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Keep On Burning 第七話
〜未来の音楽を指し示すDAW!
Bitwig StudioはAbleton Live開発グループからスピンアウトしたPlacidus Schelbert氏を中心としたメンバーが開発した新発想のDAWです。この記事を作成現在はVer1.0.9までリリースされ、Studio OneやOhm Studio等と共に次世代DAWの強力な新興勢力になりえる期待の存在となっているのではないでしょうか。
スタッフの出身やClipの存在など、ableton Liveと比較されてしまいがちなBitwig Studioですが、その開発コンセプトは違う方向を目指しています。
まず、Bitwig Studioの特徴の一つが、独立した2つのシーケンサーを搭載しているということ。
1. Arranger Timeline(一般的なDAWにあるタイムライン)
2. Clip Launcher(ノートやオートメーションなど音楽の断片Clipを格納している場所)
もちろんArranger Timelineだけを使えばPro ToolsやCubaseのように従来のタイムライン型のDAWとして使用することもできます。しかしBitwig Studioを使う大きなメリットは、その従来型の制作方法を踏襲しながらもClipで作った楽曲の断片をLoop/発展させ、ON/OFFさせながら各Clipを組み合わせて直感的に楽曲を作りあげていくことができることです。
例えばArranger Timeline(従来のタイムライン型シーケンサー)の4小節間をループさせながら楽曲のアイディアをスケッチしていくとします。この時Clip Launcherを併用すれば、それぞれのトラックに作ったクリップ内に4小節のリズム、8小節のベース、16小節のパッド、などそれぞれ異なる長さのループを同時に再生することが可能です。
これ以外にもClipの使い方は様々ですが「Clipを制する者はBitwig Studioを制す。」と言っても大袈裟ではないでしょう。Bitwig Studioには「Clipを縦横無尽に操りいかに音楽を作るか。それをエディットし、ライブ演奏をさせることができるか」という点に着目した機能が多数搭載されています。
その一つが” Clip内での波形編集 ”です。これはClipに似た機能を持つableton Liveには搭載されていない機能で(本記事を作成時点の情報)、いちいちArranger Timelineへ書き出す必要が無く、驚くことにClipのループ再生を止めずに波形をエディットすることができます。
ダンスミュージックを作る上で「エディット時も曲を止めない」というのは大変大きなメリットとなります。ライブプレイの最中であったとしても自由気ままにリバースやピッチコントロールを使ったグリッチ効果などにチャレンジできるのです!
Bitwig Studioの公式動画では、エレピのオーディオ1フレーズをループ再生しながらバシバシとエディットして次々と新しいフレーズを作り上げる様が収録されています。
私が実際に使ってみた感は… まるでサンプラー!
エディット遊びを始めるともう楽しくて止まらなくなります。最近のダンスミュージックの制作スタイルのひとつとして、サンプラーを使わずソフト音源と波形エディットのみで仕上げるという手法があります。このような制作スタイルのトラックメイカーにぜひともBitwig Studioを試してもらいたくなりました。
もちろん、ableton Liveが9でやっと搭載した”Clip内でオートメーションが書ける機能”もBitwigなら始めから搭載しています。
フィジカルコントローラーでグニグニとしたコントロールオートメーションの違いによるバージョン違いのクリップを用意して並べるだけで一つのフレーズでも無限のパターン数が生まれますね。
そしてこちらも注目機能の一つ。MIDIとオーディオを一つのトラックで扱うことができる「ハイブリッドトラック」です。VSTなどのソフト音源をMIDIで打ち込み好みのフレーズができたらそのClipをバウンス。そうするとそのClipのあるトラックがHybridTrackという、MIDIとオーディオが混在するトラックになります。
このバウンスされたオーディオはエフェクトがかかっていないDRY状態で書き出されます。従来はリバースやタイムストレッチなどオーディオでしかできないエディットは別途オーディオトラックに書き出し、その都度行っていましたが、HybridTrackのおかげでその煩わしさから解放されます。
実際に試してみると、これができることに驚くというよりも、他のDAWでこれができなかったことの不自由さを思い出しました。それほど自然な使い心地で思い立ったフレーズをオーディオ化して加工することができます。
Bitwig Studioを使って行く上で興味を惹かれる仕様がこれ。
BitwigはコントローラAPIがオープンされているのです。つまりあらゆるコントローラーのプリセットをカスタマイズして自由に作ることができるということですね。
一般的なDAWに対応するハードウェアコントローラーであれば、他社DAW専用のコントローラーであったとしてもそれを使う事ができます。Bitwig StudioのためのJavaスクリプトAPIはBitwig Studio公式コミュニティの Community Controller pagesで公開されています。このAPIデータは世界中のユーザーが作り上げてシェアしているもの。もちろんこれからも続々と増えていきます。
http://www.bitwig.com/en/community/control_scripts.html
ClipのOn/Offを直感的に行えるパッドがズラリと並んだコントローラーにしようか、それともインストゥルメンツやエフェクトの操作をフィジカルに行うエンコーダーがたっぷりのコントローラー?それから日本で未発売のコントローラーでさえそのほとんどがBitwig Studioで使用可能です。「これ欲しい!…けど○○DAW専用なのか…」と肩を落とすことももうありませんね。
そして今後待ち受けているアップデートでは、複数のユーザーが同じファイルでセッションしたり、アレンジを加えることができる「LAN マルチユーザー セッション」や、インターネットを経由して同じファイルを違った場所から複数ユーザーで共有/制作が可能な「マルチユーザー・ミュージック・プロダクション」、インストゥルメントやエフェクトを自由にくみ上げ、そのパラメーターを世界で共有できる「ネイティブ・モジュラー・システム」など夢の機能が搭載予定です。
AvidのPro Tool CloudやSteinbergのVST connect のように、音楽の制作環境もグローバルなネットワーク化が進んでいます。ダンスミュージックなど特に国籍や言語に影響を受けにくい音楽制作を得意とするBitwig Studioであればそういった機能は無くてはならないものと言えるでしょう。
一から新たに生まれたDAWであるBitwig Studioの魅力はたったこれだけに留まりません。文字数の都合上極めて優れた点のみをピックアップしてみましたが、Bitwigの可能性を感じていただけたでしょうか。
本質は普遍でありながらも姿を変え続ける、音楽シーンや音楽の楽しみ方そして音楽そのもの。どのような変化が起こったとしてもその時代に沿った制作方法をBitwig Studioは提案していると感じます。
これからもBitwig Studioには楽しみなバージョンアップと新機能の搭載が待ち受けています。バージョンアップの度に機能が拡張され進化を続けるBitwig Studioが示すのは、未来の音楽そのものなのかもしれません。
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