音をクリエイトし、活躍している人をご紹介するコーナー「People of Sound」。このコーナーでは、制作者の人柄が、サウンドにどうつながっていくのかに注目。機材中心のレポートから少し離れ、楽しんでお読み下さい。

第32回目は、トラックメーカー/DJのtofubeatsさん。インターネットをキャリアの出発とし、ご自分の作品はもちろんのこと、加えて沢山のリミックスワークをメジャーフィールドで繰り広げる、今、一番ホットなクリエーター。People of Sound最年少、23歳ということもあり、彼の世代ならではの音楽観について大変興味があり、神戸のご自宅スタジオにお邪魔してお話を伺ってきました。

2014年10月7日取材

日本語ラップで目覚めたトラックメーキング
ELECTRIBE ES-1でスタート

Rock oN:この度はお時間頂きましてありがとうございます!tofubeatsさんの世代ならではの、音楽制作に関する環境や考え方についてとても興味があり、お会い出来るのを楽しみにしていました。まず、音楽に触れられた頃のお話をお伺いできますか?

tofubeats氏(以下 tofubeats):僕の父親ですが、大学時代、ヤマハでエレクトーンのデモンストレーターをやって、学費と生活費を稼いでいたんですよ。ジョー・サンプルの「Rainbow Seeker」を聞いたことがきっかけだったそうです。でも、色々あって就職を機にすっぱりと辞めたので、僕が物心つく頃には、もう、父はエレクトーンをやってなかったんです。小学生の頃、そんな父の勧めもあって、ピアノをやってみましたが、半年くらいで辞めちゃいました。中高大一貫の学校に通ったんですが、そこを選んだのは、親から強制されたんじゃなくて、自分から希望したんです。地元の学校に上がりたくないと思い、小5から中学受験のために結構勉強しました。小学生の時が一番勉強しました。最初は、弁護士になると思って入学したんですが、音楽やり始めたのでズルズルと、、(笑)

初めてm-floをテレビで見た時、父親に「これは誰なの?」と聞いて、CDを買ったのが小5の時です。2001年リリースのシングル「come again」です。ラップとの初邂逅はその時かもしれないです。小5〜6くらいの時によく聞いてたのが、中島美嘉さんのファーストアルバム「TRUE」、キック・ザ・カンクルーの「BEST ALBUM 2001-2003」、それと宇多田ヒカルさんの「First Love」ですね。「First Love」は今でもメチャ好きです。

Rock oN:今のトラックメーカーに繋がる音楽的ルーツは何ですか?

tofubeats:日本語ラップです。一番最初はブッダ・ブランド。ベストが出たのが中1の時です。それと、ニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンドがデビューしたのも中1の時。最初は聞き専でした。同じ中1の時、親にベースを買ってもらったんですが、練習するのが楽しくなく、1週間で辞めちゃって友達にあげたんです。親にすごく怒られましたが。それで、ヒップ・ホップをやりたいと思って調べてみたら、サンプラーが2万5千円くらいで買えることがわかったんです。「英検準2級に受かったらサンプラーを買ってくれ。」と親にお願いして、中2で合格して買ってもらったのがKORG ELECTRIBE ES-1です。以降、トラック作りを続け、サイトに音源をアップしてました。

Rock oN:J-POPのCDがすごくセールスをあげていた時期ですよね?

tofubeats:そうです。中1から意識的に音楽を聞き出したのですが、買うお金がないのでメインはレンタルです。中学の頃、お昼ご飯代に500円もらってたんですが、100円のパンと100円のジュースを買って、残りの300円を持ってTSUTAYAに行く、という感じでした。そんなひたむきな学生時代を送っていました。(笑)

Rock oN:いきなりトラックは作れたんですか?

tofubeats:はい、ELECTRIBE ES-1に最初からデモ曲が入ってて、サンプリングのやり方だけ分かったら、トラックは作れるようになってました。当時のデモが今でも残ってて、中学、高校の時に作った曲が今でもすぐにリコールできます。(今、iTuneで再生している)このトラックは当時、ES-1だけで作った曲ですが、もうすでに曲になってますよね。

Rock oN:ファイルで残せますからね。僕の世代はDATやカセットとかのテープメディアなので、デッキを手放したら再生できないんです。(笑) 大きい違いですね。。。

tofubeats: (他の曲を再生しながら)高1くらいになると、ちゃんと曲として成り立って、普通に聞けるレベル。

Rock oN:おー、本当ですね!!

tofubeats: この頃になると、サンプルネタを抜いてAKAI MPC1000でチョップするようになってます。この頃はMPCとmicroKORGも使ってました。この2台だけで作ったトラックをサウンドカードのSound Blaster経由で、自作のWindowsマシンに取り込んで、ネットにアップしてました

トラックメーキング、修行の舞台はネット

Rock oN:ネット上で反応は返ってきましたか?

tofubeats: 最初の頃は「クソみたいな曲だ。」みたいなことばかり言われてました。当時はmuzieや2チャンネルの掲示板ですね。ヒップ・ホップ交流掲示板に、「曲を作ろうスレ」みたいなのがあって、優しくアドバイスをくれる人もいますが、「ループがいけてない。」みたいにディスる人もいたり(笑)。トラックをアップしたら、誰かが勝手にラップを乗せて返してくれる、みたいなカルチャーもありました。僕には、いわゆる師匠がいないんですけど、MSNメッセンジャーを使って、デモ曲を送り合ってアドバイスし合ったり。その掲示板出身のトラックメーカーで活躍してる人が結構いるんですよ。

Rock oN:当時の回線状況はどんな感じでしたっけ?

tofubeats: 中1の頃は、mp3 96kbpsをモノラルでネットに上げてました。中2〜3の頃にピア・ツー・ピアが世の中に出てきましたが、アルバムを128KbpsでZipファイルにすると、だいたい30MBくらいになって、データのやり取りに24時間くらいかかってました。僕らの世代はそんな感じですね。

曲を作り始めの頃、自分で作った音楽を人に聞いてもらうことは大切なこと。人に聞いてもらい、共感してくれた時の嬉しさは今も昔も同じなはずですが、ネットでは顔の見えない不特定多数の人からのコメントが届く訳で、その真意や質を自分で判断し、切り分ける能力も鍛えられそうですね。曲ができたらネットにアップして、短時間でコメントが返ってくる。それはそれで、厳しいこと言われたらヘコンでしまいそうですが。。。

Rock oN:では、中高生の頃はひたすらトラックメーキングに没頭する生活だったんですね?

tofubeats:はい、中学に入ったら大学まで受験がないことは分ってたので、趣味を極めようと思ってました。同じ学校の同じ学年に2人、メジャーデビューして活躍してるミュージシャンがいるんですよ。Crossfaithというバンドのベースのヒロキくんは世界規模で活躍していて、ポスト・ハードコアバンド Fear, and loathing in Las Vegasも。

Rock oN:同じ学年から3人もメジャーデビュー。すごい確率ですね。

tofubeats:みんなやりたい事に没頭できる空気があって、厳しかったですけど、いい学校でした。僕はバレーボール部に入ってましたが、「早く家に帰ってトラック作りたいなぁ」と思いながら練習してました。

Rock oN:打ち込み音楽のどんなところに惹かれたんでしょうか?

tofubeats:機械で作ったグルーブに惹かれるんですが、考えてみたら、生まれてから聞いてる量が、生音の音楽より打ち込みの方が多いし、それが、僕にとって自然なんですよね。宇多田ヒカルも中島美嘉のファーストも打ち込みだったし。それは今更気付いたんですが。特にハウスですが、同じタイミングでずっと鳴ってるリズムにグルーブを感じます。パル・ジョイみたいなのを聞いて、いいなと思ってたのは、無音の部分も含めてグルーブを形成してますよね。そこが好きですね。

知名度をあげた「High School of Remix」とWIRE08出演

Rock oN:世の中にtofubeatsという名前が出るようになったきっかけは何ですか?

tofubeats:高3の時に、CD「High School of Remix」を自主でリリースして、人生初アナログを切りました。「High School of Remix」はJET SETとヴィレッジヴァンガード 下北沢店の2店でかなりの枚数が売れたんですが、このお金でDAW環境に移行したんです。自作WindowsマシンとAbleton Live6 Suiteを買いました。そして、WIRE08に出演したんです。


Rock oN:おー、WIRE08に出た経緯は?

tofubeats:このCDに入ってるトラックを聞いた某メジャーレコード会社の人から連絡が来て、その人経由でWIRE08のオーディションにデモを出してくれたんです。僕はそれまでテクノは作ったことがなくて、それをきっかけにテクノを作りはじめました。後になって知りましたが、有名アーティストのブートリミックスをネットに上げてアクセスを稼ぐ、みたいなことをやってたんですが、そのレコード会社の人も僕のトラックをチェックしてたそうです。WIREにはオーディションを通って、3組だけ若手が出れる枠に出演しました。

Rock oN:どこかに才能はないかと、常にチェックされていたということですね。ギャラをもらってトラックを作る、初めての仕事としてのトラック作りは?

tofubeats:高3の時に、ピコピコ系コンピCDのイントロジングル作成でした。その後、曲としては、CHIX CHICKSというアイドルグループのリミックスが最初でした。お金をもらうようになると、一定の責任が生じるので、そういった意味からDAW環境に移ったというのもあります。権利問題が絡んでくるので、サンプリングなしに作らなきゃいけないパターンが出てくるからです。以降、沢山のリミックスの依頼を頂くようになりました。

Rock oN:本当に沢山のリミックスやられてますよね。

tofubeats:自分でもよく把握しきれてないという、、、(笑) メガミックスの仕事も多かったですね。Zになる前のももいろクローバーやアイドリングのライブ会場で流すメガミックスとか。高校生にとってみたらいいお金になったので、学生バイトと考えると、結構よかったですね。WIRE08出演以降、某レコードメーカーの育成部門に大学卒業まで在籍してたんですが、その間、メジャーデビューには3回失敗してるんです。僕みたいに「音源をフリーで配りまくるアーティストは無理。」みたいなことだったようで。(笑) 大学卒業できることになって、就職内定も決まってたんですが、その後、ワーナーからデビューすることが決まったんです。

Rock oN:どこに内定してたんですか?

tofubeats:都内の制作会社です。とあるクラブで「就職しようと思ってて、」みたいな事を話したら「ウチに来なよ。」と言ってもらって。でもその後、胃潰瘍になって倒れてしまいました。それで「人生最後のCDでも作ろうかな。」と思ってファーストアルバム「Lost Decade」を作ったんです。自費で300万くらいかけて作って、原盤は自分で持ち、ワーナーさんに流通してもらいました。このCDに入ってる「水星」がすごく売れ、大学2年の時にアナログを切ったんですが、それがその年に一番売れたアナログレコードになったんです。で、その後、ワーナーからメジャーデビュー出来て、今に至る。みたいな感じです。(笑)

Rock oN:人生の分かれ道、激動の時期ですね! プロとしてお金をもらうようになると、意識は変わりました?

tofubeats:自分の作品と並行して別のこともやってる、という感じですね。今でもSound Cloudでタダで配っちゃう曲もあれば、仕事として受ける曲もやる、みたいな感じです。メジャー志向がある訳でもなければ、逆にインディー志向がある訳でもないので、どっちもやってるから面白い、という感じです。アシッドハウスを作りながら、J-POPも作るのって面白いじゃないですか。

tofubeatsのリミックス流儀とは?

Rock oN:リミックスする時って、自分のスタイルみたいなものはありますか?

tofubeats:アイドルのリミックスが多いので、原曲のボーカルをキープした上で、崩すようにしてます。本人達の声を全く使わない、みたいなことは絶対しませんし、ファンの人たちが、ちゃんと原曲を踏まえて聞いてくれるものを作っています。あと、Aメロ〜Bメロ〜サビの構成はいじらない、ということですね。その隙間に自分のアイデアを入れて行く、という感じです。メンバーの子達のカワイサはそのままに、カワイサの方向を変えてあげる、という感じでしょうか。あくまで、ファンの人たちが聞いてくれる曲、という前提を意識してます。

Rock oN:現在の制作環境について教えて下さい。

tofubeats:DAWはAbleton Live 9です。多くの作業はLiveで行います。Pro Tools 10もありますが、データの受け渡しやセルフマスタリングする時に使っています。ソフトインスツルメンツで一番使うのは、Togu Audio Line Tal-BassLineというフリーのソフトで主にリードに使います。SH-101のモデリングなんですが、クソみたいに最高ですね。オールインワン音源では、MOTU MachFiveもよく使います。MachFiveは同世代のトラックメーカーの音と被りにくい、ということもありますね。MachFiveのピアノやパーカッションは結構使います。

プラグインはWAVESのAPI Collection、PSP Vintage Warmer、fuzz filter Pro-Qがよく使うプラグインですね。セルフでマスタリングする時は、UAD-2のA800やiZotope OzoneのEQ部分を使います。

Rock oN:ソフトウェアとハードウェアの割合はどれくらいですか?

tofubeats:ソフト8、ハード2くらいですね。アクセントとしてハードウェアの音を使う感じが多いですね。(今再生してる)この曲の途中に入ってるパーカッションは、KORG ELECTRIBE ESX-1から出してますが、Liveとシンクしてる訳でなく、マニュアルでELECTRIBEのシーケンスを鳴らしながら、Liveにオーディオ化してるんですよ。ジャストな感じがなくなって、気合いを入れてく感じで、トラック中のいいアクセントになるんです。こういう使い方もよくやります。

KORG ELECTRIBE ESX-1はTubeの歪みも好きですし、内蔵のディレイがすごくいいですね。ガンガンかけてもピーキーにならない。KROMEやMS-20やLegacy Collectionも使ってますし、KORGの出音のが好きなんです。ELECTRIBEの新型は期待してますね。

10月2日発売「FirSt Album」豪華なゲストをフィーチャー!!

Rock oN:今回、10月2日にリリースされたばかりの「FirSt Album」ですが、トラックダウンは?

tofubeats:外スタジオで、立ち会いの元やった1曲だけを除いて、全部自分でこの部屋でやりました。マスタリングはサイデラマスタリングの森崎さんです。森崎さんにお願いすると、すごくタイトになっていいですよね。リリースを厳密に追い込んでくれます。僕はスピーカーでやらずに、99%ヘッドフォン完結なんですよ。SONY MDR-CD900STを高3の時からずっと使ってます。今は、これしか信頼していない。

Rock oN:えぇ、そうなんですか!

tofubeats:僕はヘッドフォンしながらめっちゃ踊って作ってるんですよ。ヘッドフォンだったら位相も変わらないし。ハイエンドな環境でモニタリングすると、ユーザーの環境と離れちゃうから、スタジオでラージで鳴らすのが嫌いなんです。マスタリング・スタジオに行っても、僕はDATなどのヘッドフォンアウトにCD900STを挿して聞いてます。スタジオの人に「ラージ使わないんですか?」とか、言われたりして。

マスタリングが終わって、マスター音源をもらった後、まずはマスターのままチェックしますが、その次はiTunesでmp3に変換してiPnoneでチェックします。

Rock oN:今のリスナーと近い環境でチェッックする、ということですね?

tofubeats:そうです。僕はmp3を聞いて育ってきたし、320kbpsで聞ける今の環境がありがたい、と思うほどなんです。ネットにアップを始めた頃は、回線速度の制限で96kbpsのモノラルだった訳ですし。

それでこそ今はプロとして音楽をやってるので、ケーブルの違いやハイレゾにも興味ありますが、音楽を始めた頃はmp3の320kbpsと96kbpsの違いさえ分らなかったくらいの耳ですから、、、そういった経緯があるので、今の若いリスナーが音楽を聞くにあたって、スマホ環境で満足してる気持ちもよく解る世代なんです。今の若い世代は、スピーカーで音楽を聞けないのが普通の環境だし、僕がやってる音楽はポップスなので、聞いてくれるお客さんを第1に考えなければいけないですし。あと、ハイレゾはデーター量的にまだ共感ができない部分があります。加えて、僕の場合は、48kHz/24bitで、まだまだ音を良くする余地があると思ってます。

ヘッドフォンを中心にしたモニタリング、ラージが嫌い、というtofubeteatsさんの意見。mp3が基準のスタートになった彼の世代ならではの素直な感じ方だと思います。この辺りは、世代によって意見が分かれてしまうかもしれませんね。「ユーザーの環境に近い状態でモニタリングしたい。」という考え方は、今の音楽を聞く環境を状況を冷静に把握した、極めて現実的な結論かもしれません。

Rock oN:モニタースピーカーはEve Audio SC205ですね。選んだ理由は?

tofubeats:さっき言ったように、CD900STの音が好きなんで、同傾向のEve Audio SC205にしました。買う時に色々比較して試聴したんですが、Eve Audioはレスポンスが早く、デジタル音楽との相性がいいですね。設定でLoを0.5dBほど上げてます。

Rock oN: SC205にしてから、仕上がりは変わりましたか?

tofubeats:はい、全然変わりました。Eve Audioは打ち込みをやってる人にぴったりでしょうね。ホワイトノイズを出すにしても、目の前で「シャーン」と、しっかり明瞭に鳴るし。僕はハイハットの打ち込みを詰めるのが好きなんですけど、Eve Audioの立ち上がりの早さは向いてますね。

Rock oN:大きいスタジオで制作したい、という思いはありますか?

tofubeats:う〜ん、でも、そんなこと言ってる時代でもないですし。この部屋をどういう風にアップグレードしてくかが当面の課題ですね。ハードウェアの機材はこれから増やして行こうと思っていて、年末にDRAWMER、AMEK、DANGEROUS MUSIC等のハードをマウントしたラックを、スタジオに設置する予定です。

(「FirSt Album」M-7 CAND¥¥¥LAND feat.KIZを再生しながら)

Rock oN:おっ、これはパラパラ?

tofubeats:はい、ずっと僕、パラパラやりたくって、このシンセリード作るのに2年かかったんですよ。で、パラパラから、今っぽい曲(M-8 朝が来るまで終わることの無いダンスを(Album Version))に繋いでいく展開を2年前からやりたくて、今回やっと実現することができました。

Rock oN:「FirSt Album」にフィーチャリングしてるシンガーのセレクションはご自分で?

tofubeats:シンプルに自分の好きな人を選んだという感じです。正攻法で、自分で一人一人お願いしに行きましたよ。okadadaと自分の歌はこの部屋のアビテックスの中で録り、それ以外の方々の歌入れは、スタジオまで行って全員立ち会わせて頂きました。アイドルの仕事も多いので、ボーカルディレクションは自分でやりますが、基本的にその人の方向性を尊重します。ただ、藤井隆さんは、ディレクションして欲しいタイプの人でした。歌心に溢れ、すごく上手かったですよ。

地元 神戸で音楽をすることに対する思い

Rock oN:こうやってメジャーからリリースをされている訳ですが、地元の神戸で音楽をすること対する意識はどうですか?

tofubeats:インターネットで繋がってるので特別ないですよ。住んでる場所に関係なく、ネットで知り合った友達の方が仲いいし。もちろん神戸にも友達はいますけど。

Rock oN:住む場所を東京に移すことは考えたりしないですか?

tofubeats: 東京の方が友達が多いので便利かもしれないですけど、こっちが家賃も安いし、住環境としては最高だし、神戸で大学生しててもYUKIさんみたいなアーティストのリミックスも出来た訳だから、東京に移る必要はないですね。正直、そんなこと考えたこともなく、人に「上京しないんですか?」と言われて「そんな選択肢もあるんだ。」と気付いたくらいなんです。僕にとっては、音楽を作ってお金をもらってることが異常事態であって、そのことをちゃんと感じるために、東京でストレスを抱えて生きるよりも、神戸で自分のペースで生活したいと思います。それに、東京には、なんでも褒めすぎる空気があって苦手なんですよ。

Rock oN: (笑)。それはどういうことですか?

tofubeats:東京へは、高校の時から毎月DJしに行ってるんですが、特に僕みたいな若手に対して、大した事なくても褒めるカルチャーがありすぎて苦手なんです。大して良くないアーティストを持ち上げて、売れるように仕向けたりする人がいたり。

僕が所属してたマルチネレコードの20代前半のクリエーターは、ネットを舞台に、お金とか関係なく、ピュアな気持ちでずっと音楽を作ってたんです。でもある時から、それまでと同じ事やってるだけなのにお金をもらえるようになり、ラッキーな世代とも言えますが。ネットから音楽を始められたおかげで、「音楽を作りたい。」という気持ちの本質的な部分を経験できたと思っています。だから冷静に、人の評価と自分の本当の実力を切り分けて判断しなければいけないと思ってます。

Rock oN: メジャーから出す意義は感じてたりしてます?

tofubeats:それはありますよ!! だって今回のアルバムで森高千里さんとのコラボはメジャーの環境だから出来た事ですし。上の世代の著名なクリエーターの方々とお話できたり、一緒にお仕事できる機会を持てたり。こういったことは、メジャーでないと経験できないことです。メジャーとインディー、両方に長所/短所はありますが、天秤にかけて判断するためには、両方を経験してから言えることだと思います。

Rock oN: では、海外と国内の違いはどうですか?

tofubeats:今、海外でも国内でも、みんな使ってるツールは同じで、SoundCloud、Bandcamp、Twitterなんですよ。だから環境にそんな差はない。それに、SoundCloudから流れてくるのは、洋楽と言ってもそれがアメリカなのかヨーロッパなのか分んないまま、みんな聞いてるし、トラック作ってるクリエーターも、わざわざ自分の国籍を明かすこともなかったりして。僕のSoundCloudの再生数の3分の1はアメリカです。だから海外の人も、結構J-POPの曲を聞いてくれてると思います。正直、洋楽/邦楽の区別って意識してないですね。

Rock oN: 今後のご予定をお聞かせ下さい。

tofubeats:音楽やってて「仮に3ヶ月楽しくなかったら今後を相談しよう。」とマネージャーに話してるんですが、今迄の所、楽しくやってます。希望としては、死ぬまで楽しく音楽をやれればいいですね。音楽しか好きな事無いですし。なおかつ、好きな事でお金がもらえれば機材も買えるし。その上で、自分の音楽が世の中に広まってくれればいいなと思います。その他の今後の情報は公式サイトチェック、ということで。(笑)

Rock oN: 最後の質問ですが、tofubeatsさんにとって音楽とはなんでしょうか?

tofubeats:たった1つの大事な趣味、ですね。




私もそうですが、ある世代以上では、アナログ > PCM > mp3といった情報量大小の順で、音質のヒエラルキーを当然のように認識しています。しかし、tofubeatsさんの場合はそれが当てはまらない。「当初、mp3 96kbpsだったが、320kbpsで聞ける今の環境さえありがたい。」という意見は、当時の回線の太さの発展状況に沿う実体験に支えられた自然な考え方。これを、単なる世代論にすり替えて、答えを出してしまうのは全く軽率ではないでしょうか。

音楽は自由であるべきという真摯な思いを優先するtofubeatsさんですが、一方、リスナーのリスニング環境の現実を冷静に見つめた意義ある意見でもあると思います。今のJ-POPシーンの一端を担いつつある、才能あるクリエーターの感性から出される意見として、とても興味深い話を伺う事が出来たインタビューになりました。


ROCK ON PRO、Rock oN Companyがお手伝いさせていただいております!

Pro Tools HD、VENUEシステムをはじめ、ROCK ON PROでは業務用スタジオから、個人の制作環境を整えたい方まで様々なレンジに幅広く対応致します。専任スタッフが、豊富な納品実績のノウハウをもとに機材選定から設計/施行、アフターケアにいたるまで全て承ります。また、レコーディング機材をはじめ、楽器のご購入や中古商品、機材買い取りのご相談はRock oN Company渋谷店へお気軽にお問い合わせ下さい!