モーリー・ロバートソンが語る異次元感覚のシンセの未来【Part1】




モーリー・ロバートソンさんをお招きし、次世代を切り開くAIRAシリーズを交えながらDEEPに音楽とシンセサウンドの未来をDEEPに掘り下げます。

2014年3月8日に発売されたRoland AIRAシリーズ。発売前からリーク画像や動画が公開されたりと、これまでのRoland製品とは明らかに異なる登場の仕方に、世界中が息を飲みました。

アナログ回路を部品からモデリングするACBテクノロジーによるサウンドと、USB2.0にコネクティビティを有したAIRAシリーズはこれまでのアナログ機器と何が違うのか。またどんな音楽の未来を見せてくれるのか。ゲストにモーリー・ロバートソンさん、RPGカンパニー営業部 AIRA製品担当 高見さんをお招きし、DEEPにREALに語って頂きました。対談の模様をお楽しみ下さい!

初めてAIRAを体感するモーリー・ロバートソンさん。
ファーストインプレッションは如何に!?

ACID渋谷(以下 渋):まずはモーリーさん、今回始めてTR-8とTB-3のサウンドを聴いてもらいましたが、如何でしたか?

モーリー・ロバートソンさん:とても太い音が鳴っていたので、誰かが別にアナログシンセを持って来たのかと思いました。

渋:なるほどなるほど。アナログ的な太さを感じたと。

モ:60Hzくらいが良く出ている感じですね。クラブで実際に音を出したら凄いでしょうね。

高見さん(以下 高):仰る通りです。今聴いて頂いたTR-8のKickのサウンドはオリジナルと同じく周波数特性的に50Hzくらいにピークがあります。

FUNKTION-ONEスピーカーシステム

渋:TR-8の充分な低域を鳴らす為にはそれなりのスピーカーが必要になりますね。先日のイベント『Synth bar Episode 21 Roland Strikes Back!!!!!!! ~ローランドの逆襲~』でもFUNKTION-ONEのシステムで凄い低音を出していましたね。

モ:ディケイが長くて調整のしがいがありますね。

高:TR-808のディケイを更に長くする改造をしたモデルを分析し、音色として搭載しています。

モ:(音を鳴らしながら)すごい!これは楽しい。デビルフィッシュとかああいう昔の個人のモディファイを思い出しますね。

高:TR-8はコンプレッサーも搭載しています。録音物で耳にする808や909の音はプロセスされてる場合が多いですよね。純粋な808の音はこのようにダイナミクスが大きいのですが、ダンスミュージックで使う場合はアタックの音を重低音が一体となった、ガッツリとアグレッシブな感じが多いですよね。そこを意識して今回敢えて搭載しました。

渋:各音色毎に、オリジナル以上のパラメーターが用意されていますね。

モ:アタックのパラメーターはVCAのアタックですか?もう少し別のパラメーターが連動して働いている印象を受けます。

高:アタック部分の波形を見てみると、独特の「暴れ」が存在しています。当時は波形を確認する事など出来ませんし、試行錯誤した結果だと思います。AIRA製品群全部に言える事なんですが、TR-808と909の回路を全てパーツからモデリングしてそれを組み上げて出しております。なので何か一つのパラメーター動かした場合でもアナログ回路全体でいろいろ変化が起きているのだと思います。

渋:モジュラーシンセなどは、一個のパラメーターを動かしたことで他も影響を受けます。それと同じ様な事が内部的に起こっているとも言えますね。

モ:すごい!スネアはスナッピーがあったりと、音色毎にパラメーターが色々違ってくるんですね。

高:そうですね、これはオリジナル808に付いていたものと同じパラメータです。オシレーターで生成されたスネアの音色にスナッピーとしてノイズを加える方法で、完全に切るとタムみたいになります。

回路図に載らないオリジナル・メーカーのノウハウが生み出す、独特の効果

モ: こういう昔のいわゆる試行錯誤されてた頃のなんと言うかパッチというか回路みたいなものは永久に非公開なんですか?

渋:回路図はWebに流出しているそうですね。でも回路図通りに作ってもその通りにはならないのでは?

モ:ならない!?

高: 当時の技術者たちは回路図通りに作っても鳴らないものを色んな工夫で乗り越えて、それを筐体に全部収めていました。

モ:なるほど。苦労が詰まっているんですね!では例えば回路図や発音手順みたいなものが汎用的なパッチダイアグラムとして流通した場合、今は世界中でモジュラー人気が高まっているので、とりあえず皆でそれぞれ作ってみようとするのではないでしょうか。逆にその方が有り難みが分かるんじゃないかな?

手順が公開されてその通り作ったのに音が出なかったら、どうしたんだろうって不思議さが増しますよね。

渋:AIRAでACB( Analog Circuit Behavior)を開発するあたって、技術者の方もヒアリングが大変だったんですよね。

高:ええ、何しろ回路図に書かれていないところを、当時のエンジニアがもう引退してしまう、もしくは引退されてまだコンタクトが取れるっていうギリギリのタイミングでその知恵を頂きつつ。

渋:当時のマイコンやD/Aコンバーターの質などパーツ自体の特性やバラつき、回路の引き回しによって様々な効果が引き起こされているんですよね。

System-700

高:当時の話を聞いていると最初、ハイハットやシンバルなどの金物はSystem-700という巨大なモジュラー・シンセでパッチングして試行錯誤していたようです。それをコンパクトなアナログ回路に納めたと。

渋:近年のモジュラーブームの中で、元々は単体のハードウェアリズムマシンだった製品がモジュールとしてバラ売りされる流れもありますね。acidlabやjomoxなど。今パッチングでリズムマシンを作るというのは一周して新しいかも知れませんね。

モ:いわゆるシェアカルチャーのひとつの概念ですけど、思い切って回路図ごと「はいどうぞ」って言うと実はみんな作れないんですよ。匠じゃないと作れないから。

レシピはお塩やお砂糖の分量とかそういうことなんでそれを逆に公開してしまった方が、価値が上がる気がしますね。今までは回路図なんかは社外秘という時代だったんですけど、現代では思い切って全部ぽーんっと出してしまった方が、世界中のモジュラーの人が新しい課題を手にしてずっとこう課題をやり続ける事ができるし、カルチャーが育ちますよね。

渋:なるほど。それこそローランドでは公開されてなかったにしても、808/909/303はクローンが沢山出ましたね。そしてそのどれもが個性的だった。

高:そうですね。公には公開しないですがやっぱりクローン作をっているメーカーの方はどこかでオリジナルの回路図を手にしていたと思いますね。ただ、今仰ったようにレシピ通り作っても同じ味になるかと言ったら同じ味にはならないという事ですよね。

モ:そうそうそう。

高:そこで今回のAIRA TR-8/TB-3は回路図だけでは到底再現できいない「オリジナル」に徹底的にこだわりました。市場から復刻を望む事が多かった事と、やっぱり30年もずっとこれだけみなさんがこの音が良い、この音が良いって使ってくれてるということできっと何かあるだろうと。

それとオリジナルのTR-808/909、TB-303の中古価格が高騰している状況で、若いクリエイターが本物の楽器を手にする機会を提供したいという使命感もありました。あと我々が実現したいレベルに対して、DSPの技術が追いついたというのも大きかったですね。

現在のRolandの技術力だから出来たデジタルによる完全復刻

渋:その新しい技術こそが今回の目玉、ACBテクノロジーですね。デジタルという選択はとても思い切ったものであったと思います。

高:もともとTR808、909、303を復刻しましょうという流れからアナログでやるのかサンプリングでやるのかデジタルか色んな選択肢があったんですが、ひとつひとつの個体の音が全然違ってたっていう事実に直面しまして。そうするともしサンプリングでやるもしくはモデリングでやるとした場合、どのモデルに合わせるのかっていう非常に難しい問題に直面してしまいます。

当時の材料のばらつきもある上に、30年以上の経年変化によるばらつきもあるので、「自分のオリジナルと違う」という問題は絶対に避けて通れない。であるならば我々ができる事は忠実にクローンとして再現すること。忠実に再現するためにはどの手法が良いかというところで、本体内部で起きているアナログ回路同士の起こす様々なシナジーが発揮出来るように一個ずつのパーツを全部モデリングして起こして、そこに対して電気信号をバーチャルで送り込んで色々出てくる良い作用、悪い作用も含めて内部で再現してしまおうという。それがACB(アナログ・サーキット・ビヘービア)という技術になります。

渋:その結果生まれたのが、巷に溢れてるサウンドモデリングとは全く違う、見た目ではなくて内部的にも完全なるクローンというものですね。例えばTR-909のスネアとハンド・クラップを同時に鳴らすとフェイジングが起こりますがTR-8でも同様に再現できていますね。「結果的にそうなってしまうもの」も現象として全部再現されているのだと思います。

モ:じゃあ忠実にやっていくうちに副作用も一緒に。

高:だから今回のAIRAも不器用なところは徹底的に不器用です(笑)。後々は変えていければと思っているのですが、音楽ジャンルによってはTR-RECのステップ解像度を更に上げたいという要求を頂いています。今のデジタルシーケンサーのように器用に出来ないんですね。なぜならこれ808の完全なるステップシーケンサーを再現しているからです。単純にステップの解像度を2倍、4倍にするだけでは済まない。シーケンサー全部作り直す必要があるのです。

高:このシーケンサーの存在も正確無比なデジタル・シーケンサーではなく、グルーブをを持ったリズム・マシンとしてTR-808が愛されていた大きな要因の1つだと思います。

ソーシャル時代、拡大するシェア・カルチャーの中で
その姿を変えながら存在し続ける808/909

モ:あはは。今で言うとなんだろう、サンプル集に古いローランド由来のものが時間を補正されスウィングにされ補正されみたいな。四次、五次創作ですね。しかもリミット掛けてコンプに出してどっかに入れてまたそれを誰かがサンプリングしてっていう。それが売り物の中にさえ混ざってますから。もうみんな耳としては、808/909のサウンドのばらつきは気にならなくなってるんじゃないかな。

渋:そう思いますね。

モ:いわゆる、時間が強制的に2005年代のDAWでそのときのクォンタイズで補正された音楽とかで由来の音楽ってずっと聴いてるから体に入っちゃってますよね。

渋:うん、なるほど。

モ:だからTR-808時代のカルチャー全体が継承されているとことですね。非常に面白いのは、35年前だともちろんインターネットも無かったしエンドユーザーに双方向性がなかったのがひとつと、ソーシャルメディアも関係してくるだろうけどそのエレクトリックロジックというのは非常に水平展開を見せてお互いに素材を共有しあったり、また相手の一部を抜いてリミックスをしたりというカルチャーも定着しちゃっているので、何と言うのかな、音質が変質していくのもソーシャルメディアの一環だと思うんですよ。

渋:なるほどなるほど。

モ:それと設計、対話することが前提になっているというか。つまり、これからこの新しいクローン製品が出てすぐにですね、元の実機を持ってる人が二つ並べて全く同じ音か聴き比べるっていうYouTubeが公開されました。17分間のものとか。

渋:やってますね。私も良くそういう動画を見ています。

モ:それもまたすごい回数見られているんですよね。世界中で1万人がじーっと17分間これを見たんだと思って。だから今はそこからスタートなんですけど要はこのインターフェイスにシフトした結果、これを更にモディファイしていくっていう。次の段階に行く訳ですよ。

渋:うん、AIRAが新しいスタートになるわけですね。

リズムマシンのサウンド自体が楽曲を形作る

高:オリジナルに付いてなかったクラップに対してピッチを付ける、ディケイを付ける、カウベルにピッチを付けるとかこういったオリジナルに無かったプラスαもかけて生まれ変わらせてるんですよ。内部的に当時やりたかったけど出来なかったであろうというところに入りこんでいて。内部はアナログ回路をモデリングしていますので、例えばアナログパーツの「この回路を調整すれば実現できるな」など、単にデジタルのパラメーターで機能を追加したのではなく、アナログ回路をベースに考え、設計を行いました。

モ:なるほど、相互関連的に音の内容が決まっていくのですね。

高:新しい動きをするんですけど何故か懐かしいサウンドになっていますね。

モ:テクノ等のダンスミュージックについてはリズムマシンのパラメーターによるサウンド変化は非常に重要だと思います。80年代の曲は何度も何度も転調するような、ビュッフェで色々食べるような展開が多かったですけど、テクノとか以降はワンキーの曲が多くなってきました。ワンキーの音楽の創作環境内ではキックとかスネア、カウベルのチューニングが大事になってくるんですよ。

モ:キーが沢山ある音楽内では、たとえ35年前のリズムマシンでチューニングが出来なくても、全体像のなかではそれほど気にならない。食材でいえばリズムマシンの音はパクチーやパセリの様な扱いでした。
しかしワンコードが延々と続く音楽においてはそれがメインディッシュの一部になってしまう。だからチューニングが出来たりしないと困るんですね。

高:全くその通りです。

モ:スネアとかまさに。

渋:それこそアーリーハウスリバイバルの中では、リズムマシンとJUNO-106だけで作った様なトラックが多いですよね。そしてサウンドシステムが非常に良くなっていて大型のフェスティバルとかになるとシンプルな音で、例えば少しだけディケイを短くしたってものすごく変わってしまったりっていう、やっぱり僅かに変えるだけで全体の流れを大きく変える事が出来る。

モ:昔だったらエンジニアに結構頼っていた。匠のエンジニアがセットになってYMOならYMOについてる何人かの人たちが結構曲の中で演出をする訳ですよ。で、急に空間系エフェクトを飛ばしたりとか。それを今は個々人のアーティスト達が最初からそれを要求してパラメータが書きたいとかそういう風になってますから。そこの変化が設計の進化に影響してくるだろうなと。

渋:確かに。オリジナルについてなかったエフェクトとかこのリバーブとか入っているんですけど、自分でそのダブのエンジニアみたいなことも出来る訳ですね。

モ:すごいな、だけどそこができちゃうってのは面白い。あとは分厚かったですね。今さっき聴いた感じ。パソコンでやろうとすると多分、ソフトでやるとそれを誰が買うのかっていう事を逆算して問題が発生したことを考えると企業としてはあんまりやんない方が良いみたいな。ね。だからいいですね、太いの。

渋:よくテクノとかで使われているのはハイハットだけにフランジャーを掛ける(実演)

モ:なんか最初にデジタルキーボードが出てきた時みたい。Lexiconのサウンドみたいですね。当初は太かったんですよ。も90年代になってくるとすっごく薄い時代が来て、まぁみんな綺麗さを追求したからだと思うんだけど。だからそういう時代を上手くくぐって、これからはファットなものを実現しようと。

Part2につづく

出足からDEEPなセッションとなったモーリー・ロバートソンさんとの対談、如何でしたでしょうか?次回は更にシンセの歴史に踏み込んだ超絶DEEPな内容になります!会場にセッティングされたSERGE MODULARとAIRAが怪しく光る中、どんな展開を見せるのか!?


大注目のPart2は公開中!アナログシンセの歴史、そしてCVで描く未来のネットワークなど、あっと驚く目から鱗の内容です!




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