William Files氏 インタービュー 「STAR WARS フォースの覚醒」はどのように作られたのか


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(※本記事はInterBEE2015 2Dayレポート記事を転載しています)

InterBEE2015で最大の注目を集めたセッションがAVIDブースで開催された『海外ゲスト:映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』におけるPro Tools | S6によるミキシング』。前後左右の通路がうめつくされる程のその注目度は作品の持つ魅力ももちろんですが、常に音響へのチャレンジが行われるその作品へのアプローチへの期待の高さではないでしょうか。

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ブースでの熱気あるセッションの模様は、”Rock oN InterBEE 2015 Show Report“で動画付きで公開されています。会場へお越しになれなかった方もこちらをご覧になれば、その制作秘話が包み隠さず公開されていることを確認できることでしょう。本編に関しては、ファイナルダビング前ということも有り、トレーラーでの素材の持ち込みとなっていますがそのサウンドメイクのコンセプト、テクニックは十分に伝わるものとなっている。

それでは、個別インタビューで明らかになった様々な制作秘話、そしてハリウッドの最新事情をレポートしていきたいと思います。最後まで必見の内容ばかり!!!

William Files氏

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William Files氏(以下Will氏)は現在は、映画に関わる方ならばあこがれの場所であるSkywalker Sound所属のSound Designer & Re-Recording Mixer。若手(35歳以下)で最も才能あるエンジニアとして表彰されたこともあるトップエンジニアの一人。その才能は、過去にWill氏がミキシングを行なっった作品からも十分に感じられるものとなっている。その一部をご紹介すると、『猿の惑星:新世紀(2014)』『STAR TREK ~ INTO DARKNESS ~(2013)』『Mission: Impossible ~ Ghost Protcol~(2011)』『クローバーフィールド(2008)』『エラゴン(2006)』『Mr.Incredibles(2004)』『Shrek 2(2004)』など。まだ37歳という年齢を考えると驚くほど早くからSound Designer / Re-Recording Mixerとして活躍していることがわかるだろう。ちなみに2006年のEragonまではSound Designerとしてのクレジット、2008年のクローバーフィールドではRecording Mixerとしてもクレジットされている。若干30才にして、ハリウッドでミキサーとして活躍をしていたという事実に衝撃を覚える。

国内であれば、30歳といえばアシスタントとしてやっと独り立ちをする年齢。同じ年令でセンターに座りミキシングを行なっているということは何故なのか?を聞いてみた。

音楽的センスとエンジニアとしての経験

Will氏は、元々映画が好きで、それを専攻する大学を卒業。その後、ラジオ局へ入り制作の仕事を行った後に、Skywalker Soundへ入社した。師匠に恵まれ、幸運な周りの人とのつながりの中から、早い時期にミキサーとしてのデビューすることが出来たということだ。この部分は、国内もハリウッドも同様にタレント(=才能)を重視する音楽産業とは違い、経験を重視する映画産業の中で信頼を勝ち取るということは、まさに人とのつながりが最も重要であるという事。これはどの現場でも変わらない普遍的なものであるということが感じられた。

Will氏のキャリアは、Sound Designerとしてスタートしている。楽器(Drums)を演奏していたというバックグラウンドを持ち、音楽的なエッセンス、ビート、グルーブ等の感覚的なものをサウンド、映像に織り込むことでその評価を得ているという。Sound Designerとしてサウンドをつくり上げることとともに、その素材を使って全体を仕上げていくミキシングも好きな作業とのこと。両方を行うことが出来るようになったのは、やはりPro Toolsの存在が大きかったということだ。

従来の多人数での作業を一人で行うためには、優れたツールが必要。Pro ToolsはSound Designを行いながらミキシングを行うことの出来る優れたツールである。そして、ICON、S6といった、コントロールサーフェスとの連携により全ての作業を効率よく、思った通りに仕上げていくことが出来る。今のSound DesignとRe-Recording Mixerを行うというポジションはPro Toolsの存在無しには考えられなかったということだ。ハリウッドでは、そのようにマルチに活躍をしている方は多くいるのかと聞いたところ、徐々に増えているが従来の分業での作業を行なっているプロダクションが多いということだ。Will氏も作品や作業量に応じてどちらかに集中をするというケースもあるということ。ここはやはり、合理主義のお国柄が感じられる部分だ。

スター・ウォーズ/フォースの覚醒

スターウォーズ フォースの覚醒 公式ポスター

話を『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に移して、細部を掘り下げていこう。先ずはSound Designに関してのコンセプト、根幹に当たる部分。

コンセプト

熱狂的なファンを多く抱えるこの作品、新しい物を作るにあたっては多くの見えない努力が必要となる。Will氏が、まず話をしていただいたのが、監督JJエイブラムス氏がとにかく、熱狂的な『スター・ウォーズ』ファンであるということ。その細部まで知り尽くした監督から提示されたコンプとは、「オリジナルの素材を使う」「オリジナルと組み合わせて新しい物を表現する」ということだった。音だけでスター・ウォーズだとわかる素材は多い。例えばライトセーバーのサウンド、ドロイドの声(?)、火器の発射音など。これを一から変えてしまうとやはりスター・ウォーズの世界観が変わってしまう。これまでに確立されてきた世界観を重視することは、この作品にとって何よりも大切なことだと言う共通の認識で作業は進んでいるということ。

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幸いなことにSkywalker Soundにはこれまで公開された全ての作品のオリジナルの音源が全て保存されている。同社にあるレストレーションの部門に依頼をすることで6mmで保存されたオリジナル音声をレストレーションし、デジタイズされたものを手に入れることが出来るということだ。貴重な機会なため、可能な限りクオリティーを高くオリジナル素材のアーカイブをするということも平行して行われた。サンプルレートは192kHz、実際のレストレーションにはiZotope RXが活用されたということ。今回セッションのために持ち込まれたデータはステレオの素材ばかりであった。その理由はオリジナルの素材を利用していたからということになる。非常に明快な原因といえる。

STARWARSの世界観に溶け込む新しいサウンド

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そして、オマージュ、ノスタルジーだけでは新しい作品として魅力がなくなってしまうために、様々な新しいサウンドも作られたということだ。その一例として見せてもらったのが、LIght Speed(スター・ウォーズでのワープ)のシーン。これまでは、コックピットの中からの視点しかなかったが、新しく船外からのシーンを作成した。これまでのサウンドに新しいエッセンスを追加し、サウンドを狭いコックピットの反響あるサウンドから、開放的なサウンドへとエフェクトを行なったということだ。それ以外にも、ドロイドのサウンド、ライトセーバーも新しい物を用意しているということだ。これらは、本年の公開で是非とも確認をして貰いたい。

新しいアプローチを行う際に活用したツールを尋ねたところ、Zynaptiq UnFilterとWAVES Aphex Aural Exiterの名前が上がった。オリジナルの素材に無い帯域を復活させるためにこの2つのプラグインが活躍しているということだ。全体域を有効に使うためにデジタル音声としての帯域幅の確保と、オリジナルを重視しながら新しいアプローチを行うためには無くてはならないツールであったということ。

Sound Design & Re-Recording Mixerの仕事

今回の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』での役割に関して話を聞いたところ、Sound Design & Re-Recording Mixerとの回答。国内では聞いたことのないSound DesignerとRe-RecordeingでのDialog Mixerの兼任ということだ。Musicに関してはさすがに作業量的に厳しいので他のエンジニアに依頼をしているということだが、その他は一手に引き受けているということだ。国内ではそのような役割分担になることは無いという話をしたところ「アクション映画だから当たり前。Sound Designの重要性を考えればこうなるよ」という至極ごもっともなコメント。

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物語の進行に重要なダイアログと映画の世界を描くSound Effect。重要性を考えれば、その両者を一手に管理、ミキシングをすることで効率的に仕上げていけるということは非常に理解しやすい。もちろんドラマなどのDialogが重要な作品では、感情を吹き込むMusicとDialogを一手に握るミキサーとSound Designerという組み合わせになることも。またFinal Mix迄にPre-Dubbingを何度となく繰り返し、シーン毎のサウンドの方向性、DialogとSound Effectのバランスを追い込んでいくということだ。ちなみに、今回のセッションで使用したトレーラーのファイナルはWill氏が一人で行なったということ。音楽に対しても造詣の深い、彼ならではの作業であるといえる。

MEGAコンテンツのワークフロー

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制作は、監督の持つプロダクションBad Robbotを拠点に進行、ここには、巨大なAVID ISISサーバーシステムが有り、全てオンラインでの作業を実現しているということ。これは、2年前に同氏がやはりInterBEE 2013でSTAR TREK ~INTO DARKNESS~の制作環境についてセッションを行なったのが記憶にあたらしい。全てのデータはISIS状に有り、編集の変更もリアルタイムに反映され、非常にスムーズな作業が可能となっているということ。そして、このサーバーでの作業でのメリットはセキュリティーという点でも非常に有利だと強調されていた。このISISに接続されたシステムであれば、素材を新たに書き出すこと無くプレビューが可能となる。素材はサーバーにだけ有り、他の端末へのコピーなどが行われずにファイナルまで進行する。途中での確認用ファイルも、社内で確認をするというフローを構築したために、一切書き出すということが無くなっている。これは、セキュリティー効率、すべての面でメリットが出ているということだ。

ちなみにAVID ISISなどファイル共有システムの導入率は、Video系のプロダクションでは100%、Audio Productionに関しては、これからという状況ということだ。その恩恵を考えると、導入が進んで欲しいところだと。しかし、それに合わせたワークフローも重要であり、制作から、ファイル共有システムを念頭においたフローを構築していくことが重要だ。

ファイナルは20th FOXで行われるということ。このステージは、監督のお気に入りということでセレクトされたということだ。全作品までの6作が配給20th FOXだったのが、今回からはDisnyの配給に変更されている。配給は変更になったが、ダビングは里帰りをしたというのが面白いとWill氏。ハリウッドでも配給や制作のしがらみなく監督のセレクトでダビングステージが決定されているということは国内と同様。Will氏によると、Skywalker Soundと並んで20th FOXのダビングは素晴らしいということ。機材がということではなく、ここには長時間の作業を行うダビングステージで最も重要なスタッフのクオリティーがあるということ。ちなみにファイナルはInterBEEでのセッションの直後からのスタート。そのために3日目はセッションを行わずに帰国をするということであった。

Pro ToolsとAvidへの期待

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最後にWill氏の愛用するPro Tools、そしてAVIDへ対する今後の期待を聞いてみた。

「コンセプトが発表されているCloudベースのサービスに対しての期待度は高い。未知のサービスに対してのセキュリティーなどサービスの質が求められるが、AVIDに取っては大きなチャレンジの時。またユーザーにとってもそれが信頼できるものか見極め、信じて前に進むことが出来るかというチャレンジの時。両者においての大きなチャレンジの瞬間が近い将来訪れることになるだろう。新しいソリューションの登場に大きな期待をしている。」ということだ。

国内でも情報がなかなか伝わりきれていないPro Tools Upgrade & Support Plan。新しいバージョンアップの方法論に対しては、Will氏は非常に前向き。Ver.12.3で搭載されたComit Track機能は、ステムの書出しなどに重宝している、すでにお気に入りの機能とのこと。またSkywalkerを離れて別のスタジオに行くことの多いWill氏にとって「このUpgrade & Support Planを全てのスタジオが購入してくれれば、何処に行っても同じバージョンのPro Toolsが使えるし、お気に入りのPro Seriesプラグインもライセンスの有無を気にせずに使えるようになる。」Will氏にとっては作業環境のブラッシュアップとして素晴らしい出来事になっているということ。米国内でもUpgrade & Support Planのアナウンスは行き届いていないようで、この素晴らしいバリューを持つ新しいプランをユーザーに届けるよう、AVIDに頑張って欲しいとエールを送っていた。


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