BIG PRODUCTの系譜!! KORG KRONOS開発インタビュー


▼ではまず1988年のM1によりワークステーションカテゴリーでの成功をおさめて以降このカテゴリーのトップランナーであるKORGさんからKRONOSを企画された、きっかけについて教えて下さい。



チーフエンジニア今泉氏

今:そうですね、まずKRONOS開発のきっかけは、『OASYS』(オープンアーキテクチャーシンセシス)エンジンを異なるモデルに移植出来ないか、というものでした。

元々OASYSの目的が最高のワークステーションシンセを作る事でしたし、開発当初から今後の事は考えていましたね。OASYSは当時の最高の贅をつくした「夢の楽器」でしたが、将来はこれをベースに全てのミュージシャンに手が届くような… TRITON、M3の次の世代のハイエンド製品を作ろうと。それがKRONOSになったわけです。

KORG M1



KORG OASYS

▼『OASYS』が登場した際、従来のTrinityやTritonとは異なり新たにCPUベースのエンジンを採用したのは何故ですか?

今:開発環境の変化というよりは、CPUベースのエンジンを採用する事が目的への最短ルートだったためです。IntelベースのCPU、LinuxベースのOSがあればこそ、TRITONなどの従来の音源ではこの規模の商品は出来なかったと考えています。

▼CPUベースのエンジンを採用されたのはその他に今後の発展性や広がりを考慮されてのことですか?

今:ワークステーションに求められることが年々多様化し、それに対応するための開発環境が欲しかったということがあります。プラグインソフトウェアが年々進化する影響もありましたね。とはいえPCを使ってしまうとレイテンシーの問題もあるためLinuxベースで独自のシステムを構築することにしました。その結果ハイエンドな製品へと結実する事が出来たため、皆が『これはいける』と思いましたね。

▼なるほど、PCソフトベースの利点とハードシンセの融合ですね。OASYSとKRONOSのOS部分は一見すると全く異なるように見えるのですが。



商品企画課岡崎氏

岡:いえ、実はソフトウェアのアーキテクチャはOASYSとほとんど同じなんです。ただテクノロジーファーストではなく、楽器として扱いやすい見せ方を模索したためKRONOSは全く異なる製品に見えるのだと思います。

▼OASYS要素を再構築して演奏を楽しめる楽器として登場したのですね。この価格で実現されている点は驚きです。ソフトウェアベースとカスタムDSPベース、どちらが良いという事はありますか?

岡:まだ現状ではどっちも利点がありますね。発展性のメリット、価格や組み込み部分のメリット、それぞれの魅力がありますのでケースバイケースです。カオシレーターなどは汎用のDSPですしね。



Kaossilator Pro



Kaossilator

▼まさにハードメーカならではの強みですね。Trinity、Triton、M3等ワークステーションシンセからKRONOSに至った経緯についても教えていただけますか

岡:そうですね。やはり皆さんが当時『ワークステーション』というカテゴリーに対して頭打ち感を感じていたタイミングだったと思うんですよね。ソフトシンセとのリアリティの差に対して、ハードはハードで生きて行くしか無いというような変な『壁』みたいなモノが出来てしまい、皆さんがそれを認識してしまったんです。KRONOSはそこを打ち破ろう、という部分から生まれた製品でもあります。

▼素晴らしい、Rock oNでもその融合を待ち望む声が多くありました。PCベースのソフトシンセには、多くの課題が残っていますから。実際に打ち破ったポイントはどのあたりでしょうか?

今:まず妥協の上で我慢しよう、としていたポイントを徹底的に取り払う事でしたね。スムースサウンドトランジションなどで、音切れしない技術があってもエフェクトは切れてしまうなどの『制限』を取り払う事です。処理能力の向上やSSDのレスポンスによってKRONOSでは多くの事が可能となりました。

▼楽器として何が絶対的に必要かを見据えて、徹底的に追求された訳ですね。ちなみに、インパクトもあり記憶にも残る、KRONOSという名前の経緯は?

岡:これは実は結構もめたところでもあったのですが(笑)。名前は『時の神』(Chronos)から来ているんですよね。KRONOSにはピアノ、エレピ、オルガン、アナログ(シンセ)、デジタル(シンセ)…KORG歴代の様々な鍵盤楽器が9つのサウンド・エンジンとして、時間を超えてズラ~ッと並んでいますから。

▼音は時間の中でしか存在しないですから、「時」と言うテーマはいいですね。では内蔵サウンドの詳細をお願いします。その歴代のKORG製品から来ている心臓部『9エンジン』について伺います。まずSGX-1についてですが、これはKRONOSのために新規開発された音源なのでしょうか?

今:はい、大容量、高レスポンスになった事でまずリアリティの部分でこだわりを出したいというが一つでした。SGXに関してはピアノ本来のイメージに近い形で、ピアノに特化したパラメーターをセットしました。ダンパーを踏んだ時の共振やノイズを別個に搭載し、複雑な組み合わせも出来るよう作り込んでいます。

▼ピアノ音源としてもKORG集大成と言えるモデルということでしょうか。



商品企画課坂巻氏

坂:SGX-1は音源特化エンジンとも言えますよね。通常のワークステーションは色々な音色が入りすぎて、曲作りとしては良いけど音色毎のイメージがつかみづらかったり、音は良くてもプラグインほどのリアリティは無いなど印象もありましたよね。そういったソフトシンセとワークステーションの現状から次の形を模索したのも事実です。KORGという会社自体の開発コンセプトは『楽しいものを作る』という事なのですが、キーボード弾きにとって楽しい事は何だろうを考えた時に、音が良い事、弾いてて最高に気持ちいい事の2つだという結論に至ったんです。それを両立しようとしたのがSGX-1ですね。

今:ユーザーが真に求めているものを提供できているか、というところを常に意識していました。



SGX-1

岡:EDITの面でも以前は自由度高めな分複雑だったのですが、ユーザーが何をやりたいか、という視点で直感的に選べるようにしました。例えば各ピアノモデル毎に一流のプログラマーやジョーダンルーデスなどの一流アーティスト達に組んでもらったセッティングをPianoTypeとして一通り用意し選べるようにしています。積極的にEDITしてもらうには、どうユーザーに楽しいと思ってもらえるか、という部分ですからね。

▼テクノロジーファーストになりすぎない、楽器してのバランスが追求されている部分がきっとヒットの重要な要素ですね。ピアノ音源に関してはモデリングなど各社様々な技術がある中、KORGさんのとしての見解は?

今:モデリングで得られる機能的なメリットがあるわけですがそれが音のクオリティーや演奏フィーリングにどれだけ貢献できているかを冷静に判断することが重要です。それを検討した結果がSGX-1といえます。

坂:ものすごく良いです、現時点ではKORGベストと言えます。

今:現状ではコルグが理想とするサウンドを実現できていると思います。

坂:当時EP-1に採用しているMDSエンジンでもピアノ開発を行ったのですが、それよりSGX-1の方がピアノに最適なエンジンだと判断して採用しています。

▼開発の方からそこまで言っていただけると、魅力が倍増しますね。ではお話の中に出たMDSテクノロジーにEP-1というエレピエンジンが採用されていますね。この部分は何故最適と判断されたのですか?



EP-1

今:まずMDSテクノロジーについてですが、基本的にエレピのトーンとメカニカルなノイズを分けて考えているんです。トーン部分の最大の特徴はベロシティの段階が無く倍音の変化が無制限になっている部分。そこに別個にメカニカルなノイズサンプルを付加しています。

▼最近ではPCMサンプルとモデリングとのハイブリッド音源なども流行ですが、EP-1はどう違うのでしょう?

岡:ハイブリッドという広い意味では同じなのかもしれませんが、こちらも楽器として最終的な出音で判断しています。

▼出音のチューニング等に関しては、どのように判断されているのですか?

今:モデルになる元音の状態には気を遣っています。楽器の選定や調整により理想的なモデルとなり得るよう追い込んで行きます。最終的な出音としては本体のパラメータを駆使して様々な演奏スタイルに合うように調整を繰り返して行きます。

▼現在音源メーカは乱立していますが、やはり経験を感じさせるコメントですね。最終的に出来上がった音を判断する際に、実機とイコールを目指すのか、もしくは上を目指すのでしょうか。



今:両面ありますね。大事な事は出来上がったもので『本物を弾いて感動したものが得られたか』ですね。シンセである以上基本的なものが出来た後はエディットでどう再現するかがシンセである事の意義になってくると思います。

坂:EP-1は音を『作る人』と『研究する人』がタッグになって開発した点でも珍しい音源ですよね。

今:エレピへのこだわりが強い人間がいるというのも一つですが(笑)、実際に生み出したものがどこまで使えるのか、双方とのキャッチボールで作りたい音源だったのは事実です。

岡:実機のチューニングや修理を行われている方にも実際に足を運んでもらい協力いただきましたね。サンプリングセッションの際などにはダイナミックレンジを出すために鍵盤が壊れるくらい目一杯叩くところまで録るんですよ。

今:通だよね、あそこまで歪ませられるエレピ音源は中々無いと思いますよ。

岡:そうですね。使わないでしょ、とかって思っちゃったら負けかな(笑)と。

▼開発段階から実際に利用するプレイヤーや制作者といかに対話して完成度を上げるのか、KORGさんならではの広いネットワークが生きているポイントです。開発側としては従来ある技術と新しい製品を作る事のせめぎ合いはどのようにコントロールされているのでしょう?ひたすら似せる事もチャレンジですが、ここまで出来るなら違う世界へのチャレンジも、という考えも出ますよね。

今:それは一番難しいところですね。独善的に新しい音を提示しても伝わらない事も多いです。例えば「60年代のエレピはこういう音が代表的だったよね」といったわかりやすい形で再現するところをスタートにしないと評価してもらえないと思うんですね。さきほど『感動』という言葉を使ったのはこういうことも含んでいるのですが、まず共感しやすいところから攻めて、さらに「こういう音もありますよ」といった提示をする、というスタンスですね。

▼音楽と楽器の世界のイノベーションがどうあるべきかは、永遠の課題ですね。逆にM1やTritonなどリアルとの兼ね合いの中で残っていった、語り継がれた音源達は自然発生的に生まれたのでしょうか。

KORG Triton

今:偶然もあると思います。M1が評価されたため、あの音を、という話は出ますよね。シグネーチャーサウンドになることを目指して意図的に仕込んだ音などもあるのですが思惑が当たったとは言えなかったりしますね(笑)

岡:僕も入社前なので聞きたかったのですが、あれって実機に似せようと思ってたわけではないですよね?(笑)

今:M1は私も入社前ですが(一同笑)。M1は本物にしたくてもサンプリングの容量が足りなくて、せめて低音ぐらい贅沢にと思ったものが評価されていますから、私は結果論だと思うんです。もちろん狙うときは狙いますが、それが当たるかどうかは神のみぞ知るところですね。

▼なるほど、時代時代生まれる音、語り継がれる音には神秘的な部分がありますね。出音という点ではKRONOSは従来モデルからの変化を強く感じるのですが。



坂:音の価値を再認識したというのはありますね。極端な話ワークステーションは機能が中心の製品とになっていましたが、KRONOSは演奏するのが気持ちいいとか音が良いなど演奏感を重視する、価値観の変化の影響が開発側には強くあります。

岡:これまではシンセサイザー・プログラミングのスペシャリストによる音色が中心だったのですが、KRONOSではアーティストに実際に弾いて作っていただいた音色も多く収録しています。

▼ではここで、今泉さん、岡崎さん、坂巻さん、それぞれのKRONOSのPRポイントをご紹介いただいても宜しいでしょうか。



坂:そうですね僕は何と言ってもKRONOSのツルツルの側板ですね(笑)、珍しいですし国産ならではの良い質感が出せていると思います。

岡:良い所をとられちゃいましたね(笑)。他にも天板のアルミへアライン質感、単純な黒でない色味などはこだわっています。とにかくワークステーションは長い間機能先行で、何をしたいのか不明確な時期もありましたが、KRONOSは楽器としてのパッケージになっている点が特徴ですね。その点の使い勝手やまとまりの良さは魅力だと思います。

今:売れるものは何か、魅力的なパッケージとは何か考えて、結局それは同じものだと。そういった事を深く考えて行った結果、弾く時に気持ち良かったり、LIVEや制作に使える事だったり。一番ベーシックな部分こそユーザーの喜びですよね。本当はもっと奥深い機能もあるもののまだまだやり残していることも多いため満足しきれていない部分があります。しかし楽器である以上音へのこだわりだけは自信を持って仕上げましたのでそこを感じてほしいです。

▼楽器としてのKRONOSということですね。

岡:そう、OASYS開発当時の未来が現実になったという印象ですね。積み上げた技術とともに、じゃじゃ馬が落ち着いてきたという感じですね(笑)

今:OASYSが出たのがもう7年前ですからね。

▼KRONOSまでの間にリリースされた『M3』はM型番でありながら、ややパッケージが曖昧だった印象がありました。

今:M3もOASYSのスピリットをくんだものとして仕上げられたと思います。ただもっとユーザーさんの欲しがっているものを正面から見つめ直し、攻めの姿勢で開発して仕上げたのがKRONOSだといえます。

坂:技術を作ろうぜ、ではなく『楽器』として作れた部分が大きな一歩だったと思います。

▼そしてKRONOS発売から一年を超えてユーザーからの声はどのようなものが多かったのでしょうか。

岡:ピアノやエレピが楽器っぽいという声は多く聞かれますね。アーティストさんを招いて弾いてもらった時に印象的だったのが、普段クラシックを弾いていない方が、KRONOSでクラシックを弾き始めたんですよ。ショパンの『雨だれ』を。ベロシティの弾き分けをする楽曲を弾きたくなるという方がいらっしゃったのは嬉しかったですね。ゆっくり落ち着いて、堪能するように弾かれる方が多かった事は、今までに無かったですから。サティーとか、クラシックピアノは良い音でないと弾きたくないですよね。

▼今後の展開に関して、ユーザーにヒントになるようなポイントがあればご紹介ください。KRONOSから発展する他の製品でも構いません。

今:まだ言えないこともあるんですが(一同笑)、直近の話では拡張音源が充実していきますよ。ドラム音源をはじめダウンロード形式で続々リリースされます。

岡:これもSSDの利点ですね。

▼KRONOS自体をVIRUS TI2などのようにDAW上のプラグインとして使用するような展望はありますか?またラックモデルの開発も期待したいのですが。

岡:そうですね、今はようやくVer1.5とともにKRONOS Editorが出たところですので、まずはトータルリコールで使っていただきたいですね。ラックモデルに関しては今のところは未定です。

▼短い時間に凝縮したコメント多くいただきました。夢が広がります。現KRONOSユーザーや購入を検討されている方へ皆様からメッセージをお願い致します。

今:先ほど『感動』という話もありましたが、まずは是非触って、体験してみてください。ソフトウェアの良い点や拡張性もあります。20タイトルを超える拡張オプション(KRONOS Sound Libraries)など、実際にKRONOSの世界はこれからもっと実際に広がって行きますので。

岡:総括すると、とにかく弾いて曲を作ることを楽しんでほしいですね。先ほどお話した通り、ゆっくりした曲でも余韻を楽しめるクオリティがありますから、既成概念にとらわれずに楽器を楽しんでほしい。パッションを込めて楽器を作った部分を感じながらKRONOSに接してほしいですね。

坂:KORGの中ではガジェット製品を含め『楽しい』という部分を重視しているんですが、KRONOSもキーボーディストにとって『楽しい』部分を凝縮した製品になっていますので、岡崎さんと同じく楽しんでほしいですね。弾く人によって『楽しい』事はKRONOSで出来た訳ですが、使う人にとって『楽しい』の形は違いますから、皆にとっての『楽しい』をもっともっと聞かせてほしいですね。

岡:今日こういうLIVEしたよ、こういう曲つくったよ、とか色々な『楽しい~!』という部分をYouTubeなどから世界に向けて是非発信してもらいたいですね。

▼今日は、Rock oN Award 授賞式からインタビューまで長時間ありがとうございました!では、渋谷ランチで乾杯と行きましょう!(笑)


発売前、近年ワークステーションシンセの存在はPCとの関係で曖昧となっていた。そこに一席を投じたKORG KRONOSは、自然体のプロダクトだったと感じた。そこには『OASYS』をはじめとしたKORG歴代技術の蓄積だけでなく、決してテクノロジーファーストにならず、演奏者の『楽しさ』を見失わない開発者達の情熱溢れるモノ作りの姿勢があった事を強く感じられた。真に良質な楽器はやはり人に心地良い物、楽しめる物で有ることを再認識させられる。また、ユーザーもそれを実現するためなら多くの投資をしていただけることも日々体験している。ITテクノロジーに振り回されがちな近年、それを消化して楽器として存在する、それがKRONOSだと思う。次時代の音楽と楽器がより楽しみになってきた!!





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本記事は「Proceed Magazine 2012 Summer」に掲載されております。
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