先日KRONOS開発インタビューにて、演奏者の『楽しさ』を見失わない開発者達の情熱溢れるモノ作りの姿勢を見せてくれたKORG開発チーム。
そして2012年7月、KORG本社スタジオ内にて発売されたばかりのKRONOS X実機を交えながら、開発担当の庄下氏、そして前回のKRONOS開発インタビューでも御登場いただいた企画担当の岡崎氏を迎え、KRONOS XそしてKORGが目指すシンセサイザーの未来を伺った!!
岡:そうですね、拡張に関しては元々サービスでの提供を予定していました。サウンドライブラリーを出すにあたり、徐々に容量が逼迫してくる事や拡張性に限界が出てくる事が予想できましたので。
ただ今後KRONOSを買っていただいたお客様から一度お預かりをしてサービスで対応するのも申し訳ないので、それなら最初から出してしまえ! というところでしたね。
岡:XはXpandedの略なんです。
庄:発売以来バージョンアップを重ねて、音色開発もユーザーさんを飽きさせないよう継続して発展させています。タイミングとしては1年後になりますが、それがある程度蓄積してまとまったという感じですね。
岡:全く一緒でロゴだけにしています。ユーザーの方々もSSDやメモリをこれから増設されXと同性能になっていくと思いますが、初代KRONOSを持っているという点にも格好良さを感じてほしいですね。
庄:そうですね、システムを含めてイコールになりますので、安心してアップグレードしていただきたいですね。
岡:悲観する事は全くありません!
岡:新しくなったポイントの1つとして、EXs拡張ライブラリーのDEMO音色を搭載しました。
庄:デモモードといっても完全にあらゆる機能を使えますが、音量だけが不意にスクランブルする仕様になっています。なので気に入ったらWEB購入して本体へコードを打ち込めばすぐに使う事が出来るんです。
岡:具体的に言いますと、A〜GのBANKのInternalとUserの二つを同時押し(例:IA + UA)することで今回拡張されたユーザーバンクを使用する事が出来ます。そこにデモ版をインストールしていますので、まず『EXs12 SGX-1 Austrian Piano』をご紹介します。
特長はダイナミックレンジの広さですね。もう一つ面白いのが、複雑なコードを弾いたときの響きが凄くスッキリして聞こえるところでしょう。プリセットのGerman Pianoと比べるとスッキリ感の違いを強く実感出来ますよ。
庄:こちらもGerman、Japaneseのプリセット同様に全鍵ステレオ、ループ無しで収録しています。
岡:まず倍音の出方が違います。Germanは派手に聞かせるサウンドですが、Austrianは音の粒立ちや和音の馴染みの良さが違いますね。
庄:特に定位のしっかりしたレコーディングがなされている印象ですね。
岡:大きな特徴としてAustrianピアノは97鍵盤ピアノのサンプリングなんですよ。(88鍵盤モデルでもオクターブシフトで対応可能) だからプリセットのGermanやJapaneseは4GBサイズですがAustrianは5GBもの収録データになっています。
先ほどの倍音の響き方の話でも、97鍵盤の共鳴による倍音構成の変化に理由があると思いますね。
庄:そんなに複雑な事はやっていませんが、同音連打等沢山重なった時の調整などは行っています。本物だったら弦を一度叩き、さらにもう一度叩いても別のボイスが鳴る訳ではありませんから、その辺りのニュアンスが不自然にならないようにしていますね。
岡:次は『EXs11 Legendary Strings』です。
庄:プリセットに名前の出ているストラディバリ以外にも、バイオリンだけで銘機と呼ばれるモデルを4機種使用しています。
岡:音色の定評ある機種は色々ありますが、ハードシンセのストリングスに満足される方はそんなに少なかったように思っています。KRONOSの開発段階からSSDと大容量サンプルを活用した音色を再現したいと思っていましたので、ようやく念願叶ったモデルと言えますね。
岡:外国で録っていますね。
庄:直接我々が行くのではありませんが、経験豊富な関連スタッフが行っています。マイキングやマイクの選択は現場のエンジニアが行っていますね。
庄:銘機を持っている国まで収録しに行くんですよ。
庄:クレジットに協力いただいた団体名などが記載されているんです。博物館に展示されているような銘機を某有名ミュージシャンに演奏してもらい収録することが出来たんですよ。
庄:色々ありますが、1bit(DSD)も使っています。
庄:他にも容量がたっぷり使えますので、所謂ラウンドロビンというんですが、同じにならないように鍵盤弾く毎にサンプルを切り替えたりすることが出来ます。
庄:まぁボイス数などに影響してくるでしょうね。SSDもメーカーによってスピードが全く違います。各社評価してベストなものを使用しています。
岡:お次の音源はリッキーローソンさんのドラムですね。『EXs10 Ricky Lawson’s “West Coast” Drums』。
庄:アンビエンスなどのMIXも本体フェーダーで調整する事が出来ます。彼はマイケルジャクソンやイエロージャケッツなどのサウンドも手がけているんですよね。
岡:他にも同じくドラムでプリセットに入っているJazzドラムキットも魅力です。マレットやブラシ、竹ひごなんかも入っていますのでデモセッションデータを聞いてみて下さい。
岡:この手のキットってGM音源で作ったようなキットが定番なので、ここまで気合いが入ったモデルは中々無いですよ。大容量になったことや、KRONOSエンジンの余力だから実現出来た音色の一つですね。
庄:そうですね。これまで結構プレイヤーやプロデューサーさんに紹介する機会が多かったのですが、実際聞かせると皆『これならいける』という感覚になりますね。
岡:それは多くの方から良く言われますね。
庄:それはやっぱりエンジンの処理能力の違いですね。単純に音の立ち上がり、エンベロープのシャープさLFOの正確さなどが従来のモデルと全然違います。そういった部分がつもりつもって、そういった印象を生んでいるのだと思いますね。例えばFMエレピ音源でも、昔のものとは違い驚くほどクリーンですし、シンセブラスもエイリアスノイズが全くないんです。
庄:では次に私の方からOS Ver.2.0の新機能について紹介させていただきます。これまではEXsというKORGやサードパーティ製のライブラリに関してSSDを使う事ができましたが、2.0ではユーザー自身でもSSDを使用する事が出来るようになったんです。これまでは限られたRAMにサンプリングをするだけでしたが、SSDをフルに活用する事が出来るのです。
例えばユーザーバンクに長尺サンプルを用意し、SEとして活用するなどの展開が出来るようになりました。ジョーダンルーデスを始め、サンプリング機能を使ってSEをまとめるキーボーディストも多く、SSDを活用出来る事で容量を気にする事無くサンプルを溜め込む事が出来ます。
本体USBポートではOS2.0からUSB to Ethernetアダプターで、コンピューターと接続が可能です。Ethernetでサンプルを一気に放り込むことも可能になりました。
庄:結構癖があってダメなやつもありましたね。そのため推奨製品をWEBページの方で公開しています。SSDを使ったユーザー・サンプル・バンク機能をサポートする面でも必要な機能でした。
庄:そうですね。その辺はもちろん検討してます。
岡:ビンテージだの、最初に色々な機能を入れてしまった事もあり今はまだ検討中ですね。しかしお客様が一番求められているのもそこだと思いますね。
岡:ええ、まずは今回は『サンプリングの機能』を強化する事がテーマでした。いくらもサンプリングエリアを増やしたところで中に入る良質なライブラリーが無いと恩恵を感じてもらえませんからね。まずは先ほど紹介した4タイトルを本体収録したり、サードパーティにも協力していただき、実に30タイトル以上をご用意出来ました。
岡:ハードウェア的な性能を突き詰めてきた部分があるので、今回のような『サンプリング機能の充実』といったテーマを掲げる事は難しくなってきているのかなと思います。けれど出来る事なら足りない部分が出てきた時にアップデートを重ねていきたいですね。
岡:そうですね、我々ハードウェアを作っているところもあるので、KRONOSもLIVEで活用される事が多いと思います。しかしLIVEと作曲を明確に切り分ける話をするのはナンセンスだと思うんです。LIVEで使う機材のクオリティが高ければレコーディングでも使えますし、レコーディングの作業が早い優れたUIはLIVEにも通じます。
そういった形でクオリティを積み重ねて『LIVEと制作の垣根』を無くす事が今後我々の目指すべき方向なんだと思います。
そこから昨年生まれたKRONOSは、自然に『楽器』としてクリエイターやミュージシャンに取り入れられ大ヒットを記録した。KRONOSの優れた点は、ソフトウェア音源の進化の中で、ハードウェアとして追いつき追い越そうとしているところに他ならない。
PCレスでも良い、PC環境でも良い、そこに線を引かずにオープンプラットフォームでハードウェアの魅力を出して行く姿勢こそ魅力なのだと改めて実感させてくれる。それは多数派が優先されるマーケッティング戦略にとらわれず、OASYSで挑み、突き崩した壁が今KORGの大きな成果となっているのだろう。
ただ純粋にユーザーの要求に応えようとするKRONOSはやはり楽器として気持ちが良い。このノウハウを元に更に派生モデルやアップグレードが行われ、KORGはユーザーへそれを提供し続けるに違いない。KORGが最も力を入れるメッセージは、ユーザーへと必ず伝わるのだろう。
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