嬉しいニュースが。ヴィンテージ・シンセをシミュレーションしたソフトシンセ群で人気のArturiaからアメリカでは既にリリースされていたBeatStep Proが日本でもリリースされる事になったんですね。昨年、このセミナーでもMIDI(またはUSB)からCV-GATEへ変換するためのディバイスをいくつか紹介しましたが、BeatStep Proが日本でも手に入るのであれば紹介しないわけにはいかないので今週はこのBetaStep Proを実戦にどう使うかを紹介していきます。

BetaStep Proを実戦使用!

1)まず、基本的には2系統のステップシーケンサーと1系統の16トラックのドラム用シーケンサーなんです。シーケンサーの方は、その気になれば64ステップまで拡張する事ができます。それからCV2という音程以外にもう1つCVをコントロールする事ができます。このセミナーでいずれ触れようかなと思っていましたが、CV2は音程以外にもう1つのパラメーター(例えばヴェロシティ的に音量の大小や、フィルターの開閉)をコントロールする事ができます。つまりモジュラーだけのパフォーマンスに非常に便利なんです!

2)それからDAWとの絡みで言えば、DAW側で打ち込んだMIDIの音程情報をBeatStep Pro経由でモジュールへ送る事ができます。

3)BetaStep Proが同期のマスターにもスレーブにもなります。マスターとして使う場合は、複数のモジュールのLFOやテンポを同期するために使えます。もちろん、シーケンサーモジュールが既にある場合もそのマスターとして使えます。その逆の使い方として、別のシーケンサーのクロックを受けてBeatStep Proをスレーブにする事もできるんです。

4)ステップでも音程を入力できますが、リアルタイムでもパッドを叩きながら入力できます(勿論ドラムパートも!)。

5)さ・ら・に、ここが自分的にポイント高いんですが、各ノート毎に「Slide」というモードを選べるので、ノートとノートをグライドして繋ぐ事ができます。つまり、TB-303的なベースの打ち込みができるんです。この奏法はDAWのMIDIトラックで再現しようとするとベンド使ったりしてかなり面倒なんですが、BeatStep Proと使うと簡単にできます。

Arturia /beatstep

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他にも便利が機能が簡単に使える、素晴らしいインターフェースなのですがスペースが全然足りないので来週も引き続きBeatStep Proの紹介をしていきますね。 とりあえず、このビデオをチェックするとBeatStep Proがどういうインターフェイスなのかが把握できますよ!

BeatStep Proの参考動画

BeatStep Proの製品紹介ページへ





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【第10回】「BetaStep Pro実戦紹介!Part2」

Beat Step Pro

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さて今週も先週に引き続きBeatStep Proを紹介していきます。このセミナーはモジューラーシンセについて解説しているわけですが、できるだけDAWフレンドリーな内容を目指しています。

DAWを買わずにモジュールシンセだけで日々制作している読者は相当少ないと思うし、実際僕も普段のワークフローの中にどうやってモジュラーシンセのサウンドを効率よく取り入れて行くかは常々興味を持っているポイントですからね。

というわけで先週はBeatStep Proでどんな事ができるのか簡単に説明しました。メーカーのサイトにチュートリアルのYoutube映像があるのですが、DAWとBeatStep Proの連携についてはサイトでは詳しく触れていません。今週はその辺りを解説します。

Beat Step Pro

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基本的な設定は簡単で、BeatStepProをUSB接続するだけでDAW側は認識してくれます(画像「BeatStepPro MIDIチャンネルアサイン」)。スナップショットの様に一般的なMIDIインターフェースとして認識するのでチャンネルは16chまで表示されますが実際に使えるのは1chと2chです。

DAW側からキーボードを弾くとその音程がリアルタイムでモジュールに送られるので音程やサウンドも確認しやすいんです。

設定で1つ注意しなければいけないのは、DAW側からMIDIビートクロックをBeatStepProへ送る設定が有効になっているとDAWを走らせるとBeatStepProも走り始めてしまいます。BeatStepProをシンプルにCV/GATEのインターフェイスとして使いたい場合はBeatStepProは走らない方が都合が良いので、DAW側からBeatStepProへクロックを送らないように設定を確認しましょう。

Checkを外す

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勿論、せっかくBeatStepProを買ったからにはやはりマニュアル操作のスッテプシーケンサーとして使ってみたいわけですよね?その場合は上で説明した設定を元に戻して、DAW側からBeatStepProへMIDI Beat Clockを送るように設定します。そして、BeatStepPro本体の左上にSYNCというボタンがありますが、このSYNCボタンを何度か押すとシンクモードが変更できますので、USBを選びます。

これでDAWからUSB経由で送られて来たMIDI Beat Clockのスレーブになるわけです。1つだけ注意が必要なのは、BeatStepProは一旦走り出すとSYNCモードの変更はできません。多分ステージ等でパフォーマンスの最中にクロックが外れたりするとあまりにもスリリングなので、そういう設定にしてるんだと思います笑い。

SYNCボタンを押してもSYNCの設定が変更できない時はストップボタンを押して、停止状態になっているかどうか確認してみて下さい。僕もモジュールシンセを使う時にこのミスを良くするんです(汗)。

頭の中で鳴ってるフレーズを打ち込みたい時にはDAWのMIDIトラックへ入力してモジュールを鳴らした方が早いし、自分の発想から飛び出た、もっと偶発的なフレーズを生成したいと思った時はBeatStepProのステップシーケンサーのノブをグリグリ回しながら探っていくので、上で紹介した二つの方法を行ったり来たりします。その作業の途中でSYNCの切り替えを忘れてしまうって事がよくあるんですね(汗)。

【第11回】「modularプリセット"Drums -Dist Kick"」

ちょうど今週LAでは今NAMMショーが開催されています。モジュールの新製品が多すぎてとてもじゃないけど、全部は追っかけられません。

どこも長蛇の列になっていて担当者に質問するのも大変なんですけど、あちこちのメーカーからリリースされているモジュール用のケースの実物を実際に目にするには絶好の機会です。カタログスペックだけでは意外とケースの印象って分かりにくいんですよね。

Roland/SYR-E84

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昨年、Rolandが発売したという事でRolandのモジュールシンセに対する本気度が伺える!と話題になったEurorackサイズのケース、SYR-E84も展示してありました。僕が気になっていたのはスタックできるとカタログには書いてあるんですが、実際スタックするとどういう感じになるのか?という事。早速写真を撮ってきましたのでチェックしてみて下さい。やっぱりスッキリまとまりそうだし、Rolandの信頼性から想像して電源周り(特に各モジュールに供給できる電圧値)でトラブル事はなさそうだし、僕もケースをこれに買えようかなと思っています。

さて、先週まで解説してきたBeatstep Proについて、もうちょっと度加筆したいところなのですが、今週は別の話題にしますね。今週は「キックの音」作ってみましょう。割と少ないモジュールでRoland TR-808系のキックドラムの音が作れます。またいつものように、iOSアプリの「modular」を使って説明します。キックなのでピッチの低い出音をフィルターで絞って、ADSRのディケイでアタックの調整すればいいんじゃないの?みたいな想像はだいたいできますよね?アウトラインはそれでOKです。実はモジュラーシンセでキックを作ると言っても数通りのやり方があってどれも間違いではないんですが、一番基本的な方法を紹介します。

Drums - Dist Kick(図1)

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Drums - Dist Kick(図2)

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アプリ「modular」のプリセットの中に”Drums -Dist Kick”というパッチがあります(図1)。これがそのままずばり一番シンプルなキックのパッチなんです(意外と複雑??)。基本の考え方はそろそろ皆さんも慣れて来たかと思いますが、モジュラーシンセのオシレーターって電源を入れた瞬間から常に音がダダ漏れになってる、、、という事なんです。

ですからそのダダ漏れの音をADSRのディケイで切って行くと言う風に捉えるんです。キックと言えどもオシレーターの音を加工して作っているので、サンプラーやリズムマシンのように波形トリガーしたのちに、オシレーターが発信する〜というフローと根本的に違うんです。

このパッチの中にディケイのモジュールが二つありますよね(図2)?このパッチではディケイのみのモジュールを二つ使っていますが、勿論普通のADSRのパッチでワークしますからね。左側のディケイは最終的にはVCAのCVへパッチされていて、アタックのつまり具合を調整しています。それに対して右側のディケイはキック全体の長さ、特にリリースの感じの調整をするために使っています。アタックはパツパツに、でもリリースは長めに、そんなサウンドにしたい場合は左側のディケイを絞り、右側のディケイを長めに設定する、、、とそういう感じです。

DOEPFER/A-110

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このパッチをさらに改良する場合は、オシレーターをもう1つ追加する、または実際にモジュラーシンセでパッチする場合は、DOEPFERのA-110(図3)のようにオシレーターの出力がパラってあるオシレーターを使い、サイン波とパルス波をそこから取り出してやって、各々にフィルターをアサインしたりADSRをアサインしたり、もっと複雑になると、それぞれ別のディストーションをかけたりする、、、なんていう設定もできます。

このキックにパルス波を足すというのが最近よくYoutubeなんかでも見かける使い方で、より最近のテクノっぽい感じになるんです。冒頭の話に戻りますが、DOEPFERもNAMM2016バージョンのモジュールを用意してきたりしてるんですよ、、、やっぱり気になりますよね!

DOEPFERのNAMM NEWS
http://www.doepfer.de/home_e.html



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【第12回】「NAMM注目のモジュラーシンセを紹介!」

先週ここLAで開催されていたNAMMショーでは、ものすごい数の新製品が発表になりましたね。ロックオンの現地リポートは、既に皆さんもチェック済みで今年はどの製品を注目していくか、それとも次は何を買おうか既に決断、、、または悩み中というところでしょうか?

僕も現地ではほとんどシンセ関連のブースで時間を過ごしてしまいました。特にやっぱりモジュールシンセはパッと見ただけでは何をどう活かして手持ちのモジュールにパッチしたらいいのか分からない新製品が目白押しで、質問して解説してもらって、それでも分からなくてもう一度質問して、、、そんな感じでしたね。

今週はモジュラーシンセ初心者のために、昨年から目立ち始めて来た、「Eurorack規格モジュールではあるけどオールインワン」な製品を少しピックアップしてみましょう。どれを買ったら躊躇してる読者は是非この機会に最初の1台を選んでしまいましょう(笑)!

moog/Mother-32

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まずは、ブースの広さと演出でNAMMでもダントツに目立ってましたmoogのブース。目玉はアメリカでは(多分ヨーロッパでも)ものすごい勢いで売れている、「Mother-32」。これは僕も安心して(?)誰にでもお勧めできます。まずは音が太い!という事は楽器としてとても安心できますよね。勿論サウンドにクセがあって、少々音が薄くてもユニークなオシレーターモジュールもいずれは必ず必要になるんですが(!)、音が太ければ後々シンプルなsub bassとしても活かせるし、この太さはフィルターをどんどん絞っていってもミックスの中で居なくならい特徴があります。

さすがmoogの製品だけの事はあります。パネルレイアウトも左から右にシグナルが流れる一般的なシンセサイザーのレイアウトを踏襲していますし、少しシンセが使える人なら知らないパラメーターもないと思います。32ステップのシーケンサーがついて、外部入力がついて、MIDIコンバーターがついて、ハイパスフィルターもついて、もう至れり尽くせりです。音源として使うだけではなく、この太いサウンドの理由の一つであるムーグのフィルターを後々、他のモジュールと一緒に単純に「フィルター」としてパッチできるのはものすごく魅力的です!

もう1台今年のNAMMでとても注目を集め、実は僕もNAMM直前にこの製品の情報を知って興味深々だったのが、Make Noise社がリリースした「0-Coast」です。実はこれ、モジュラーメーカーとして超有名なMake Noiseがリリースした、Eurorack規格ではない(!?)製品なんです。パネルの写真では解りにくいですが、専用のケーブルを使えばこちらもMIDI CVコンバーターとして使えます。こちらはEurorack規格ではないのでこのコーナーで紹介するのは多少反則かもしれませんが、そんな事は気にならないくらいものすごく面白そうな製品です。僕のように既に多少モジュールを持って音作りを始めている読者にはこちらが断然お勧めです。

Drums - Dist Kick(図1)

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この製品並びに、モジュールシンセ界の雄、Make NoiseのShared Systemを語るには文字数が足りないので、この続きは次週に持ち越します。とりあえずこのビデオでどんな製品か概要をチェックしておいてください!来週はモジュールやるなら避けては通れない(?)Make Noiseの「Maths」と合わせて、ファンクション・ジェネレーターの解説をします。

Make Noise/0-Coast参考動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=mVs_MfIpBlc



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【第13回】「Make Noise「Maths」紹介!」

Make Noise/Maths

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今週は前回の最後に紹介したMake Noiseの「Maths」を紹介していきます。だんだんモジュールシンセならではの話になってきました。このセミナーの第一回で書きましたが、僕が10年以上ご無沙汰していたモジューラーシンセにまた興味を持った理由こそが、こういうMathsのようなモジュールを使うことで、鍵盤付きシンセやDAW上のソフトシンセでは生成できないサウンドを作っていけると思ったからなんです。

このモジュールは入力されたCVに様々な変化を付け加える事ができるのですが、ExponentialとかLogarithmと言って一般的な周期のLFOではなくて、急激に加速したり減速したりするLFOのスピードを使って、入力されたシグナルに変化をつけていきます。そんで?どういう音になるねん?っと突っ込まれそうですので、このリンク先のビデオをみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=Mx_3cqPSiP4

Make NoiseはこういうサウンドをBouncing Ballと呼んでいますが、まさに落としたボールの跳ね返りが段々と小さくなっていくようなサウンドになっていますよね?それから、バリアブルアウトをRise、またはFallへパッチする事によってその変化を突然止めたりもできるんです。ね?このサウンド、この変化を皆さんの手持ちのシンセでも再現できますか?できないですよね?普通のシンセでは不可能なプログラムって、想像もできない=発想もできない、、、ということですがそれをこういうMathsのようなモジュールと出会うことで(この場合は)新しい変化のさせ方、変化量の推移の調整の仕方という発想を手に入れる事ができるわけです。こういう体験がモジュラーシンセの一番楽しい部分だと思いますね(同時に難しいポイントですが、、、)。

wardorf/nw1(左)
Mutable Instruments/Barids(右)

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この変化のバリエーションをモジュラーシンセだと、ピッチ以外にもフィルターの変化量、また面白い例を出すと、Waldorfから発売されたのnw1というWavetableの波形をMathsで生成した信号で波形を選ばせたりする事ができます。Wave tableとは仕組みが違いますが、Mutable InstrumentsのBraidsというオシレーターのTimberやColorというパラメーターを変化させるために使うのも面白そうですね。

とにかくオシロスコープを見ながら使うわけでもいので、どのように変化している掴むのは実際かなり大変です。こういうセンスが問われるモジュールは確かに扱うのが難しいのですが、攻略しがいがあるモジュールには違いありません。 こちらはMathsの旧バージョンを使っているYoutubeですが、こちらのビデオもMathsを使うとどういう音作りができるのかを把握しやすいビデオです。こちらもチェックしてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=KSDoc1WaM6wa



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【第14回】「Tiptop Audioシリーズ紹介!」

Doepfer/A-120

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こんなセミナーを書いていますが、実は僕の本業(?)はドラマや映画の劇伴の仕事なんです。プロジェクトによってはシンセサウンドが全く必要がない場合も多くて、そういう仕事が続くなか、息抜き(?)でモジュラーシンセを触ると「これなんだっけ??」的なパラメーターが実は結構あったりして急に思い出せない事もやっぱりあるんです、、、そういう時にまず手が伸びるのが役割的にシンプルなモジュール達ですね。手持ちで一番シンプルなフィルターがDoepferのA-120なんですが、もう1つくらいハイパスとバンドパス用のモジュールも欲しいなあ、、、なんて思っています。

そういう流れもありつつ今週はリズム系のモジュールの話をしますね。このセミナーの第11回でシンセのオシレーターを使ったTR808系の音作りの概要を解説しました。勿論、リズム系のモジュールを使わずにオシレーターやフィルターのモジュールを組み合わせてキックの音を作るのもモジュラーシンセの楽しみの1つなんですが、手持ちのモジュールが少ないとキックの音色を作っておしまい、、、なんて事にもなりかねないのでリズム系のモジュールがあるとやっぱり便利です。

Tiptop Audio
BD909(左)、SD808(中央)、HATS808(右)

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僕が今持っているリズム系のサウンドに特化したモジュールは全てTiptop Audioの製品です。BD909、SD808、HATS808の3つです。この手のモジュールも各社からざっと数えても多分50以上はリリースされているんですが、出だしで書いたように一目でパラメーターの役割が分かりやすい事を理由に選びました。それと勿論サウンドがしっかりしている事も大事ですよね!

Roland/TR-808

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BD909は皆さん勿論ご存知の通り、ローランド社の名器TR-909のキック用の回路のクローンです。スーパーローを求めるならTR-808系のキックの音の方がいいと思いますが、僕がこれを選んだ理由は4つ打のキックを作る為だったんです。オリジナルの909が持っているパラメーターは全て持ちつつ現代的なOverloadという歪み成分を作るためのパラメーター、それとオリジナルのAttackとDecayの他にもう一つTuneのAttackとDecayがあって909サウンドのオイシイ部分をより探しやすいように出来ています。

下記のリンク先のビデオが分かりやすいです。歪みのためのOverloadもトリガーとは別系統のCVでコントロールできるようになっていますから、テンポにシンクさせたLFOやキックのリズムとは別のステップシーケンサー等を使ってニュアンスを付ける事ができます。

https://www.youtube.com/watch?v=mM3006LgNsg

SD808とHATS808は来週説明しますね。


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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【第15回】「BTiptop Audio 紹介! Part2」

さて先週のリズム系のモジュールの続きです。

Tiptop Audio/SD808

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先週は僕の手持ちのモジュールから、Tiptop AudioのBD909を紹介しました。今週の一発目は同じメーカーからリリースされている、SD808です。これもネーミングから簡単に想像できるように、Rolandの伝説のリズムマシンTR-808のスネアのシミュレーション回路を持ったモジュールです。

こちらのパラメーターも分かりやすいと思いますが、GATE IN以外にACCENT INの入力があるので、そこへ基本リズムとは別にCVを送ってやってアクセントを付ける事ができます。

実は僕はオリジナルのTR-808を持っているんです。プロダクションの流れも違うので、実機とこのモジュールを比べても意味がないのですが、実機の方がもうちょっと芯が太いですかね。

Tiptop Audio/HATS808

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ただSD808の方がコントロールの幅も広く、そもそも僕は8スネアでニーヨンをバシバシ鳴らすために808のスネアと使おうとは思ってないので実用上は充分ですし、なんの不満もありません。

さてお次はやはり同じメーカーのHATS808です。普通ドラムとかリズムマシンってハイハットが1つというイメージだと思いますが、オープンとクローズのハイハットを別々にコントロールできるので、HATSと複数形になっています。

OH(オープンハイハット)側のレゾナンスのQを極端に回してエディットしていくとそれだけでもちょっと歪んだ感じ(音が荒れて行くニュアンス)になります。そして、CH(クローズドハイハット)側は極シンプルなパラメーターなので、触ればすぐに使えると思います。

Tiptop Audioパッケージ

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実機のTR-808もそうなのですが、808のハイハットはオープンとクローズの両方同時に鳴らせるというのが他のリズムマシンと違う地味ですけど、大きな特徴で、それを使ったアクセントの付け方(クローズドハイアットのリズムに音量的な意味のアクセントを付けるのではなく、アクセントを置きたい場所に、オープンハイハットのディケイを短くしたサウンド等でアクセントを置いていく方法)がこのHATS808を使っても同様にできるんです。

それぞれのサウンドと他のモジュールを使った複合技まで紹介しているビデオのリンクがありますのでチェックしてみて下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=rKpurqrAN4g

それと、先週&今週で紹介したリズム系モジュールですが、単純にモジュールの数だけアウトレットプットが増えるのが悩ましい所ですよね。ミキサー系のモジュールも巷にたくさんリリースされているので、来週はミキサー系のモジュールを紹介しますね。

多くのモジュールメイカーの製品はボックスに入って出荷されていますが、Tiptop Audioはこんなパッケージを使ってるんです。これはこれでかわいいですよね?


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映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【第16回】「シグナルのまとめ方」

さてリズム音源の紹介を2週したところでシグナルのまとめ方の紹介をします。

Mackie/1402-VLZ

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各シグナルをモジュールとは別のミキサー(例えば僕はMackieの1402-VLZを使う場合もありますこれに立ち上げてもいいんですが、やっぱりモジュール内にミキサーも欲しいと思いますよね?

intellijel/Mutamix

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僕が今現在使用しているのはintellijel社のMutamixです。これはインプットが6つのミキサーです。好みというか相性というか、僕はスライダーで各レベルが目で見える方が好きなのでこれを選びました(LEDでフェーダー光るし!)。それとミュートのコントロールを外部からコントロールする、、、なんていう事もできるんですがそういう機能を使わなくてもABCの3つのBUSのどこに送るかを選ぶだけでかなり色々な事ができます。

モジュール下BUS AとBUS Cにはレベルコントロールのためのトリムが付いていますから、例えばスネアだけをリバーブのモジュールに送りたい場合のレベルコントロールが簡単です(リバーブを足すとレベルが上がったように聞こえる事があるのでそれらの調整がしやすいんです)。またはシーケンスフレーズをディレイのモジュールに送りたい場合なんかもパッと見てラウティングが分かり易いので重宝します。

特にライブでパフォーマンスする場合に便利なのが各インプットの上部についているミュートボタンですね。これは1度押しでミュート、2度押しでソロとすごい分かりやすい作りになっています。やっぱり最終出口に近いミキサーは見た目も分かりやすい方がパフォーマンス中のアクシデントを少なくするためにも大事なポイントですよね。

intellijel/Planar

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もう1つ、自分の手持ちのモジュールから同じくintellijel社のPlanarを紹介します(Planar画像)。実は上記のMutamixの前にこれをミキサーとして使っていたんです。その時はなんか変わってるし、このジョイスティックに惹かれてつい買ってしまったんですけどね!買ってから気がついたんですが(←こういうパターンが多いですが、、、)、ミキサーとして使うには若干音が細いんです。

話が少し脱線しますが、現実的にモジュール内で賄える電源はそれほど大きいわけではないので、音の太さを重視するなら前記のような外部ミキサーにシグナルを立ち上げた方が断然音は良いと思います。音質重視かパフォーマンス重視か迷う所ですけどね(笑)。

話をPlanarに戻しますが、Mutamixではできない事が勿論あって、このジョイスティックを使って4つのシグナルをモーフィング的に乗り換えて行けるんですね。これがジョイスティックを使う一番の利点ですね。それからPlanarはミキサーとしてだけでなく、このジョイスティックがなんとタッチセンサーになっているので、ジョイスティックに触るとGateを送ったりという事ができるんですね。リンク先のビデオをチェックしてみて下さい。

https://youtu.be/y25BwF0ikUs?t=2m27s

初めてこのモジュールを見た時にジョイスティック左側のオンオフのスイッチが付いてる意味が分からなかったんですが、これはGateのセンサーとして使った場合、パフォーマンス中に誤って触ってGateシグナルを送らないようにするためなんですね。ビデオの後半で外部LFOとの組み合わせでさらにディープな使い方を紹介していますので、このPlanarが単純なミキサーではなくて手元にあると相当便利なモジュールだという事が分かると思いますよ!


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【第17回】「モジュラーシンセスターターキット『RolandSYSTEM-500 Complete Set』紹介!」

今週は最近リリースされた、ローランドのSYSTEM-500 Complete Setを見ていきましょう。

Roland/SYSTEM-500 Complete Set

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実は以前も少し触れましたが、ローランドがユーロラックシリーズのケースまで販売するという事を耳にして、これはシリーズとしてマジなんだなという感触は持っていたんです。そしてこのタイミングで500シリーズの基本セットをケースに入れて販売するというのは、モジュラーシンセを始めようとしている人にとってはすごく良いタイミングだと思うんですよね。今週はこのSYSTEM-500をチェックしつつ、モジュラーシンセを始める時に最初はどういうポイントに気を配ってモジュールをピックアップしていけばいいか考えてみましょう。

Roland/SYR-E84(上)
4ms/Powerd Modular Row - Double(下)

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まず、何度も書きますがこのケースSYR-E84、これが素晴らしいんですよ。僕は4ms社のPowerd Modular Row - Doubleを最初に買ったんですが、アップライトにするか平置きにするかの二者択一しかないんですよね(別売りパーツを組み合わせると斜めにできない事もないんですが、、、)。

Roland/SYR-E34
(斜め置きの図)

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DAWとモジュラーシンセで作業している時に僕は右利きなので右側にモジュールラックを設置していますが、平置きだと若干上から覗き込まなくてはいけないし、かと言って縦置きにすると倒れるんじゃないかと心配になります。

Roland SYR-E34の場合は何のオプションも足さずに斜め置きが可能なんですけど、DAWと一緒に作業するにはこのくらいの角度が欲しいですよね。

次に各モジュールについてですが、まさに基本セットと呼ぶに相応しい内容で少しシンセを触れる人ならパネルに書いてある用語はほとんど理解できると思います。他社メーカーのモジュールはパット見てなんの入力(または出力)か分からないものが意外と多いんですよね。

Roland/512VCO

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512VCOは基本中の基本のオシレーターで、全く同じオシレーターが二つ入ってるので、違う波形どうしの組み合わせが勿論可能ですが、僕的は逆に同じ波形をダブらせて使えるという事の方がポイント高いです。

また、二つのオシレーターがあるという事は1つめのオシレーターをTriangleに、2つめのオシレーターをSquareにしてそのピッチを1つめのオクターブ上にしつつPulse Widthを微調整してマリンバやクリスタル系の音を作るという事が1台でできるという事ですね。

Roland/512VCF

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お次は512VCF。このモジュールで一番評価したいのは入力が3つあるという事ですね。他社製だと入力を2つ持っているフィルターというのありますが、3つはなかなかないです。

一般的にシグナルを一旦ミキサー系モジュールでまとめて、それをフィルターモジュールにパッチするというシグナルパスを組む必要がありますが、512の場合は1台でそのミキサー的な役割をさせる事ができるという事ですね。

それと周波数は2カ所に固定なようですが、ハイパスフィルター(HP)が使えるのもポイント高いですよ。音作りになれてくるとHPの有無は結構大事な要素になってきます。

続きのモジュールは来週説明します!


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【第18回】「『RolandSYSTEM-500 Complete Set』紹介!その2」

さて先週に続いて、ローランドのSYSTEM-500 Complete Setの後編です。まずはVCAの530から。3チャンネルのインプットを持ったミキサーだと考えてもらってよいのですが、なかなか使い勝手が工夫してあるんです。

単純に所謂「ミキサー」として使いたい場合はパネルトップのSIG INに入力したオーディオをその下の3つのでフェーダーでバランスをとって、そのサミングしたトータルのレベルを下のINITIALというノブで調整します。その下にLIN/EXPの切り替えスイッチがありますが、これはボリュームの変化の特性を切り替えるためです。

エレキギターや通常のシンセサイザーのオーディオアウトプットの場合、人間の耳に対して自然に増減が感じられるEXP(エクスポネンシャル)カーブが採用されていますが、この530には色んな用途を想定して、LIN(リニア)カーブも選択できるようになっています。LINを選択した場合は感覚的にはボリュームが早く上がるように聞こえるはずです。

そしてミキサーではなくVCAモジュールとして使用したい場合は、別モジュール(この場合は次に説明する540ですね)のエンベロープでコントロールしたい場合は530の下のMOD INにエンベロープからのOUTを接続します。530にはこの基本的なVCAが2つ搭載されているわけですね。

実は僕が手持ちのモジュールシステムに是非取り入れたいのがこの530なんですよね。実はLAのモジュラーシンセの専門店に在庫としてSYSTEM-500が入って来たのが最近で、530をちゃんと検証してなかったんですよね。これはほんとうに「あると便利」なモジュールなので是非購入したいです。

次にエンベロープとLFOがセットになった540です。初めてSYSTEM-500 Complete Setを見た時に、正直「このモジュール数で基本的な音作りを賄えるのかな?」と思ったんですが、よくよくチェックしていくと、先ほどの530もそうですけど1つのモジュールの中に上手い具合に機能が組み合わせてあるんですよね。この540にもENVが二つとLFOが1つ搭載されているんです。

他社のモジュールの場合は一般的にはLFOとENVは別のモジュールで販売されています。もちろん、540のような場合とLFOに特化したモジュールではそれぞれ善し悪しがあるので、一概にどちらがいいとは言えませんが、最初のモジュールシステムとしてSYSTEM-500 Complete Setを購入するなら、やっぱりこの組み合わせは素晴らしくよく考えられていると思います。

僕の経験上、全部のモジュールをバラバラに購入して行くと実際にパッチしていった時に、モジュールのセッティングによってはパッチケーブルがごちゃごちゃになるんですが(そのために割とちょくちょくモジュールの並べ替えするんですけどね!)、LFOとオシレーターやフィルターがこの距離に収まるとパッチの見た目もキレイになるんですよ。

ただ、そのケーブルがカオティックになっているのもまたモジュラーシンセのカッコ良さでもありますけどね(笑)。540で特筆すべきもう1つのポイントはLFOを外部同期してるところから、パネル上の赤いボタンでマニュアルトリガーできるところです。これはライブパフォーマンする上ですごいポイント高いですよ。手元で変更したエンベロープを同じシグナルパスでパッチしなおさずに、外部に送る事ができるって事ですからね!

最後はエフェクト系の572。ここにもLFOがあるのがこれまた気が利いてますね。ディレイのタイムやディレイ音にモジュレーションをこの1台の中でかける事ができますね。ディレイがアナログ・ディレイでそれがこのスペースに入るというのは流石ローランドという感じがします。近いうちに実機を触ってこの「ゲートディレイ」を使ってみたいですね。


ちょっと実機がないので多分、、、なのですが、シグナルをLFOや外部同期したテンポでチョップするような加工ができるという事なのかなあ、、、それとフェイザーはやっぱり実際の音を聞いてみないと分からないのですが、これも要チェックですね。実際僕はフェーザーのモジュールを持ってないので、とても興味があります。ちなみに僕が使っているエフェクト系のモジュールは、QU-BitのRT60でこちらはリバーブがこのスペースに入っているし、ディレイのピッチをCVで外部からコントロールできるので、なかなか楽しいモジュールです。

SYSTEM-500 Complete Setの総評として、このモジュールのセットは良くまとまっていて(スペース的にも)、最初のモジュールシンセのセットとしてはかなりお薦めですよ。モジュールの製品番号が微妙に間が空いてるので、今後のシリーズにも期待大ですね!


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【第19回】「Moog Mother-32 紹介!

Moog/Mother-32

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先週はローランド社のSYSTEM-500 Complete Setを検証していましたが、今週は比較の意味でMoog社のMother-32を見て行きましょう。

MoogFestのポスター画像

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先日のNAMMのモジュラーシンセの会場でも自由に触れるスペースがあったのですが、すごい人気でかなりの順番待ちになっていました。MoogはMoog Festと題したイベントを開催しています。

日本でも開催されるといいですよね〜!両者を比較する事で初めて購入するのにはどちらが良いかだけではなく、もし全てのモジュールをバラバラに買い足して行く際もどういう所を注意すれば良いかが見えて来ると思います。両者の価格帯の違いもあるし、どちらかに優劣を付けるための比較ではありません。片方にしかできない事が勿論ありますしね。自分に何が必要か考えながら一緒に眺めていきましょう!

まず、Mother-32のオシレーターはパルス波とノコギリ波の切り替えなので、ローランドのオシレーターモジュール512のようにトライアングルはありません(つまりピコピコ系の音色を作りたいのならあまり向いてないかも知れないという事ですね)。

それとMother-32はオシレータが1つなので、512のようにオクターブ違いで別の波形をレイヤーするという事は単体ではできません。ただMother-32は一見分かりにくいですが、本体の中にホワイトノイズのオシレーターを持っているのそれをパネルの真ん中上ちょい左にある「MIX」のノブで混ぜる事があります。ノイズを混ぜる音作りは最近はすっかりポピュラーになりましたよね。ソフトシンセのNI社のMassiveでEDM系のベースやリード音を作るときもノイズを少し混ぜるのが結構定番のプログラミングですものね!

Roland/512VCO

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一方の512はノイズのジェネレーターは搭載していないので、ノイズを使った音作りをしたい場合は他のモジュールから引っ張って来る必要があります。このMIXノブでノイズ以外に外部のシグナルをこのサーキットに混ぜるという事ができます。今ある他のモジュールからのシグナルをMother-32にミックスできるし、単純にこのMother-32をフィルターとして使ってDAW上のリズムトラックを加工するために使う事もできるという事ですね。

そしてそのMother-32のフィルターですが、これがさすがムーグのフィルター!僕がLAの楽器店で実機を触った印象なんですが、往年のミニムーグを連想させるフィルターのかかり具合なんです。

そもそもこのフィルターの効きがあ〜だ、こ〜だって非常に感覚的な事でなかなか文章で説明するのが難しいんですよね。僕の中ではフィルターの使い方は大雑把に2タイプあります。

まず、劇伴のトラックを作っている時に16thパーカッションのパターンにフィルターをかけて、単純にぼんやりさせるために使う場合。EQのローパスじゃだめなのか?という質問には、ハイだめなんですと即答できます(笑)。

(一般的には)EQではある周波数帯から上をカットするだけなんですが、フィルターを使う場合は当然レゾナンスという要素が絡むので、カットし始める周波数帯の部分にノッチを作って、逆にそのノッチの部分を上手い具合に強調する事ができるんです。

そしてその音にディレイをかけると自ずとその周波数帯のクセがディレイにも反映されるという具合ですね。劇伴制作の時はUAD社のMoog Multimode Filterを良く使いますが、上手い具合に音が細くなって、セリフとぶつからないためのトラック制作という場面では非常に良く働いてくれます。

音が太いプラグインのフィルターって未だにないですね。フィルターはやっぱりアナログの方が断然良いですね。

そして反対にフィルターを絞り込んで行くと、逆に太さが出て来て存在感が増すタイプ。Mother-32のフィルターがまさにこのタイプで。音質的には丸くなるんですが、太さが出てくるんですね。

このフィルターの利き方がシンセメーカー各社のカラーが一番出る部分ですね。ローランドのフィルター521の場合はMother-32と比べるともう少し万能タイプで、より広い範囲の用途をカバーできる感じですね。この辺の音質の差が価格帯関係なく、どちらを選ぶかのポイントになると思います。テクノ系全般をカバーしたいならRoland System-500の方が重宝すると思いますし、僕らが良く劇伴で使うSub Bassと呼ぶ「ムーンムーン」と音程が見えるか見えないかぐらいフィルターを絞った音色を作りたいと思ったらMother-32の方が向いている、、、そういう違いですかね。

Roland/SYSTEM-500 Complete Set

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来週もMother-32の後半のサーキットを検証していきます。


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【第20回】「Moog Mother-32 紹介! 後編

さてMoog社のMother-32の後半です。先週はフィルターがムーグらしくてなかなか良いよ!という所まで書きましたね。

このMother-32のフィルターはー24dbのフィルターで、以前も書いたと思いますが、巷のアナログシンセのフィルターは−24dbか−12dbが殆どです。

どちらが良い悪いではなくてどういう音を作りたいかによります。ー12dbの代表格と言えば往年のオーバーハイムのシンセサイザーです。

Moog/Mother-32

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ちょっと漠然としたイメージになりますが、サーと広がるようなSaw波形のPadサウンドを作る時は−12dbの方が扱いやすいと思います。

Mother-32の−24dbのフィルターは割と丸い感じのシンセベースやアルペジオのフレーズに急激な音色変化が必要な時に向いていますね。


Moog/Mother-32

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パネル上のツマミで他に特徴的なのはエンベロープです。ムーグらしいと言えばムーグらしいのですが、一般的にエンベロープと言えばADSRでワンセットなんですが、初代ミニムーグもそうですが、リリースのコントロールがないんですね。

Sustainのスイッチをオフにした時にDecayのツマミがReleaseコントロール的な役割になるんです。これは実際に触るとすぐに慣れるのであまり問題ないと思います。(今週も先週使った、マニュアルPDFから切り取ったパネルの画像を使ってください)

ミニムーグと違ってモジュラーシンセらしいのが、Resonanceの右にあるVCA MODEのスイッチですね。これを下に倒してEG(エンベロープ・ジェネレーターの略)を選ぶとATTACKとDECAYで調整したエンベロープになりますが、上に倒してONにすると右のパッチ用のマトリックスのVCA CVに入って来たシグナルでVCAを開いたり閉じたりできるんです。

つまり外部のモジュール群と同期して複雑なシグナルパスをこれで組み合わせていけるんですね。

次にMother-32の一番の特徴となるシーケンサー部分です。レイアウトがシンプルですけどすごい良く出来ていて僕はLAの楽器店でマニュアルを観ずにすぐに操作する事ができました。

他社のシーケンサー専用モジュールのようにシーケンスをリバースしたり、バック&フォワードさせたりステップの途中から再生したりはできませんが、リズムも充分タイトだしかなり遊べると思います。

パターンをリセットして、(SHIFT)ボタンを押しながらRUN/STOPを押すと(REC)モードに入って、32ステップ以内で右にある鍵盤並びになっているボタンで音階を入れて行く。すごい簡単です。勿論、右のマトリクスを外部にパッチして、ステップシーケンサーのテンポ同期や、RUN/STOPの制御もできます。

パッチせずに音作りをしていっても、所謂アナログシンセ的なサウンドは一通り出せます。それ以外に右側のマトリクスを使ってMother-32内部をモジュラーシンセ的にパッチすることができます。

このYoutubeのリンクはVCFのアウトでVCOをFM変調するためにパッチしている例ですが、Mother-32のポテンシャルを理解しやすいと思います。

https://youtu.be/nWuBBqnP_V0?t=7m9s

それからこちらのリンクはMother-32を外部のモジュールと併用したとても良い参考例のYoutubeです。

https://www.youtube.com/watch?v=1zxCRpFh5XQ

僕個人としては、モジュラーシンセ初心者の方が、Roland System 500 Complete SetとMother-32のどちらを買うか悩んでるとしたら、Roland System 500の方がお薦めです。

Roland/SYSTEM-500 Complete Set

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オシレーターが持ってる波形の種類、同時に使えるオシレーターの数共に500シリーズの方が多いですから。

それとエンベロープの数が多いのもポイント高いです。外部のモジュールをコントロールするにもADSRで構成されたエンベロープの方が直感的で良いと思います。

だから最初のモジュラーシンセの軸としてスタートするにはSystem 500の方が良いチョイスだと思います。Mother-32を勧めるとしたら、やっぱりこの所謂ムーグの音が自分の好みにピッタリ!という場合ですね。

音の太さとフィルターの切れ味は、アナログシンセの醍醐味でもありますからね。勿論一番のお薦めは両方購入する事です!そうすれば相当色んな事ができますよ!


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【第21回】「LFOでモジュレーションをかける 解説編」

今週はモジュレーションがテーマです。一見、パッチケーブルがごちゃごちゃして複雑に見えるモジュラーシンセですが、好きなモジュール同士を簡単に繋げられるという事は実はシンセサイザーの音作りをする上では複雑な事ではなくて却ってシンプルな事なんです。ビブラートをかけたいなと思ったら、LFOをオシレーターへパッチすれば良いし、トレモロをかけたいなと思ったら、LFOをVCAへパッチすれば良いし、周期的な音色変化が欲しいと思ったらフィルターにパッチする、、、とそんな具合です。

勿論同じ発想のシグナルパスは鍵盤付きの普通のシンセサイザーでも可能なのですが、一般的になシンセサイザーが持っているLFOの数は二つ程度です。モジュラーシンセの場合は手元にあるLFOの数だけあちこちにパッチできるので、自由度は高いわけです。また1つのモジュールから1つのLFOシグナルを取り出すだけではなくて、パラレルケーブルを使えば複数のモジュールにLFOシグナルをパッチできるし、Doepfer A-147(画像)のような一番シンプルなLFOモジュールでも各波形のアウトから同時にシグナルが出力されているので、鍵盤付きのシンセのように同時に使えるLFOの波形の制限がないわけです。だいたいフリーケンシーの幅(揺れの周期ですね)は外部からCVを使ってコントロールできるモジュールが殆どです。

以前紹介したRoland社の500シリーズからも勿論540というLFOのモジュールはリリースされています(こちらはエンベロープと一緒ですね)。こちらはディレイが付いています。LFOがかかり始めるタイミングを設定できるんですね。例えばノートを発音して、しばらくしてからビブラートがかかるようなサウンドを作る時に使えますね。


Mutable Instruments/Tides

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ちなみにですが、僕が最初に買った最初のLFOモジュールはMutable Instruments社のTidesでした(画像)。買って後悔はしていませんが(笑)、あれこれでできるが故にかなり複雑なんです。Tidesには先ほどの外部クロックA-147や540にはないクロック入力があります。LFOの周期を外部クロックと同期できるんですね。これはこれで結構重宝するんですが、外部から入って来たクロックに対して、Tides内部の同期率を


1/16、1/12、1/8、1/6、1/4、1/3、1/2、3/5、2/3、3/4 、4/5、1/1、5/4、4/3、3/2、5/3、2、3、4、5、6、8、12、16

と選ぶ事ができます。その周期を選ぶ際に左上から二つめの(Rangeボタン)を1秒以上長押しして、比率を選ぶモードに入り、中央上のFREQUENCYのノブを調整して、先ほどの比率を「耳で」選ぶんです!他にも色々複雑な事ができるんですが、LFOの波形とSLOPEを調整する事でエンベロープとしても使えるんですが、UnipolarとBipolarの出力があるんです。

tides shapesの図

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先ほどの540にもエンベロープを反転出力できるスイッチはありますが、Tidesはエンベロープの変化の幅を+側の0Vから8Vまで出力する、Unipolarと+5Vから-5Vの間の差で出力するBipolarの両方を出力できるんですね。Mutable Instruments社から拝借してきたグラフで見るとこんな感じですね。

とまあ色々と複雑な事ができるので、なんとなく僕が若干後悔している理由も伝わるかもしれませんが、じっくり音を作る時は楽しいのですが、直感的ささっとパッチしたい時はやっぱりまずシンプルなLFOを買った方が良かったと持っています。

来週はLFOモジュールの実際の使い方の説明をしていきます。


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【第22回】「LFOでモジュレーションをかける 実践編」

今週はLFOの具体的なパッチの仕方です。まずは図1を見てください。これはビブラートをかける、つまり音程を一定の周期で揺らすための、一番シンプルなパッチの仕方です。キーボードを弾いた時にトリガーされるゲート信号がエンヴェロープジェネレーターにパッチされ、同時にLFOのTRIGにもパッチされています。これで鍵盤を弾く度にLFOの周期がリセットされるわけです。


ビブラートのスピードはLFOのRATEで決めます。モジュールによってはSPEEDと書いてある場合もありますね。LFOからの出力をVCOのCVに送ってピッチを揺らすわけですが、今回は途中にもう一つ、別のVCAモジュールを挟んであります。これは実際のモジュールシンセでも時々使う手法なのですが、LFOの出力が大きい場合に、直接VCOのCVに送るとコントロールしにくい場合があるので、途中にアッテネーター的にVCAを挟んでレベルをコントロールしているんです。ビブラートがかかるタイミングを調整したい場合はキーボードのMODホイールからのシグナルをLFOのCVにパッチしてコントロールする方法もありますね。

Synthwerks/FSR-4

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鍵盤や外部コントロールを使わずにモジュール群だけでパフォーマンスしたい場合はSynthwerksからFSR-4というモジュールが出ています。(図fsr-4)これは一番下の丸い部分がタッチセンサーになっていて、オンオフのゲートとしても使えるし、押し込むと指が触れる面積が増える事によってCVの値の増減をする事もできます。その場合はPRESSURE側からパッチをします。

DOEPFER/A-178 Theremin Control Voltage Source

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他にもDOEPFERのA-178 Theremin Control Voltage Sourceというテルミンのようにアンテナに手をかざす事でCVをコントロールでいるモジュールもあります。(図a-178)パフォーマンス的にはこれを使ってLFOをコントロールする方がハデかもしれませんね(笑)。

さて、ビブラートのパッチと同じ考え方で、LFOのアウトをVCFのCVにパッチすれば、フィルターでパスできる周波数をLFOでコントロールできます(図2)。この辺のエディットは一般的な鍵盤付きシンセと全く同じなので、分かりにくい事はないと思います。

左:(図2)/右:(図3)

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Doepfer/A-130

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そしてビブラートと効果は近いですが、トレモロのパッチです(図3)。トレモロはピッチの揺れではなくて音量の揺れなので、VCAのCVにLFOをパッチします。この画面のVCAとかなりシンプルなので、CVの入力が1つしかありません。ですから、1つめのVCAのアウトを別のVCAにパッチしてそこでトレモロかけています。DoepferのA-130等CVの入力を二つ持っているモジュールも多いので、1台のVCAでパッチが済む場合もあります。

今週は一番シンプルなLFOの使い方を紹介しました。LFOを好きな所に好きなだけパッチできるのが、モジュラーシンセの長所です。複雑な仕様のLFOが1つあるよりも、シンプルなLFOでも2つ、3つとある方が音作りの幅は広がりますので、今週の基本パッチをLFO購入の際の参考にして下さい。


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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼ Facebookはこちら>>

【第23回】「これぞモジュラーシンセならではの音作り!」

このコラムを読ん頂いている知人から、「ところで実際はどういう時にモジューラーシンセを使っているのか?」と質問をもらいました。

今週は現在進行形で進めているプロジェクトでモジュラーシンセを使った例を紹介します。ソフトシンセではほぼ不可能であり(MAXを使えば可能ですが、、、)、これぞモジュラーシンセならではの音作りを説明してみたいと思います。

4ms/Spectral Multiband Resonator(通称SMR)

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ただいま福田雄一監督の今年のドラマのプロジェクトに携わっています。ドラマの情報公開がまだなのでキャストやストーリーについては書けませんがサウンド的に「不思議な空間」を音で演出する必要があるので、そこにモジュラーシンセを使っています。今週紹介するのは、4msというメーカーの「Spectral Multiband Resonator(通称SMR)」というモジュールです。このモジュールも一言で説明するのは容易ではないんですよね(汗)。マニュアルを読まなくても触ってるうちになんとか、、、なるかなあ、、、ならないだろうなあ(笑)、、、的なパネルレイアウトです。

まず、パネルを見ただけでは分かりにくい(というか多分、分からない)のですが、このモジュール自身がホワイトノイズのオシレーターを持っています。「ノイズ」を物理的にものすごく簡単に説明すると「全ての帯域の音が一度に出ている」音ですよね?別の言い方をすると、かなりエッジの効いたバンドパスフィルターを使えばある特定の音程を切り取る事ができる、、、とも言えるわけです。一般のシンセサイザーにものノイズオシレーターを持っているものがありますよね?一般的なシンセサイザーはフィルターのバンドを1つ(稀に2つ)で音色をコントロールするのが一般的です。フィルターの種類は(最近のシンセだと)バンドパスフィルターを内蔵しているものも珍しくないのですが、このSMRと同様の使い方をできるシンセサイザーは多分ないと思います。

このモジュールは上に書いたように、自身のノイズサウンドに対して、バンドパスフィルターを使う、または外部入力に対して同様のフィルタリングをする、の2通りの使い方ができます。さらにこのモジュールをユニークな存在にしている一番のファンクションは内蔵しいるスケールです。ROTATEというノブの下に(SCALE)と見えると思いますが、このノブを押し込むと下の方のLEDが15通りの色に変わって、スケールを変更できます。そう、どのスケールがアベイラブルなのかは色で認識するんですよ(涙)。スケールというからには音階に基づいているわけですが、その音程をノイズの中から、6つのバンドパスフィルターで切り取って決定して行くんですね。

SMRの内部基盤

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話が長くなりましたが、例えば12音階を使ったスケール以外にも僕が今回多用したオクターブ(超厳密にはオクターブではないらしい)を17等分した17音階のスケールや、元祖モジュラー女子、ウェンディ・カルロスが発明したガンマスケール等様々な変わったスケールが内蔵されています。せっかくモジュラーシンセに興味を持っているのなら、是非ウェンディ・カルロスの事もチェックしてみて下さい。カルトムービー(?)「時計じかけのオレンジ」のサウンドトラックや、モーグのモジュールシステムだけで作った1968年のデビューアルバム、「スウィット・オン・バッハ」が特に有名です。前置きだけで今週終わってしまいましたが、来週は実際のサウンドも含めて詳しく紹介します。4msのサイトにある、SMRの内部基盤です。最近のモジュールってどれもかなり精密機械なんですよね!

[4ms/Spectral Multiband Resonator]紹介動画はこちら>>


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【第24回】「続・これぞモジュラーシンセならではの音作り!」

今週は先週に引き続き、4msの「Spectral Multiband Resonator(通称SMR)」を実戦でどのように使ったかを紹介していきます。

4ms/Spectral Multiband Resonator(通称SMR)

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サンプル1


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

先週SMRはホワイトノイズのジェネレーターでもあるという説明をしました。まずサンプル音源1を聞いてください(ホワイトノイズが出ますので視聴するスピーカーの音量には気をつけて下さい)。6つのバンドパスフィルターのフェーダーを1から順に6つ上げて行きます。各バンドは奇数偶数でアウトが分かれています。それをこの音源ではLRに振り切っているので、音が左右から聞こえるというわけです。

13秒あたりから、画面左下のRES(Q)のノブを右に振り切っていきます。つまりレゾナンスを発信させ始めるということですね。だんだんノイズから音程が聞こえてきますよね?オクターブ違いでFとAの音程が交互に聞こえて来ます。このノイズにフィルターかけてレゾナンスを上げて発信させて音程を生成する方法はこのSMRだけではなく、実はアナログシンセではとても一般的な方法なのです。発信するレゾナンスを持っているシンセサイザーでは似たような事が昔からできたんです。シンセサイザーの設計コンセプトによっては発信しないレゾナンスもあります。単純に音色のキャラクターの違いなので発信するしないがサウンド善し悪しとは関係ありません。古くはオーバハイムのOB-8等はレゾナンスをいくら上げていってもプロフェット5の様に発信したりはしませんでした。

このYoutubeのリンクは氏家克典さんがRolandのSH-2の紹介をしているビデオですが、4:57秒あたりからレゾナンスの発信だけを使った音色メイキングの説明をされています。

https://youtu.be/nHLv-oDhaIQ?t=4m57s

サンプル2


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

RMSも原理はこれと同じなんです。RMSのユニークな所はこの音程の作り方なんですね。RMSは本体の中に様々な変わったスケールを持っています。例えば僕が今回福田雄一監督のドラマで使ったのは「17-notes per octave」というスケールです。普段音楽を作る時はほぼ100%平均律を使って楽曲を作りますよね?1オクターブを12分割する、所謂12平均律ですね。このスケールはそれを17分割しているので17平均律と呼びますが、これを一般的なハードウェアシンセやソフトシンセで作る事はかなり難しいです。

4ms/Quad Clock Distributor

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ノートとノートの感覚が12平均律よりもかなり近いので段々クラスターのように聞こえてきます。15秒目からパネル右下のSpreadのツマミを右に廻して、音程間を開いて行きます。その後22秒以降、別モジュールの4msのQuad Clock DistributorからSMRの中央右下のRotate Trig(右回りの)へクロックを送り、6つのバンドパスフィルターで選んだ音程を廻していきます。35秒以降クロックを速めて、なおかつ音程同士のつながりが良くなるように、右下のMorphのツマミを上げていきます。

最後に先週紹介したウェンディ・カルロスが発明したガンマスケールを使ったサウンドも聞いて下さい。このトラックにはリバーブが足してありますので、より宇宙っぽい感じがしますよね?

サンプル3


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

SMRは他にも様々なスケールを内蔵しています。さらに多くのパラメーターは外部からCVでコントロールできるようになっていますし、SMRのホワイトノイズ以外に外部から入力された音源に対してもこれらのフィルターやスケールを活用する事ができます。モジュラーシンセでなければ作る事のできないサウンドの一番顕著な例ですね。


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【第25回】「続・これぞモジュラーシンセならではの音作り!」

Mutable Instruments/Braids

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今週は僕の仕事で使用率の高いMutable InstrumentsのBraidsを紹介します。他のモジュールと一緒に使う事も多いのですが、今回はBraidsだけでサンプル音源を作成しました(少しだけリバーブが足してあります)。外部のステップシーケンサーからコントロールしています。

Braidsは基本的にはデジタルオシレーターですが、Korg社の名器MonoPolyのようなアナログテイストなサウンドをいくつも持っています。さらにもっと最近のモジュラーシンセならではの独特なWAVE TABLEもたくさん持っているんです。


波形アルゴリズムの表画像

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Triple Square/音源1


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

オシレーターアルゴリズムのトップは、いきなりこれまたYAMAHAのヴィンテージの名器CS-80のSAWから始まるんですが、最初にサンプル音源で紹介するのは3つのスクエア波形で構成されている「Triple Square」(音源1)。このサウンドはかなりMonoPolyっぽいです。僕はMonoPolyを東京とLAに一台ずつ持っていますが、実機よりも少し音はタイトな感じがしますがかなり似ています。それと7秒目からピッチが変化しますが、これはTimbreノブ(勿論外部CVからもコントロールできます)で、2つめのオシレーターのピッチの変化をさせています。16秒目からは3つめのオシレーターをColorノブを使って変化させています。これで3つのSquare波形を3オクターブに設定する事ができるわけです。ちなみに、これを他のオシレーターモジュールでやろうとすると、オシレーターによっては、Saw、Square、Triangleからどれか1つを選ぶとか、同時にSquareをジェネレートするにしてもオシレーターが2つしか搭載してない機種が多いので、現実的に3つのSquare波形を使うとなるとある程度以上のモジュールが必要になるんですね。

Speaking-Toy vowel synthesis/音源2


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

次にBraidsならではと言えばVocal系の波形でしょうね。これはSpeaking-Toy vowel synthesisという説明がついていますが、5つのa、e、i、o、u、というフォルマントをTimbreノブを使って変化させる事ができます。(音源2)昔の「Speak&Spell」というオモチャのサウンドがイメージ元ですね。興味がある人はYouTubeで「Speak&Spell」で検索してみてください。映画「E.T.」でETが英語を覚える時に使っていた4bitマシンです(笑)。

Vowel Synthesis of Braids/音源3


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

もう1つフォルマント系の、アルゴリズム。(音源3)これはもう少しボコーダーっぽい感じですね。これも5つのa、e、i、o、u、というフォルマントをTimbreノブを使って変化させる事ができます。この母音のセレクトを正確にコントロールするのは実際は難しいんですが、このサンプル音源的な感じでサウンドを作って行くのは簡単です。


Wave Tables of Braids/音源4


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

最後にWAVE TABLE系のアルゴリズム。(音源4)これは21のテーブルを持っているアルゴリズムで、Wave Tableのポジションと波形と波形のつなぎの滑らかさを調整するパラメーターを持っています。WAVE TABLE系のオシレーターを持っているモジュールは現在それほど多くはないので、Braidsは選択肢の1つとして良いと思います。


Braidsはアナログ波形も持っていますが、個人的には正統派のアナログオシレーターモジュールよりも、若干音が固い印象があります。ですから、どんな場面でもBraidsを使えるわけではありません。ですが手元にあるとかなり助かるモジュールです!


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【第26回】「iOS用 moog/Model 15 Appを紹介!」

moog/Model 15

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このセミナーでは基本的に実物のモジュラーシンセを扱ってるいるわけですが、あのmoog社から新しいiOS用のモジュラーシンセのシミュレーションアプリModel 15 Appがリリースされたので早速チェックしてみました。

僕自身何もモジュラーシンセに固執しているわけではなく、必要であれば音が出るものは何でも仕事に使いますし、iPad用のappも仕事で良く使います。インターフェースが変われば自分から出て来るアイディアも変わるし(人はそれを他力本願と呼んだりするわけですが)、出て来るフレーズもまた変わりますからね。

さて、このModel 15 Appは同社から既に発売されているModel 15をアプリにしたものです。音作りに関わる部分で大事なオシレーターは全く同じ921Bが2つ。Low Passのフィルターが1つ。907A Fixed Filter Bankというフィルターがありますが、これはレゾナンスがない(つまり発信したり、極端ノッチを作ることができない)EQだと思ってもらえばいいですね。他はエンヴェロープ・ジェネレーターが2つ、、、等々かなり基本的な構成です。

サウンドは同社サイトのSOUNDでチェックできますから、そちらを聞いてもらうとして早速使用感の話になりますが、iPadだと正直パッチングしていくのがかなりツラいですね(汗)。鍵盤部分は高さを半分に畳む事ができます。最大にピンチアウトしてもModel 15全体を画面に収める事はできないので(そもそも実機のModel 15がかなり縦長なので)、iPadを縦にして使うよりも、実際は横にして使い右のスクロールバーで上下した方が実戦向きですね。

iConnectivity/iConnectMIDI4+

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サウンドの方はMoogらしい「ブッとさ感」は確かにありますが、iOSデバイスの場合はどうやって出力するのか問題になるでしょうね。僕はiPadアプリの出力(それとMIDIやクロックのやりとりにも使えます)には以前ロックオンのレビューでもお薦めしたiConnectMIDI4+を使っています。これを使えば音質的にはロスせずにDAWまで取り込めますが、やっぱりアナログ感が足りない、、、という感想が正直な所。

先にこのアプリの短所を書きますが、モジュールの数、種類が少ないので音作り的にはかなり制限があります。以前紹介したiPad app、「modular」であれば空いてるスペースにどんどんモジュールを入れて拡張できましたが、このアプリは基本的に実機のシミュレーションなので、そういうオシレーターやLFOの数を増やしたりという事はできません。これができれば全然違う感想になるんですけどね、、、それとある程度実機のモジュラーシンセのパッチに慣れた人には画面が狭く、パッチしていく操作にストレスを感じると思います(実際僕がそうですw)。

長所としては以前紹介したapp、modularよりもグラフィックがかなりリアルなので、人によってはやる気が出る、、、かも知れません(笑)。それとAbleton Linkに対応しているのはかなり僕的にはポイント高いです。Link機能を使えばこのModel 15 AppとAbleton Liveをシンクさせて演奏できるとわけです。アプリの中にたくさんアルペジオ系のプリセットがありますから、Liveを使っている読者はすぐに同期させて、それらのサウンドを音楽制作に取り込めますよ!さらに、別のiPad appである、Audiobusにも対応していますから、Model 15 Appのサウンドに別appのディレイやリバーブ等をiPadの中で足す事ができます。

moog/Model 15

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し・か・し、ですね、勿論金額の違いはありますけど以前紹介したMOTHER-32を買った方が1000倍楽しいですよ!iPad上でのパッチはやっぱり感覚的というよりは思考的になりがちですが、実機のMOTHER-32や本物のモジュラーシンセなら少し慣れれば自分が欲しいサウンドに対して身体が勝手に反応してパッチしていけるようになります。そこはアプリと実機の決定的な違いですね!


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【第27回】「モジュラーシステムを組み合わせる」

経年変化で鍵盤がガタガタになったKorg社のヴィンテージシンセMSー20が手元にあるのですが、久し振りに音を出してみたらこれはこれでやっぱり良い音してるんですね。MSー20はセミモジュールタイプと呼ばれる方式のシンセです。基本的な内部配線はしてあるので、パッチをしなくても音は出るのですが何かアイディアを思いついたら自分で各セクションをパッチしてさらに複雑なサウンドメイキングも可能なんですね。

Dave Smith Instruments/Prophet5

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実は正直に申しますと(!?)、このMSー20の音作りが苦手なんです、、、鍵盤の修理をずっとしてなかったのもそれが理由だったんです。多分このシンセのパッチ部分のレイアウトのせいかなと思います。元々Prophet 5の音作りが相当身体に染み付いているからシグナルフローをどうしてもProphet 5的な考え方をしているからMSー20と相性が悪いのかなと思いますし、もっと簡単に言うと頭がカタイから何でしょう(涙)。例えばこのビデオのように、「Headphones」アウトを「E.S.P」に戻して、それを別出力として扱い、外部ミキサーでパンニングしてスタンダードな「Signal Out」と左右に振り分けてステレオ感を出す、、、なんて発想ができなかったわけですね、、、

https://youtu.be/Ia-S5c63g5c

The Harvestman/English Tear

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さて、話題をモジュラーシンセとMS-20の関係に移します。このセミナーで紹介しているEurorackという規格のモジュールは1オクターブ1ボルトというルールに基づいて設計されています。ピッチのためのCVの電圧が1V上がると1オクターブ上がるというわけですね。そのルールがあるのでメーカー違いのオシレータモジュールを幾つか組み合わせてもちゃんと音階が合うわけです。一方MS-20はと言うと、入力された1ボルト対して音階ではなくヘルツで換算していく方法が取られています。1V100hrzが2Vに対して200hrzになるという具合ですね。そういう2つの違いがあるのでMSー20をEurorackのモジュラーシンセと同居させたい場合は間に何かデバイスを挿まなければいけません。

その変換をラックに収まるモジュールで可能にするのが、The Harvestman社のEnglish Tearです。

これがあれば、Eurorack ModuleからのCVをMS-20へ送る事も、MS-20側で生成したCVをモジュラーシンセに送る事もできるようになります。

https://m.youtube.com/watch?v=uF2kWMVq80Y

または国内で手に入れやすい、Korg社のSQ-1を使う方法もあります。これは異なる規格のCVを変換してくれるわけではないのですが、このSQ-1で組んだステップシーケンスをMS-20とモジュールシステムの2系統に送ることができるんです。

http://www.korg.com/jp/products/dj/sq_1/index.php

現行の製品ではKorg社が自ら復刻したMS-20 miniも上記の方法でモジュラーシステムに取り込む事ができますので皆さんもMSシリーズの何れかを使っているのならモジュラーシステムとの組み合わせを楽しんでみて下さい。


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【第28回】「Make Noise社Erbe-Verbを紹介!!」

今回は最近少し前に買ったMake Noise社のErbe-Verbを紹介します。

Make Noise/Erbe-Verb

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以前からリリースされているのは知っていたんですけどね、別のモジュールを買いにサンタモニカのAnalogue Heavenに行った時にスタッフのSkylerにこのモジュールを紹介されて「今なら中古があるぜ!」と言われて買ってしまいました(笑)。

DAWのプラグイン・リバーブや、ギター用のストンプボックスのリバーブでは絶対生成できないリバーブサウンドがこのモジュールの魅力ですね。勿論各パラメーターがCVでコントロールできるという事も非常にポジティブな要素です。Skylerに付いては僕のコラム「LA Graffiti」で次回触れますので是非読んでみて下さい。普段はAnalogue Heavenのスタッフですが、素晴らしいモジュラーシンセのパフォーマーなんです。

Erbe-Verbは基本的にはモノラルイン、ステレオアウト(モノアウトも可能)のリバーブ・モジュールです。リバーブサイズについて、メーカーの説明には「棺桶から天国まで」と書いてありますね(笑)。Make Noise社のサイトにはほとんどのモジュールの日本語のマニュアルPDFが置いてありますから、購入前に主な機能はチェックしやすくて助かりますね。

http://www.makenoisemusic.com/content/manuals/Erbe-VerbManual-japanese.pdf

まずErbe-Verbの一番の特徴であり、これがDAW系のプラグインリバーブにもあったら面白いなと思うポイントは「Size」というノブを廻してリバーブのアルゴリズムを変えて行ける機能ですね。

殆どのプラグイン系のリバーブはリバーブの長さやディケイやEQはオートメーションに対応していますが、例えばルームからホールへのアルゴリズムの切り替えがオートメーションに対応しているものって少ないですよね。オートメーションが書けなくても、アルゴリズムの切り替え時にノイズを出さずにリバーブのテールを残したりできるプラグインも少ないと思います。

この空間を連続的にモーフィングできるモジュール・リバーブは今現在は多分このErbe-Verbだけだと思います。

リバーブにモジュレーションも内蔵されていますが、やっぱりモジュレーションがあるとピッチを揺らせるので(Chorusほど大げさではないですが)、シンセにとても相性の良い空間を作りやすいのでかなり使い勝手がいいです。特にDEPTHを上げ切ると独特のアンビエント感が出るので、このリバーブ・モジュールをアウトボードとしてDAWに取り込みたいくらいです。

他に特徴的になパラメーターに「ABSORB」があります。「吸収」という意味から想像するに役割的にはディケイ的な機能かと思いますが、「DECAY」はディケイで単独でノブがあるんです。ABSORBは壁面の残響の吸収率と書いてありますが、その説明の通り「広い部屋なんだけど壁の材質が柔らかい」的な響きを生み出すパラメーターです。同じリバーブの長さでもシーケンスを鳴らしていても、このABSORBのパラメーターを変化させるだけど、そのフレーズにかなり表情を付けて行く事ができます。

他にパネルだけ見て若干分かりにくい所があるとすれば、「REVERSE」のボタンがありますが、このリバースの長さは「PRE-DELAY」のノブで調整するって事ぐらいでしょうか。他はノブをいじり倒せば10分もかからずに使い方がマスターできると思います。モジュラーシンセはどうしても発音数が制限されるし、同じフレーズを繰り返してパフォーマンスする事が多いですよね?そういう時もErbe-Verbがあると、1つのフレーズに対してのリバーブのパラメーターの変化だけで時間を稼げますから(??)ラックに入っているとかなり便利ですよ!

シンプルなセッティングでリバーブのアルゴリズムの違いによる音色の差はこのリンク先のビデオを見て下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=LlxRKbjKYow&index=2&list=PL0jGFC0FWQsjSw5q-x1p0olZJkLRMZ8Xg

次のこちらのビデオをチェックすると、リバーブに対してABSORB等のパラメーターがどう効果を出すかがわかります。

https://youtu.be/ik8CIQ8Dd8E?list=PL0jGFC0FWQsjSw5q-x1p0olZJkLRMZ8Xg

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【第29回】「チップチューン特化モジュール。Mutable Instruments/Edges」

こういうセミナーを書いてる関係で最近知人からモジュラーシンセの相談や質問を受ける機会が増えました。でも、通常は自分の興味のあるモジュールしかリサーチしないので、どんな質問にも即答できるわけではありません。今週も「チップチューンに特化したモジュールってあるの?」と質問されました。このセミナーの読者にチップチューンの説明をする必要はないかとは思いますが、簡単に説明すると1980年代のパソコンや、ファミコンに搭載されていた8bitの音源チップから生成されたサウンドをメインに使用して制作された楽曲の事を指します。

え〜っと、確かどこかのメーカーからリリースされていたような気が、、、そう、Mutable Instruments社のEdgesだ!というわけで今週はこのEdgesを紹介します。

Mutable Instruments/Edges

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モジュールのカテゴリー的にはオシレーターに属します。4つのオシレーターを備えていますが、そのうち3つが同じ波形です。基本的にはパルス波形のオシレーター、残りの1つがLSFR noiseというオシレーターのようです。う〜む、このLSFRという名前は初めて聞きましたが、日本語では「線形帰還シフトレジスタ」の意味で(日本語かな??)任天堂がファミコンのチップで、少ないビット数で乱数を扱うために生まれたロジックのよ・う・で・す。プログラミングの世界で扱われる乱数は本当にランダムな数の並びではなく、「まるで乱数のような数字の並び」だが実はあらかじめ登録されているレジスタに特定の計算処理をして一見ランダムな数字の並びを得る、とこーゆーアルゴリズムですね。興味がある方はこちらを参照して下さい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/線形帰還シフトレジスタ

3つのオシレーターはパルス波形と書きましたが、下段の4つのボタンを押すことで、かなりのバリエーションのパルス波形を得られるし、XMODと書かれたクロスモジュレーションをオンにする事でさらに複雑なサウンド・バリエーションを生成できます。

4つめのLSFRオシレーターのサウンドは下記リンクのビデオの0:50秒あたりからチェックできます。最初はノイズのようなサウンドですが、実はこのオシレーターもWaveform Selectionのボタンを押す事でサイン波、三角波、ギザギザの三角波、サンプル&ホールド、そして2種類のLSFRノイズと選択する事ができます。それを上の3つのオシレーターとミックスしていくと相当なバリエーションのサウンドが得られるんですね。

https://www.youtube.com/watch?v=LMZ9y5Abrg8

オシレーターが4つあるので、各オシレーターを別々のピッチにして3声か4声のコードを鳴らす事も可能ですね。その場合は別のシーケンサーからのCVをパラレルケーブル等でEdgesのCVに入れれば、即、平行和音をゲットできるわけですね。

最初は「あ〜チップチューンのモジュールね〜」とピコピコ系のサウンドしか得られないんだろうなと甘く見てましたが、さすが一癖も二癖もあるモジュールをリリースしているMutable Instrumentsだけあって、かなり奥が深いオシレーターですね!

Mutable社のEdgesを使ったデモトラックはこちらのリンクでチェックできますよ。

http://mutable-instruments.net/modules/edges/demos


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【第30回】「ありそうで意外とないルーパー系モジュール、4ms/Dula Looping Delay(DLD)紹介!」

4ms/Dula Looping Delay(DLD)

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ありそうで、探してみると意外とないルーパー系のモジュール、それが4ms社のDula Looping Delay(DLD)。ストンプボックスだと各社から色々な製品がリリースされていますけど、Eurorackではなかなか数が多くないですよね。壁のようにモジュールが並んでいるユーザーは別として、僕も含めて同じモジュールを幾つも所有している方はそうそう多くないと思うんです。幾つかのモジュールを組み合わせて作ったフレーズやモチーフを、ルーパーに取り込んで再生し、そのフレーズを作ったモジュールでまたさらに別のモチーフをレイヤーをしていけたらいいなとは思っていたんですよね。

4msのサイトに「designed by 4ms and Gary Hall」とクレジットがあるんですが、このGary Hall氏ってどなた?と思ったんですけど、ルーパーの元祖Lexicon社のPCM42の開発に携わっていた方なんですね。スペック的な部分をチェックすると、完全に独立した2系統のディレイ(勿論2系統ともルーパーとしても使用可)、48khz16ビットモードでは各チャンネル最長2分54秒のサンプリングが可能。これを48khz24bitモードでもサンプリング可能でその場合は各チャンネルの最長サンプリングタイムは88秒です。つまりディレイのサウンド的にはテープのシミュレーションとかBBD系の柔らかい音色とは正反対のオーディオ的にクオリティーの高いディレイってことですね。モチーフをルーパーして演奏するにはバッチリですね!

パネルをチェックしてわかりにくいパラメーターはほとんどなさそうですね。無限大のサイン∞のHoldというボタンはルーパーを使った事がある方は想像つくと思うんですが、一定の秒数のループにどんどん”無限大に”音を重ねて行くことができるモードです。このビデオをチェックしてもらうのが分かりやすいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=i-m2-Cxstiw

音をいくつか重ねていった後は、ディレイタイム、フィードバック、リバースを組み合わせてサウンドを変化させてますね。これがHoldというモードですね。

それか各チェンネルにセンド&リターンがついています。ここを外部のフィルターモジュールにパッチすれば、ディレイ音の加工(アナログ的にローパスフィルターをかけるとか)ができます。それとA側でループしているフレーズをセンドAからB側のディレイのIn Bに入力してOut BからのサウンドをReturn Aに戻せばダブ的なディレイの使い方ができますね。

中央上のPingのボタンは所謂タップテンポ用のボタンですね。そしてその右のインプットは外部からのクロック・シンク用です。

外部からクロックを入れた場合はこんな感じでルーパーの再生スピードをコントロールできます。

https://www.instagram.com/p/BFq_5wFBY3W/

このPingのインプットがとてもユニークで、なおかつモジュラーシンセ的な長所なのですが、このインプットにクロックではなく、パルス波(矩形波)を外部のモジュールからインプットするとレゾナント・ディレイを生成する事ができるんですね。

4msのDan Green氏が自ら解説しているビデオがありました。このビデオの2:40秒からです。

https://youtu.be/HSUJZtHHVDs?t=2m41s

まだ発売されたばかりで市場に出回ってる数は少ないようですが、チャンスがあったら要チェックですよ!


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【第31回】「ディレイ系モジュール、Intellijel社のCylonix Rainmaker紹介!」

Intellijel/Cylonix Rainmaker

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今週はディレイ系のモジュールを紹介します。NAMMショーでは開発に2年かかったと語っていた、Intellijel社のCylonix Rainmakerです。以前も似たような事を書きましたけど、現行のDAW系のプラグインには見当たらないようなユニークなディレイです。アウトボードとしてDAWの制作にも使いたい思うほど個性的です。

https://intellijel.com/eurorack-modules/cylonix-rainmaker/

僕はIntellijelのモジュールを5つ持っていますけど、どれもレイアウトが分かりやすく、パネル上のテキストが読みやすく(個人的には結構重要)、複雑な事ができる割にはほとんどマニュアルを読まなくても扱えるので大好きなメーカーです。ですが、今回のモジュールはやっぱりマニュアルを読まないと難しいですね(汗)。

このRainmakerも一言で説明しにくいモジュールなのですが、基本的にはステレオ・ディレイとステレオ・コムレゾネーター(?)が搭載されています。ディレイは96khz24bitで処理していますから、サウンドのクオリティ的には問題ないと思います。ディレイとしての基本機能はもちろん全て備わっています。ディレイタイムは0.1msから20秒までと実用上充分すぎるほどですね。ディレイ音へのモジュレーションをかける波形も、上段の「WAV」と書いてあるボタンを押して、7種類から選べます(モジュレーションをかけないOFFを含めると8つ)。

画質が良くて全体を簡潔に説明している映像のリンクがここ。まずはこれを見てモジュールの概要を掴んでください。

https://www.youtube.com/watch?v=2_HP4v1C8nY

ディレイ系統のブロックダイアグラム画像

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カタログ上で「16タップのディレイ」と説明されていますが、各ステップ毎レベルや、パン、マルチ・モジュレーション・フィルター、グラニューラ・ピッチシフト等がプログラムできるという意味なんです。それぞれのパラメーターは割とシンプルに構成されているので、階層を掘っていって迷子になるということはなさそうです。後で出てくるレゾネーター用の64ステップと混同しないようにしてください。このマニュアルに掲載されているディレイ系統のブロックダイアグラムが分かりやすいと思います。(02)

グルーブパターンの画像

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ディレイ系プラグインで見た事が無い機能として、「TYPE」ボタンから選択できるフィードバックのグルーブという機能があります。これがDAW系のプラグインにあったらいいですよね〜。一般的にディレイのフィードバックは回数の設定程度のことしかできませんけど、これを使うとフィードバックの感覚をエディットしてリズムを付加したり、スイング系のグルーブを加えたりできるんですね。(03)

Comb resonator section block diagram

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TAPS+FB画像

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さて僕も初耳「ステレオ・コム・レゾネーター」。(04)Combは「櫛」の意味ですね。このコム・レゾネーターは64の「タップ」から構成されているんですが、TAPS+FBというボタンがパネル上の「Comb」の上に見えると思います。この機能をビジュアルにするとこんな感じになるようです(05)。これが櫛のようなので”コム”、さらに短めのディレイタイムでフィードバックを調整していくと発信がおきます。そのことをレゾネーターと呼んでいるんですね。

ディレイタイムを極端に短くしてフィードバックを上げて行くとこのビデオのような音作りもできるようですね。”KingKarp”というプリセットがあるんですが、そのプリセットを使っています。少しサウンドにプラック系のアタックが付きますね。モジュールシンセならではのパフォーマンスですね。

https://www.youtube.com/watch?v=VwjHhbx_CB0

808系のリズム・パターンを入力してRainmakerでサウンドメイキングしていく映像がこれです。

https://www.youtube.com/watch?v=O2q8NvjRwrI


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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼Facebook>>

【第32回】「ケース選びは1Uモジュール選びから!」

4ms/4ms Double Thick powered

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少しずつ皆さんのモジュールが増えて来ましたか?モジュールのケースを選ぶのってなかなか難しいですよね?僕もモジュラーシンセを再スタートした時にやはりケースの事で悩みました。壁一面モジュールになるほどのシステムを構築するとは考えていませんでしたけど、かと言って小さいケースだとすぐに一杯になるのは目に見えているし、、、とりあえず最初に選んだのは4ms社の2列の深いタイプのケースです。


ケースによってはそれ自体にパワーサプライがついてない製品もよくありますので要確認です。4msのケースを選んだ理由はケース同士をスタックさせれば6Uやそれ以上に拡張できるからですね。

このセミナーでも紹介している通り毎週毎週新しいモジュールがリリースされるような業界ですから当然ケースも各社あれこれ出してきまね!基本的にはパワーサプライが付いていればどれを選んでも環境が極端に変わる事はないと思いますが、昨年から「1U」と呼ばれるモジュールのリリースを目にする機会が増えてきました。もし読者の皆さんが今からケースを選びたいなというタイミングであれば、この「1Uモジュール」をシステムに取り入れるか否かを基準にケースを選ぶのも良いかもしれません。

intellijel/Audio IO 1IU

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なかでもintellijelの1Uシリーズのラインナップはなかなか気が利いています。少しだけ紹介すると、「Audio IO 1IU」(Audio IO 1IU画像)は外部のラインレベルのアウトボード(つまり+4db)とモジュラーシンセを併用するためには手元にあるとすごい便利ですよね。ドラムマシンのアウトや、DAWのアウトもインプットしてモジュラーシンセで加工する事が可能になります。

intellijel/µMIDI

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それから「µMIDI 1U」(μMIDI 1U画像)(これを使うには「µMIDI JACKS 1U」も必要です)はUSB、MIDIまたはiPadからのシグナルをモジュラーで使うCV&GATEに変換する事ができます。こういう「あると便利」的なモジュールを1Uスペースでケースの上部に配置できるのはなかなか良いですよね。だんだんモジュールが増えてくると、オシレーターモジュールの場所を一カ所に纏めない方がパッチをする上で都合が良い事もでてきますから、そういう場合にこういうモジュールがラックの上部にあれば長いパッチケーブルを使わなくてもすむかもしれません。なちなみにintellijelからは同じ機能のユーロラックサイズのモジュール「µMIDI」もリリースされていますよ。


さて最後にLA産のケースも紹介します。日本でレコーディングがある時に自分のモジュールを持ち歩きたいなと最近思っていて、そのために運びやすく尚かつ、機内持ち込みできるサイズのケースがないかなと探していたんです。この12FOLDはそういう用途には良さそうなんです。パワーサブライも付いているし、パッチをしたままケースを閉じても大丈夫なほどの余裕があるようだ、、、パサデナという街で制作しているらしいのですが、近々直接彼の工房に行ってチェックしてきますね!

http://www.darkmodularcases.com/#/eastward-avenue/


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【第33回】「LAモジュラー必需品!Make Noise/Pressure Points 紹介!」

Make Noise/Pressure Points

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今週はモジュールシステムの中に収めるシーケンサーを紹介します。モジュール・サイズのシーケンサーもかなり種類がありますが、LAのモジュラー連中のラックにだいたいみんな必ず1つは入っているのがMake Noise社の今週と来週で紹介する2製品ですね。先ず今週は簡単(?)な方から、Make Noise Pressure Points。

個人的な話ですが、僕のPressure Points(以下PP)はラックの組み替えしてる時に電源の+側を間違えてショートさせてしまい未だに入院中です、、、皆さんも電源の極性は間違えないようにして下さいね!この製品正確にはシーケンサーでもありますが、CV値をメモリーをさせて置いてシーンの切り替えに使ったりもできます。

まず写真をみると4つのタッチ・プレートが見えますね。この部分「くれぐれもキレイな手で触れて下さい」と書いてありますから素直に従いましょう(笑)。ここ触れたり離したりする事でGateを生成し、圧力(というか触れる面積ですね)をかけていくとCVを生成します。各レーン上部にそれぞれのCVとGateのアウトがあるので、計8つのアウトがあるわけですね。

そして、右サイドにも3つのCVアウトがありますが(Make NoiseのマニュアルではXYZと呼んでいますね)、これは各レーンについてる3つのノブで設定したCV値(分かりやすい例で言えばピッチですね)をその3つのアウトから出力します。タイミング的には一番最後に触れたレーンの情報が出力されるようになっています。このレーンの切り替えがかなりスムーズなんです。それで、音を聞いてるだけだとシーケンサーでフレーズ繰り返しているのかと思ったら実はマニュアルでレーンを叩いてただけ、なんて事が良くあります。

Make Noise/Brains

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以前モジュラーシンセのイベントで、この3つのCVアウトを別々のピッチにし、コードを鳴らして、それをレーンのタッチで切り替えてるパフォーマーがいたんですよね。最初どうやってるのか良く分からなかったんですよ(汗)。それが僕がこのPPを買ったきっかけでした!

低音のドローン系の音を作る場合もこのPPは良く使われていますね。XYZのいずれかで設定したピッチでベース音を鳴らし、圧力で値が変化するレーン上部のCVアウトから、フィルターモジュールのカットオフへパッチしてフィルターが開く動作をコントロールするわけですね。

そして、このPPに同じMake Noise社のBrainsというモジュールを追加すると、モジュラーシンセならではのシーケンサーとして使えます。Brainsはモジュールの裏側をジャンパーケーブルを使って接続します。

このYoutubeのリンク先のビデオを観てもらうのが一番分かりやすいですね。

Make Noise / BRAINS 動画(Youtube)

このビデオでは2つのPPを使っています。この2つのPPもジャンパーケーブルを使って裏でリンケージされています。

この設定では2つのPPの8つのレーンのY値をCVとして使っていますね(白いパッチケーブルがY値ですね)。クロックがピンクのパッチケーブルを使ってBrainsの一番上に入ってるのが見えます(このラックでも先週紹介した1Uモジュールが入っていますね!)。2つ目のRST(リセット)にGateが入ることでシーケンサーの再生が最初からになりますね。1:05秒から左から5つ目のレーンのGateをRSTに入力していますが、5つめのレーンの順番が来たと同時にシーケンサーがリセットされるので、また頭に戻ってる様子がわかると思います。

その後上部のLFO等別のシグナルでリセットがかかるようなパッチをしています。これぞモジュラーシンセ!という感じの使い方ですね。この瞬時にランダム(と言っても自分のコントロール下なわけですけど)なフレーズをどんどん生成できるクリエイティブネスこそモジューラーシンセの真骨頂です。

来週は同社のRENEの使い方を紹介します。


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【第34回】「世界で唯一のカルテシアンシーケンサー!Make Noise/René紹介!」

Make Noise/René

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先週予告した通り、今週はMake Noise社のRenéを紹介します。正直なところ、このモジュールを始めて触った時は使い方がさっぱりわかりませんでした。Renéを使っている動画はYoutubeで見たことがあったのでシーケンサーだという事は既に知っていたんですが、いざ触り始めても全く理解できず、、、言い訳をさせて頂くならば、Make Noise社がパネルに使っているフォントって僕にとっては読みにくいんですよね。それが難解に感じた理由の一つでもあります(汗)。

Make Noise社のページにも「世界で唯一の”カルテシアン(デカルト主義)”シーケンサー」と謳ってますけど、それも取っつきにくさを煽るだけだと思うのですが、、、

とは言えこれだけユーザーの多いモジュールだし(LAのモジュラーシンセ・パフォーマーのラックにはほぼ間違いなくRenéがマウントされています)、多くのパフォーマーに愛用されているということは直感的に操作できるという証明でもありますから、あまり心配しなくて大丈夫ですよ。 画像を見てもらいまして、右側に見えるタッチセンサーと、それらと対になっている左側のノブでピッチを設定している、、、というのが基本中の基本です。

パネルのレイアウトとは関係なく実際の使い方順で説明した方が分かりやすいと思うので、まず右側上段16個のセンサーの上Acess、X-Gate、Y-Gate、X-Fun、Y-Fun、そして最後に「Q」という字が見えますが、このQのモードに入り、シーケンサーとしてどの音を使うかを設定します。16個のセンサーのうち下から12個が12音階に対応していますから、Qモードに入り、12音の中から自分が使用したいスケールを設定していきます。普段、DAWでクオンタイズというとMIDIノート等のリズムを編集する際に用いますが、このモジュールではピッチに対して使っています。

それでは16個のノブ使い各センサーにピッチを割り当てたとします。パネル左上部、X-CLKとY-CLKが見えますよね?外部からここにクロックを入力するとX-CLKでは横だけ、Y-CLKでは縦だけに動くシーケンサーとして働きます。更に右側上部の二つのセンサーのうちの右側をPLAYページと呼んでるようですが、それと16個のタッチセンサーを組み合わせて、例えば1〜16まで下から上に鳴らす、その反対の流れ、さらに1〜16、16〜1の往復とのモードで走らせたり、リアルタイムで触れているセンサーだけで繰り返すといったことができます。

さらに、その1〜16と並んでいるノートのうち6、9、10、16のノートだけでリピートさせる流れにいきなり入るとかまた元の音列に戻ったり等、最初に指定したスケール音の中でどのように音を組み合わせるかをリアルタイムで選んでいくことができます。この機能こそが「う〜ん、複雑なことしてるな〜どうやってプログラミングしてるんだろう??」と思わせる一番の理由です。さらにスネーク・モードというモードがあって、これは下から上へ順番にノートを鳴らしていくのではなく、文字通り蛇がトグロを巻いてるような進行のさせ方をしたりできるんです。これらのリアルタイムでシーケンサーを変化させていくのはソフトシンセ系のシーケンサーやアルペジエーターでは僕が知っている範囲では不可能なことだと思います(MAXは除く)。

以上はステップを等間隔で進める場合でした。X-FunとY-Funを使うと定間隔でステップを進める以外のシンコペ

ーションを作ることができます。これが個人的には一番難しく感じた部分です。X-CLKに入力されたクロックに対してX-MODから入ってきたCV情報でそのクロックをモジュレーションして等間隔以外のリズムを作ることができます。頭に浮かんだイメージ通りにリズムをコントロールすることは僕にはまだできないのですが、自分の発想以上のことが起きることだけは確実で(!?)、しかし、それはそれでモジュラーシンセの楽しさの一つだしありかなと思っています。

YoutubeにもRenéのビデオがあれこれアップされていますから、ブラウズしてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=oXsaDpUhPr0&index=2&list=PL980BA0B8E062C7E0


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【第35回】「シンプルなのに複雑!?Evaton Technologies/CLX」

Evaton Technologies/
CLX

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今週紹介するモジュールは、発想はシンプルで導き出される結果は複雑という、Evaton TechnologiesのCLXというクロックモジュールです。僕はこの会社の名前すら最近まで知りませんでしたが、住所がピッツバーグなので東海岸のメーカーですね。どんどん新メーカーが出て来ますね〜 サイトをみるとまだリリースされている製品は3つしかありませが、電子回路の設計や実験キットをOEMしていた会社みたいです。日本には輸入代理店がまだないみたいですが、すぐに日本にも上陸するでしょう。

Evaton Technologies/CLX製品ページはこちら(動画付き)>>

モジュールの分類的にはクロック・モジュールで、簡単に説明すると2つのクロックを搭載し、それを組み合わせているだけ、、、なんです。モジュラーシンセで使うクロックは簡単に説明するとパルス波のオシレーターでもあり、その波形の周期をものすごく遅くするとLFOでもあるわけですね。サイトを見るとDual Clock/LFOと書いてあるのはそのためです。

まず回路図を見てみると、ものすごく簡単でパネルのレイアウトから想像できる通りの配線なので特にマニュアルを読む必要もないと思います(CLX回路図)。この図では2つのクロックを”OSC”と表記していますが、これは以前も説明したように、通常CVで音程をコントロールするものをオシレーターOSCと呼んでますが、そのオシレーターの周期をどんどん遅くしていったものがLFO(Low Frequency Oscillator)であり、その周期が常に一定のものがクロックであるわけですから、回路図上でもOSCと表記してあるんです。シグナル・フローも回路図を見たままなのですが、初心者の方は「XOR」という用語が分かりにくいと思いますので説明します(これ他のクロック系のモジュールのマニュアルでもたまに見かけますからね)。

XORの前にORが基本なのですが、ORは「どちらか片方でも真なら真を表す」と定義されています。以下カッコの中の2つの数字は2つのクロックのオン時とオフ時だと思ってください。

OR(0,0)=0

OR(1,0)=1

OR(0,1)=1

OR(1,1)=1

となります。そしてXORの場合は「共に真の場合は偽とする」という定義になりますから、

XOR(0,0)=0

XOR(1,0)=1

XOR(0,1)=1

XOR(1,1)=0

となるんですね。ま、ここは深く考えずにこの2つのクロックのかけ合わせで複雑なリズムを作っていくにはXORの方がバリエーションが多いと把握していれば問題ないと思います。

同社のサイトにあったロジック・アウトプットの説明図を借りて具体的に説明するとですね、この図の一番上がクロックA、二番目がクロックBだとしてます(両方とも周期が一定である事に注目)。上から三番目が「AND」から出力されるクロックですね。「あれ?足し算じゃないの?」ってそうなんですよ、ANDは乗算なので、片方が0の時は出力も0になるんです。そして四番目が計算式によるXORの結果ですね。ただし、このCLXではXORはインバートした状態で出力されます。なぜかと言うと、先ほど説明した通り「XOR(1,1)=0」になるのですが、フツーに考えてこのモジュールでコントロールしたいのはステップ・シーケンサーとか、キックとかスネアのモジュールなわけですよね?だから、クロックの出だしが休符からスタートするというのは音楽的にすごく扱いにくいわけですね。だからXORはインバートして出力されているのだと思います。

このモジュールを別のクロックのスレーブにする事はできませんが、AまたはBからのアウトを別のモジュールでパラって使えばマスタークロックとして機能します。

最後に説明だけでは分かりにくいと思うのでリンク先のビデオでこんなシンプルなモジュールで音楽的にどれだけのバリエーションを作り出せるかチェックしてみてください。このビデオでも説明していますけど、スティーブ・ライヒ系のミニマル・ミュージックにはバッチリの機能です。

https://www.youtube.com/watch?v=HRyv13teWgc

https://www.youtube.com/watch?v=YUNgj_vt6Mk&feature=youtu.be&app=desktop


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【第36回】「カオスなリズムを刻め!Mutable Instruments/Grids」

今週も先週に紹介したEvaton TechnologiesのCLXと同じくクロック系のモジュールを紹介します。今週は日本でも手に入りやすいであろうMutable Instruments社のGridsです。先週のCLXと同じくリズムを生成するためのモジュールなんですが、所謂ステップ打系ではないので、偶然性に頼る部分が大きいですね。

http://mutable-instruments.net/modules/grids

まず、このモジュールのサブタイトルに「topographic drum sequencer」と書いてあるのが見えますよね?topographicは「地形学の」という意味です。先週のCLXはリズムのパターンを自分でコントロール可能なXORによってパラメーターをエディットしましたが、Gridsは予めある程度プログラミングされているリズムパターン(これを地図的にマッピングしてるイメージなんでしょうね)を外部から刺激する事でバリエーションを作り出していくシーケンサーなんですね。

パネルトップの画面

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パネルトップの画面を見てください。グリーンのノブが3つあり、それぞれをリズム音源系のモジュールにパッチするとします(例えばキック、スネア、ハット)。クロックはインターナル、外部同期どちらも可能です。そのパターンを決めるのがMAP XとMAP Yのノブですね。下図はMutable Instruments社のサイトからお借りしてきましたが、果たしてこの図が分かりやすいのだろうか??と若干疑問も感じますが、設計者のイメージがこういうことなのでしょうから素直に受け取りましょう!


MAP XとMAP Y

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MAP XとMAP Yで設定したリズムに対して左下のCHAOSというパラメーターでリズムのバリエーションを足していきます。尚このMAP X、MAP Y、CHAOSは勿論外部CVからコントロール可能です。下の方にYoutubeのリンクがありますからチェックしてもらうと分かりますが、これらのパラメーターをグリグリ動かしても、良い意味で音楽的なリズムパターンはキープしてくれますので、本当に「カオス」な状態になって、ビートのどこが頭か全く分からん、、、みたいな領域までは行きませんから安心して(?)下さい。

ただ、その領域まで踏み込みたい人は、外部CVでこれらのパラメーターと次に紹介するFILLをコントロールすればもっとカオティックな所までいけますね。

Mutable Instruments社のモジュールに多いのですが、このGridsもトップパネルにはない隠しモードを持っています。TAPボタンを1秒以上長押しするとオプションモードに入ります。クロックの分解能や、通常は所謂「Tap Tempo」の設定に使っているボタンをパターンのリセットに使ったりもできます。あまりにリズムがごちゃごちゃした時にXYで設定したリズムパターンの初期設定に戻れるわけです。

それと、Clockを外部同期させている場合は不可能なのですが、インターナルクロックを使って自走している場合は、このオプションモードに入った後に、フロントパネルのE3のノブを使って、グルーブをSwingさせる事ができます。その際はCHAOSパラメーターがSwing量を調整する役割を担います。

このモジュールも説明すると難い感じがしますが、ビデオでみるとそれほど難しく感じないと思いますよ!シンプルなパターンから始まってだんだん複雑にしていくのでこのビデオがとても分かりやすいと思います。

https://vimeo.com/68268055


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【第37回】「ステップ打ちで簡単楽しい〜!Mutable Instruments/Yarns紹介!」

Mutable Instruments/
Yarns

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今週はMutable Instruments社の「Yarns」を紹介します。この連載当初、DAWとモジュラーシンセを同居させる環境をメインに考えていたんです。その方が「既にDAWで音楽を制作しているんだけどモジュラーシンセをそのワークフローに追加したいな!」という読者にアピールできるかなと思ってたんですね。僕も同じ理由で、一度はやめたモジュラーシンセに帰ってきたわけですから。

そんなわけで、できるだけDAWからのMIDIデータをUSB経由でCV&GATEをモジュラーシンセに送信できる製品ばっかり追いかけていたんです。同社からこのモジュールがリリースされていたのは知っていたのですが、「Yarns」のトップパネルには”MIDI interface”と書いてあるし、MIDIケーブルのインアウトもあるので、シンプルなMIDI to CV&GATEのコンバーターだと「勘違い」していました。

Roland/SH-101式

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実はこのモジュール、ステップシーケンサーが付いていたんです。それもローランド社のSH-101式(!?)なんです。世代的にSH-101って何?という読者も多いと思いますが、SH-101のシーケンサーは、鍵盤を1音弾くと次のステップに進み、8とか16とか区切りのいいパターンでループさせると即テクノになるというとてもクリエイティブなシンセだったんです。

casio/VL-Tone

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簡単で尚且つ楽しい〜シンセだったんですね。僕が人生で初めて遊んだシーケンサーは日本のカシオ社のVL-Tone(画像VL-Tone)だったんですが、それも同様のステップ打ちができました。

過去数週、主にリズム系に使えるモジュールを紹介してきました。割と良い意味で「予期せぬ偶然系(?)」のモジュールだったわけですが、音程があるフレーズやシーケンスの場合、あまりにランダムだとあまりに気持ちよすぎてリスナーに伝わらないという事態も引き起こしかねません(笑)。特定のスケール内のノートをスライダー等で選んでフレーズを作っていくCV&GATEジェネレーターもありますが、既に特定のフレーズやパターンのアイディアが明確が場合はこのSH-101式のステップシーケンサーの方が作業的に速いと思います。

Yarnsをステップ打ちに使う場合は一番上のEDITノブでステップ毎のピッチを選んでいけるのですが、SH-101的に使うならMIDI INにキーボードをつないだ方が簡単ですね。1音弾いたらディスプレイのステップが進みます。休符を入れたい場合はREST、基本16分音符パターンなんだけど、途中を8分音符にしたい場合は、二つの16分音符をTIEでつないで8分音符にします。キーボードを使って入力した場合、Yarnsはベロシティ情報を受け取ることができます。これは後で説明します。

さらにキーボードのピッチベンドを使ってTB-303系のスライド情報も入力できるんですね。TB-303とはスライドのカーブのニュアンスが少し違うようですが、それでも独特のニュアンスを持つフレーズになりますね。

「Layout」と呼ばれる4つのモード

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シーケンサーとして使用する場合のモードが4つあるんですがそれはLayoutと呼ばれています(画像Layout)。この画像を見ると実は最大4chのステップシーケンサーとして使えることがわかると思います。そこにベロシティだったりモジュレーション情報をCVを使ってLFO等をコントロールしたい場合はチャンネル数は減りますが、1Mや2Pといったモードで使うわけですね。

他にも実はオシレーターが搭載されていたり、マイクロチューニングという12平均律以外のピッチを持つスケールをCV出力できたりと、調べると意外といろんなことができるモジュールなのでありました!


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【第38回】「文にするにはちょっと複雑?WMD/Geiger Counter紹介!」

LAのモジュラーシンセのお店ではモジュール・メーカーが新製品の紹介のためのパーティをちょくちょく主催しています。ピザやビールが飲み放題食べ放題という場合が多いので、お客さんも結構多いんです(笑)。ず〜っとソファーに座ってビールだけ飲みに来たんじゃないの?的な人も居ますが、カルフォルニアのそういうユル〜い感じが僕は好きです。

WMD/Geiger Counter

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そしてゲストのモジュラーシンセのパフォーマーがデモ演奏するという流れですね。何時来て、何時帰ってもいいようなとてもフランクな感じなので、僕もタイミングが合えば覗くようにしています。モジュラーシンセと言えば男子のオモチャみたいな印象があるかもしれませんが、LAはモジュラー女子が結構多いんですよ!

さて今週はそんなパーティーを良く主催しているメーカーWMDのWMD Geiger Counterを紹介します。WMDもユニークなモジュールを色々リリースしています。Geiger Counter以外に紹介したいモジュールはあるんですが、割とここのモジュール複雑なんですよね(汗)。

Geiger_Counter_Pedal

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ですから文章で説明するのが結構大変で、、、だから上記のようなパーティーも多いのかなと思っちゃいますけどね。モジュール・シンセの面白さって1つ1つのモジュールのバラエティというよりもそれらの組み合わせのバリエーションだと思うんですよね。

さてGeiger Counterを一言で説明するとディストーションですね。WMDってもともとギター用ペダルを作っていたんですね。Geiger Counterもモジュール以外にペダルでも発売されています。

GWS-WaveTables_2

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GWS-WaveTables_2

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GWS-WaveTables_PDF

ディストーションとは言え、内蔵されている252種類のWave Tableで入力されたオーディオを歪ませる事ができたり、入力信号をサンプルしてロービットに変換して出力するBit Depth(8bitは勿論1bitまで)もあります。

これはDAWのプラグイン等で皆さんよくご存知のビット・クラッシャーですね。それからSample Rateは文字通りSampling Rateを落としていってサウンドを歪ませる(汚す?)ために使います。

これらWave Tableの順番、Sample Rateの上下、Bit Depthの上下は外部CVでコントロールできます。それからOutのレベルもCVでコントロールできる仕様になっているのは気が利いてますね!

面白い使い方としてはWave Tableの選択を外部CVでコントロールするようにパッチして、別の、例えば16ステップのシーケンサーから1小節単位で変化するCV値によってWave Tableを周期的に選ぶとLFOで全くランダムに選ぶよりもかなりプログラマティックなパターンがすぐに生成できます。下記リンクのYoutubeの6:07〜以降でそのサウンドの変化を確認してみてください。

リズムパターンと同期させる事で平凡なリズムパターンにさえ音楽的な躍動感を加えられますよね!9:58〜ではSample RateをLFOで変化させていますが、これもなかなか面白いサウンドですね!

https://www.youtube.com/watch?v=nRZjaPYV2LQ

そしてこちらはWave Tableのバリエーション順番に紹介しているビデオです。

https://www.youtube.com/watch?v=i12lk3jMFGQ


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【第39回】「予測不能の金属的サウンド!Mutable Instruments/Rings紹介!」

Mutable Instruments/
Rings

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今週はMutable社のRingsを紹介します。最近のコラム「LA Graffiti 第8回」

にも書きましたがLAのモジュラーシンセのイベント、「Modular on the spot」を観に行った時に聞き慣れない音があったんです。コラム読んでもらうと分かるんですが、このイベントは夕方スタートでしばらくすると真っ暗になるので、それぞれのパフォーマーがどんな機材を使っているかは全く見えません。

ただ所謂アナログ系のオシレーターのサウンドじゃない事は確かだったし、後日Analogue Heavenに遊びに行った時に、このRingsを試して「これだ!」と確信しました。

Mutable Instruments社のRingsのデモです。

http://mutable-instruments.net/modules/rings/demos

Logic X/Sculpture

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オシレーターとしてはフィジカル・モデリング系なんですね。皆さんはLogic Xに昔から付属してるソフトシンセSculptureはご存知でしょうか?ざっくり説明するとSculptureがモジュラーシンセになったような感じですね。弦を叩いた音を発信させて、それにリングモジュレーションをかけていって複雑な倍音構成を作っていくんですね。

Mutable社のYoutubeよりも上手い説明をしている(?)ビデオがありましたので、これをチェックしながら以下を読んでください。

https://www.youtube.com/watch?v=O0IHt1JiRvk

僕も店頭で実際に触りましたがそれほど難しい構成のレイアウトではありません、、、が、パネル上部の左右に黒い小さなボタンがあります。個人的にはこのボタンにテキストを添えて欲しかったですね(笑)。左はポリ数を切り替えます。1音、2音、4音から選べます。前に発音したノートを消さないような演奏をしたい場合(ガムラン的な音とか)は4音を選ぶといいと思います。

それから右のボタンはオシレーターのレゾネーターモデルを選ぶボタンです。左からModal Resonator=弦やプレート(鉄板を想像してください)のモード、Sympathetic Strings=シタールやサロード(インドの楽器)をシミュレーションしたモード、最後はInharmonic Stringsのモードで、日本語にそのまま訳すると「不協和音の弦」となりますが、フィルターを使う事で上手く楽器音としてまとめられますから心配しなくて大丈夫です!リンク先のビデオでこの3つのモードを順番に説明していますが、6:20からこのInharmonic Stringsのモードに入ります。

さらにこのモジュールの素晴らしいところは外部のソースに対して、上記のパラメーターを使ってサウンドメイキングできるってことですね!ビデオの7:20からソースをどのように扱えるかを見せてくれます。オシレーターとして探し当てたRingsでしたが、実はこのモジュールも他モジュールと組み合わせると可能性は無限になりそうですね。個人的には10:10以降のストリングスを加工したサウンドがかなり好きです。

そ・し・て、、、ビデオの13:25からコンタクトマイクを使ったサウンドメイキングを紹介していますが、コンタクトマイクのモジュールなんてあるんですね、、、こうやって次々と面白いものを見つけてしまってミイラ取りがミイラになる的なハマり方していくんですね、、、このコンタクトマイクのモジュールは来週紹介します。


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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼Facebook>>

【第40回】「変わり種モジュール - Music Thing Modular Mikrophonie Contact Mic Module!!」

先週の原稿を書いてる途中で発見してしまった変わり種のモジュールを紹介します。イギリスのMusic Thing Modularというメーカーの、「Mikrophonie Contact Mic Module」ですね。(画像1

このモジュールはDIYでキットを自分で作るんですね。一応「Great for beginners」と書いてありますから難しくはなさそうです。(画像2

パネルの上部の指紋の跡のように見える部分が、コンタクトマイクになっていて、そこで拾った音を増幅してOUTから出力しています。過去紹介したモジュールの中で一番シンプルな作りなのではないでしょうか(笑)。GAINを上げて行くと、下記Youtubeのリンク先のビデオの1:20〜のように、モジュールラックを叩いた音も拾ってくれるようです。これはなかなか良いアイディアですね。それから別途コンタクトマイクをINに入れて鐘を叩いた音をシンセサイズしたりもしていますね。僕もモジューラーシンセを使う用途の5割はサンドデザインのためなのでこういう元の音がなんなのか分からないモジュールは是非手に入れたいですね。(今現在は品切れのようなので、さっそくウエイティングリストに登録しました)

https://www.youtube.com/watch?v=GQ_bLAqGKEA

このモジュールの説明の中にHydrophoneというマイクが出て来ますが(画像3)、これは水中探査とか地震探査に使われるマイクロフォンのようです。マイクは空気の音圧を電圧に変換する〜という原理に対して、ハイドロフォンは水中での音圧変化を電圧に変換するセンサーらしいです。これはもう完璧に専門外なのでこの程度の説明で許してください(汗)。

このモジュールにコンタクトマイク(ピエゾマイクも同義です)も入力できるし、同サイトの中のリンクで紹介しているJez Riley Frenchさんのサイトで販売している、Hydrophonesも接続できると書いてありますね。このJezさんのサイトで視聴できるSOUNDCLOUDの音源もかなり変わってますね!アイスランドのハーバーで収録したアンビエントやフェンスの音をコンタクトマイクで収録した音なんかがリストにありますね!このマイクも注文しちゃおうかな、、、

話をモジュールに戻しますが、OUTから出力した音は直接他のフィルターやモジュレーション系のモジュールにパッチして加工していく流れになります。またはサンプルリング系のモジュールに入れてCVでピッチをコントロールするのもいいですね。

僕のワークフローでは、モジュラーシンセで作った音はどうしても一期一会で、二度同じサウンドは作れない場合も多いですから、DAWにWAVとして収録して、それをその時々のプロジェクトで使用しているDAWのサンプラー、例えばLogic XであればEXS24へ取り込み、DAWがProToolsであればNI社のKontaktに取り込んで楽曲制作に使っています。それらのWAVの管理の仕方に関しては近々ロックオンカンパニーのコラム、「LA Graffiti」の方で触れてみたいと思います。


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【第41回】「ウッディーパネルが際立つサンプラー、Bastl Instruments/grandPAを紹介!」

Bastl Instruments/
grandPA

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今週はこのセミナー初登場のBastl Instrumentsのモジュール「grandPA」を紹介します。これは速攻で注文入れました。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんがチェコの会社です。LAのモジュラーシンセのショップでは良く見かけるメーカーなんですが、この会社のモジュールのウッディーなパネルが個人的にあまり好きじゃなかったんですよ。ふつ〜モジュールのパネルってメタルじゃないですか?そんな中にいきなりこのウッディーパネルが挟まるってのがちょっとな〜と、、、


Micro Granny2

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でも、実際にこのモジュールの機能をチェックしてみたらそんな見かけの問題はどうでもよくなってしまいましたね!基本的にはサンプラーです。調べてみるまで知りませんでしたが、2014年にこのメーカーからMicro Granny2というサンプラーがリリースされていて、その機能をモジュールサイズにしたそうです。

このMicro Granny2も、これはこれでカワイイガジェットですね。下記Youtubeのリンクのようにこれ自体で8ビットのサンプリングができて、尚かつMIDI入力があるのでMIDIキーボードからプレイもできるんですね。これはこれで魅力的なプロダクツですね。

https://www.youtube.com/watch?v=8hOkFjVMYMk

トップパネルの画像ではちょっと分かりにくいですが、上部右側にMicro SDカード用のスロットがあります。トリガー用のインプットがAB2つあるので分かると思いますが、2種類のサンプルをロードしてどちらか片方がアウトプットされます。後からトリガーされた方が出力される仕様になっていますね。

そしてここからはまた最近のモジュールに多い、マニュアルを読まないと使えない仕様になっています(この機能をこのスペースに詰め込むにはやむを得ないですけどね)。小さい(本当に小さい!)PAGEボタンを押してLEDが赤いときは上のシルバーのノブでSAMPLE RATE、下のノブでCRUSH(DAWのプラグインで言うビートクラッシャー)をエディットします。

もう一度押してLEDをグリーンにすると、上のノブがGRAIN SIZE(ロードされている波形のどこからどこまでをグラニューラするか)と、下のノブがGRAIN SHIFT(YoutubeではSHIFT SPEEDとテロップが出ています)のパラメーターはポジティブかネガティブと書いてあるので、ネガティブ側がリバースの意味だと思います。

次のブルーではアタックとリリース。そしてLED白のページでは、スタートとエンドのポイントをそれぞれエディットできます。

CVインプットから入ってきたシグナルをどのパラメーターにアサインするかも、このページを使いながら設定するの若干難しいというか、しばらく使ってないと忘れそうな感じはありますが、頑張って勉強しましょう!

2つのサンプルにたいして異なったエディットもできるし、それらを35パターンまでセーブできるので、ライブパフォーマンスの仕込みには充分なスペックだと思います。ただ基本的には「すごい音が良い」サンプラーではないしモノ素材しか扱えないのでサンプルプレイバック的な使い方には向かないと思います。

最後に、DIY Kit、つまり自作用キットも発売しているのでハンダ付けに自信がある読者はそちらの方が値段も安いですよ!

https://www.youtube.com/watch?v=rz2Vveo19dI


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【第42回】「グローバルスタンダードともいえる、Tiptop Audio/Z-DSPを紹介!」

このセミナーとは別に「LA Graffiti 」というコラムをロックオンのWEBに書いているのですが、LAのモジュラーシンセのイベント「Modular on the Spot」について第8回目に書きました。

先週も行ってみたのですが、各パフォーマー共にセッティングが終わり、いよいよ始まるという直前にLAのレンジャー(多分、公園の警備が仕事だと思います)とイベントの主催者の話し合いが始まってしまい、結局そのLAリバーのほとりではイベントを開催する事ができなくなってしまいました。その後近くの別のベニューを探してその日イベントは行ったようですが、あいにく僕は最初から長居ができないスケジュールだったので、その日のイベントは観ずに帰ってきました。Modular on the Spotに関してはまた次の機会にアップデートしますね。川のほとりでモジュラーシンセ、、、っていう組み合わせが好きだったんですけどね、、、

Tiptop Audio/Z-DSP

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日本の映画業界だと音響効果のお仕事をされている方でモジュラーシンセを導入されている方はまだ少ないように思いますが、海外ではサウンドデザイナーでモジュラーシンセを使うのはかなりポピュラーになっています。映画だけではなくゲームのサウンドデザインを得意としてる方のスタジオでも良く見かけますね。そしてだいたい今日紹介するTiptop AudioのZ-DSPがほぼ100%彼等のラックに入ってるのが確認できます。

http://www.tiptopaudio.com/zdsp.php?goto=features

DSPカートリッジ

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Z-DSPを一言で簡単に説明するとディレイ&リバーブのためのモジュール、、、なのですが特徴的なのが別売りのDSPカートリッジ(現在は7種類リリースされています)を購入するとどんどんプログラムを増やせます。いったいどんな事ができるのかはこのリンク先のYoutubeが一番機能全体を把握しやすいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=eVZUSjQNxNI

色々なパラメーターが並んでいるのかなり面倒くさそうに見えますが、基本的には独立した2つのデジタルプロセッシンをCVでコントロールするという流れなので、カートリッジのプログラムを選んで使う分にはそれほど難しくはないです。

先のModular on the spotにもパフォーマーとして出演する事もあるAnalogue Heaven(LAのモジュラーシンセの専門店)の店員Skylerにデモを見せてもらった時も「面倒くさそうに見えるんだけど、基本は使いたいプログラムを選んだら、この真ん中の3つのパラメーターを動かせば欲しいサウンドに辿り着けるんだよ」と言ってましたし、実際このトップパネルのVC-DSP1、VC-DSP2、VC-DSP3をいじり倒すだけでかなり色々なバリエーションが作りだせます。フィードバックの量や、ドライ/ウエットの配分を決めるパラメーターも勿論外部CVでコントロールが可能です。

DSPカートリッジを使う、、、という部分に目がいきがちですが、ディレイのフィードバックアウト(パネル上ではFEDBK1、FEDBK2と表示されています)を取り出せるので、それをまた別のモジュールにパッチして加工した後にもう一度Z-DSPに戻せば、簡単かつさらに複雑な処理ができます。DAWのプラグインの組み合わせだけでは得られない、得体の知れないプロセッシングに重宝するので、先に書いたサウンドデザイナーがこぞって使っているのだと思います。若干お値段高いですが、モジュラーシンセをサウンドデザインや、Experimentalのジャルで使っている人要チェックだと思います。


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【第43回】「シンプルなサンプラー、QU-Bit/Waveを紹介!」

また新しいサンプラーモジュールを見つけましたので今週は、QU-Bit社のWaveを紹介しますね。このWaveは多分過去に紹介したサンプラーモジュールの中で一番シンプルな構成です。使い方を忘れるという心配はないので、ま・さ・に・僕向き!

パネルのレイアウトも非常にシンプルですね。この1つのモジュールに4系統のサンプラーが搭載されているわけですから、1つのサンプラーに対してピッチ、ファイル選択、トリガー、そしてアウトプットと4つのパラメーターしかありません。ピッチは勿論CVでコントロールするためですね。「file」というノブの上にLEDが4つ見える事からも分かるように1つのサンプラーで管理できるのは4つのサンプルです。

後ほど各サンプルのネーミングについて触れますが、このfileが小文字になっている所がちょっとポイントになるので覚えておいてください。以前紹介したサンプラーの中には比較的ハイレートのWAVデータを扱えるものもありましたが、このモジュールは44.1khz&16bitと決められています。

唯一忘れないようにしておきたいのは、このトップパネルに記載が全くない「Bank」の概念で、ぱっと見、1つのチャンネルに4つのサンプルを読み込めるので、合計16のサンプルを扱えるように見えますよね。さらに、内部的にBank1、Bank2、Bank3、Bank4と四つのBankがあり、それにアクセスする事によって、先ほどの16サンプルの4倍=64サンプルを扱える事ができるんです。

忘れないようにしておきたい、、、と書きましたけどバンクの切り替えは4つあるトリガーボタンンをそれぞれ5秒押し続ける事で可能になるので、多分僕でも思い出せる範囲だと、、、思います。

勿論、マイクロSDカードの内容をディスプレイで確認できるわけではないので、空のバンクを選ぶ可能性もあるわけですが、Bankが空の場合は20秒後に最後に選ばれていたBankに戻るとマニュアルに書いてありますので、パフォーマンスしてるうちに空Bank選んで、そうこうしてるうちに何処を選んでるのかわから〜ん!みたいな事はないと思います。

MicroSDカードにBankを保存する時は各WAVファイルに固有のネームを付けて置く必要があります。

例えばKickのサンプルをBank Aのチャンネル1のファイル1に登録したい場合は

『A11kick.wav』

とファイルにネーミングしておきます。英文マニュアルにも書いてありますが、バンクに関しては大文字のアルファベット(英語でいうUppercase)、filenameに関しては小文字のアルファベット(同じく英語でlowercase)でネーミングする必要があります。最初の方で触れましたが、パネル上でも「file」が小文字になっているのでそれと関連付けて覚えておくといいかなと思います。

最後にこのWaveを使ったビデオのリンクを貼っておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=V8JgKG26mgo


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【第44回】「オシレーターシンクとは」

今週は単体のモジュールではなく、「オシレーターシンク」について説明します。僕のような昭和世代はシンセと言えばソフトシンセではなく勿論ハードシンセ、それもアナログシンセがファーストエンカウンター。楽器店の店頭にRoland社のSH-09は置いてありましたが、使い方を熟知している店員さんも当時おらず、、、ただそういうシンセを店頭でずっといじり倒しても文句を言われないのんびりした時代ではありましたけどね。

僕が「オシレーターシンク」のサウンドを初めて意識したのが、ジェフ・ベックの「There and Back」というアルバムの1曲目「Star Cycle」のイントロだったんです。

https://www.youtube.com/watch?v=FfbNve6eJOM

と言っても当時、僕はバリバリのギター小僧でシンセなど実はどうでもよく(!?)、実はこの曲のイントロは典型的なオシレーターシンクを使ったサウンドなのですが、当時の僕はギターに何かエフェクターを使用してこういう音にしているのかと思っていました(汗)。

しかし、どうやらヤン・ハマーがシンセで弾いてるという事が程なくして分かり、さらにどうやら「オシレーターシンク」という技を使わないとこのサウンドは作れないという事も知りました。このイントロのサウンド様にリード系の「ギラギラ」感が必要なら「オシレーターシンク」は必須ですね。ちなみにRoland社のSH-09ではオシレーターシンクはできませんので、どんなにスライダーと格闘してもオシレーターシンクのサウンドは出ません。

Logix X/Retro Synth

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ソフトシンセで説明すると例えばLogic Xに搭載されている「Retro Synth」等に「SYNC」というモードがあります。原理的にな説明をすると、まずオシレーターが2つあるとします。そして、1つのオシレーターの波形を、もう1つのオシレーターの周期でリセットしてやって、1つめのオシレーターの波形を複雑にする、、、という流れです。

画像2は1つ目のオシレーターの素の三角波です。そこに対して2つ目のオシレーターで「オシレーターシンク」をかけると画像3のようにどんどん複雑になっていきます。当時サンプリングの技術等民間レベルではまだ扱えない時代でしたから、こういうシンプルな波形同士を掛け合わせて複雑な波形をジェネレートしていたわけですね。

Make Noise/0-Coast」

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さて、話をそろそろモジューラーシンセに戻しましょう。オシレーターシンクに絡めて紹介するのは、Make Noise社の「0-Coast」です。(画像4)

http://makenoisemusic.com/synthesizers/ohcoast

LAでは「オーコースト」と発音していますね。0(ゼロ)の発音についてですが、よくお店のレジでそのショップの会員番号を電話番号を使って登録するというケースがこちらでは良くあるんですが、その場合も、例えば電話番号の出だしが「310」であれば「スリー・ワン・ゼロ」ではなく「スリー・ワン・オー」と発音する人が圧倒的に多いです。

厳密にはユーロラックに搭載できるサイズではないのですが、Youtubeをチェックするとかなりのモジューラーパフォーマーが、ユーロラックと組み合わせて使用しているし、何と言っても製造がこのセミナーでも何度も登場しているMake Noise社ですからね!Moog社のMother32と同じようにシグナルは基本的に左から右へ流れ、内部結線が既にされているのでパッチしなくてもすぐに音を出して使い始める事ができます。Make Noise社の解説ビデオがありますのでリンク先をチェックしてみてください。

オシレーターの次のセクション(丁度パネルの中央)の下の方にMultiplyというセクションがありますが、ここがオシレーターシンクのためのセクションです。その上部にOvertoneというセクションがあります。オシレーターの波形を変化させるという意味では似てるのですが、こちらは倍音を付加するためのセクションなので、厳密には「オシレーターシンク」とは回路動作的には別のロジックです。続きはまた来週!

https://www.youtube.com/watch?list=PL0jGFC0FWQsissS9SeVmrcpORrKPaWcbX&v=hUGLQkF-dAA


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【第45回】「オシレーターシンクとは・2」

今週は先週の続きでオシレーターシンクについてです。先週はオシレーターシンクの仕組みを解説してるうちに文字数が足りなくなったので、実際のモジュールを使った説明をしませんでした(説明を必要とするほど難しくない、というのがホントのところなんですが)。今週は具体的なモジュールを例に出して続きの説明をしますね。

Doepfer / A-110

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Doepfer / A-110-2

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先週のセミナーを読んでもらうと分かると思うのですが、オシレーターシンクをするには、オシレーターが2つ必要です。マスター側のオシレーターはどんなオシレーターモジュールでも大丈夫です。スレーブ側(シンクをかけられる側ですね)にはSYNCのインプットを持っているオシレーターである必要があります。日本で手に入りやすいであろうSYNCインプット付きのオシレーターモジュールと言えば例えば、DoepferのA-110やA110-2(画像1&2)。

Make Noise / STO

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Roland / module512

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またはMake Noise STOがあります。

そしてローランド社の500シリーズのモジュール512。これはオシレーターが2つ搭載されているモジュールなんですが、ここにもSYNC入力は付いていますね。512の解説ビデオがありましたのでチェックしてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=0BVkJpD15FM

パッチの仕方はマスター・オシレーターのOUTをスレーブ・オシレターのSYNCにパッチするだけなのでとても簡単!後はマスター&スレーブ側両方の波形、それからピッチを変える事で色んな組み合わせができて、それだけ音色のバリエーションも増える〜というわけですね。オシレーターシンクのサウンドをどれだけ頻繁に使うかは各々の好みなので分かりませんが、もし手持ちのオシレーターにSYNCインプットがない場合は次回に買うオシレーター・モジュールはSYNCインプットが付いてるものを選ぶのもありですね。

DoepferのA-110にはありませんが、A-110-2にはSoft SyncとHard Syncのインプットがありますね。そしてローランド社の512の場合はトグルスイッチでSYNCのソフトとハードの切り替えがあります。一般的にオシレーターシンクと言えばHard Syncの事を指すと僕は認識しています。それに対してSoft Syncはマスター・オシレーターの周期でスレーブ側オシレーターの周期をリセットしに行く際、そのかかりが弱いもの、、、を指していると解釈しています。

ですのでSoft Syncのインプットの有無はオシレーター・モジュールそれほどプライオリティが高いとは個人的には思っていません。それでもせっかくオシレーターを買うのならできるだけ機能がたくさん付いている方が良い、という読者はローランド社の512を2台目、3台目のオシレーターとして選ぶのがが良いかもしれません。

来週はモジュラーシンセで作った音色をDAWでポリフォニックで使いた場合にどうやってサンプリングするかをテーマにします!


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【第46回】「モジュラーシンセとDAWを連携/Main Stage3」

ここ数回モジュラーシンセの説明だけになってしまいましたが、今週は久しぶりにモジュラーシンセとDAWの連携について触れたいと思います。今週紹介するのはApple社のMain Stage3、の中のAuto Samplerです。

2012年にApple社がRedmatica社を買収したニュースって記憶にありますか?今回解説するMain Stage3の中のAuto SamplerはもともとそのRedmatica社のappだったんですね。買収後しばらく音沙汰なかったようですが、昨年Main Stage3の中で使えるようにアップデートされたようです。

僕はLogic Xも仕事で使っていますが、サンプリングライブラリーはもっぱらNative Instruments社のKontaktをメインに使っています。それにMain Stage3はてっきりステージパフォーマー用のappだと思っていたんで全くチェックしていませんでした。だからAuto SamplerがMain Stage3で使えるという事は今年になって初めて知りました。

Auto Samplerがどんなappかざっくりと説明すると、Auto SamplerがMIDIノートを自動的に生成して、アウトボード機材に送り(今回は自分のモジュラーシンセってことですね)、そこから送り返されてきたオーディオシグナルをサンプリングして、自動的にライブラリーにしてくれる〜というわけなんです。

もう少し細かく説明すると次のような設定ができます。

  • 1. 全体の音域幅の設定。
  • 2. 音程間隔の設定(サンプリング間隔を半音や短三度にするのか等)。
  • 3. どれくらいの長さサンプリングするか秒数で設定。
  • 3. Velocityを最大8段階まで設定。
  • 4. Loopのスタート&エンドの設定。

モジュラーシンセをサンプリングする際にヴェロシティを細かく設定する必要はないと思いますし、音程間隔もシンセの波形なので短三度くらいで充分じゃないかと思います。ちなみに、このAuto Samplerを使えばモジュラーシンセだけではなく、昔のシンセの音色をサンプリングライブラリーとして使う時に便利です。僕もRoland社のJD-990やOberheim社のMatrix 1000という90年代の音源モジュールから気に入ったパッチをサンプリングして使っています。


さて、Main Stage3はApple社のApp Storeで購入できます。初期設定はLogic Xに馴れていれば難しくはないと思います。Logic Xユーザー以外の読者のために簡単に説明すると、Logic XもAutoSamplerもInputとOutputのI/Oを別々ハードを選択する事ができるんです。そしてMain Stage3上にExternal Instrumentトラックを作り、Audio FXというプラグインを挟むスペースがあるんですが、そこにAuto Samplerを起ち上げます。

Logic Xに馴れていないと混乱するかも知れないのですが、インサートしてAuto Samplerをクリックすると次のウィンドウが開きます。右上のControlsという部分をクリックしてEditorに切り替えると先ほどの画像2のようなエディター画面に切り替わりますからね。

WindowsユーザーはMain Stage3が使えないわけですが、Sample RobotというWindows用のappもあります。僕は使った事がないし、お値段もちょっとMain Stage3の10倍はしますが基本的にappがやってくれる事はAuto Samplerと同じはずです。

http://www.samplerobot.com/funktionalitaet.htm

来週は引き続きAuto Samplerの具体的な使い方を解説します!


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【第47回】「モジュラーシンセとDAWを連携/Main Stage3 その2」

今週は先週の続きでAuto Samplerの実戦編です。実際の手順は次のようになります。

チャンネルストリップ/画像1

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Auto Samplerをインサート/画像2

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1. Main Stage3に「外部音源」のためのチャンネルを起ち上げます。右上のチャンネルストリップの「+」ボタンをクリックします(画像1)

2. 新規作成したトラックにAuto Samplerをインサートします(画像2)

チャンネルストリップの設定/画像3

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インターバル等の設定/画像4

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3. チャンネルストリップの詳細はこのような感じになります(画像3)。基本的には外部音源(モジュラーシンセ)にMIDIを送り、オーディオシグナルの戻りがI/Oのどこに入力されるのか、という設定ですね。

4. サンプリングの設定画面です(画像4)。この画面では左に見える「Sample Every」を短三度に設定して、それぞれ4秒ずつサンプリングする設定になっています。僕の経験上では音源がシンセの場合サンプル同士の間隔が短三度で問題ないと思います。

「Sutain」は音色の変化によってはもっと長く設定した方がいいかもしれませんね。Loopの設定もこの画面でします。Loopの設定は音色によってどういう設定がベストか変わるので各自いろいろ試してみてください。

設定を済ませて右下の「Sample」ボタンをクリックすると後は自動的にサンプリングして、各ファイルに名前を付けてくれます。

Loopポイント/画像5

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EXSでロートする/画像6

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5. サンプリングが始まるとシグナルがリアルタイムで表示されて、サンプリング直後に画像5のように水色のLoopポイントが見えます。

6. さて、Main Stage3の作業はここまで!Logic Xを起動してEXSを起ち上げてみましょう。EXSのロード画面に既にさきほどサンプリングしたパッチが見えて、ただ選ぶだけで、他のEXSのライブラリーと同じように使用できます(画像6)

それからLogic Xの中で僕が最近気に入っているAlchemyというサンプルベースのソフトシンセがありますが、そのAlchemyの4つあるオシレーターの1つに、同様に今回サンプリングしたパッチを読み込むことができます

Alchemyのオシレーターに読み込む/画像7

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EXSのEditorからサンプルファイルを書き出す/画像8

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7. 左上の「Advanced」をクリックすると編集画面に入れますので、「Import Audio」からさきほどサンプリングしたパッチを選びます。EXSよりもさらに強力なシンセエンジンが搭載されていますから、よりディープにエディットしたい時、特にPad系の音色を作る時はAlchemyがお薦めです。(画像7)

8. さて、Main Stage3はApple社のプロダクツなのでやはりLogic Xとの親和性はものすごく高いですが、他のDAWでも使いたいですよね? 簡単さで言うと、Ableton社のLIVEに付属しているSamplerもEXSのパッチは即読み込めます。Main Stage3の初期設定では.exsのパッチとサンプリング素材は別のフォルダーになっていますので、LIVEで使う時は各フォルダーのパスをきちんと指定してあげれば問題ないです。

9. そして、Native Instruments社のKontaktでも音源使いたいですよね?少し残念なのですが、今日現在、EXSのパッチをKontaktで直接読み込むことはできません。ただ、EXSの「edit」ボタンをクリックして、エディター画面にはいり、「インストゥルメント」の右の逆三角形をクリックして(画像8)

「サンプラー音源とサンプルファイルを書き出す」を選択してサンプリングした素材を書き出す事ができます。Kontaktの説明はスペースの関係上ここではしませんが、各サンプルファイルには音程が既にファイリングされていますから、この状態からKontaktで自分のライブラリーを作ることはそれほど大変ではありません。是非トライしてみてください!


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【第48回】「オシレーター、Make Noises社 tEL HARMONIC紹介!」

Make Noises/tEL HARMONIC

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今週はMake Noises社のtEL HARMONICを紹介します。モジュールの中ではオシレーターの役割を担います。同社の製品は以前紹介したReneといい、0-Coastといい、どれもこれも個性が強いモジュールが多いですよね。

メーカーのサイトを読むと、なになに「Thaddeus Cahillさんという発明家による1897年に発表されたTelharmoniumというアイディアにインスパイアされた、3ボイス倍音加算式シンセ」と書かれています、ふむふむ。さらに同社のYoutubeをチェックすると、1970年代にベル研究所のHal Allesが設計したAdditive synthesisも参考にしたと解説していますね。

日本語はありませんが、英語でThaddeus_CahillさんのWikiがありますね。

https://en.wikipedia.org/wiki/Thaddeus_Cahill

http://www.makenoisemusic.com/modules/telharmonic

Alles Synthの映像がYoutubeにありましたが、今現在モジュラーシンセで作っているサウンドに全然引けをとらない!

https://www.youtube.com/watch?annotation

アディティブ・シンセシス

https://ja.wikipedia.org/wiki/

文字数が足りないのでものすごい乱暴に短く説明すると、ハモンドオルガンって、倍音が書いてあるバーを足したり引いたりして音色を作るじゃないですか?あれに近い原理のシンセサイズ方式ですね。tEL HARMONICは、そのアイディアを3つのノブで即音楽に使えるようにアレンジしなおされた製品なんですね。

左上のTonicと書いてある青いノブで基準音のピッチを決めます。さらに右下の青いノブで3ボイスのそれぞれの音程のインターバルを変えていきます。

インターバルのタイプは5つあるようです。

1.3和音

2.その3和音の展開系が2つ(コードの積みを変えたものですね。)

3.完全5度

4.ユニゾン

5.オクターブ上

そして僕が興味深い機能だなと思ったのはインターバルで3和音(トライアド)を選び、その右のDegree(度数)のノブを調整することで、メジャースケールのダイアトニックコードとしてそのトライアドのインターバルの関係が変化していくという部分ですね。

このリンクのビデオの1:53からチェックしてください。

https://youtu.be/fpxkmjikan8?t=1m53s

Degreeのノブを調整していくとその上のLEDの色が変化していきます。このMake Noise社の解説にもあるように、グリーンだとメジャートライアド、ブルーがマイナートライアド、オレンジがディミニッシュというインターバル構成になります。例えばCメジャースケール上のBの上にできるダイアトニックコードはBm(♭5)ですよね。実音だとシ・レ・ファとなり音程はそれぞれ短3度なのでディミニッシュ・コードになります。

このDegreeを外部からCVでコントールすることでメジャースケール上のダイアトニックコードをこのモジュールだけで鳴らせる、という仕組みです。上記リンクのビデオ冒頭のハーモニーを使ったサウンドはその機能を使って組み立てられています。

tEL HARMONICは他に2つの大きな機能がありますが、それは来週解説します!


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映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼Facebook>>

【第49回】「続・tEL HARMONIC紹介!」

Make Noises/tEL HARMONIC

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今週は先週解説しきれなかった、tEL HARMONICの残りの機能について説明します。過去あれこれ解説してきた中でも今週はちょっと難しいです(汗)。ただロジックが難しいのと使い方が難しいということは別だと思います。パッチしてグリグリさわって出音が良ければそれでいいんですよね。

先週はパネルの左側を紹介しました。今週は右側です。若い読者には馴染みがないと思いますが、腕時計のG-Shockで有名な1980年代にカシオ社がシンセサイザーを作っていた時期があるんです。

そのカシオが社が採用していた音源方式は、PD音源と呼ばれていて、それはPhase Distortionの略から来てるんですね。僕も詳しいわけではないんですが、サイン波とコサイン波を書き込んだROMの読み出し位相角を歪ませる事によって、様々な倍音を持つ波形を作り出す事ができるんですね(ってwikiからそのまま持ってきました(汗))。

僕もCZ-5000はしばらく使っていましたね。もし中古でCZ-101があったら試奏してみて下さい。見かけによらずめっちゃ音が太いベース音が出ますよ!

さてtEL HARMONICに戻りますが最上段右側にP OUTという出力が見えますよね?このアウトがそのカシオのPD方式で生成されたシグナルが出力されるアウトです。ピッチとハーモニーののコントールに関しては先週紹介したとおり左側のノブの設定でおこないます。下記リンクはP OUTの説明をしているMake Noise社のビデオです。

tEL HARMONIC「P OUT」説明動画

パネル右下のFluxという(英語で流動率の意)ノブでかけ合わせる波形の読み出し位置を調整します。そして上のパネル上で一番大きいCentroidというノブで掛け合わせの割合を調整するんですね。Centroidをコントロールするためのインプットはパネルの右下にあります。このビオデの2:20秒から別のエンベロープからコントロールしていますね。

そしてもう1つ上段アウトプットの真ん中、H OUTはハーモニックアルゴリズムの出力です。これも下のCentroidとFluxを使ってサウンドをコントロールします。これは先週紹介した倍音の加算合成的なオシレーターですね。

tEL HARMONIC「H OUT」説明動画

こちらのハーモニックアルゴリズムも先週紹介した左のノブによるダイアトニックコードを鳴らせるように3ボイス構成になっています。 3:27秒からボイス間のインターバルを変更しつつ(解説ではHarmonic Spreadと言っていますね)、4:00以降でダイアトニックコードを鳴らしながら音色を変えていく様子が見られます。

最後にこのtEL HARMONICを使った上昇(下降)音の作り方を紹介しているビデオをみてみましょう。YMOのアルバム「BGM」の最後の曲「LOOM/来るべきもの」で松武秀樹さんがE-muのモジュラーシステム(通称タンス)で作った音と同じ作り方ではないのですが、それ風のことがこのモジュールでもできますね。

tEL HARMONIC音作り紹介動画


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【第50回】「予約完売のレアモジュール『O’Tool Plus』ご紹介!」

Dave Jones Design/O’Tool Plus

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この原稿も50回目ですね。個々のモジュールに関しては、LAのモジュラーシンセの専門店やNAMMショーで実際に触ったものをリポートしてきましたが、今週紹介するモジュールO’Tool Plusは発売はかなり少量しか生産されていないらしく、出荷されると予約のみで完売の状態がLAでも続いているようなモジュールです。というわけで僕も実物を直接触った事はないんです。

開発者のDave Jonesさんはオシロスコープのオーソリティーらしく(!)、オシロスコープに関しての本も出版されているようです。

開発者のDave Jonesさん著書

どうしてこのモジュールに行き当たったかと言うと、もともとはユーロラックに組み込めるチューナーを探していたんです。どこかのアウトプットを手持ちのチューナーにインすればそれで済むんですが、せっかくなのでラックの中で完結できないものかなと、、、

モジュールの構成は非常に分かりやすくInput1、2に入力されたシグナルを解析してディスプレイに表示して、そのまま右側からスルーアウトされます。機能的には

  • 1.それぞれのインプットに入力されたシグナルを個別にアナライズする。
  • 2.両方のシグナルをレイヤーして表示する
  • 3.3Dオシロスコープとして表示する。
  • 4.VUメーターとして表示する。
  • 5.ピークメーターとして表示する。
  • 6.BPMカウンター
  • 7.メトロノーム
  • 8.チューナー

この8つ以外の他にもやや難しいモード(?)がいくつかあります。BPMカウンターは入力されたシグナルからテンポを計測してくれるモードですが、これって他のモジュールや外部チューナーを使っても不可能な機能ですから結構「あると便利」かも知れないですね。

カウンターは2拍子から16拍子(?)つまり1、2、1、2という数え方から1、2、〜15、16で1周する数え方まで選べるようになっていますね。気が利いてるなと思うのは、Bumpというモードがあって、ビートを幾つかスキップして数えられるようになっているんですね。先の16拍子だと3つBumpさせると16で1周期だったシグナルを4で1周する表示もできるというわけですね。

それからメトロノームのモードですが、このモードにはメトロノームの音をアウトプットする機能はなく単純に振り子を表示するだけですね。それでも他のモジュールでテンポをマニュアルでタップ入力する機能がついているものがありますから、それらを使う時にテンポが「見える」事はなにかと便利だと思います。

下記リンクはメトロノームやBPMカウンターの紹介はありませんが、メーターの解説は映像で確認できます。

https://www.youtube.com/watch?v=lskNUNPi3vA

というわけで、いつ手に入るかわかりませんがとりあえず注文しておきます〜


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【第51回】「コラム初登場メーカー | Steady State FateよりGATESTORMを紹介!」

Steady State Fate/GATESTORM

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今週はこのコーナーで初めて紹介する、Steady State Fateというメーカーのモジュールです。

steadystatefate : HP

もう既にかなりのモジュールをリリースしていますが、やっぱりその中でも一番ハデなモジュールを紹介しちゃいましょう。Gate Stormというモジュールです。概要を簡単に説明してしまうとかえって複雑に感じるかもしれないので、ディスプレイの上から順番に説明しますね。

Complex Laneという16ステップまでのステップ打ちができるレーン(本体中央ディスプレイの左側、上から1〜4というレーンです)が4つあります。ここはRoland社のTR-808のようにボタンを押してリズムパターンを組んで行くところだと思ってもらえばいいと思います。音を出したいポイントをディスプレイ下の1〜8のボタンで選んでいきます。

一番簡単な使い方としてはこの4つのレーンにそれぞれ、Kick、 Snare、 Close Hi-Hat 、Open Hi-Hatなんて感じにパッチしてTR-808のようにリズムを組んで行く。そこから、このレーンはそれぞれのステップ数を増やしたり減らしたりできるので、例えば各レーン8ステップの設定でスタートしてハウスの基本グルーブを打ち込んだ後に、スネアのステップ数だけを7ステップや12ステップにして、どんどん新しいリズムを作っているように聞かせる、、、なんていうことが簡単にできるんですね。

さらに基本はレーンを左から右にステップが進む設定になっていますが、それをリバースさせたり、pendulum(振り子の意味)モードで行ったり来たりさせたりすることができます。ですからシンプルなパターンを打ち込んでもそこからバリエーションでどんどんリズムを展開させることができるんですね。さらに例えば

◉◎◉◎◉◎◎◎

というパターンを

◎◎◉◎◉◎◉◎

というようにスタートポイントをずらすということができます(Rotate)。一般的なステップシーケンサーの場合は「打ち直し」しなくてはいけない所をアイディアが浮かんだらすぐに実行することができますね。各レーンのタイムベースを独立して変更できるので、特定のレーンのテンポ(正確にはタイムベースの変更なのでテンポの変更ではないのですが、、、)だけ早めたり遅めたりすることができます。「ずらす」の他にもパターンを「ひっくり返す」Invertもありますね。

それから非常に音楽的だなと思ったのが「7」のボタンで全てのレーンをオールオフできる機能があるので、簡単にブレークを作ることができるんですよね。ライブパフォーマンスにはかなり便利ですよね!それからタイムベースやゲートの長さをあらかじめ設定する必要はあるのですが、そのいくつかのルールに従った「ランダム」の機能があります。

それ以外にも1つの音源(ドラムでもオシレーターでも)に2つのレーンを使うことも考えられますね。片方のタイムベースをどんどん小さくして左側のCVから取り出した信号をLFO的に使ってフィルターを操作するとか、リリースを伸ばしたり短くしたりだとか。

とにかく複雑な事が簡単な操作でリアルタイムでコントロールできるレイアウトは本当によくできていますね。来週はディスプレイの下半分、4つの「シンプルレーン」について説明します。

【動画】GATESTORM: Introduction


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【第52回】「コラム初登場メーカー | Steady State FateよりGATESTORMを紹介!(2)」

今週は先週のGate Storm続きです。

Steady State Fate/GATESTORM

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モジュールの上半分、Complex Lanesはローランド社のTR-808のような視覚的にステップ打ち込みをして行く考え方に近いのですが、下半分のLogic Lanesは条件をインプットをしてリズムを生成して行く(このモジュールの場合はGateを生成して行くと言った方が正確ですが)パートです。

タイムベース(1拍をどのくらいの長さにするかの設定)を元にその50%の間隔でGateを出力する、なんていう使い方が一番簡単な設定ですね。さらに、ここから先がこのモジュールの素晴らしいところなんです。

ここが何故Logic Lanesと呼ばれているかというと、Cubaseを使っている読者は「Logical Editor」を使って作業効率を上げた経験があると思います。僕がCubaseを使う理由の一つはLogical Editorがあるからで、自分の作業に合わせてプログラミング(というほどでもないですが)することでかなり効率を上げることができます。

このモジュールのLogic Lanesの設定もそれに近く例えば、

  • 1)Lane1にキックのパターンを打ち込む
  • 2)Lane5のSource1を選ぶ(データの元(ソース)となるレーンとしてLane1を選ぶ)
  • 3)日本語で書いた方が解りやすいか、解りにくいから微妙ですが、論理演算で言うところの論理積(AND)、論理和(OR)を選択

と面倒な印象を与えてしまったかもしれませんが、すごく簡単に説明するとLane1のキックを鳴らしていないステップ(または鳴らしているステップ)にGateを作りLane5から出力する、、、というパターンを打ち込むのではなく、設定により「ロジカルにパターンを作る」わけです。さらにここにRandomの要素を加えることで、より複雑というかただのパターンの繰り返しではない要素を盛り込んで行くわけですね。

各レーンの出力はデフォルト設定ではもちろんLane1は出力AからLane2は出力BからGate出力するようになっていますが、設定で簡単に出力先を変えることができるんですね。ですからLane5でロジカルに作ったパターンをフィジカルにパッチケーブルを抜き差しすることなく、出力EからBへ変更することが可能なんですね。よくできてますね(笑)。

このようにして作ったパターンはセーブ、ロード、コピーは勿論できますから、パフォーマンスしながら展開させたものをもう一度元のリズムに戻す、なんてことも簡単にできそうですね。相当使い込めば別ですが、あれこれ触っているうちにどういうロジカル設定してたかなんて忘れちゃいますからね。僕はモジュラーシンセのパフォーマーではないのであまりそういう心配は必要ないのですが、最近のモジュールは多機能なあまりモジュールからモジュールとあれこれいじってるうち少し前にどういう作業してたか忘れてしまうことがあるんです(汗)。

ですからこのセーブしといたものをロードすれば一発で元に戻れるというのはかなり助かりますね。

【動画】GATESTORM: Quick Start - Gates and Logic

最後に左側にCVのインプットとノブが見えます。これもとてもユニークなのですが、このCV値を例えばパターンの長さに当てはめることができるんです。16ステップで作成したパターンを8ステップにしたりもっと短くしたり、それをモジュールのノブだけではなく外部CV入力で調整したりできます。CVバリューはポジティブもネガティブにも設定できますから外部からポジティブ側の入力があってもパターンを短くする(ネガティブ)こともできるわけです。

本当は丁寧に解説するとこのモジュールだけで6週くらいの原稿になりますが、2週で手短に説明しました!


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【第53回】「Mutable Instruments / Cloudsご紹介!」

Mutable Instruments / Clouds

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今週はMutable Instruments社のCloudsを紹介します。この1年、音楽以上SE未満のサウンドデザインをする必要が増えているのですが、そんな時にピッタリのモジュールです。DAWで使用できるプラグインでもiZotope社のiris2など、そんな用途に向いているものもありますが、もう少しオーガニックに(?)サウンドメイキングできないかなと思う今日この頃w。Clouds自体はリリースされてからしばらく経っていますし、気にはなっていたのですがやっと購入目的見えてきました(笑)。


http://mutable-instruments.net/modules/clouds/

Cloudsはグラニューラシンセシスを行うモジュールなのですが(本社のサイトでは、グラニューラ・オーディオ・プロセッサと謳っています)、iris2等のプラグインやサンプラーと違い、一度アップロードしてアナライズした後にグラニューラ処理するのではなく、入力されたオーディオ信号に対してリアルタイムでグラニューラ処理する事ができるのが重要なポイントですね。思いついたらパッチして、即ノブをいじって加工していけるのが何よりも素晴らしいです。

リアルタイムと言っても、グラニューラ処理するわけですからサンプリングした波形の一部を繰り返したりしなくてはいけません。なので、Cloudsはサンプルング周波数32khz16ビットステレオに於いて1秒(モノラルなら2秒)、16khz8ビットステレオでは4秒(モノラルなら8秒)のバッファーを持っています。

リアルタイムでシグナルがどんどん通過していくわけですが、現時点からその秒数分遡ってグラニューラの処理をできるということです。

一般的なサンプラーの感覚だと「え?たったそれだけ??」と思うかもしれませんが、実際にグラニューラ処理するのはそcの波形の中の20msec等のほんの一部分を繰り返したりするわけですから、これぐらいのバッファーで問題ないのです。


パネル左、赤いノブのPOSITIONはこのバッファーにサンプリングされている波形のどの部分を処理するかを決めます。真ん中のSIZEがグラニューラ処理する時間の長さを決めます。そして白のPITCHで周波数を決めます。右に廻すとオリジナルの信号よりもピッチは高く、左は低くなります。タイムストレッチとピッチシフトの掛け合わせ技ですね。

下段右のBLENDでドライとウエットの割合を決めて行きます。100%ウエットでPITCHを操作したサウンドが分かりやすいのが下のリンクです。

https://youtu.be/eF5m4yryhXU?t=2m44s

このビデオをみていると途中でこのBLENDつまみがリバーブのセンドの役割をしてるのに気がつくと思いますが、パネル上部4つのLEDの右横のボタンを押してBLENDノブは

1)ドライ/ウエット

2)パンニング

3)フィードバックの量

4)リバーブの量

この4つのいずれかのパラメーターにアサインできるようになっています。このリバーブがついているのが素晴らしく。あれこれ別のモジュールをパッチしなくてもこれ1台ですぐにサウンドデザインできるようになっているんです。グラニューラ処理しながらリバーブをすぐにかけらるって結構画期的なんですよ(笑)。<

このグラニューラ処理している部分を4つメモリーしておくことができます。Cloudsは「frozen」と呼んでいますが、上記で述べたバッファーに入っている部分を保存できるという意味ですね。

なかなか少ない文字数で伝えにくいモジュールです。実際のサウンドは本社のDemoサイトを参考にしてみてください。

http://mutable-instruments.net/modules/clouds/demos


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【第54回】「なくてもいいは、あれば楽しい!Mutable Instruments/Warps紹介!」

私事ですが、最近モジュラーシンセのケースの空きスペースが少なくなってきました。ケースを買い足すのも良いのですが、いっその事モジュールラック用のレールを買って自作のラックを作ろうかどうしょうか悩んでいる近頃です。

アメリカではブラックフライデーと呼ぶ、1年で一番の大セールの時期が迫ってきました(今年は11月25日の金曜日)。少しモジュールも買い足したいので、なおさら新しいケースは安く抑えたいのですが、、、

Mutable Instruments / Warps

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さて今週はそんなセール時期に買いたい、なくてもいいけどあればより楽しいモジュールを紹介します。Mutable Instruments社のWarpsというモジュールです。

基本的にはFM音源やクロスモジュレーションと考え方は同じで、1つの信号に対して別の信号で変調するという仕組みですね。普通のシンセサイザーではオシレーターをLFOで変調したりしますが、そもそも一般的なシンセサイザーに搭載されているオシレーター波形はサイン、トライアングル、パルス等基本的な波形しかありません。

モジュラーシンセでは過去に紹介してきたようにアナログからデジタル、そしてサンプリングした波形まで様々な波形をオシレーターとして選べますから、Warpsがあればそれを単にミキサーで混ぜるだけではなく、さらに新たなシグナルを生み出す事ができます。


真ん中上部のALGORITHMノブで9通りのアルゴリズムを選択できます。

左から、

  • 1.クロスフェード
  • 2.クロスフォールディング
  • 3.ダイオード・リングモジュレーション(デジタル処理)
  • 4.ダイオード・リングモジュレーション(AD633をベースにアナログ乗算&除算)
  • 5.XOR(排他的論理和)処理。2つのシグナルを16bitの整数換算した上で
  • 6.コンパリソン&レシティフィケーション これはちょっと難しいので後ほど説明します。
  • 7〜9. この3つつはボコーダー

これらのアルゴリズムをTIMBREというノブで音質を調整しながらモジュレーションさせていくわけです。他のモジュールを使ってリングモジュレーションの仕組みを作れない事もないのですが、Warpsを使うとアルゴリズムのバリエーションとTIMBREの変化を外部CVで滑らかに切り替えたり、PULSEシグナルを使ってリズムにシンクロさせて切り替えたりできるというのが一番大きい違いですね。下のリンク先のビデオでも0:51からTIMBREにサンプル&ホールドの信号を入力してTIMBREをランダムに変化させている様子がみられます。

https://www.youtube.com/watch?v=iRLU5B4V-Jw

それから2つのLEVEL入力が見えますが、ここにもシグナルを別LFO等からパッチしてゲートの様にシグナルを分割したり、滑らかに変化させたりもできます。1〜6のアルゴリズムはビデオをみて実際のサウンドを確認してください。

特に6番目のアルゴリズムは日本語にすると「キャリア側のシグナルがネガティブ側(シグナルなので波のように増減するわけですが、その減の部分ですね)に入った時にモジュラー側のシグナルで置き換える」というアルゴリズムです。よく思いつきますね〜こういう事を(汗)。この発想は多分ビット演算とかプログラム言語のXORの発想から来てるのかなと思います。

最後はボコーダーとしてのアルゴリズム。ビデオの17:59からをチェック。入力に女性ボーカルのサンプルを使用しています。アルゴリズムを7から9へ廻して行くとダイレクト音との割り合いが変化し、完全に右側に振り切るとその時点のボコーダーサウンドでフリーズします。少し分かりにくいのですが、INT.OSCを使用している時は赤のLEVELに入力されたピッチでボコーダーシグナルにピッチ変化をさせる事ができます。

手持ちのオシレーターでさらにバリエーションを作ったり、ボコーダーサウンドまでゲットできるというあるとかなり便利なWarpsですね。


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【第55回】「新進気鋭な新参メーカーRabid ElephantからKNOBSを紹介!」

Rabid Elephant / KNOBS

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今回は新参メーカーRabid Elephant社のKNOBSを紹介します。

https://rabidelephant.com/products/knobs

本当に新しいメーカーがどんどん出現しますね。Rabid Elephant社のモジュールはこれが最初のプロダクツの様ですね。新しいメーカーはオシレーター等のベーシックなモジュールではなくて、このKNOBSの様に今までになかったニッチな所を最初から狙ってくるのでとてもエキサイティングですね。

Rabid Elephant社のTutorialビデオがこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=ICJaGmzo6vo

モジュールを見て分かるようにAB2つのチャンネルがあり、一番単純な使い方だとABのシグナルをDJミキサーの様にクロスフェーダーで切り替えることができます。そして次のステップから少し複雑になります。


まずABにそれぞれあるGainノブで入力された波形の極性をひっくり返す事ができます。これは後にA側のシグナルをB側でモジュレーションする時に様々なバリエーションを生む基になっています。

Gainの役割はパネル中央のRND(レンジ)スイッチで3つのバリエーションに切り替えられます。スペースがないので詳しくは説明しませんが片方のチャンネルをモジュレーションするためのアッテネーター・ポジションの切り替えです。

そしてOffsetで、入力されたシグナルのフリーケンシーレンジの幅をモディファイできるんです(リンク先のビデオ2:24)。

これが凄いですね!先ほどのGainとOffsetを共に左に廻し切るとピッチ変化がない状態のシグナルになります。この機能があるとシンプルなベースのオスティナートからいきなりシーケンサーのアルペジオパターンにフレーズを変化させる、なんていう事がシーケンサー側ではなくてこのモジュールで可能になりますね!

Slurは一般的なシンセのパラメーターのスラーと同じでシグナルをどれくらい滑らかに連結させるかを決めるノブです。なのでこのモジュール側でポルタメントがかけられるんです。

以上がAB共通のパラメーターで、チャンネルA側だけさらに、スイッチ切り替えでZero、Bypass、Activeの3つのモードを瞬時に変更できます。

ZeroはGainのセッティングを0vに(つまりシグナルの極性に対しての変化量なし)、BypassはチャンネルAのSlurのアマウント量以外のセッティングを全てバイパス、ActiveはチャンネルA側のセッティング通りにプロセッシングする、の3パターンです。

上リンク先のビデオの4:38前後からクロスフェーダーの説明に入っています。B側のGainとOffsetを使ってA側のシグナルにモジュレーションをかけていく様子がチェックできます。

ですが、このRabid Elephantのビデオだとあまり過激な使い方は紹介していないので、次のビデオをみてください。こちらのビデオの1:00以降内容の方がこのモジュールの一番おいしい使い方がよく分かると思います。Rabid Elephant社、次はどんなモジュールをリリースしてるくるんでしょうね?楽しみですね〜

https://www.youtube.com/watch?v=mET1189QS4Y


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【第56回】「ココイチ気になる製品をご紹介!"rossum electro-music/Control Forge" &"The Harvestman/Stillson Hammer mkII" 」

rossum electro-music / Control Forge

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先週はブラックフライデー週間でしたね。色々なメーカー(楽器関連以外も含む)から送られてくるセールのメールを削除することが朝起きたら最初にすること、、、という日が何日も続きました。

ブラックフライデーの初日に家電店などではあちこちで喧嘩が起きるほどアメリカ人はセール好きですが、モジュラーシンセはどのお店もそれほどの割引にはなっていませんでした(汗)。

僕がセール期間に買ったモジュールは先週紹介したRabid Elephant社のKNOBSだけです。それ以外に店頭で強力に惹かれたものが2つ(本当はもっとありますけど)あって、1つは前回のNAMMショーで見かけた、rossum electro-music社のControl Forge。

http://www.rossum-electro.com

この会社は、その昔E-mu Systemsで松武さんのE-muのダンスの開発や後にEmulator IIやSP12、SP1200の開発も手掛けたDave Rossumさんの会社なんです。実は今年の1月のNAMMショーで既に動作するモジュールはあって、ご本人から丁寧に説明は受けたんですが、難しすぎてさっぱり分からず(汗)。

最近やっと店頭に展示されるようになたので実物を触ることができましたが、それでもさっぱり分からず(涙)。シーケンスやエンヴェロープや、モジュレーション(LFO)といったとにかくCVの役割をするものを8つ登録して使える事は分かりましたが、やっぱりマニュアルなしでは理解するのは難しく今回はパスしました。

The Harvestman / Stillson Hammer mkII

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それともう一つは、The Harvestman社のStillson Hammer mkIIです。ここのサイトがまた見にくいのなんのって(笑)。

http://theharvestman.org

サイトの印象に比べて製品自体はすごい使いやすいんです。これはマニュアルなしでその場である程度使う事ができました。基本的には4トラックのCV-Gateのシーケンサーです。16個のスライダーはピッチCVの値や、Gateの長さを変えるために使えます。Gateの場合はスライダーを一番下に持って来るとGateがオフになるのでリズムのプログラミングも簡単ですね。

このYotubeの映像が分かりやすいので参照してください。

https://www.youtube.com/watch?v=baEfAOR8pog

シーケンスの方向や、ステップの長さ、CV値を当てはめるスケール(ドリアン、クロマッチック等)も設定できますし、それらを32パターンセーブできます。

そして中央Track SelectのI II III IVの4つのボタンで4つのトラックを切り替えてエディットしていくんです。スライダーの上、右手にCVとGateのボタンが見えますが、トラックを選び、CVで音程を決めて行き、Gateでオンオフ〜またはデュレーションを変化させるだけなので即座にシーケンスパターンを組んで行く事ができます。

そして別のトラックのCVデータをフィルターモジュールに送りウニョウニョさせたりスイープさせたりしていけば良いのでとても感覚的に扱えます。Slideのボタンも付いていますからTB-303的なピッチ変化も簡単にプログラミングできます。


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【第57回】「Mutable Instruments / Cloudsご紹介!」

Mutable Instruments / Clouds

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今週はMutable Instruments社のCloudsを紹介します。この1年、音楽以上SE未満のサウンドデザインをする必要が増えているのですが、そんな時にピッタリのモジュールです。DAWで使用できるプラグインでもiZotope社のiris2など、そんな用途に向いているものもありますが、もう少しオーガニックに(?)サウンドメイキングできないかなと思う今日この頃w。Clouds自体はリリースされてからしばらく経っていますし、気にはなっていたのですがやっと購入目的見えてきました(笑)。


http://mutable-instruments.net/modules/clouds/

Cloudsはグラニューラシンセシスを行うモジュールなのですが(本社のサイトでは、グラニューラ・オーディオ・プロセッサと謳っています)、iris2等のプラグインやサンプラーと違い、一度アップロードしてアナライズした後にグラニューラ処理するのではなく、入力されたオーディオ信号に対してリアルタイムでグラニューラ処理する事ができるのが重要なポイントですね。思いついたらパッチして、即ノブをいじって加工していけるのが何よりも素晴らしいです。

リアルタイムと言っても、グラニューラ処理するわけですからサンプリングした波形の一部を繰り返したりしなくてはいけません。なので、Cloudsはサンプルング周波数32khz16ビットステレオに於いて1秒(モノラルなら2秒)、16khz8ビットステレオでは4秒(モノラルなら8秒)のバッファーを持っています。

リアルタイムでシグナルがどんどん通過していくわけですが、現時点からその秒数分遡ってグラニューラの処理をできるということです。

一般的なサンプラーの感覚だと「え?たったそれだけ??」と思うかもしれませんが、実際にグラニューラ処理するのはそcの波形の中の20msec等のほんの一部分を繰り返したりするわけですから、これぐらいのバッファーで問題ないのです。


パネル左、赤いノブのPOSITIONはこのバッファーにサンプリングされている波形のどの部分を処理するかを決めます。真ん中のSIZEがグラニューラ処理する時間の長さを決めます。そして白のPITCHで周波数を決めます。右に廻すとオリジナルの信号よりもピッチは高く、左は低くなります。タイムストレッチとピッチシフトの掛け合わせ技ですね。

下段右のBLENDでドライとウエットの割合を決めて行きます。100%ウエットでPITCHを操作したサウンドが分かりやすいのが下のリンクです。

https://youtu.be/eF5m4yryhXU?t=2m44s

このビデオをみていると途中でこのBLENDつまみがリバーブのセンドの役割をしてるのに気がつくと思いますが、パネル上部4つのLEDの右横のボタンを押してBLENDノブは

1)ドライ/ウエット

2)パンニング

3)フィードバックの量

4)リバーブの量

この4つのいずれかのパラメーターにアサインできるようになっています。このリバーブがついているのが素晴らしく。あれこれ別のモジュールをパッチしなくてもこれ1台ですぐにサウンドデザインできるようになっているんです。グラニューラ処理しながらリバーブをすぐにかけらるって結構画期的なんですよ(笑)。<

このグラニューラ処理している部分を4つメモリーしておくことができます。Cloudsは「frozen」と呼んでいますが、上記で述べたバッファーに入っている部分を保存できるという意味ですね。

なかなか少ない文字数で伝えにくいモジュールです。実際のサウンドは本社のDemoサイトを参考にしてみてください。

http://mutable-instruments.net/modules/clouds/demos


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【第58回】「ありそうでなかったコンプ・モジュール"Intellijel Designs / Jellysquasherご紹介!"」

Intellijel Designs / Jellysquasher

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モジュールの中で音色の加工もできるといいなと思うことって良くありますよね。それこそDAWに一度送れば一通りのプラグインがあるのに、、、コンプもその1つですよね。

リバーブとかディレイと言ったモジュレーション系のエフェクター機能のモジュールは各社からかなりリリースされていますが、コンプは以外とありそうでないんですよね。今週紹介するIntellijel Designs社のJellysquasherはそんなコンプ・モジュールです。

https://intellijel.com/eurorack-modules/jellysquasher/

普段DAWで音楽制作している読者がトップパネルを見れば、だいたい使い方が分かると思います。個人的にはもう少し機能が少なくもよくて、サイズも小さくして、値段も安くなってくれると更にハッピーなのですが(笑)。

サイドチェインも付いて(!)とにかく最近のDAWのコンププラグインに負けない程の仕様になっていますね。

このコンプの一番の特徴であるサウンドへの色付けの意味合いが強いCOLORから見て行きましょう。右上に白いボタンが3つあります。このボタンは組み合わせ押しもできます。

TUBE:ノンリニア・ディストーション。真空管の歪みで二次倍音が強調されると書いてあります。つまりオクターブ上の倍音という事です。

TAPE:偶数、奇数両方の倍音を付加するタイプ。「テープ的な」ディストーション。

XFRM:搭載しているアナログのトランスフォーマーで低音部分をロー側をブーストできる。

となっています。

XFRMのモードで使用しているトランス、Edcor Transformerという会社の製品なそうです。僕は今まで知りませんでしたが、トランスフォーマーでは有名な会社なんですね。

http://edcorusa.com

Intelijel社の解説ビデオリンクです。

https://youtu.be/MJxH6OY0JXc?t=2m49s

3つのコンプのタイプの説明から3:56秒あたりから、インプットレベルとメイクアップゲインをコントロールして808のサウンド太くしています。

パネル左上のCUTOFFのセクションでコンプのフィルターをどの帯域にかけるかと、そのアマウントを調整できます。この辺はプラグインのコンプとなんら遜色ないですね。というかこの仕様のままのプラグインが逆にDAWに欲しいですね。

ビデオの途中で808キックに対して歪むのポイントをバンドパスフィルターを使って色付けしていますが、ここにベースのフレーズが入ってきたら即ベルリンテクノですよね。

勿論このカットオフだけではなく、コンプに必要なパラメーターの殆どをCVでコントロールできます。

ちなみに、このパネル下段右から3つめの、LINKを使うと2台のJellysquasherをステレオ仕様で使えるという事ですが、それだけで36HPのスペースになりますからね、、、ただ出力の最終段にコンプ(リミッター)が入るか入らないかで出音は相当変わりますからね。

ライブパフォーマーにはステレオのコンプがあるかないかはサウンドの説得力に相当の差がでますね。


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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼Facebook>>

【第59回】「簡単リズムシャッフル"ProModular / CLOQ" ご紹介!」

今年も沢山のモジュールがリリースされましたね。NAMMショーには小さいガレージ・メーカーも沢山出品するのですが、僕が密かに期待していて結局今年はリリースされなかったモジュールにTipsy CircuitsのEmperorがあります(発表されたのはNAMM15年ですが)。

Tipsy Circuits / Emperor

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このモジュールサイズの中に7インチのWindowsコンピューターが入っていて、当時の仕様はCore i5、16GBメモリー、24bit 192khzオーディオインターフェイス、8系統のCV&GATEというものでした。

とにかく何でもユーロラックに入れようという気合いが感じられて陰ながら期待していましたが、その後リリースされたニュースはどこからも聞こえません。次回のNAMMがもうすぐですが、期待しましょう!

というわけで今週は、これまた小さいメーカーの製品を紹介します。LAでも一カ所のお店でしか扱っていなんですけどね。ProModular社のCLOQというクロック系のモジュールです。

日本では手に入りにくいモジュールかと思いますが概念的にシンプルですが、非常に音楽的に出来ているのでモジュールの役割を知っておくと手持ちのモジュールをパッチする時に何かのアイディアになるかも知れないので紹介しますね。

ProModular / CLOQ

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所謂クロック・ジェネレーターですが、なかなか気が利いた作りになっています。まずオリジナルテンポに対して、2分音符(HALF)、4分音符(QUARTER)、8分音符(8TH)、16分音符(16THS)が簡単に引っぱり出せます。

他のクロックモジュールだと、オリジナルテンポの半分とか倍といった表示にしてあるのが普通ですが、こちらの方が音楽的ですよね。手元に16ステップのシーケンサーが2系統あって、片方を倍のテンポで駆動させたり、半分にしたりできます。

中央にSYNC/ASYNCというボタンがありますが、これは下図のように裏打ちができちゃうんですね。

例えばASYNCのモードを使うと通常4分音符のQUATERが8分裏のリズムになるので簡単なところで言うとハイハットを裏打ちにしたり、ステップシーケンサーのフレーズ8分や1拍ずらしが即できるというわけです。

シーケンサー側でシフトしてフレーズをずらせるモジュールは多分あると思いますが、こちらの機能を使った方が簡単な場合もあると思います。

それから、DAW等では簡単な作業なのですが、モジュラーシンセで意外と厄介なのがリズムのシャッフルですね。

SPACEというノブを調整する事でクロック間の長さを調整できるんですね。3連であれば1拍等を3等分すれば良いので、数学的なディバイダー・モジュールがあれば簡単ですが、シャッフルとなると裏のハネを60:40にするのか、70:30にするのかで音楽的にはグルーブにかなり違いが出て来てしまいます。このCLOQがあればそのグルーブを簡単に作り出せるわけですね。

https://www.youtube.com/watch?v=S4cVLGgGYAM

勿論、SPPED(テンポ)やクロックのスタート/ストップ、先程のSPACEの値の調整は外部CVでコントロールできます。


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【第60回】「かつてない程、簡単操作!"1010 Music / Bitbox" ご紹介!」

またまた新しいメーカーです。海外はどうしてこうも新しいメーカーが次々出て来るんでしょうね〜

今週は1010 Music(テンテンミュージックと発音します)社のBitboxを紹介しましょう。サンプラーモジュールですね。過去にもサンプラーいくつか紹介しましたが、これほど操作が簡単でディスプレイ表示も分かりやすいモジュールはなかったと思います。

1010 Music / Bitbox

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インターナルメモリーから16種類、さらにmicro SDカードから4種類のサンプルを同時に再生できるそうです。このディスプレイがとにかく見やすいですよね。

トップパネルMICRO SDという表示が見えますが、真正面の写真だとわかりにくいですが、左側にMIDIのインプットがあります。これはArturia社の BeatStep Proが採用しているTRSケーブルを使ったMIDIケーブルのためのものです。

まずはこのYoutubeのリンクをチェックしてください。

https://www.youtube.com/watch?v=amoxQ3KxvZs

サンプリングの手順を説明していますが、ディスプレイ右に「Rec Quant」というレコーディングする際のクオンタイズの設定画面が見えますよね?これが素晴らしい機能で入力されたクロックのタイムベースを元にここで設定した単位で入力されたシグナルをキャプチャーできるんです。

ですからモジュラーシンセでパフォーマンスしてる最中にサンプリングしてループを作る際も非常に音楽的にサンプリングしていけるんです。

このクオンタイズを1barに設定するとクロックに対して1小節単位でサンプリングしてくれるんですね。この設定は最大8小節まで。クオンタイズしない「None」というモードもあり、それだと拍に関係なくサンプリングを始められて、ストップボタンを押すと即再生が始まります。

それと0:59のところでサンプリングからプレイバックに切り替わりますが、音質の変化がほとんどないですね。

ビデオでは4つのサンプルをレイヤーする様子が確認できます。後半では2つのパネルボタンを同時に押してミュートしたり再スタートさせたりする様子が分かりますがよく考えられたGUIです。

もう1つのビデオもチェックしてください。

https://www.youtube.com/watch?v=et74MN-Rd54&t=19s

このループのクオンタイズと再生ピッチを変更しても、スライスしてもテンポに追従する感度は良く出来ていますし、それをモジュールの上でこんなに簡単に出来てしまうのは本当にすごいです。

ビデオにあるように、CVインから入ってきた情報をマトリクスを使ってピッチをコントロールするためにアサインしたりできますね。

それとYoutubeのビデオでは解説していないのですが、このパネルで表示しているサンプルのセットをそのままAbleton Liveで開けるそうです。

これはリアルタイムではできませんが、サンプリングされた素材とグリッドに対しての並びをmicro SDにセーブしてモジュールから外し、Liveを走らせるコンピューターに読み込ませ.alsという拡張子のファイルをLive側で開くことで展開できるようです。

モジュラーシンセでシーケンスのパターンをどんどん仕込んでLiveで展開できるなんてなかなか魅力的ですよね。


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【第61回】「徹底解説!"Moog / Mother32"とDAWの連携術!」

新年あけましておめでとうございます。昨年も色んなモジュールがリリースされましたね。NAMMショー2017が間もなく開催されますので新しいモジュールがまたガンガンリリースされるんでしょうね。僕はLAに住んでいるので勿論NAMMショーには行きます!

知り合いからモジュラーシンセをどれくらいの規模で、何から購入するべきかという相談をつい最近もされました。

この質問は本当に難しくて、ある程度モジュールが揃ってこないとバリエーションが増えないし、モジュラーシンセで作った音を普段使っているDAWにどのように取り込むかも(過去に何度か紹介しましたが)人によって環境が違いますからね、、、

僕自身が購入して(責任を持って勧められる、という意味です)、普段の仕事に重宝し、なおかつ少ない規模でたくさんの可能性があり、もちろ音が良いモジュール、、、というとやっぱりMoog Mother-32がお薦めです。写真では分かりませんが、裏面に標準のTRSの出力がありますから、誰が買ってもその日から自分のI/Oへ接続できます。

Moog / Mother32

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まずパッチをしなくても音が出る〜という部分が「邪道」かどうかですが、そこは僕自身も正直ビミョ〜でして、パッチしないとブーとも言わないという所がモジュラーシンセの面白さそのもの、、、な〜のですが、この際堅い事は抜きにしましょう!なんたって音が抜群に良く、回路的にも非常に分かりやすくできてますからね。

というわけで、数周にわたってMother-32を使いながらDAWとの連携や、どのようにパッチをしていけばプラスアルファが導き出せるのか等々を解説していきたいと思います。

まずは、DAWとMother-32の接続ですが、Mother-32にはMIDI INが搭載されています。そこで僕自身も愛用していてお薦めなのがローランド社からリリースされているUM-ONE mk2です。

Roland / UM-ONE mk2

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これはコンピューターにUSBポートを接続するとこのケーブル自信がMIDIインターフェースになるという優れものです。Mother-32以外にもMacBook Proでローランドのビンテージシンセ・JP-8000等のMIDI入力を持っているシンセを使いたい時にとても重宝しています。これがあればコンピューターとMother-32と直に繋いで、DAWのMIDIデータで即MOther-32をコントロールできます。

Mother-32はオシレーターが1つしかないですが、エクスターナルのオーディオインプットがありますから(この入力はトップパネルにレイアウトされているのでミニプラグサイズになります)、CV&GATE出力から手持ちの他のオシレーターを鳴らし、EXT AUDIOに接続すれば2VCOや3VCO的な環境が作れます。

そして、極端に複雑な事はできませんが、キーボードの代わりになるボタンと、32ステップ&64パターンのシーケンサーがありますから、これまたMother-32だけで直に音作り&シケンサーパターンを始まれるわけです。

来週はまずパッチなしでどのようなサウンドが作れるのか〜から解説していきます。

曇り日が続くLAですが、元旦の早朝だけはバッチリ晴れました。初日の出の映像がキレイに撮れましたので、それにインスパイアされてMother-32だけで日本の伝統お正月曲(?)「春の海」をアレンジしましたのでチェックしてみてください。音源は全てMother-32をダビングし、ProToolsに録音してリバーブ等を加えてまとめました。

https://www.youtube.com/watch?v=MRy-aJzKOMk&t=1s


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【第62回】「徹底解説!"Moog / Mother32"をパッチしよう!」

さて今週から実際にMother-32に実際に触れていきましょう。

Moog / Mother32

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Youtube上にMother-32のTutorialは山ほどあります。機能的にそれほど複雑でもなくパラメーターの数も極端に多いわけではないので、それらと被らない解説をするというのもなかなか難しいのですが、そこは気にせずに僕なりの見方で掘って行きますね。

先週の最後にパッチを使わない所からスタートしましょうと書きましたが、やっぱりパッチした方が楽しいので早速パッチを使うTipsから紹介していきましょう(笑)。

先週Mother-32は「1VCO」と紹介しました。確かにシンセサイザーのサーキット的に見た場合はオシレーターは1つなんです。厚みや音色のバリエーションのために一工夫したい感じもしますね。

オシレーターは1つですが、SAWとPULSEの2種類の波形がありますから、パネル上のスイッチで選択していない方の波形を、パッチベイのVCO SAWまたはVCO PULSEからEXT AudioへパッチしてMIXノブでバランスを取るのが一番簡単に違う波形を重ね合わせるやり方です。

でもこのやり方だと、2つのオシレーターの音程を変える事はできないし(detune的なセッティングができない)、そもそも同じオシレーターの波形なので当然キャラクターが近いので劇的にオシレーターをレイヤーしてる感じにはあまりなりません。

しかしLFOがありますよね。これはMother-32に限った事ではなくモジュラーシンセ的発想なのですが、LFOもオシレーターの1つなんです。そもそもこのLFOとはLow Frequency Oscillatorの略ですからね。低い周波数のオシレーターなんです。

ということはMother-32はVCOとは別に「オシレーター的なもの」がもう一つ搭載されているわけですね。ここから次のような事を考えます。

1)「オシレーター的なもの」の出力を取り出しミキサーにインプットできるか?

2)そのピッチをコントロールできるのか?

使用するパッチポイント

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そしてMother-32の右側のパッチベイをチェックするわけです。パッチ群の左上に「EXT AUDIO」のインプットがあり、パネル中央上にMIXのツマミがあって、「NOISE/EXT」と書いてありますから、どうやらExternalのオーディオをここでミックスできそうですね。

さらにパッチベイを探すと「LFO TRI」「LFO SQ」が見つかりました。LFOの出力ですね。このアウトを先程の「EXT AUDIO」にパッチするとLFOをオシレーターとして使えそうです。

さっそく実験してみましょう。今回ムービーを用意してみましたので、リンク先のYouTube動画をチェックしてみてください。

https://youtu.be/bAizgkvZxhY

まず内蔵シーケンサーを使って簡単なパターンを打ち込みます。シーケンサーを走らせながら、MIXのツマミを右側に振り切り、「LFO TRI」を「EXT AUDIO」にパッチします。シーケンサーに合わせて三角波が聞こえて来ますね。このセッティングに於いて、LFOからのシグナルのピッチは、パネルのLFO RATEでコントロールします。動画のシーケンスのパターンがCマイナーなので、LFOのピッチをCやGの音にするとハマリが良いです。

さて、さらにLFOの出力のピッチをコントロールできればさらに疑似2VCO状態になりますよね?パッチベイに「KB」アウトがありますが、これは内蔵シーケンサーや、外部MIDIからのデータをCVとして出力しているアウトです。このKBアウトをLFO RATEにパッチしてみましょう。さっきまで同じ音程だったオーディオにシーケンサーのパターンと”ほぼ”同じピッチが付きましたよね?なぜ”ほぼ”か説明します。モジュラーシンセの規格でピッチをコントールするCVは1オクターブ/1ボルトと決まっています。Mother-32のオシレーターは8hzから8khzまでカバーしています。

それに対して、シンセサイザーのサーキットの中でのLFOの役割はフィルターをゆ〜っくり開閉するための周期(オシレーターとしては可聴範囲以下)や、音程にビブラートを付けるための少しは速い周期(かと言ってオシレーターとして使うには遅い)の範囲で変化する事が求められます。ですから、LFOを1オクターブ/1ボルトというエクスボネンシャルに設定してしまうと、LFO本来の役割には合致しなくなるんですね。ちなみにMother-32のLFOの帯域は約0.18hzから600hzのようで、受け持っている帯域がやはりかなり違います。

で厳密にはピッチがあっていませんが、MIXのツマミで上手く調整してやる事で2VCO的なサウンドを醸し出す事ができます。


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【第63回】「徹底解説!"Moog / Mother32"実践パッチ第2週目!」

Moog Mother-32 実践パッチシリーズ第2週目。

今週はDAWとの連携寄りの記事になっています。MIDI INが付いているのがMother-32の素晴らしいポイントですよね。数あるMIDIデータのうち音程&デュレーションは当然入力されますが、もう一つパッチベイにある「ASSIGN」からもう一つMIDIデータをCVとして出力してパッチし、CVコントローラーとして使えるんです。

MIDIコントローラーを持っていないという読者もいるかと思いますが、モジュレーションホイールは身の回りにありますよね?というわけでモジュレーションホイールでMother-32をコントロールするパッチの仕方を説明します。

まず、モジュレーションホイールのデータはMIDIコントロールのCC01とMIDIの規格で決まっていますので、どなたのキーボードのモジュレーションホイールもデフォルトでCC01に割り当てられています。Mother-32へのMIDIの受け渡しには先々週紹介したRoland社のUM-ONEを使っています。そして、Mother-32の「ASSIGN」アウトは一つしかありません。ここからどのMIDIデータを出力するかはSETUP MODEに入ってMother-32の設定を変更する必要があります。今週一番面倒なのはここです(笑)。

「面倒」な理由はMother-33にはモニターがないので、ボタンの組み合わせで設定の変更を進めるわけですが途中で目を離すと迷子になります。設定の途中で宅急便が届かないことをお祈りしながら設定していく必要があります。

セットアップモードに入る

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Mother-32をお持ちの方はマニュアルのページ49に書いてありますので確認して見てください。まずセットアップモードに入るにはボタンを4つ押します。これは同時に押せなくても問題ありません。順番に押し続けていけば大丈夫です。そして最初に覚えておいてほしいのはセットアップモードから出る時もこの4つのボタンを押して出るということです!

次に設定ページを切り替えます。

設定ページを切り替える

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これは初期状態で最初はページ1が選択されていますから、次に進みますね。設定値の選択は全部で16通り。それをステップシーケンサーで使っている1〜8のボタンで選びます。MIDI CC01を選択するには「13」を選ぶ必要があるんです。1〜8は数字が書いてありますから順当に数えられますね。問題は次は9からはSHIFTボタンを押す子で1〜8が9〜16のボタンになるということです。ですから13を選びたい場合はSHIFTを押しながら5を押します。これでDAWから入力されたMIDIデータのうちCC01のバリューがCVとして「ASSIGN」から出力されます。

設定地の選択方法

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パラーメータの選択

一番わかりやすくまた頻度が多いのはローパス・フィルターのカットオフの為にこの「ASSIGN」から「VCF CUTOFF」にパッチすることでしょうか。

今週はスペースがなくなりましたのでこの辺にしておきますが、DAW側のデータはこんな感じになります。

DAW側のデータ

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ProTools画面

来週はムービー付きでここから先のプラスアルファのパッチの仕方を紹介します。



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【第64回】「徹底解説!"Moog / Mother32"実践パッチ第3週目!」

Moog Mother-32 実践パッチシリーズ第3週目。

先週NAMM2017が終わりましたが、モジュラーシンセのブースもすごい賑わいでした。新規参入メーカーは開発者本人が一生懸命語ってくれるのでコンセプトが分かりやすいですね。ベーシックなモジュールは既に相当数市場にあるので、新しいモジュールは、よりシンプルなものと、より複雑に進化したものとに分化してきた印象を受けました。サンプリング系のモジュールが増えてきたのも今回の大きな特徴でしたね。

さてMIDI CC01をMother-32へ送る設定を先週紹介しました。今週はその続きです。

セットアップモードに入る

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Mother-32に搭載されているSAWとPULSEのオシレーターを両方ブレンドして、CC01でフィルターとMIXノブをコントロールする〜という流れを解説します。

まずMother-32には付属していないパッチケーブルなのですが、写真のようなスタックケーブルというものがあります。このケーブルがあるとCC01をフィルター以外にもパッチでき、変化量は同じですが別のパラメーターもコントロールできるようになります。限られた数のモジュールや少ないコントロール系のCV/GATEでサウンドのバリエーションを作っていく時にとても便利ですね。パッチケーブルを購入する時は一緒に入手した方が何かと良いことがあると思います。

セットアップモードに入る

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ビデオ内の手順を簡単に説明するとMIDI INから入ってきたフレーズでMother-32を鳴らし、「ASSIGN」を「VCF CUTOFF」にパッチして、フィルターのコントロールを確認。その後、「VCO SAW」を「EXT AUDIO」へパッチ。オシレーターSAWとPLUSEのブレンド量を「ASSIGN」からのCC01で同じくコントロールするという流れです。

セットアップモードに入る

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ちなみに「EXT AUDIO」へ何もパッチをしなければMother-32に搭載されているノイズをブレンドする事になります。もちろん、Mother-32以外にオシレーターモジュールが手元にあれば、それらをEXT AUDIOにパッチしてミックスする事も可能ですね。こういう風に、1つのコントロール系統をどんどんパラってパッチしていくのはモジュラーシンセの基本所作ですね(笑)。

Youtubeのリンクはこちらから。

https://youtu.be/oU2oZioj-kM

来週もMother-32のパッチを続けます。



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【第65回】「徹底解説!"Moog / Mother32"実践パッチ第4週目!」

Moog Mother-32 実践パッチシリーズ第4週目。

MIDIのパラメーターをMother-32で使用する例の続きです。生楽器中心の劇伴の仕事でもシンセ音を足すことはよくあります。いろんな使い方がありますが、サスペンス系の16分のパーカッションのリズムパターンに、今日紹介するようなキック系のアタックをほんの少しだけ足してタイトさを強調するの手法も割と頻繁に使います。

モジュラーシンセとは関係のない話ですが、現在のサンプリングライブラリーの多くはラウンドロビン(RR)と呼ばれる、同じノートを繰り返し発音させた時に、同一のサンプル素材が連打されて、所謂”マシンガン”にならないように最低でも2つ、多いと6〜7つのサンプルが順番に発音されるようにプログラミングされています。それに伴って(勿論ライブラリーによりますが)発音のタイミングに僅かにムラが出る事があります。

サンプル素材そのもののアタック感のバラツキだったり(よく言えばそのムラが”自然な感じ”でもあるのですが)、波形編集のムラだったりというのがその理由ですね。勿論、それが良い場合もあるのですが、リズムを非常にタイトにしたい場合は、遅れを感じるサンプルを探し当てて波形を編集する、、、というのも不可能ではないのですが、同じMIDIノートでもベロシティによってもサンプル素材が変わってしまうので、現実的には波形編集をするのは相当時間がかかります。

そこで、今日紹介するようなパッチの音色をほんの少し足すことで、リズムにタイトさを加えるわけです。

そして、アタックを足すと言っても強弱なしで足すわけには行かないので、MIDIのベロシティ情報をMother-32のASSIGNからVCA CVへパッチするわけです。

Mother-32のパラメーター

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先週はMIDIのCC01をASSINGへセットアップしましたね。手順は同じで、今回はOUTPUT MODESの10番を選びます。手順は 先々週のセミナーをチェックしてください。

メタルパーカッションのアクセントに合わせる

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このようにベロシティをMother-3に送ります。「ASSIGN」から「VCA CV」へパッチしてベロシティの値をボリュームへ反映させます。このパッチはアナログ系キックを作るための例ですがVCF MODEをHIGH PASSで使っているところがモジュラーシンセならではです。以前は同じくMoogのMINTAURを使って”似たような”サウンドを作っていた時もありましたが、LOW PASSのみのサーキットレイアウトになっているので、音作りの発想が根本的に違うんです。これはもっとページが必要なのでまたいずれ説明したいと思います。

1,シーケンスパターンの基本になるフレーズ

(mp3 Metal Perc Pattern)

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

2,レイヤーするMother-32

(mp3 Mother32)

※ 初回再生時の音量にご注意ください。


3,パーカッションのみのミックス

(mp3 Without Mother-32)

※ 初回再生時の音量にご注意ください。

4,Mother-32をレイヤーしたミックス

(mp3 With Mother-32)

※ 初回再生時の音量にご注意ください。


セミナーなので、Mother-32を聞こえやすいレベルでミックスしていますが、実際はコンプでアタック感とリリースを調整して、さらにもう少し小さめにミックスすると思います(曲調にもよりますが)。

ProToolsのトラックレイアウトはこんな感じですね。

トラックレイアウト

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さて、こんなのソフトシンセでよくね?という突っ込みが当然あると思いますが(笑)、こういう地味目な使い方でも、やっぱりデジタルとアナログの差は確実にあると思いますよ。



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【第66回】「これぞまさにSoundComputer!Orthogonal Devices社 / ER-301 」

今週はMoog Mother-32のシリーズはお休みして、新しいモジュールの紹介をします。

実は目下、今年の7月公開予定の映画「銀魂」(小栗旬主演)の音楽制作の真っ只中なんです。僕の場合、映画の劇伴やゲームの音楽制作となると、ドラマの劇伴と違って俄然サウンドデザインの割合が増えるんです。

日本のドラマの場合、納期の関係で毎週毎週映像に合わせて音楽を書き下ろしているわけではないのですが、映画の場合は編集が済んだ「ピクチャーロック」映像に対して音楽を書き進めて行きます。

今回の「銀魂」は音楽未満、SE以上のサウンドが必要なシーンが割とあるんです。そういう部分に対してサウンドデザインしていくわけですね。そういう部分は皆さんが映画を見ても「音楽」と認知しにくいと思いますが、、、

実は普通に音楽を書くよりも時間はかかるんです。作業的には素材の録音から始まります(家の中だけではなく屋外でも)。LAはだだっ広いので駐車場があちこちにあるので、素材録りにはもってこいなんです(笑)。DAWでの波形編集(主にReaperで行なっています)、その後Kontaktでプログラミングするという流れですね。モジュラーシンセは、オシレーターとして使う場合もあるし、フィルターとしても効果抜群です。

こういう時期はモジューラーシンセの出番もサウンドデザインよりになりますが、今週紹介するのはOrthogonal Devices社のER-301というモジュールです。実はこのER-301は昨年の10月末にリリースされていたようですが、僕は全然気がつきませんでした。LAのモジューラーシンセのお店でもまだ扱いがなく、初期ロットは通販だけで売り切れたんじゃないかと思います。

Orthogonal Devices / ER-301

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このセミナーで過去にサンプラー・モジュールもいくつか紹介しましたが、ER-301はステレオでサンプリングできます。本体でもサンプリングできますし、トップパネルにインサートしてSDカード、さらに背面にもSDカードのスロットがあって、両方からサンプリング素材の読み込みができます。下記リンクの7:40秒からがER-301の概要が掴みやすいと思います。

ER-301:Sound Computer (OVER VIEW)

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他のサンプラーモジュールとER-301が明らかに違うのはサンプルに「Sample Slice」のタグを打っておけることですね。タグがないと波形の目視だけでは目当ての場所にトランスポートできませんからね。そして、シーケンサーからのCVの値でSliceからSliceへジャンプして、新しいフレーズを作っていくことができます。(10:40以降)

このビデオの後半、だんだん複雑になっていきますが(笑)、グリッチした素材同士をこのモジュールの中でミックスする事も出来ます。そして、そのミックスしたアウトプットをもう一度、このER-103自身でサンプリングし直す事もできるようですね。

もう1つビデオのリンクを。これはER-301のプロトタイプを使ったデモ映像です。2:40秒前後が、僕がやっている映画用のサウンドデザインと雰囲気は近いですね。グリッチしちゃえば、素材って何でもよくない?と思う読者もいるかもしれませんが、そうでもないんですよ(笑)。

ER-301のプロトタイプを使ったデモ映像

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というわけで、今すぐにでも使いたいのですが、Sold Outになってしまったようです。早速オーダーが再開されたらお知らせメールが来るようにSubscribeはしました!



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【第67回】「往年の名器、Roland社 / Music Composer MC-4 」

今週は番外編としてRoland社の名器、Music Composer MC-4の話にさせていただきます。

Roland / Music Composer MC-4

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もちろんモジュラーシンセと全く関係ないわけではなく、むしろ音楽制作の機材的には先祖帰り(?)して僕の環境では今でも現役で働いてもらっています。もちろん、年中稼働しているわけではないんですけどね(笑)。

先週書きましたが、今現在7月公開の映画「銀魂」の制作の真っ最中ですが、その次の映画でモジュラーシンセを大(?)フューチャーしようと考えているんです。映画の音楽ですからもちろん映像に合わせる必要が出てきます。

その機材周りのセットアップをこのMC-4込みで今確認してるところなんです。全てをこのMC-4でコントロールするかどうかはまだ分かりませんが、アレンジされた4声のCV&GATEでモジュラーシンセを鳴らそうとした場合、もちろん以前にこのページに書いた通りDAWからのMIDIをCV&GATEに変換する方法もいくつかあるのですが、MC-4からCV&GATEでシンセに発音させた方がDAWのそれよりリズムがタイトに感じます。

すでにモジュールを組んで、モジュール内のシーケンサーで制作されている読者も同じような経験した方もいるのではないでしょうか?DAWなしでモジュラーシンセを鳴らすタイトさを、、、

さて、そもそもモジュラーシンセに於いてシグナルのパスに使っているCV&GATEという規格、読者の多くの世代はMIDI規格の後に遭遇したのではないかと思います。僕自身も最初に触れたのはMIDI規格でしたが、僕がスタジオの仕事を始めた頃はまだレコーディングスタジオの中では現役で使われていました。

今も音楽制作のやり取りでMIDIのモックアップを「打ち込みもの」と呼んでも通じますが、その「打ち込み」の呼称はまさにこのMC-4にデータを打ち込む所作から来ているんです。当時とにかくMC-4の打ち込みが下手(遅い&間違いが多い)で相当怒鳴られましたけど(汗)、30年近く経つとそんなトラウマも消えますね!

このMC-4(正確には僕が使っているのはMC-4Bで、MC-4Aよりも少し搭載メモリーが多いです)は、4ch分のCVとGATEをコントロールできます。ピッチと音符の長さ、その長さのうち実際に音の長さ、この3種類のデータをカチャカチャ入力していくわけです。

MC-4の初期TB設定

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これが電源を入れた際に最初に表示されるデータですが、このTBはタイムベースと言って、1拍をどういう単位で管理するのかを設定します。初期設定ではタイムベースが120になっていますが、当時スタジオに於ける三種の神器の一つと言われたリンドラムのタイムベースが48だったので、MC-4のタイムベースも48で使ってる人が多かったと思います。現在のDAWでは1拍の分解能を960に設定してる読者がほとんだと思いますが、それが48に設定されていると思ってください。

MC-4 TB設定

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というわけで、その名残で今でもTBを48に設定しています。48の右の24はデュレーションに特定の値を入力しないでエンターした時に自動的に入る値24、つまり8分音符の長さですね。さらにその右12はGATEの値の初期値です。8分の半分、16分音符の長さでGATEが送られるわけです。この設定のままピッチのCVだけどんどん入力していくと、8分音符の連続で16分音符のGATEの長さでどんどん入力できるんです。

と、誰も持ってないような機材の説明を延々としてしまいましたが、来週はセットアップが済んでるでしょうから、Moog Mother-32と絡めた話の続きをしていきます。



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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼Facebook>>

【第68回】「パソコンとの同期演奏が可能なシンクボックス、Roland社 / SBX-1 」

今週もさらに番外編の続きです。MC-4とMother-32の話をする予定でしたが、ちょっと予定変更でシンクの話にします。

Roland / Music Composer MC-4

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先週スタジオでMC-4が現役だった当時、(一拍の)タイムベースを48にするのが主流だったと書きました。48にすると4分音符は48、8分音符は24、16分音符は12というゲート値になります。8分3連の場合は16と入力して3連にするわけです。

これがシャッフルの場合は32:16から、浅いシャッフルだと31:17のように微妙にずらして好みの数値を探すわけですが、これがまた結構微妙な作業だったように記憶しています。

現在のDAWだとほとんどのDAWがMPCの16th SwingのようなMIDIグルーブをプリセットで持っていますよね?本当に時代が変わりましたね(笑)。

それでもスタジオ内でシャッフルに関して皆んなであ〜だこ〜だ言いながら打ち込み直すのもそれはそれで楽し作業でしたけどね、、、

ちなみに、48という値を「えらいざっくりしてんな〜」と感じる読者も多いと思いますが、その数値のシンプルさがリズムのタイトさにつながっているのだと僕は思っています。

またMIDIのように途中にエクスクルーシブ・データの割り込み等もありませんからね。

Roland / sbx-1

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MC-4を中古で購入するのは難易度が高いとしても、RolandのTRシリーズや、MC-202、SH-101と言った名機は比較的入手しやすいと思います。

それらをDAWや自分のモジュラーシンセと同期させるにはシンクの知識が少しだけ必要です。SYNC用のモジュールもあるにはあるんですが、ユーロラックに入る大きさで1つ買って全てを賄えるものというと実はほとんどないんですね。

日本で一番入手しやすいのは、Roland社から現在もリリースされている、Sync Box SBX-1ですね。

これは本当に素晴らしい機材で、これがあればMIDI入出力しかないリズムマシン、DIN SYNC(TRシリーズ等に搭載されていた一見MIDI端子のような規格)、USBをスルーして同期する機材等々を全部シンクすることができます。


https://www.roland.com/jp/products/sbx-1/

さらに上述のシャッフルをコントロールする機能もあるので(微細なエディットはできませんが)何かとあると便モジュラーシンセの複数のシーケンサーやアルペジレーターをSBX-1をマスターにすることで、同一のシャッフル・グルーブでコントロールすることができるんです。

ローランド社のホームページからの転載ですが、SBX-1をマスターにした場合はこんな配線になります。ライブパフォーマンス向けのセッティングですね。


それと、僕の環境や多分多くの読者が必要になるのはこういうセッティングかな?

「MIDIケーブル持っていません!」という読者も多いとおもいます。以前もこのコーナーで書いたような気もしますが、MIDIケーブルとDINケーブルは見た目は全く同じです。

ちがいは全ての端子が半田付けされているかどうかなんです。

DINケーブルは全部の端子が半田付けしてあります。ですから、特に今すぐにDIN SYNCを使う予定がなくても、モジュラーシンセを既に始めている、いずれ始めたい!と思っているならもしMIDIケーブルを購入する際はDIN規格でつかえるケーブルを購入したほうが良いと思いますよ。



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【第69回】「フィルターはクセがあるぐらいが丁度いい?intellijel社 / Korgasmatron II・Doepfer社 / A-124 VCF-5」

毎週話がポンポンとんで申し訳ないのですが、今週はフィルターのについて話ます。実は毎日オーケストラものの劇伴ばかり書いているのですが、その次の映画をモジュラーシンセをフューチャーしようと思い、そのセッティングも並行してあれこれ考えています。

セッティングを考える際に何故にそんなに時間がかかるのかというと、劇伴の場合は一度書いた曲に戻って構成変えたり編集したり音色変えたりする可能性がものすごく高い仕事なので、モジュラーシンセを使う場合はそこが一番難しいんですよね。

そこでそのセッティングのためにKorgのMS-20系のフィルターを買い足したいんですね。

実はオリジナルのMS-20は所有していて東京に置いてあるんです。MS-20は実に良くできた楽器で、Youtube上に相当な数のMS-20のチュートリアルありますが、「あ〜そういうパッチの方法があるのか!」と発見させられる事が今でもあります。

特に昔はMS-20をサウンドデザインの中心に据えるという発想はありませんでしたし、単なるリード楽器系のシンセと思っていた時期もありました。

MS-20パッチベイ

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サウンドデザインに使いやすい理由はいくつかありますが、一番分かりやすい理由はパッチベイの下段に外部シグナルプロセッサーの配列があることです。モジュラーシンセ的な発想でこのパッチベイを見直してみると新しい発見があるかもしれませんよ(笑)。

最下段のシグナルフローの途中で「BAND PASS FILTER」が見えますよね?そのパラメーターはそのすぐ下にあります。

フィルターとEQの役割は良くにていますが、後者は補正を目的としたものなので(基本的には、ですよ)、そのカーブに癖があったり折り返し部分にピークができていたりすることを良しとしません。

しかしシンセのフィルターはそれ自体が「楽器」の一部なのでいくらクセがあっても良いんですよね。むしろ、そのフィルターの違いこそが「あ〜やっぱりオーバーハイムだ〜」と機種を聞き分けられる理由でもありますからね。

外部入力にサウンドデザインに使いたい元ネタを入力して、それを上部のパッチベイでアサインしてリングモジュレーションするもよし、MS-20のフィルターでクセをつけるもよしです。

さてMS-20の説明が長くなりましたが、そのMS-20のフィルターをモジュラーシンセに取り込みたいなと思っているわけです。Korg社からそういうユーロラックのモジュールをリリースしてもらえればそれ以上のことはないのですが、今モジュールシンセマーケットにある近いフィルターを選んでみました。

一番有名なのはintellijel社のKorgasmatron IIですね。

https://intellijel.com/eurorack-modules/korgasmatron-ii/

intellijel / Korgasmatron-II-new-2000px

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一つのフローに対してローパス&ハイパスをアサインするのではなく、2系統のフィルターのサミングで音作りする設計になっています。FMのたすき掛けができるので、エグイ音も作れます。

べつの候補として、Doepferの中でも一番エグイんじゃないかなと個人的には思っているA-124 VCF-5です。パラーメーターはKorgasmatron IIよりも少ないですが、逆に使いやすいですよね。こちらはローパスとハイパスはMIXのノブでバランスを取る方式ですね。Moog系のフィルターとは違い音楽的というよりは攻撃的な感じがありますよね?

Doepfer公式サイト
http://www.doepfer.de/a124.htm

日本代理店:Fukusan Kigyo
http://www.fukusan.com/products/doepfer/a100series/a124.html

分かりやすいビデオがありますので、チェックしてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=xhNljvO0GCc

Doepfer / A-124 VCF-5

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中古市場のMS-20や、DAWとの連携を優先すると現行のMS-20miniもなかなか良い楽器ですが、このセミナーのかなり前半に説明した記憶がありますが、Korg社は昔からオシレーターのCVの仕様がモジュラーシンセと規格が違います。手持ちのモジュラーシンセと組み合わせて使おうと思っている読者はそこは要チェックですよ。



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【第70回】「厚みや抜け感を簡単コントロール!”Doepfer / A-115 Audio Divider & A-163 Voltage Controlled Divider”」

現在ラックの組み直し作業をしていますが、楽しいようで難しい作業です。できるだけスッキリとパッチができるようにレイアウトしたいなとは思っていますが、なかなかそうもいきません。やっぱりオシレーター、フィルター、エンヴェロープは幾つあってもあればあるだけ使い勝手がありますね。とは言ってもスペースに限りもあるし、、、

Doepfer / A-115 Audio Divider

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と、レイアウトしなおしている際に再発見(?)して購入を決めたモジュールが Doepfer A-115 Audio Divider です。これだけあれこれ出ているモジュールの中でFrequency Dividerは実はそれほど選択肢がないんです。Clockを半分にしたり倍にしたりするClock Dividerは比較的多いですけどね。周波数を1/2、1/4、1/4、1/8、1/16に分割してくれる便利ものです。つまり一つのオシレーターに対して簡単にSub Bassを付加できるわけです。

機能が一発で理解できるビデオがこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=XWLhGBZWZ7w

インプットしたシグナルのそれぞれ、1オクターブ下、2オクターブ下、3オクターブ下、4オクターブ下の割合を各ノブで設定できます。一般のシンセサイザーのSub Bassが最初から搭載されていることは珍しくないですが、モジュラーシンセの場合は一般的には二つ目のオシレーターを1オクターブ下げたり2オクターブ下げたりしてSubassとしてパッチしますよね。そのためにCVをパラって二つの出力をミックスするモジュールとパッチが必要になりますから、やはりこういうAudio Divderはこの中でそれを完結できます。

「もう少し厚みが欲しい」「もう少し抜け感を出したい」なんて言う時もこのA-115は速攻で効きますね。

Doepfer / A-163 Voltage Controlled Divider

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上記の厚みを出す用途とは少し違いますが、同じくDoepferからA-163 Voltage Controlled Dividerというモジュールもリリースされています。トップパネルを見れば構成はすぐに把握できようなシンプルな作りですが、先ほどのA-115が分割数がフィックスだったのに対して、こちらは外部CVでコントロールすることができます。シーケンスの途中からCVコントロールで5度上を足したい〜みたいな時に使えますね。

最近は5万円前後もするオシレーターモジュールは珍しくないですが、オクターブ下を足したいがためにもう1つ買い足すわけにもなかなか行きませんからね。A-115もA-163もあると便利なモジュールです。

ジョイスティックやLFOからCVで周波数をコントロールしているビデオがこちらです。

https://www.youtube.com/watch?v=Er1MsKYtSRI



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【第71回】「極性の向きにはご注意を!モジュラーシンセ電源のお話」

連載が70回を超えてからこんな話を書くのもなんなのですが今週は電源の話です。

ラックの組み直しが一応終わりましたが、いまだに緊張するのが電源の向きですね。実は一度極性を間違ってモジュールを一つ壊したことがあるんです(汗)。

モジュラーシンセ以外の電子回路(例えばコンパクトエフェクターでも)電源極性のカラーリングと言えば基本的に赤がプラスで黒がマイナスじゃないですか?ですがモジュラーシンセの電源ケーブルは「赤がマイナス」。これが基本です。

上の画像がケース側の電源ソケットですが、一番下が-12Vになっていますよね?ここに電源ケーブルを差し込むとこういう状態になります。

この赤いラインが付いている方を-12Vに合わせるんですね。モジュラーシンセ用の電源もメーカーによっては僕が使っている pittsburg modular の電源のように差し込まれている電源の向きがどれか一つでも違うと各モジュールのLEDが点滅してそれを教えてくれるものもあります。

ケース側の表示の他にモジュール側の電源の表示があります。こちらはメーカーによってはどちらがマイナスか非常にわかりにくいものがあるんです(汗)。

モジュールって箱には入っていますが、基本「詳しいことはWEBで」というメーカーがほとんどなので、マニュアル等が一切入っていない場合が多いです。そういう場合はメーカーのサイトに製品の詳細がありますし、電源の向きがわかりにくいメーカーは特にWEBできちんと説明している場合がほとんどですので、「一か八か」ではなく必ず電源の向きを確認してからセットアップしましょう。

4msの電源ケーブル 10HPと16HPがあります

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それからモジュールとパワーソケットを繋ぐケーブルは3種類あります。電源側は多分ほとんど16HPのはずです(上記の写真と同じく端子の数が16個ですね)。僕が以前使っていた4msの電源付きケースだと最初から10HPと16HPのパワーソケットが用意されている場合もあります。ただ最近のモジュールに付属している電源ケーブルはパワーソケット側が16HPの場合が多いのでその10HPのソケット口があまって逆に16HPの口が足りない、、、なんてことがありました。

10HPの電源ケーブルを16HPのソケットに挿す場合は単純に赤表示のマイナスを合わせて差し込み、上の6つが余る状態で問題ないです。規格的にとにかくマイナス側を合わせれ動作する決まりになっています。問題になるとすれば16HPを10HPの電源ソケットには差し込めない場合ですね。電源側がとにかく16HPになっていればどんなモジュールを追加しても問題ないです。

モジュール側はというと、10HP、12HP、16HPと3種類あります(12HPは滅多にないと思いますが僕のモジュールの中では以前紹介したRABID ELEPHANT社のモジュールが12HPでした)。モジュールを購入すると電源ケーブルも同包されていると思いますがそれってだいたい短めなんですね。ケースを組んでいるとレイアウトしたいモジュール位置と電源のソケットの位置が離れていて届かず、おまけに長めの16HP-16HPケーブルが手元になかった、、、なんてことも今回の組み直しをしている時に実際にありました。ですから少し長めの電源ケーブルが余分にあるとなにかと便利ですよ。



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【第72回】「フィルターの効きが素晴らしい!AJH SYNTH社のTransistor Ladder Filterご紹介!」

AJH SYNTH / Transistor Ladder Filter

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新調したラックは組み上がったものの未だにミキサーモジュールを買い足そうかどうしようか悩んでいるんです。複数のモジュールをまとめて一つのフィルターやディレイにパッチする時にやっぱりミキサーモジュールがいくつかあったほうが良いですからね、、、

LAのモジュラーシンセの専門店に寄った時にみつけたのが今週紹介する、AJH SYNTH社のTransistor Ladder Filterです。

http://www.ajhsynth.com/VCF.html

もともとこのMIDI MODシリーズは元祖Mini Moogをモジューラーシンセで再現しようとしている製品ですので、フィルターの感じもすごいモーグっぽいんですね。Mini Moogのエディットしたことがある読者なら把握できると思いますが、Mini Moognサーキットって3つのオシレーターが中央のミキサーでまとめられて右手のフィルターに入っていきますよね?

このフィルターモジュールはその部分を1つのモジュールで再現しているんです。パネルの下段にIN1〜IN3が見えると思いますが、ここれがそのインプットで部分で、その上に各インプットの割合決めるノブがあります。ここはもちろんモジュラーシンセですから、外部からCV値でコントロールする事が可能です。

逆に元祖ミニムーグは外部LFO等でミキサー部分を操作する事はできません。

他のノブも見た通りなのですが、他の多くのフィルターがレゾナンスと表記している部分をMoog社にならってEMPHASISと表記していますね。

フィルターの効きはかなり素晴らしいです。ムーグのフィルターが好きな人にはかなりお勧めできます。僕はもともとミキサーモジュールを探していたのですが、このモジュールがあれば複数のオシレーター→ミキサー→フィルターというシグナルパスのミキサー部分をパスできるので、音の太さ的にも少し安心です。

AJH SYNTH / Transistor Core VCO

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過去の記事にも書きましたがミキサーのモジュール選びは本当に難しいです。多機能なものは使って楽しいのですが、音痩せるものが多いですからね。

実際に店頭でAJH社のオシレーター、3つのVintage Transistor Core VCOをこのフィルターに突っ込んでしばらくテストしてましたが、で音は本当に素晴らしいです。モジュラーシンセでアナログ感を追求している人には本当にお勧めです。このフィルターも良いのですが、このオシレーターも抜群に良かったですね。

特に新しい製品ではないのですが、どうして今まで気に留めなかったんだろ(笑)?もちろんミニムーグのパッチを真似する必要はないわけで手持ちのオシレーターをまとめてこの効きの良いフィルターに入れることができるのでバッチリですん。

というわけでAJH SYNTH社のTransistor Ladder Filterを即注文して帰ってきました。



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【第73回】「最近購入のミキサーをご紹介!2hp / Mix & SSF/MIXMODE」

モジュールが増えてくると必要になるのがミキサーですね。今週は僕が最近買い足したミキサーモジュールを紹介します。なんだかんだ結構悩むんですよね、ミキサーモジュール。ここで音が細くなるのは避けたいですが、かと言って悩みすぎても先に進まないですからね。

まずは一番シンプルなものから。2hp社のその名もずばり「Mix」です。

このメーカーは、その社名の由来の通りすべてのモジュールが2hpサイズなんです。値段も手頃でとりあえず基本性能を押さえたモジュールが一通り欲しいという時は良い選択肢だと思います。

2hpサイズの唯一の難点はモジュールの幅が狭いので、2hpの製品だけ密集してレイアウトするとノブの操作がしにくくなるという事でしょうか(笑)。それとラックに納める時もできるだけ上部にレイアウトしないとパッチケーブルが混み合ってくると視認性が悪くなります。

購入の決め手はずばりノイズの少なさですね。ノイズが乗る事自体は音楽的に悪い事だとは思いませんが、僕の用途はオーディオシグナルのミキシングだけではなく、CVシグナルをミックスする用途にも使いたいからでした。パネルは見た目通りで。下の4つのインプットに入ったシグナルを上の4つのノブで調整して、トップのアウトプットから出力すると。

そしてもう一つ、SSF(Steady State Fate)社のMIXMODEです。

Steady State Fate / MIXMODE

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こちらはクリーンなミキサーとは逆(?)でサチュレーション機能が付いているのが購入の決め手でした。さすがに幅が4hpなので先ほどの「Mix」よりも機能も少し増えますね。パネルの一番下に4outがありますが、ここについているスイッチでアッテネーターとミックスのモードの切り替えができます。

アッテネーターとは以前も説明したかもしれませんが、減衰機構のことで(カタイセツメイカナ)、コントロールCVの強さを弱めたりするために、例えばLFOでフィルターの効きをコントロールする際にその間に挟んで使用します。

MIXMODEをアッテネーターとして使う場合は4in 4outで機能します。信号のインバートもここで可能です。つまりLFOの波を逆さまにしたりできるんですね。僕の主な使用目的は4in 1ooutのミキサートしてですね。下の写真ようにリズム音源をこのミキサーでまとめて一つのシグナルとして出力したりしています。

こういうリズム音源をまとめる時「ちょっとあると便利」なサチュレーション機能もついています。これは「歪み」のちょっと手前くらいの効果でそれほど極端に歪みはしません。ただ簡単に音が少しファットになるので、リズム音源には向いているかなと思います。

MIXMODE組み込み例

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以上傾向の異なる2つのミキサーを紹介しました。入力されたオーディオレベルを外部CVでコントロールできるもう少し複雑なミキサーも存在しますよね(自ずとHP数も増えますが)。どこまでをモジュールラックの中でコントロールするかにもよりますが、まずは2hp等の「Mix」のようにシンプルなミキサーがいくつかあった方が取り回しはいいです。



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【第74回】「地味だけど便利なモジュール!アッテネーター解説!」

今週は地味な役割ではあるのですが、モジュールが増えてくるといずれ必要になるアッテネーターを紹介します。基本的にはパッチの途中途中でレベルの調整のために挟んで使います。ミキサーと何が違うのかというと、基本的には減衰方向でしか働きません。ミキサー系のモジュールは信号を増幅する事もできますが、アッテネーターの役割は基本減衰です。最近のアッテネータ・モジュールにはインバータースイッチが付いているので、シグナルの+、−を反転もできます。

実際の使用方法は、

1)ADSR(エンベロープ)モジュールからのシグナルをアッテネーター経由で、VCAにパッチします。これでADSRの変化の量をVCAでどれくらい効果を出すか決められるわけです。

2)LFOからのシグナルをアッテネーター経由でVCOやVCFにパッチします。これでLFOの変化の量をVCOやVCFでどの程度反映させるか調整できます。

3)ミキサーでもできる事なんですが、複数のオシレーターの出力を一つにまとめるとレベルがでかすぎて、その先のVCFモジュールで飽和して狙った通りの音が作れない、、、なんて事が頻繁にでてきます。そういう時も一度アッテネーターを通してゲインを下げた後にバランスを取ると良いです。

いくつか実際のモジュールを紹介します。

Intellijel社 / Triatt

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2hp社 / Trim

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すごい基本的な構成で、ABCの入力をCからサミングして出力もできるのでミキサーとしても使えます(上で説明した様に減衰側にしかコントロールできませんが)。

もうこれ以上ないくらいシンプルなアッテネーターですね。でもあれば使い道はいくらでもあるので、値段も手頃ですしなかなかいいと思います。

Make Noise社 / Math

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これはモジュラーの三種の神器の一つなので、既に持っている読者も多いと思います。2chと3chがシンプルなアッテネーターなので、一応ここに列挙しました。アッテネーターとしての機能以外に複雑な事が色々できます。僕はしばらくモジュール触ってないとMathsの使いかたをすぐに忘れます(汗)。 以上アッテネーターと言ってもシンプルなものから複雑なものまで色々ありますが、モジュールが増えてラックが2段以上になったらいずれ必要なモジュールです!



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【第75回】「パフォーマーには必須なモジュール!”スイッチ”解説」

今週は「スイッチ」というカテゴリーのモジュールを紹介します。パフォーマーには必須ですが、モジュラーシンセを完全に宅録でしか使わないユーザーは優先順位は低いと思いますが、一応知っておいて損はないでしょう。

こういうユーティリティー的なジャンルに強いのはやぱりユーロラックの本家、Doepfer社ですね。僕が持っているのはA-150とA-151なのでその二つを紹介します。

用途としては、シーケンサーからのCV値で二つのオシレーターを鳴らしたい、、、そしてそれらを同時ではなくて切り替えて使いたい場合につかいます。ちなみにスイッチ・モジュールを使わない方法としては、そのCVをパラって二つのオシレーターを予め鳴らしておき、コントロールド・ミキサーモジュールのミュート機能をさらに別のトリガーで切り替えて音色を切り替えるという方法も考えられますね。どちらが良いかは用途次第でしょうね。

Intellijel社 / Triatt

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A-150は、同じ機能を二つ搭載したモジュールです。パネル・レイアウトは2in1outなのですが、僕は1in2outで使っていますからどちらの用途でも使えますよ。使い方はものすごいシンプルです。2in1outの場合はI/O1、I/O2に入力されたシグナルをCVにトリガーが入力されたタイミングで切り替えてO/1から出力します。以上です!

2hp社 / Trim

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A-151は、A-150が2系統だったのに対して4系統仕様のモジュールです。これも双方向でシグナルをパスできますから1in4outでも、4in1outでも使用できます。こちらは一番下のトグルスイッチで2in1outから4in1outへとステップ数の切り替えに使います。「Res.In」はここにトリガーを入れてOutを1にリセットするための入力ですね。

シーケンスパターンを何度も繰り返して曲やパフォーマンスを構成する際に波形やフィルターをグリグリしながら時間を稼ぐ(?)わけですが、オシレーター&フィルターが1系統ではやはり限界がありますよね?そういう時にこのスイッチで別系統に切り替えて同じシーケンスパターンでさらに時間を稼ぐわけですね(笑)。最初に使うオシレーター&フィルターに予めこのスイッチをパッチしておいて、パフォーマンスしながら別系統のオシレーター&フィルターをその場でパッチして、準備ができたら「スイッチ」するという流れです。あると便利〜ですよ。



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【第76回】「Make Noise社より新サンプラーが登場!"Morphagene"紹介

先々週あたりからMake Noise社のMorphageneがデリバリーされ始めましたね。Youtubeで早速Morphageneを使った映像の投稿がいくつも見られます。LAでは先週辺りからディーラーに届き始めたようです。僕も注文していた分を今日ピックアップしてきました。店頭で試さずに購入を決めたモジュールはMorphageneが初めてじゃないかな〜

Make Noise社 / Morphagene

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基本的にはPhonogeneのステレオバージョンだと考えて間違いないです。1月のNAMMショーで見かけた時はてっきりPhonogeneのブラックパネルのバージョンをリリースしたのかと思ったほどです。Make Noiseはモジュールによってはパネルがブラックとシルバーのものがありますからね。SDカードから波形(とスプライシングマーカー)を読み込めるようになった事、入力には自動レベルコントロールがついたこと。サンプリングは87秒までできること、などがPhonogeneとの大きな違いです。

モジュールのカテゴリーとしてはサンプラーに属するのですが、考え方はPhonogeneと同じく「テープ」録音したものを速く再生したり遅く再生したり、スプライシングしたりしてサウンドメイキングするモジュールです。スプライシングという言葉に馴染みがない読者もいるかもしれませんが、アナログテープでレコーディングした時代はテープを切ったり貼ったりする事があったのですが、それをスプライシングと呼んでいたんです。MorphageneのSPLICEはそこから来ています。

録音されたテープをイメージしてもらうとこのモジュールを理解するのはそれほど難しくないのですが、現実的に6mmテープは勿論、カセットテープにも触った事のない読者も多いでしょうからそういう意味ではテープのイメージというものはどこまで共有できるんでしょうね(笑)。ま、とりあえずテープをイメージできる前提で話を進めますね!

左上からInput経由で入力されたシグナルがサンプリングされてバッファーに一時保存されます。中央上から二つめのVari Speed Bipolar Panel Control(正式名称、パネルにはそういう表記はないですが)を右に廻すとテープの再生スピードを上げた状態、つまりピッチが上がる。左に廻すと再生スピードを下げた状態になり、ピッチが下がります。これが一番基本の動作。

ここからさらに、先ほどテープをスプライシングするように、SPLICEボタンを使って、サンプルをチョップしていくわけです。そのスプライスしたポイントはORGANIZEノブで選択できます。勿論それは外部CVでコントロールできます。これはMake Noise社のマニュアルから持って来た画像です。下のリンク先の映像がわかりやすいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=DdG1s404eHc

さてスプライスした後はグリッチ効果を出すエディットをするわけですが、テープ編集を知らない世代は逆にグラニューラエフェクトは良く知っているんじゃないでしょうか?サンプル素材の一部分をループさせながらそのループの長さをどんどん短くしていったり、ループの切り出し範囲を微妙にずらしつつ再生させたり(モーフィング)してサウンドにバリエーションを作っていきます。スプライスした範囲を波形で確認できないのは心配な読者もいると思いますが、SPLICEの場所はSHIFT+SPLICEの動作でリムーブする事ができますから、何度でも文字通りカット&トライできますから大丈夫。

それからReaperユーザーには朗報です!ReaperのSplice MarkerをMorphageneは読み込む事が可能なので、より精確にMarkerを打ちたい人は波形を目で見ながらスプライシングする事ができますよ。



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映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼Facebook>>

【第77回】「ポータブルキーボードを再定義する多機能性!"Arturia / KEYSTEP"紹介

先週紹介したMake Noise社のMorphageneの続きをもう少し紹介したいところなんですが、「楽しい」と「難しい」が絶妙に同居したモジュールで、もう少し理解してからさらに解説しますね。同じくMake Noise社のMathsと組み合わせると相当面白いことができますね。

というわけで今日はArturia社からリリースされた、KEYSTEPを紹介します。Arturiaというとソフトシンセメーカーのイメージでしたが、ここ数年でハードウエアのラインナップがものすごい充実しましたね。僕もソフトシンセ全部入りのV Collectionは一応持っています(ハードシンセ好きなので実はそんなに出番はないんですw)。でもよく働いてくれるのは最近だとこのセミナーでも以前紹介したBeatStep Proか、Micro Bruteです。

BeatStep Proの製品詳細はこちら>>

Micro Bruteの製品詳細はこちら>>

BeatStep Proは2系統のCV/GATEのステップシーケンサーと、8つのドラム用のGATEアウトを持っているので、モジュラーシンセとすごく相性が良いです。MicroBruteも数は多くないのですが、基本的なCV/GATEのアウトは勿論、MOD MATRIXからパッチすれば自分のモジュールとパッチしてサウンドメイキングできますから、同社のMiniBruteよりもモジュラーとの相性はいいように思います。

そして今日紹介するKEYSTEPですが、CV/GATEのコントローラーになるのは当然として、このシーケンサーが良くできてるんですね。

KEYSTEPの製品詳細はこちら>>

CV/GATEとMODが付いて居るので、音程/長さ+もう一つのCV値で例えばフィルターをコントロールしたり、LFOの周期をPitchBendの右のModでコントロールできます。

KEYSTEPの接続例

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ステップシーケンサーとして使う場合はTapボタンが休符になるので、鍵盤を弾いてノートを入力、休符部分はTapボタンを押す、、、というやり方で作成していきます。Roland社のSH-101スタイルですね。勿論SYNCのイン/アウトもありますから、マスターでもスレーブとしても働いてくれます。

MIDIキーボードとして使う場合にはポリフォニックのシーケンサーとしても使えます。それとアルペジエーターの機能も付いてるので、DAWとモジュールの両刀使いの人にはかなり便利ですね。

KEYSTEPブラックバージョン

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BeatStep Proも同じくCV/GATEが付いてるシーケンサーですが、何が違うかというとBeatStep Proのシーケンサーはノブで音程を決めていくので、所謂元祖ムーグ社のステップシーケンサーやRoland社のSytem 100Mのステップシーケンサーに近いです。鍵盤を弾ける人でも一度このてのステップシーケンサーを使ってみてください。

良い意味で行き当たりばったりの要素が加味されるので、多分普段、自分からは出てこない発想の新鮮なフレーズがゲットできると思います。もしくは予めシーケンサーのフレーズが決まっていてパーフォマンスの途中でノートを変更しない場合はKEYSTEPの方が断然便利です。



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【第78回】「波形の形はこれで決まる!VCA解説!」

モジュラーの決まり文句に”You can never ever have enough VCA’s”という言葉があります。日本語だと「VCAは幾つあっても充分ということがない」という感じですね。僕もまず音作りの最初はオシレーターからVCA、そこからDAWというルーティングで最初にパッチします。

最近モジュラーシンセを始めた方のために簡単に説明すると、VCAとはVCO(オシレーター)から出力された波形を最終的にどういう「形」でオーディオ信号として出力するかを決める関所みたいな役割をしている所です。モジュラーシンセの場合、VCOからのオーディオ信号は基本的に「ダダ漏れ」になっているので、その信号を止めたり緩いアタックを付けたりリリースを長くするなど音量変化の「形」を整えてるやる関所が必要です。

実際にアタックの割合やリリースの長さを調整するのはADSRやEG(エンヴェロープ・ジェネレーター)というモジュールなんですが、そのADSRで形作ったエンヴェロープをどれくらいの割合(量)でオーディオ信号をコントロールするかを決めるのがVCAなんです。ですから、自分のモジュールの組み合わせに於いて、4系統のパス(音色別のシグナルのルートですね)を作ろうとしたら、単純計算すると最低4つのVCAが必要になります。

僕が最初に買ったVCAはDoepfer社のA-130 VCAです。非常にわかり易いタイプですね。

Doepfer社 / A-130 VCA/p>

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LINER(リニア)と書いてありますが、これは外部から入ってきたCVコントロールによってVCAの出力をリニアに出力する特性になっている、という意味です。一般的な鍵盤付きシンセのVCAは多分ほぼリニアなはずなので最初に買うのはリニアタイプのVCAの方が違和感がないと思います。それに対してExponential(エクスポネンシャル)というタイプもあります。モジュールのパネルにはEXPと略されている事が多いですね。これはdb値に対して出力を比例させるようになっているのですが、とにかく出力のカーブが違うと覚えてください。

VCAを音量変化のコントロールに使う以外に、DAWに於けるヴェロシティーのようにダイナミクスをコントロールさせる事もできます。その場合はVCAが二つ必要になります。もちろん音程のためのCV値以外にダイナミクス用のCV値も必要になります。

それからLFOをビブラートとして使う場合に弾き始めから少し遅れてビブラートをかけたい、そんな場合もLFOからの波形をVCAで一旦コントロール(つまりアタックを遅くして後からビLFOのかかり具合を時間軸で調整)してからオシレーターのCVに入力します。

このリンクはEurorackサイズのモジュラーシンセではないのですが、モジュールが大きいのでパッチの流れがわかりやすいと思います。ここでビブラート用に使っているLFOモジュールにはENVELOPEが既に付いていますが、このLFOのモジュールの中で既にVCAを使ってLFOのかかり具合を設定していると解釈してください。

https://www.youtube.com/watch?v=_sBBM0lmyGk

というわけで、”You can never ever have enough VCA’s”なんですね。最近はMutable Instruments社のVeilsや、Intellijel社のQuad VCAのように1つのモジュールに4つのVCAが入ってる製品も増えてきました。それぞれ単純にシグナルを混ぜるだけですが、ミキサー機能もついています。

Mutable Instruments社 / Veils

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Mutable Instruments社 / Quad VCA

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VCAは個体によって音質が違います。MIDIのベロシティ的なダイナミクスコントロールをしようとするとVCAを2個直列に繋ぐ場合もあります。そうするとシグナル的には若干劣化します。それを踏まえてだと思いますが、メーカーによっては少しパキっとした音質のVCAもあります(2HP社のVCA等)。その辺も頭に於いて店頭で実際に音を聞いて試してみてください。



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【第79回】「ユーロラックサイズ初、お勧め空間系のエフェクター"Erica Synths社 / Black Hole DSP"ご紹介!」

今週はErica Synths社のBlack Hole DSPを紹介します。ユーロラックサイズのモジュールで初めてお勧めできる空間系のエフェクターモジュールです!

Erica Synths / Black Hole DSP

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僕のメインのモジュールラックの中にはMake Noise社のERBE-VERBが常駐してまして、リバーブとして働いてくれています。それ以外のディレイやコーラス等に関してはなかなか気に入ったものがなくて、ラック外部でEventide社のH9やRoland社の古いテープエコーを使っています。音質的にはH9をとても気に入っているし、アルゴリズムを買い足せば空間系のプログラムがものすごく充実するし、H9の音色はモジュールシンセとすごくマッチするので、モジュールラックに納めなくても良いのならこれはこれでかなりお勧めです。初期のデジタルコーラスのためのアルゴリズムから派生したリバーブはピッチモジュレーションのパラメーターを持っているものが多く、そのリバーブの中のピッチの揺れがシンセと残響に揺れと厚みを足してくれるので相性が良いんですね。

とは言えやっぱり全部モジュールだけで組み上げたい気持ちも相変わらずあるので、Black Hole DSPを解説するわけですね。

Black Hole DSPの特徴としてまず最初にあげられるのがステレオインーステレオアウト仕様だということです。トップパネルを見てもらえればすぐに想像つきますが、外部CVで各パラメーターをコントロールできますからモジュール内のシーケンサー等から、例えばステレオディレイのLとRのタイムをそれぞれ別々に可変させたり、ディレイタイムと同時にローパスのフィルターのLFOのスピードを調整したり、、、ということができます。

ドライ/ウエットの割合もCVでコントロールできるので、2拍4拍のタイミングだけリバーブをかけたりというコントロールもできるわけですね。

コントロールできるパラメーター1&パラメーター2に関しては下の表をチェックしてみてください。

パラメーター1&パラメーター2

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コントロールの自由度だけではなく、Black Hole DSPの音質は結構しっかり厚い感じに仕上がっています。過去にも空間系のエフェクターモジュールはいくつかあったのですが、この残響の厚みに関してはなかなか満足できるものがありませんでしたが、Black Hoke DSPは空間系の定番になると思いますよ。

Erica SynthsのデモYoutubeがありますので一緒にチェックしてくださいね。

Erica Synths:Youtubeデモ

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【第80回】「不安定なピッチをささっと調整!Quantizer紹介!」

今週はQuantizerの解説をしてみます。簡単に仕組みを説明すると入力されたピッチCV値を疑似鍵盤や音楽的なスケールでクオンタイズして出力するモジュールですね。

Intellijel / μScale II

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Make Noise社のMaths等でアップダウンするCV信号(音階はなくただスイープ的上下するだけ)を作り、クオンターザー・モジュールへ入力します。仮にCメジャースケールを選択したとすると、近似値で該当する正確なノートとして出力してくれるわけですね。皆さんDAWを使っているでしょうから、よくあるオートチューン系のプラグインを想像してもらえばいいですね。よれよれのピッチのボーカルをオートチューン系のプラグインに入力すると設定したスケールの近似値に寄せてくれますよね?あれと同じイメージです。

僕が使っているのはIntellijel社のμScale IIです。

鍵盤のボタンを押すだけでノート選択できますから、鍵盤を演奏できる人は特に迷わずに操作できると思います。下記リンクのビデオをチェックしてもらえれば分かりやすいと思います。

INTELLIJEL uSCALE II TUTORIAL ~ Eurorack quantizer module

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このビデオの12:40過ぎからシフトを使ったハモリパートの出力の仕方を説明しています。このビデオではMathsの2番出力から単純なCVシグナルをμScale IIにパッチしています。ここでのMathsは単純にオシレーターの役割だと思ってもらって大丈夫です。

そして、二つのアウトの片方から設定したシフト値によるハモリをOUT Bから出力しているわけですね。SHIFTの入力がありますが、これは設定したスケール内でOUT Aに対してどれくらいのインターバルでOUT Bから出力するかを外部CVでコントールするためのインプットです。

もう一つ、日本で一番手に入りやすいモジュールの一つDoepfer社のA-156 クオンタイザーも紹介します。


Doepfer A156 Dual Quantizer Basics

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こちらは自分では持ってないのですが、クオンタイザーが2系統ついているモジュールです。上はスケール等は関係なくシンプルに12音階にクオンタイズしてくれます。どうしてこういうものが必要かというと、例えばアナログのステップシーケンサーを使った場合やピッチが不安定だったり可変幅が広くてマニュアルでピッチを調整しにくいCV値の後にさっさとクオンタイザーをかませた方が使いやすい場合があります。

それとモジュラーシンセの規格的にはCV電圧1V上がると1オクターブピッチが上がる事になっています。別のメーカーのVCOを使った場合、そのピッチの上がり方の関数に微妙にムラがある場合があるんです(僕はそれはモジュラー的で良いと思っていますが)。そういう時もこれでピッチを直すわけですね。A-156の下はスケールの切り替えスイッチが付いています。マイナーかメジャーかだけで十分な場合は、A-156も良い選択だと思います。

モジュラーシンセのパフォーマンス中にハープのようなフレーズが聞こえてくることがありますよね?あれはだいたい今週紹介したようなクオンタイザーを使っている場合が多いです。その短いハープ的なフレーズのためだけにシーケンサーを別途用意するのもなかなか大変ですからね。



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【第81回】「コードを鳴らせるドデカモジュールALM Busy Circuits社/Akemie’s Castleご紹介!」

今週は一つのモジュールでコードを鳴らせるモジュールを紹介します。ALM Busy CircuitsというメーカーのAkemie’s Castleです。新しい製品ではありませんが僕は最近入手しました。

リリースされたのは一昨年で、サウンドは知っていましたが、なにせ38HPというでかいモジュールなのでラックのスペースをかなり占有するのでずっと購入をためらっていたんです。僕の手持ちのモジュールの中ではIntellijel社Atlantisの40HPにつぐ2番目の大きさです。

ALM Busy Circuits / Akemie’s Castle

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読者の中でYAMAHAのDX7という元祖FMシンセサイザーに直接触れた事がある世代がどれくらいいるのかわかりませんが、そのYAMAHAのデッドストックのチップを使ったモジュールなんだそうです。そんなチップをどこからどの程度入手したんでしょうね?FM合成の基本は2つのオシレーターの掛け合わせによります。それぞれキャリアとモジュレーターと呼ばれます。詳しくは説明しませんが日本語のwikiがあるので参考までにチェックしてください。

https://ja.wikipedia.org/wiki/FM音源

一般的なアナログシンセサイザーが倍音減算方式と言って、もともと倍音が多い状態のサウンドにフィルターをかける事によってサウンドを作っていくのに対し、FM合成は比較的シンプルな波形を二つ掛け合わせる事で倍音を付加していきながらサウンドを作って行きます。ですからDX7の時もそうでしたが、予め最終的なサウンドをイメージするのは少々難しいです。DX7は6オペレーター搭載していましたが、アルゴリズムは32ありました。アルゴリズムとはオペレーターの掛け合わせの種類です。手前の波形で次の波形の倍音を刺激して行く事になるので、オペレーターを直列で接続するとかなり複雑なサウンドになります。

ちなみに僕はDX7の音色をゼロから作れるほどの境地に達することはできず、もっぱら一番近いサウンドイメージに近いプリセットからエディットするというやり方を取っていました(汗)。

Akemie’s Castleは4つのオペレーターを持っていますが、オペレーターの組み合わせのアルゴリズムは6つ。トップパネルを見ると構成は分かりやすいのですが、各オペーレターのパラメーターを調整しながら音色を作って行きます。DX7と大きく違うのは各オペレーターのパラメーターを同時に調整できるということですね。これは実はかなり楽しいです!DX7はエディター用のスライダーが1つしかなかったので、常にリアルタイムで可変させられるパラメーターは1つだけだったんです。それをAkemie’s Castleは外部CVを駆使すると絶えず4つのオペレーターを変化させることができます!

それにしてもやっぱり予め最終ゴールを想定してサウンドを作り上げるのはかなり難しいんです(笑)、正直いつも行き当たりばったりですね!

コード機能の説明にたどり着くまで長くなってしまいましたが、パネル上のChordというノブで、メジャー、マイナー、サス4、ドミナント7th、ディミニッシュ等ディチューン系まで含めて16通りのボイスの組み合わせを選べます。このコードをリアルタイムで可変させることでコード進行を組み立てて行く事ができます。Akemie’s Castleの一番の魅力はサウンドもそうですが、VCO Bというコード系のVCO Aとは別のオシレーターがあるんです。こちらでベースパート的な役割をさせて(もちろん出力は別にできます)パッチしていけるんでかなり楽しい事ができます!

ALM011 ‘Akemie’s Castle’ DEMO

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【第82回】「最大16ch出力を実現!"nw2s社/IO"ご紹介」

今週紹介するモジュールはロックオンではまだ購入できないと思いますが、日本でも需要があると思うので是非お店で扱って頂きたい!という気持ちも込めて(?)nw2s社のNW2S IOを紹介します。ハンダ付けに自信のある方はキットを通販で購入するという方法もありますよ〜

このモジュール、要はオーディオI/Oなんです。僕が普段音作りしている時はミキサーモジュールにまとめてそれをモニターしながら進めています。それらをDAWに録音する際はIntellijel社のμJackや、WMD社のPro Outputへモジュールからのシグナルを入力し、そこから+4dbのバランスアウトに変換してDAWのI/Oへ入力していました。僕のラックに入ってるモジュールの数だとだいたいそれで事足りたのですが、今、作業中の映画で結構モジュラーシンセを使っているので同時にDAWへ出力したいアウトプットが増えてどうしようかと考えていたんです。

Intellijel / μJack

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WMD / Pro Output

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少々脱線しますが、モジュラーシンセで作ったシーケンスパターンや、アナログモジュールで作ったリズムのパターンは、後日100%再現するのは不可能ですよね?映像系の仕事だとプロデューサーや監督のフィードバックを待つ必要があり、それまでモジュールのパッチを変えない、、、という事も不可能なので僕はLogic Xを使いそれらのパターンをApple Loopとして登録しておく、、、という方法を取っています。

どの程度の変更かにもよりますが、映像合わせのためにトラックの尺を変更したり、テンポを少し上げる程度であればそれで対応できます。

そのApple Loopを効率良く作るためにも多くのアウトプットをDAWのI/Oに入力する必要があるわけです。

NW2S / IO
(DAWからモジュールへ8つ&モジュールからDAWへ8つのIN/OUTタイプ)

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NW2S IOには2種類あります。どちらもIOとしての合計は16シグナルですが、モジュールからDAWへ16出力するタイプか、DAWからモジュールへ8つ&モジュールからDAWへ8つのIN/OUTタイプです。それぞれ用途によりますね。それからバランスアウトかアンバランスかも選択できるようになっています。上記のような用途ならバランスアウトのタイプを選んだ方が良いです。

アンバランスアウトのバージョンが何故あるかというと(多分)、バランスゲインにする際、ヘッドルームでの音色の変化を嫌う人がいるからじゃないかなと思います。これは好みですが、ゲインのマッチングの知識があまりないようならバランスタイプを選んだ方が良いと思います。それと通販の場合オプションで、このモジュールのトップパネルからの出力の他に裏から出力できる24インチのオスコネクターを追加する事ができます。これは例えば自分のラックケースの背面に自作で出力ポートを作成するような時に使います。

ラックの後ろからD-SUBケーブルで接続できちゃった方が確かに見栄えは良いですが、工作の難易度は各自のラックによりますね(笑)。


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【第83回】「DAWに取り込んだシグナルをApple Loopsとして保管の仕方」

先週モジュラーシンセで作ったサウンドをApple Loopsとして保管する話に少し触れたのですが、今週はその手順を説明をします。

僕は仕事の内容によってDAWを使い分けています。MIDIのモックアップをした後で生演奏のレコーディングをしても、もともと使っていたサンプル音源を生の弦やブラスに足してミックスすることが多いので、ワークフローの効率上ProToolsを使って楽曲を書き始めることが多いです。生録音したレコーディング素材にモックアップ素材を編集して合わせ込んで行く作業はやっぱりProToolsが一番効率が良いですから。

それからオーケストラ編成の割とマジな(?)モックアップが必要な場合はCubaseを使っています。そしてそれ以外にもLogic Xも結構頻繁に使っているんです。やっぱりApple Loopsを使うとモジュラーシンセやアナログシンセでトラックを作る際にすごい助かるんですよね。

モジュラーシンセの原稿を書いているくらいなので割とモジュラーシンセを使える人だと自分でも思ってはいますが、それでもしばらく時間が経ってからモジュラーシンセでもう一度同じ音を作るのはやっぱり無理ってもんです(汗)。映画の仕事でピクチャーロック(映像の尺やタイミングがフィックスになった状態)した後でも編集が変わったりする事は現実的にどうしてもあるんです。そういう時に少しだけテンポを変えたり同じシーケンス素材を別の曲に持って行ったりということが必要になります。

皆さんもご存知のように、Logic Xは自分の素材をApple Loopsとして登録することができます。

手順は簡単で、トラック上のオーディオリージョン(もちろんMIDIリージョンでもできます)をドラッグして右側のApple Loopsのウィンドウに持っていくだけです。そうするとタグを打つためのウィンドウが出て来ますから必要な情報をタグ付けします。

このような画面が出て来ますから素材に該当する楽器の詳細やエフェクトした音なのかドライ音なのか等をピックアップしていきます。それからスケールやジャンルも選択した方が良いと思います。僕は素材の名前にメインで使ったモジュール(だいたい使用したオシレーターモジュール)を含める事が多いです。


こうして置くと後から検索しやすくなります。それからもう1つ、Logic Xのトラックアイコンは昔はシステム上の所定のフォルダにTIFFという普段あまり使わないフォーマットにした画像を登録して置く必要がありましたが、現在はJPEGでもオッケーになっています。

「カスタム アイコン」という場所で好きなアイコンを登録して置く事ができます。僕は先ほどのタグ付けと同じような事なのですがオシレーターの画像をトラックアイコンとして選ぶ事が多いです。後から100%同じ音にならないにしても、せめて元素材のオシレーターが分かっていれば少しは助けになりますからね(笑)。

Logic XとApple Loopsを駆使すれば、少ないモジュールでもレイヤーして行きながらトラックメイキングできます。Logic X以外のDAWユーザーにこそ是非試していただきたいです!


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【第84回】「モジュラーシンセ、始めたいけど何から買う?」

今週は特定のモジュールについてではなく、最近頻繁に知人からモジュラーシンセについて良く相談される「何から買うか」について書いてみたいと思います。この連載もそこそこの回数を重ねてきましたが、既にある程度モジュールを所有している前提で話が進んでいる体をなして来たので少し初心者向けに話を戻してみましょう。

まず一番大事なケースについて。一番最初の選択は家の外に持ち出すか否か、です。僕が目撃したモジュラーシンセのパフォーマーで、ライブ会場の現地で真っさらな状態からパッチしている人というのは見たことがありません。家でそこそこ「仕込み」をしてから現地入りしています。理由はいくつかあると思いますが、オシレーターモジュールは完全アナログVCOのものもあるのでとにかく「チューニング」が肝なんですね。

現地でゼロからパッチして各VCOをチューニングしている時間をとるのはなかなか難しいと思います。ということはモバイル用のモジュラーケースはパッチケーブルを挿したまま蓋を閉める事ができる、というのが何よりも重要なんですね。各メーカーが発売しているモバイル用のケースの90%はパッチしたまま蓋を閉じる事ができます。逆に、一般的なモジュールラックの場合はパッチしたまま持ち運ぶとどこかにぶつけてパッチケーブルごと折れる可能性もあるし、実際僕がLAで目撃した例だと野外でパフォーマンス中に砂を含んだ突風が吹いてモジュールが砂をかぶったライブもあったので、そういう時に蓋が閉められるかどうかはかなり大事な要素です。東京でもモジュラーのライブが増えているようですが、もしそういう場所に持って行こうと計画しているならケースはモバイル専用のケースを選ぶべきです。

Intellijel / uMidi

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持ち歩かないのならできるだけ大きめのケースを買う、、、というのがお薦めなんですが(笑)、最初はどれくらいのケースを買ったらいいか検討がつかないですよね。どういう使い方をするかにもよるんですが、DAWと併用する場合はMIDIをモジュールにどういうフローで送るかがまず問題になります。Intellijel社のμMIDIはUSB接続ができて、ノート情報、ベロシティー、クロック、モジュレーションホイール、特定のCCなどを送る事ができるので、モジュール側で一つ一つサウンドを作ってDAWに戻したいユーザーには割とお薦めです。このモジュールが6HP(HPはラック内の大きさを表します)です。

ベロシティー等は必要ないので、もっとチャンネル数が欲しいユーザーには(MIDIケーブル接続ですが)Mutable Instruments社のYarnsは4ch分のMIDIトラック情報をモジュールに送る事ができます。こちらは12HP

Mutable Instruments / Yarns

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仮にYarnsを選んで4ch分のサウンドを同時に再生したいラックを組もうとすると、必然的にVCAも4ch分必要になります。サウンド的にクセがなくてお薦めなのが同じくMutable Instruments社のVeilsです。これだと4系統のシグナルフローのVCAとして働き、おまけにミキサー機能もあります。これが12HPですね。他社の4chVCAもだいたい12HPですね。

それからDAWのI/Oに戻すためにバランス出力にする必要がありますが、ミニマムなものでIntellijel社のμJackを使うと6HPです。

Mutable Instruments / Veils

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Intellijel / μJack

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あくまでもDAWとの連携を前提にしていますが、オシレーターやフィルターの前に最低でも上にあげたモジュールは必要になってきます。少なくとも12HPは必要ということですね。仮に小さめの84HP1列のケースから始めると、残り72HPという事になるので搭載する他のモジュールの選択がかなり難しくなってきます。というわけで最初は”最低でも”84HP2列のケースから始めることをお薦めします。来週もまたこの続きを書きます。


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【第85回】「オススメは1ROWから!Roland Euro Rack Case / SYR-E84」

先週2ROWのケースでモジュラーシンセをスタートした方がベターと書きました。しか〜し、モジュラーシンセを始めようという読者の参考にしやすいのはやはり1ROWからスタートの方が良いかなと考え直して、今週から「1ROWで買い揃える場合どこに注意したら良いか」を書いていきたいと思います。

まず、やっぱりケースが問題になります。今回はローランド社のSYR-E84をチョイスしました。理由は3つあります。まずはやはり信頼性。2つ目は電源ユニットがケースに内臓されている点。ラックマウントするタイプのパワーサプライだとそれ自体が4HPは占拠してしまいます。1ROWのスペースを全てサウンドメイキングに活用するためにも電源はケース側に付いている方がよいと思います。そして3つ目の理由は将来的に2ROWにスタックして拡張できるということですね。

ローランド社 SYR-E84
https://store.miroc.co.jp/product/38160

さてケース選びが終わったところで、非常に「使える」サイトを紹介します。

https://www.modulargrid.net/e/modules/home

モジュラーグリッドというサイトなのですが、アカウント登録して自分のケースの大きさを設定。それから組み込みたいモジュールを選ぶとレイアウトのシミュレーションができるんです。僕も時々使っています。今回のテーマのために下記リンクにお薦めモジュールをレイアウトしてみましたので、原稿と照らし合わせながらチェックしてみてください。

https://www.modulargrid.net/e/racks/view/467407

ROLAND / SYR-E84

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え〜今回のモジュール選びの趣旨は以下の3つです。

其の壱)鍵盤付きシンセではできない音作りができること。

其の弐)将来的にどれも使い続けられるモジュールであること

其の参)DAWと親和性が良い事。

其の弐の意味が最初は分かりにくいかも知れませんが、例えばスペースが小さいからと言って小さめのVCAを使うと音質にクセがあったり、CV入力のレスポンスの指数を変更できないものになってしまいます。小さいからと言って将来使えなくなるわけではないのですが、拡張する際に明らかに必要になるものは、最初から拡張性の高いものを購入する事をお薦めします。特にVCAはオシレーターの次に必要なものなのでなおさらです。

サウンドの方向性が定まっていれば1ROW内にセットを組むことは難しくないのですが、こういうセミナーなのである程度汎用性も考慮すると途端に組み合わせの難易度が上がってしまうんですよね。そこもモジュラーシンセの楽しいところなのですが。

とりあえず、DAWからのMIDI情報をCV/GATEに変換するモジュールにIntellijel社のμMIDIを選びました。先週はMutable社のYarnsを紹介しましたね。Yarnsだと確かに4ch分のMIDIを扱えるのですが、1ROWのスペースで4ch分のトラック情報をまかなうほどオシレーターを搭載できないので、今回は1ch分の受け渡し、というチョイスにしてみました。それからDAWに戻すには出力を+4dbのバランスアウトにする必要があるので同じくIntellijel社のμJackを選びました。

来週から(だいたい)この組み合わせで実際に音作りをしていきます。実際のサウンドも掲載できると思います。


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【第86回】「遊べる組み合わせを考える。メインオシレーター"Mutable社Braids"解説」

先週の続きで1Rowという限られたスペース(というかモジュール)であれこれ遊べる組み合わせを考えていきましょう。まず先週のセッティングをもう一度みてください。


モジュールの順番に決まりはないんですが、だいたい一般的なシンセのシグナルフローに照らし合わせて左から右にシグナルが流れていくほうが分かりやすいと思いますのでこういう並びにしてあります。一番左は先週も説明したintelligelのμMIDIですね。その右側にmultiが置いてあります。これはどのメーカーでも役割はほぼ同じなんですが、一番上に入力されたシグナルを3つ以上にパラアウトするために使います。μMIDIの隣に置いてある理由はDAWから出力されたピッチ情報やゲート情報を複数のモジュールに配するために使います。そのためにμMIDIのすぐ近くに置いているわけです。

そして今週はメインのオシレーターとしてMutable社のBraidsを何故チョイスしたかさらに解説します。デジタルのオシレーターではあるのですが、持っている波形はNI社のソフトシンセMassiveにも引けをとらない万能オシレーターです。あまりに使い勝手がよいので僕は二つ所有しています。

現在のファームウエアはver1.8ですが、約33種類の波形を内臓しつつTIMBREとCOLORを調整することで更にサウンドのバリエーションは増えます。

Mutable Braids / Sample1


※ 初回再生時の音量にご注意ください。

今回用意した音源Sample1を聞いてください。内部オプションの「META」をオンにして「FM」に入力したCV値によって波形を選べるセッティングにしてあります。今週の段階ではまだBraidsの右隣のKorgasmatron IIというフィルターは使用していません。BraidsのオーディオアウトをVCAに入力してRoland社の540でADSRエンベロープを整えてるだけです。途中でマニュアルでリリースの長さを調整しています。そしてMETAモードを使った波形の切り替えはμMIDI経由でDAWのベロシティー値でコントロールして、途中のサウンドの変化はDAW側のモジュレーションホイールの値を同じくμMIDI経由でTIMBREをCVコントロールしています。

1つのオシレーターのみ、フィルターがない状態でもこれ以上にバリエーションを作ることができます。ここにフィルターやモジューラーシンセ独特のADSRの使い方を加えていくとやはりソフトシンセではできない世界が広がります。

もちろんモジューラーシンセをサウンドデザインに使った方が一般的なハードシンセやDAW上のソフトシンセよりも大きなアドバンテージを得られることは確かなのですが、ベーシックに近い部分で何ができるかを紹介した方がモジューラーシンセを理解してもらいやすいかなと思い、このセミナーでは敢えてサウンドデザインにあまりよらない方向で解説して行こうと思っています。


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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼Facebook>>

【第87回】「素直な音で最初におすすめ!"Mutable社のVeils"解説!」

今週も先週の続きですので、1Rowのセットアップ例を参照しながら読んでくださいね。


先週まずはオシレーターを説明しました。その右手にはフィルターがあるのですが、モジュラーシンセの優先順位的には次はVCAなんです。この1Rowでは将来の拡張性も見越して4VCAを選んでみました。どの道シグナル・フローの数だけVCAは必要になりますから、特にモジュラーシンセを始めたての頃はチャンネル数が多い方が良いと思います。それと同時にモジュラーシンセで出音の要になるのがこのVCAなんです。同じVCAでもメーカーによってサウンドにかなり違いがあります。勿論サウンドなんてものは嗜好品ですから自分の好きなものを選べば良いと思いますが、僕が最初のVCAとしてMutable社のVeilsを選んだ理由はサウンドが非常に素直(キャラ付けをしない)なので誰にでもお勧めできるからです。それと最近の本当のマルチVCAのモジュールがそうなんですが、簡易ミキサー機能も付いています。

Mutable / Veils


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どういうことかというとモジュールのパネル右側にOUTが4チャンネル分見えますが、チャンネル上段から下段にサミングされる設計になっています。ですから、4インプットに全てシグナルが入ってそれをミックスしたい場合は4のOUTからだけ出力をとれば1~4のシグナルがサミングされて出力されるんです。モノラルアウトなのでPAN機能はできませんが、限られたスペースの中でシグナルをまとめられるというのはすごく便利なんですよ。先週紹介していない2HPサイズのオシレーターがありますが、それらもこのVCAにインプットすればミキサーモジュールを必要とせずに、先週紹介したBraidsとサミングできるわけですね。

それとVCAによっては付いていない機能でレスポンスのカーブを選ぶノブまたはスイッチが付いているものがあります(Veilsには付いています)。


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実際のシグナルフローではVCAをADSRやEG(エンヴェロープ・ジェネレーター)でコントロールしてダイナミクスの変化を決めて行くわけですね。アタックを遅くしたりとか、リリースを長くしたりとかですね。

そのADSRの反応の変化量のEXPONENTIALかLINEARかで選べるわけです。鍵盤付きシンセのイメージでVCA(ダイナミクスのコントロール)を動作させたいならリニアを選びます。では何故EXPONENTIALがあるのかというと、ここがモジュラーシンセのモジュラーシンセらしいところなんですが、鍵盤付きシンセと違ってVCAが「歪む」ということがモジュラーシンセの世界では「アリ」なんですよ!普通のシンセでそれをやったらアウトですよね(笑)。ADSRのアマウント量(変化量)の値を上げていったらシグナルが歪む~なんてことは、、、

モジュラーシンセはそこを積極的に音作りに活用できるんですね。このEXPONENTIALカーブの一番ポピュラーな使い方はここにTR-808系のドラムやベースのフレーズを突っ込んで歪ませることですね。これは僕も頻繁にやります。歪みの量はEXPONENTIALからLINEARのツマミを調整することで決められます。この歪みのキャラクターもメーカーによって味付けがかなり違いますので是非店頭で自分の耳でチェックしてみてください。


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【第88回】「Roland MC-4でCV/GATEをコントロール!東京遠征で使用する機材を一挙にご紹介!」

先週の続きを書く予定だったのですが、東京に戻ってレコーディングをする準備に時間がかかってしまい、フィルターモジュールの解説例の音源を作成できませんでしたのでまた脱線いたします、、、今回のレコーディングは秋に公開の映画なんですが情報公開できるタイミングになったら詳しいことはお知らせできると思います。

東京のレコーディングで使うのはモジュラーシンセのみ、、、です!映画のスコアを全曲モジュラーシンセだけで制作するわけにはいきませんでしたが、かなりの量のトラックをモジュラーシンセで作っています。今回はメインのモジュラーシンセを東京でお借りすることができましたので、僕がLAから持ち帰るモジュールはオシレーターが少ないセットアップです。

イメージ1

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このセット+以前このセミナーで紹介したRoland MC-4という4chのCV/GATEをコントロールできるシーケンサーを持参して来ました。

安西さんのMC-4の解説動画が分かりやすいです!

安西さんのMC-4解説動画

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基本CV/GATEのコントロールはこのMC-4で行いたいと思っていますが、スタジオに入ってからの万が一のMC-4のトラブルに備えMIDIトラックからCV/GATEを出力する準備もしています。

まず、"イメージ1"の右上1UのモジュールはμMIDI1UというDAWからのMIDI出力をUSB経由(またMIDIケーブル)でCV/GATEに変換できるモジュールです。一度に1chしか扱えませんが、MIDI CCもCV値とは別に出力できるのでかなり便利です。それから左しに以前このセミナーで紹介したMutable社のYarnsが見えます。これはMIDIケーブル経由で最大4ch分のCV/GATEを出力することができます。それかMIDIではやはり生成できないシーケンスパターンやリズムパターンのために、左上にIntellijel社のMetropolis。これは8ステップのシーケンサーで、この中でグライドの設定もゲートの長さの調整もリアルタイムでできてしまいます。

それから右下は、モジュラーシンセの三種の神器の1つと言われるMake Noise社のReneですね。こちらはいずれこのセミナーで解説したいなと思っていますが、4×4=16ステップのシーケンサーです。ただした1列だけ使うとか、横ではなくて縦に走らせるとか、XYの列を移動するタイミングを外部CVでコントロールできたり、トリッキーなスネークモード(この16のグリッドを渦巻き状にグルグル巡る)に瞬時に以降できたり等自分の発想を簡単に飛び越えることがあっという間にできるというチョー他力本願的とも言えるスーパーシーケンサーです(笑)。

Make Noise社のMathsは、やはりエンヴェロープから、変態LFO、クロックの親、左右のエンベロープをサイクルモードにして組み合わせるリズムトリガーと、これ1台で何でもできるので小さいHPではないのですがやはりラックにロードしないわけにはいきませんでした。

Manhattan Analog / CVP


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一つだけ日本では珍しいものを持参しましたので紹介します。Manhattan Analog社のCVP(Control Voltage Operator)です。

Manhattan Analog社・CVP WEBサイト

一番上のoffsetノブで入力されたCVをトランスポーズすることができます。そしてGlideのノブを使うことでポルタメントデータがないシーケンスパターンをローランド社のTB-303のようなAcid状態に変化させることができます。その他パッチの仕方によってはLFOのアマウント量をCVPでコントロールできます。小さくてシンプルですけど、「あると便利~」なモジュールですね!



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【第89回】「DIN SYNC同期でタイトなリズムを刻む!」

1ROW分のモジュールシステムの話を書く予定ですが、また脱線して緊急特集でRoland社のSBX-1の話をします。実は先週東京にモジュールを持ち帰って、Moog社の「タンス」で皆さんよくご存知の松武秀樹さんと一緒にレコーディングをしました。僕が持参したRoland社のMC-4からCV/GATEを出力して松武さんのMoog他数々のシンセを鳴らしながらレコーディングするという仕事か趣味か分からない楽しい時間でした。

松武さんと機材の打ち合わせをした際にAvid社ProToolsとMC-4やMC-202を同期させるためにRoland社のSBX-1を僕がLAから持って帰る手筈だったんですが、うっかり荷物に入れるのを忘れてしまったんです。結局は松武さんにRoland社のSBX-1と念の為の同じくRoland社のMPU-101を持参して頂いて事なきを得ました。

Rolank / SBX-1

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さて何故緊急特集かというと、SBX-1が荷物に入っていないことに気がついても「まあ東京で買えばいいか、こんなに便利な機材だからバックアップ用にもう1つあってもいいし、、、」なんて軽く考えていたんです。でも調べてみるとSBX-1は既に製造終了になっているんですね!以前にもSBX-1の事はこのセミナーで触れた事があるのですが、今週はもう少し詳しく説明します。

モジュラーシンセでCV/GATEに親しみを感じてくると80年代の機材も多分に気になってくるんじゃないかなと思います。それらの機材は上記のMC-4とMC-202を筆頭にTR-808、TR-909、TB-303等DIN SYNCで同期する機材がたくさんあるんですよね。そして今回スタジオで再確認しましたがやっぱりDIN SYNCで同期させるとMIDI同期よりもリズムがタイトなんですよ。DIN SYNCはMIDIのようなエクスクルーシブメッセージ等がない、ある意味ただのパルスなんで非常にシンプルなんですよね。リズムのタイトさはその辺からきてるのかなという気もしました。

Rolank / TR-808

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そんなDIN SYNCも使えて尚かつDAW側からMIDIノート情報をCV/GATEに変換できたりする超便利機材、それがRoland SBX-1なんです。それが製造中止になったという知らせは自称モジュールシンセ・エバンジェリストの僕としてはモジュールシステムとビンテージ機材から現代のエレクトロン社アナログリズム等DIN SYNC対応機種をつなぐブリッジがまた1つなくなってしまって非常に残念に思います。と言うわけで、

DIN SYNCの実践的な使い方を1つ紹介しますね。DIN SYNCは1拍24のパルス信号だと思ってください。MTCのように「〇〇小節目」という位置情報は含んでいません。ですから自分が操作したい機材例えばMC-4だとするとProToolsで曲を走らせている最中でも同期をやめたり、曲の途中から同期をかけたりできるんです。MC-4の場合はSyncのIn/Outの切り替えスイッチがあるので、それを使って同期信号に合流できます。

またはDIN用のケーブルを入れたり抜いたりするという必殺技(?)もあります(笑)今回のレコーディングでもMC-4に入力したフレーズを途中から録音したい場合、ProToolsからのMTCをSBX-1でDIN SYNCに変換→パンチインしたいセクションの直前、つまり該当小節の直前の拍の24分の1のタイミングでDIN SYNCと同期を開始させると小節頭からバッチリ同期させることができました。これはもう慣れというか練習ですね(笑)。

SBX-1はDIN SYNC同期に必要なタイムベースの変換さえもしてくれます。各社機材のタイムベースはリンク先のWikiを参考にしてください。PPQNというのが1拍あたりのタイムベースになっています。皆さんも市場からSBX-1が消える前に是非ゲットしてください!

https://en.wikipedia.org/wiki/DIN_sync


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【第90回】「エンベロープ・ジェネレーターはADSRタイプがオススメ!Roland/540」

さてやっと今週から1ROWのモジュールシステムの話の続きに戻ります。第87回でVCAについて説明しました。VCOからシグナルは以前説明したように実は電源を入れた直後から音がダダ漏れになっている状態で、CVでピッチをコントロールしないと音程もつかないし、サウンドを形作るEG(エンベロープ・ジェネレーター)がなければ楽器的な音量変化を作ることができません。


僕がこの1ROWシステム用に選んだEGはRoland社の540です。理由は初めて買うならADタイプ(アタックとディケイのみのEG)のEGよりもADSR(一般的なシンセと同じアタック→ディケイ→サスティン→リリース)の方が思い通りの音が作りやすいからです。

余談ですが、先週東京でムーグの「タンス」でおなじみの松武秀樹さんとスタジオでレコーディングをする機会がありました。松武さんが最初に扱ったEGはムーグ式(?)のADタイプだったので、後にプロフェット5等に搭載されているADSRタイプに触れた時に違和感があった、と仰っていました。僕は逆にプロフェット5に最初に馴染んでしまったので、その後ミニムーグに触った時にすごい違和感あったんでよすね(笑)。やっぱり慣れですね!

最初のEGに540をお勧めする理由は他にもあります。ADSRが二つ搭載されているということ!最近2HPスペースでADSRが1系統のEGモジュールもいくつかあるのですが、モジュラーシンセで音づくりしていくのならEGはどのみち2系統以上必要になります。今週はVCAに接続してシグナルの最終段のアンプコントロールのために使うパッチを紹介しますが、将来的にアンプのコントロールとは別に、フィルターのカットオフを時間軸的に外部からコントロールするパッチにも使えますし、ピッチの上下変化のためにもEGは使えます。それから今回のように1ROWという限られたスペースでも独立したLFOのモジュールが1つは欲しいところなんですが、ラックスペース的にはなかなか厳しいんです、、、540ならばシンプルではありますが、LFOも搭載されていますので(しかもディレイ付き)、まさに今回の企画にピッタリなEGモジュールですね。

このLFOもフィルターと組み合わせて音色の変化にも使えるのですが、ピッチCVと混ぜて例えばシンセリードにビブラートをかけたい~みたいな時に使えます。このディレイ機能は、トリガーされてからしばらく時間が経ってからLFOがかかり始める~ような時にとても有効です。

使い始めればすぐに慣れることではあるのですが、購入前にトップパネルだけ眺めていると上段のATTACKの真上にジャック口があるのでATTACKのアマウントを外部CVでコントロールできるのでは、、、と勘違いするかもしれませんが、このジャックはEG信号のアウトで波マークの左右2箇所から同じADSRを出力することができます。それと上段一番右はそのADSRのインバート(逆相)された信号を出力できます。スイッチでこの正相~逆相を切り替えできるEGモジュールは良くあるのですが、同時に両方出力できるモジュールって意外とないんですよ。

最後にもう一つお勧めポイント。それぞれのADSRの左側に赤いMANUALというボタンがあります。これも音を作っている時に非常に有効です。このボタンを押すと外部からのゲート入力を待たずにEGが出力されるんです。なのでシーケンサーやDAWを走らせずともADSRのニュアンスをこのMANUALボタンを押しながら音を作り込むことができるんです。なかなか良いEGモジュールですよ。



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【第91回】「一押しフィルター"Intellijel / Korgasmatron II"紹介!このフィルター○むんです!」

1ROWのモジュールシステム、今週はいよいよフィルターです。

1ROWモジュール

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Intellijel / Korgasmatron II

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フィルターも本当に色々なメーカーからリリースされていますが、とりあえず今回選んだのはIntellijel社のKorgasmatron IIです。コルガスマトロン、コルガスマトロン、コルガスマトロン、、、何回か唱えると言えるようになります、、、

キャラが強いフィルターで、コルグ社の名機MS-20のフィルターのクローンだと言われていますね。このフィルターを選んだ理由はもちろん僕がとても気に入ってるからです(笑)。鍵盤付シンセサイザーも同様ですが、フィルターにはレゾナンスを上げて行くと発振するタイプとしないタイプがあります。積極的に音作りする際は、発振させることでフィルターそのものをオシレーターとして使うことができたりDAWとの組み合わせでリズムループにフィルター処理 をしたりと使い方は様々あります。

さらにKorgasmatron IIは2系とのフィルターを搭載していますから、この1Rowの中に二つのオシレーターがあってもそれぞれ別々にフィルター処理をすることができます。Korgasmatron IIは6タイプのフィルターパターンを持っていますので、初めてのフィルターとしては申し分ないと思います。バンドパスフィルターがあると特に二つのオシレーターをパラレルで使用してフィルターで味付けする場合はかなり重宝をしますよ。片方のオシレーター&フィルターのサウンドに、さらに隠し味的にサウンドをレイヤーしてあげる際バンドパスフィルターはとても使いやすいです。

僕がこのフィルターを気に入っている理由の1つは、インプットの入力レベルを調整するノブを回して入力ゲインを上げていくと、、、歪むんですよ!リンク先のビデオを見てください。


3:53あたりから、入力ゲインを時計の12時方向から右へと上げていきます。フィルターのかかりが具合が相当だということが理解していただけるかと思います。5:50あたりが一番極端なサウンドの例ですね。Roland社のSH-101にも近い感じですね。

フィルターでこれだけサウンドに幅を持たせることができるが故に、例えば同じシーケンスパターンとこのKorgasmatronだけで結構長い時間パフォーマンスして「魅せる」ことができます。


またアウトプットに注目すると、OUTA&Bを独立して取り出す事もできますが、MIXして取り出す事もできます。つまりフィルターのかかり具合は別にしても、このKorgasmatron IIだけでミキサーの代わりが(2chだけですけど)できるんです。こういう小さいスペースでモジュールを組んでいく場合はこれだけでも実は結構助かるんです。別々のメーカーのフィルターを二つ搭載した場合はそれらをミックスしようとすれば必然的にミキサーのモジュールが別途必要になりますからね。その割合は左下OUT Aの右隣、XFADEへ外部CVを入力することでコントロールすることができます。


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【第92回】「1ROWのモジュールシステム、まとめ的なお話」

1ROWのモジュールシステム、今週はまとめ的なお話をします。

1ROWモジュール

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何週かに渡って1ROWというスペースで初めてのモジュールを組む話をしてきました。紹介していない残り4HP分くらいのスペースがありますが、最近2HPという名前のメーカーが2HPスペースのモジュールだけをリリースしています。

http://www.twohp.com/

また、Erica SynthsからPico seriesというやはり2HPスペースのモジュールをリリースしています。

http://ericasynths.lv/en/shop/eurorack-modules/by-series/pico-series/

残りのスペースはこれらのメーカーのモジュールをいくつかインストールするのも、海外通販での購入となってしまうかも知れませんが1ROWスペースを生かし切るには良い選択だと思います。

モジュールの組み込みについて少し補足します。特にこれからモジュラーシンセを始めてみようと思っている読者はモジュールの組み込みも初体験になるわけですよね?たまに知り合いにモジュラーシンセの裏ってどうなってるの?と聞かれることがありますが、どのモジュラーシンセも基本的には裏側は電源のケーブルが出ているだけで難しいことは何もないです。コントロール系もオーディオシグナル系も全て表側でパッチします。

一番初心者に気をつけて頂きたいのは電源の向きですね。そこを間違うと回路がショートする可能性大デス(汗)。ですから電源に関してはどのメーカーも「-12」という表示はハッキリとしてあり、なおかつどの電源用ケーブルにもマイナス側は赤い色で表示してあります。ま、それでも間違えて1つモジュールを壊してしまった経験があるので(涙)、とにかく皆さんも電源は気をつけてください。

組み込みの手順は以下の通りです。

1)電源ケーブルをケース側に接続する前にとり合えず一旦モジュールをケースに並べる。

2)その位置で電源ケーブルの長さが足りているかを確認する。1ROWくらいだと多分問題が出ることはないと思いますが、念のためにね!

3)とりあえずモジュールを並べて、各モジュールのネジ穴から受け側のネジ穴が見えることを確認する。日本国内で扱っているモジュールはそれほどテキトーな精度のパネルはないと思いますが、たまにハマりの悪いモジュールは実際にあるんです(汗)。そういう場合はモジュールの場所を入れ替えたり、例えばネジ穴が4箇所ある場合はモジュールに無理がかからないような位置でネジを2箇所のみでケースに取り付けるとなんとかなります(笑)。

4)ネジを締めていく。このネジの締め方なんですが、ギターのパーツや他の工作と違ってモジュラーシンセのネジは固く締めなくてぜ~ったい大丈夫です。特に持ち歩かない場合はネジが緩むことはそうそうないですし、軽めにしておいた方が後にモジュールの入れ替えをする時に楽です。特に1ROWケースの場合はモジュールの入れ替えの頻度が多くなりますからね。それと固く締めてネジ側がダメージを負うだけならまた良いでのですが、ケース側のネジ受はその多くがレールになっています。

ケース側のネジ受

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ですから受け側を痛めると交換する必要が出てくるかもしれませんし、モジュールのケースは多くの場合かなり分解しにくい作りになっていますからとにかくネジは固く締めすぎないでくださいね。


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【第93回】「12db or 24dbどちらがお好み?ローパスフィルターの話」

今週と来週はローパス・フィルター選びについて書いてみたいと思います。まずシンセサイザー初心者のために初歩から説明すると、シンセサイザーでフィルターと呼んでいる部分はDAWのEQと役割は同じです。DAWの場合は楽器やボーカルの様に既に「楽音」としてなっているサウンドの一部(または数カ所)を好みの音に”イコライジング”するために使いますよね?シンセのオシレーターの無垢なサウンドは基本的に全ての倍音がダダ漏れになっている状態なんです。ですからフィルターを使って要らない倍音を削ったり強調して「楽音」にするわけですね。

一般的なフィルターは12dbか24dbと呼ばれているんですが、これは1オクターブ上がると12db(または24db)ゲインが下がるという意味なんです。画像1を見てください。

画像1 / 24db

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画像2 / 12db

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これは24dbのフィルターをEQで再現した場合です。この時点ではまだレゾナンスは使っていない状態です。同じく画像2を見てください。これは12dbに設定した場合ですね。

24dbの方が角度が大きいですよね。シンセのフィルターとして使った場合は24dbの方が「フィルターの切れ味が良い」感じがするのはこの不必要な高域の倍音をバッサリと切れるからなんですね。モジュラーシンセのフィルターでもデジタル系のフィルターは24dbと12dbの切り替えが付いているものもありますよね。純アナログ系のフィルターは大概12dbか24dbのどちらかだと思います。

一番ポピュラーなフィルターは24dbです。逆に12dbのフィルターの代表選手と言えばオーバーハイムの往年のOB-8のフィルターが12dbなんです。良い意味でフィルターの切れがイマイチなので、オーバーハイムでパッドサウンドを作った時に”ザーッ”と広がる感じのパッドが作れるわけなんです。さらにカットしきれない倍音を含んでいますから、そこにコーラス等のエフェクトをかけるとまた更に良く効果が出て広がりが出るのでオーバーハイムのパッドサウンドが広く愛されて来たわけですね。

さて、基本のゲイン設定の次はレゾナンスですね。皆さんも経験あると思いますがレゾナンスのパラメーターやノブを上げて行くとサウンドにクセが付いて行きますよね?上の説明と同じくそれをEQで再現すると画像3のような状態になります。

フィルターの折り返し部分にピークが付いて持ち上がっていますよね?レゾナンスはこの折り返しの部分を”強調”しているんです。Moog社のシンセにはレゾナンスではなくてエンファシス(Emphasis)と書いてあるのはそれが理由で機能的にはレゾナンスと同じです。

DAW上のプラグインのEQでもオートメーションを使ってローパスEQのフリーケンシーを可変させることが出来ますのでその気になれば「フィルターっぽい」事はできます。でもこのレゾナンスに関してはシンセサイザーメーカーが各社独自の味付けをしています。フィルター自体の設計のセオリーもいくつかあって同じ24dbフィルターでも得られる結果は同じにはなりません。そこがシンセの楽しいところでモジュラーシンセでも段々フィルターモジュールが増えて行く理由なんです。来週は具体的なフィルターモジュールを紹介していきます。


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【第94回】「シンプルなオススメフィルターモジュールを紹介!」

先週シンセサイザーのフィルターの概要を説明しました。今週は具体的にモジュールをいくつかピックアップして説明していきます。

第91回でIntellijelのKorgasmatronを紹介しましたが、限られたスペース(1ROW)にインストールするために「多機能なのモジュール」という視点でKorgasmatronを選びました。先週&今週はフィルターの基本的な部分を説明したいので、もう少しシンプルなモジュールを紹介します。まず二つの24dbのローパスフィルターを比べてみます。

Doepfer A-122

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1つ目はDoepfer社 A-122、これはProphet-5と同じ回路を採用しているんですね。僕が最初にちゃんと覚えたアナログシンセが(所有していたわけではないですが)Prophet-5だったので、やっぱり馴染みが良いです。次に紹介するA-120よりもレゾナンスの発信も若干控えめなんですが、エグイフィルターばっかりあってもしょうがないし、サウンドの倍音を整えるという目的にはちょうどいい24dbフィルターだと思います。

Doepfer A-120

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2つ目は同じDoepfer社の A-120。こちらはMoog系のラダーフィルター型のローパスフィルターです。0:48からレゾナンスを上げた後にフィルターを開いていきますが、A-122とは明らかにキャラが違うのは分かると思います。倍音を整えるというよりは積極的に音作りに使うフィルターですね。A-122だとここまでジュビジュビ(?)鳴らないです。

Doepfer A-124 Wasp Filter

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同じDoepfer社から12dbのフィルターを紹介します。まず最近ずっと人気なのがこのA-124です。今回紹介するDoepfer社のフィルターの中では一番エグイかかり方がします。それでいてパラメーターが少ないので前記のKorgasmatronよりも扱いやすいと思います。


最後にもう一つDoepfer社の A-106。これも12dbフィルターです。まさにオーバーハイム系の音がしてますね。24dbと比べるとフィルターを閉じていっても”チリチリ”が少~し残りますよね?これが少しモジュレーションをかけたディレイやコーラスアルゴリズムを使ったリバーブ(レキシコンをシミュレートしたプラグインとか)と相性が良いんです。3:00以降はローパスではなくバンドバスのアウトのサウンドですが、上記のフィルターにはないSFチックな感じがありますよね?

Doepfer A-106-5

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Doepfer社はモジュラーシンセの老舗メーカーですので、こういった基本モジュールがちゃんと揃っています。最近の新しいブティックメーカーはDoepfer社と同じものを作ってもしょうがないのでどんどん新しい解釈でフィルター・モジュールを開発し、それが非常に刺激的なサウンドを作る源になっているのですが、時と場合によってはシンプルなフィルターの方が直感的に使いやすい場合も多いので、基本的なローパスフィルターはやっぱり手元にあった方が良いかなと思います。


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【第95回】「アドバンスドなエグイフィルターご紹介!」

先週まで比較的基本的な設計のフィルターを紹介しましたので、今週はアドバンスドなフィルターを紹介します。

intellijel / Korgasmatron II

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まずはこのセミナーで数回登場しているintellijel社のKorgasmatron II。Korg社の名機MS-20のフィルターを元にしつつ現代的にアレンジしたフィルターです。2ch仕様なので2つのシグナルパスにそれぞれの用途に合わせたセッティングもできるし、たすき掛けにしてエグイフィルターとしても使えます。

次は一昨年のNAMMショーで展示を始めたRossum Electro-Music社のMorpheus。そのNAMMで同社のDave Rossum氏からControl Forgeの説明を受けた時にあまりの難しさにしばらく敬遠してたんですが(汗)、このMorpheusフィルターは内部の組み合わせの数は多いもののグラフィック視覚的に理解を助けてくれることもあり扱いは難しくありません。音も結構太いんです。

Rossum Electro-Music / Morpheus

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Rossum Electro-Music / Morpheus

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Rossum Electro-Music / Evolution

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さらにあまり飛び道具的ではないのですが同社からリリースされているEvolutionもなかなか優れものです。最初にエンカウンターしたモジュールがControl Forgeだったので、すごいデジタル~な印象をこの会社に持っていたんですが、Dave Rossum氏はもともとは松武さんが所有しているE-muシテステム(Moogじゃない方のタンスね)の設計に携わっていた方なので、アナログは勿論相当なオーソリティーなのでありま~す。というわけで先週紹介したフィルターモジュールと比べたらツマミは多いこのEvolutionですが、触ってみると音楽的(感覚的)に使いやすくできています。

intellijel / Korgasmatron II

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次はLAではすごい人気のあるVerbos社のフィルターから、Brak Filter Processor。これは初心者向きではないので、最初にこのフィルターを買うのはお薦めしません(笑)。

正確な表現ではないのですが、特定の周波数帯をパスすることになるのでグラフィックEQとかボコーダーのバンドパスをイメージしてもらうと近いかな、、、その周波数帯が極端に狭いので使い方としてはこんなイメージになります。ドラムループにフィルターをかけてるのですが、音程がついて聞こえますよね?

Verbos / Brak Filter Processor

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ロックオンが今年のSuperboothからレポートしてる映像があるのでそれもチェックしてみてください。

Superboothレポート

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これらのフィルターは鍵盤付きシンセのフィルターとは守備範囲がかなり違うので、モジュラーシンセならではですね。


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瀬川 英史 プロフィール

映画「ビリギャル」「明烏」、ドラマ「心がポキっとね」、アニメ「うしおととら」、ドキュメンタリーNHKスペシャル「憎しみはこうして激化した〜戦争とプロパガンダ」「盗まれた最高機密 ~原爆・スパイ戦の真実~」の等の音楽を担当。2012年、フランスの国立映画祭 イエール·レ·パルミエにてフランス映画「Le dernier jour de l’hiver」で最高音楽賞受賞。▼Facebook>>

【第96回】「非現実的パーカッションサウンドを打ち鳴らす!"Intellijel / Plonk"ご紹介!」

Intellijel / PlonkNAMM
NAMMショーでの様子

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Intellijel社からPlonkという新しいモジュールがデリバリーされ始めたたようですね。Youtubeを検索してみたら、今年のNAMMショーで発表はされていたようでがす、ご存知のようにNAMMでは毎年のすごい数の新製品が発表されるので記憶にありませんでした(汗)。

Plonkはフィジカルモデリング原理を基にしてパーカッションサウンドを生成するモジュールですね。一緒に開発したのがApplied Acoustic Systemという会社で、既に数々のフィジカルモデリングのサウンドライブラリー(プラグイン)をリリースしています(モジュールのパネルの下方にAASと見えますね)。

https://www.applied-acoustics.com/

intellijel / Plonk

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トップパネルをみて早速つまずいたのが「EXCITER(エキサイター)」というボタンです。「エキサイター」と聞くと、埋もれがちなトラックにエフェクターやプラグインとしてかけて抜けを改善したり、サウンドに喝を入れたりする(?)イメージを持っていましたが、このPlonkではサウンドのアタック部分のことを指しているんです。サイトにはモデリングをマレット(含むスティック)で生成した部分とノイズ成分を合成して打楽器のサウンドを形成する~と書いてありますから。アタックの後の一般的なシンセサイザーで言うところのディケイやリリースに相当する部分をRESONATORと呼んでいて、時間軸に対してのアタック後の周波数やエンベロープの変化をエディットできるようになっています。マニュアルではRESONATORと記されていますが、モジュールのパネル上ではOBJECTというボタンを押して設定するんですね。

サンプリングではなくあくまでモデリングですけど、Kicks、Snares、Toms、Cymbals、Claps、Tablas、Congas等のパーカッションのサウンドをモデリング可能で、また音程付きのパーカッション、Marimba、Vibraphone等のモデリングもこれまた可能~と書いてあります。また下記のビデオでも確認できるようにPlonkはDuophonic、2ボイス仕様なので、キック&ハイハットやスネア&ハイハット、のようなコンビネーションが可能です。

Intellijel Plonk Sounds

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リズム音源のモジュールと言えば既にTiptop Audio社からTR-808や909系の音源、Erica Synth社からもサンプリング系のモジュールがリリースされています。このPlonkはそれ以外のモデリング由来の非現実的なパーカッションサウンドが守備範囲だと思います。コントロールもリアルタイムでリズムサウンドをどんどん変化させていくのに十分なパラメータを備えていますしね。ベロシティーはVEL入力からCV値で変化させられるので、CVを2系統マネージメントできるシーケンサーや、クロック同期できるLFOからパルス系(じゃなくてもいいですけど)のコントロールシグナルでリズム同期させながら変化させる事もできますね。


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【第97回】「空間/MOD/残響系エフェクトが凝縮!"Radikal Technologies / EFFEXX RT-1701"ご紹介!」

Radikal Technologies / Spectralis 2

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またすごいエフェクター系のモジュールがリリースされました(笑)。Radikal Technologies社という日本でも同社のAcceleratorやSpectralis 2が知られているメーカーです。

なにがスゴイってまずモジュールの名前が長いんですよね。EFFEXX RT-1701というのが正式名称です。カテゴリー的にはエフェクト系のモジュールですが、ここまでの機能を1つに詰め込んだモジュールは初めてみました。下記リンクは設計者のJorg Schaafさん自身が解説しているYoutubeです。。

Radikal Technologies / EFFEXX RT-1701

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ステレオディレイにフランジャーを加えてさらにリバーブを足していきます。パネル上部にFX1とFX2が見えますよね?このモジュールに2系統のディレイを搭載していますが、それぞれを別のタイムに設定できます。ディレイタイムはタップで設定。ディレイのカテゴリーとしてはテープ・シミュレーションの「ビンテージディレイ」、機能的にはビンテージディレイに近いですが、ディレイタイムを変更した時にテープのようなピッチ変化がない「テンポディレイ」、それからコーラス、ロータリーエフェクト、フェイザー、フランジャー、オクターブ上下のピッチシフト等がありますね。ロータリーエフェクトを持っているモジュールってありそうで意外と記憶にないですよね。

それにリバーブを加えることができ、フィルター(Stereo Post EQと書いてありますが)も搭載しています。ハイパス、ローパス、ピークフィルター、バンドパスと一般的なフィルター効果は全部ありますね。

それとパフォーマーに嬉しい8つのスナップショットがありますから、瞬時に別のセッティングが呼び出せるようです。それと面白そうなのは各スナップショットの設定から設定へとクロスフェードして移行できるようです。

パネルにも記載されていますがエフェクトの接続順、ルーティングは以下の通りです。FX1をディレイにしてリバーブをかけつつ、FXでフランジャー効果を加えながら操作していく〜なんてことができるようです。

Radikal Technologies / EFFEXX RT-1701
ルーティング

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アメリカで税込だと700ドルくらいになるので安いモジュールではないのですが定価を機能で割るとそれほど高いモジュールでもない気がします。ステレオ入出力仕様でディレイとリバーブを同時に使えるというだけでも同じようなモジュールは他にあまりないと思います。


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【第98回】「その場でレコーディング!?Alyseum / RECORD ご紹介!」

今週は今までになりカテゴリー(?)のモジュールです。各メーカー色々ニッチな所を考えてきますね~(笑)。

Alyseum社というメーカーのRECORDというモジュールです。

https://www.alyseum.com/record.html

名前からてっきりサンプラーかなと思ったんですが、その名前の通りこのモジュールにレコーディングするんですね。それもモジュラーシンセのパフォーマンスをここにレコーディングしてしまお~!という趣旨なんですね。

Alyseum / RECORD

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確かに3年前だったらディレイ&リバーブと言った空間系のモジュールもまだ数が限られていたし、ミキサー系のモジュールもパンニング付きのステレオミキサーモジュールもほとんどなかったので、モジュラーシンセからのアウトを一度外部のミキサーでまとめて、それをDAWに送ってバランスをとって空間系の処理をしてあげないとパフォーマンスを記録するという作業は簡単にはできませんでしたからね。

このRECORDは表パネルからマイクロSDカードを本体に差し込み、オーディオインから入ってきたステレオ(またはもちろんモノラルも行けます)ソースを、mp3、OGG、WAVのいずれかのフォーマットにて書き込みができるんですね。OGGはゲームの仕事に携わっていたりしないと馴染みがないと思いますが(僕も過去に自分の仕事で扱ったことはないフォーマットです)、低いビットレートでの音質が良いと言われているフォーマットらしいです。DAW系の僕らが扱うとしたら、今日現在はmp3かWAVで問題ないと思います。

RECORDはmp3は320kb/48khz、WAVは16bit/48khz、OGGは300kb/48khzのいずれかのフォーマットでレコーディングできます。

ステレオインから入力されたシグナルはそのままステレオアウトから出力されますから、モジュールの最終段にパッチしてしまえば、ワークフローはとてもシンプルですね。

僕の場合、シンセを使わない仕事の息抜きに(?)ボ~っとしながらモジュラーシンセでパッチして遊ぶことがあるんですが、そういう時にたまたまできたサウンドや特にシーケンサーで組んだフレーズをその場で即レコーディングしたいなと思うことがあるんです。でもDAWは既にお仕事の曲が立ち上がってるし、それを終了させてモジュラーシンセをレコーディングをDAWにレコーディングするっていうのもちょっとな、、、とそんな時にこのRECORDがあると結構便利だなと思います。

もう少しフロントパネルをチェックしましょう。一番上にPLAYとRECの入力が見えますが、ここは外部からGateシグナルを入れることで再生や録音をスタートさせるための入力です。それからTRACK#のカウンターが見えますが、99トラックまで管理できます。そのほかだいたい見た通りのなのでマニュアルがなくてもすぐに使えると思います。マニュアルに記載されているブロックダイアグラムもこんな感じです。

ブロックダイアグラム図

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マニュアルを読まないと使えない機能として、ボタンの組み合わせで2倍速や8倍速で再生したりリバース再生したり、再生のボリュームレベルを変更したりということもできます。

最後にこのモジュールはあくまでもオーディオシグナル用のレコーダーですので、CVやGATE信号を録音することは絶対にやめてください。電圧が高すぎてもれなく故障の原因になると思いますので、、、


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